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戦士の宴  作者: 高橋 連
二章 後編 「シャンピニオン山の戦い 其之弐」
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ユィン

【ユィン】

 

 ユィンが放った光の飛礫を避けようとしたイディオタに、光の飛礫から放電された雷が触手を伸ばして触れた瞬間、絶叫と共にイディオタの全身が痙攣し、地面に転がり崩れた。

「ぬおおおおっ!」

(老師に一泡吹かせてやったぞ! ははははは)

 ユィンはイディオタの悶絶する様を見て、心の中で笑い転げた。

 イディオタは立ち上がって服の埃をはたきながら、口を開いた。

「ユィンよ、なかなかやりよるのぅ。さすがは儂が認めた男じゃ」

 イディオタの言葉に、ユィンは頭を下げて礼をした。

(もう一泡吹かせてやる!)

 ユィンはそう思いながら、ことさら慇懃に返事をした。

「まだまだ……未熟者ゆえ、ご指導……をお願い致します」

 ユィンはそう言うと、さらに十数個の石の飛礫を造りだし、屈折鏡の形をした雷の固まりに放り込んだ。

(喰らえ!)

 ユィンが光の飛礫をイディオタに放った時、イディオタがその手に持つ宝剣に闘気を込め、大地へと放った。

(ちっ、目眩ましか!)

 イディオタの放った闘気は大地を割り土埃を大量に巻き上げ、周辺の視界を煙幕の様に塞いだ。

 ユィンは感覚を研ぎすまして辺りの気配を伺いながら、光の飛礫を連続で放った。

(幾つか手応えを感じたが……)

 ユィンは焦らず、辺りを警戒しながら土埃が収まるのを待った。そして、土埃の煙幕が晴れた時、後方に退がっていたイディオタを発見した。イディオタの前方には小さな黒い球の様な物が浮いていた。

(あれは……?)

 その黒い球はゆっくりとユィンへ向かって動き出した。

(老師の新たな術か!?)

 ユィンはその球を破壊しようと、幾つもの光の飛礫を小さな黒い球に向かって放った。光の飛礫は狙い違わず小さな黒い球に命中したが、全て音も無く吸い込まれた。

(当たったのか……?)

 変化なくゆっくり前進を続ける黒い球に向かって、ユィンはさらに光の飛礫を連射した。しかし、またもすべての光りの飛礫が音も無く吸い込まれた様だった。

(目眩ましか? この隙に老師が来るのか!?)

 ユィンはそう警戒しイディオタを見たが、後方より微動だにする様子はなかった。

 ユィンはイディオタの狙いが分からず、怪訝に思いながらも黒い球に注意を向けた時、僅かだったが何か違和感を覚えた。その違和感を凶と判断したユィンは、印を結び、新たな呪文を詠唱した。

(まずはあの球を封じるか)

 狭い範囲でしか効かないがその分強力な結界術を完成させると、ゆっくりと前進を続ける黒い球に向かって放った。

 放たれた結界術が黒い球を包み込み封印したと思った瞬間、結界術は消滅し、黒い球は何事もなかったかの様に前進を続けていた。しかも、その速度は少しずつだが加速している様であった。

(くそっ!)

 焦ったユィンは、闇雲に光の飛礫を黒い球に向かって撃ち続けたが、黒い球を打ち砕く事も、ましてやその前進を阻む事も出来なかった。そして、黒い球がかなり接近した時、初めてイディオタの狙いが分かった。

(しまった!)

 最初小さかった黒い球は、今はかなりの大きさに膨らんでいた。それに気づいたユィンは、屈折鏡の形をした雷の塊をも投げ捨てて逃げ出そうとしたが、時既に遅かった。

 黒い球は一瞬弾けたかと思うと、前進をやめ、強力な重力を発して周囲の物を吸い寄せ始めた。


12月22日まで、毎日21時更新を致します。

23~26日まではお休みして、27日より三章がスタートします!!

宜しくお願い致します^-^

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