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戦士の宴  作者: 高橋 連
二章 後編 「シャンピニオン山の戦い 其之弐」
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ユィン

【ユィン】


 水の巨人の体内に潜ったユィンは、両腕の骨の刃に魔力を込め、水の巨人を形作っている核を破壊すべく懸命に振り回した。

 ユィンは水の巨人の体内で感知した無数の核を、一つずつ破壊していったが、それはどれもイディオタが用意した偽の疑似核で、いくら破壊しても水の巨人を消滅させる事はできなかった。

(偽の核を用意した上に、本物の核は隠しているのか。しかし、体内に入っても感知できぬとは、老師の術は素晴らしいな……)

 それでも、ユィンは諦めずに核を探したが見つけられなかった。やがて、いかに強靱な体力を誇るユィンとて、その肺の中の空気が無くなってくると動きは鈍りだした。

(このままではまずいな……。ならば……)

 ユィンは動きを止めて水の巨人の体内の水の中で座禅を組み、精神を集中させると、体内の魔力と闘気を練り合わせながら増幅させ、更には全骨格に闘気を送って強化した。

(俺の体が持つか分からぬが、全力で放たねば核は破壊できまい……)

 ユィンは気を引き締め、全身の骨を強化すると、練り合わせて増幅させた魔力と闘気を爆発させて全身から一気に放出した。それは凄まじい威力だったが、同時に放出したユィンの体にも同じダメージを与える諸刃の剣でもあった。

 ユィンの放った魔力と闘気の爆発によって、水の巨人の体は砕け散り、盛大な水飛沫となって四散した。

(やったか!)

 水の巨人の体内より脱出したユィンは、新鮮な空気を吸おうと肩を大きく揺らして息をしながら、全身に受けた衝撃を回復させようと魔力を集中した。その時、水の流れる音が聞こえた。

(ま、まさか!?)

 ユィンの後ろで、飛び散った水が集まり、水の巨人はまったく損なわれた様子もなく復活していた。

(ば、ばかな! 幾ら隠そうと体内に核があるのは間違いないはず。ならばあの衝撃で破壊できぬ筈がない!)

 振り返り驚愕の表情を見せるユィンに、イディオタは意地の悪い教師の様な口振りで言った。

「まだまだじゃのう。儂の水の巨人はひと味ちがうじゃろう。そろそろ降参か?」

(降参などしてたまるか!)

 無言だったが、降参の意志どころか、ユィンの瞳に闘志の光が漲った。それを見てイディオタは気分を害したのか、ひどく怒った様子でユィンに向かって怒鳴った。

「まだ降参せぬとは、小僧、お主も儂の水の巨人を凄いと思わぬようじゃの! ならばよう見とけ!」

(お主も、とは? 一体老師は何の事を仰っているのだろう?)

 意味が分からぬユィンを無視し、イディオタは呪文を詠唱し、新たな術を発動させた。

 イディオタの膨大な魔力が雷の形となって水の巨人に吸い込まれるように落ちると、雷が大地に落ちた様な轟音が鳴り響いた。すると、雷をその身に受けた水の巨人の体内で無数の雷が暴れ狂っているかの様に、眩しい程の光が明滅していた。

(あ、あれは一体!?)

 驚きの表情を浮かべるユィンに向かって、イディオタは満足げに頷きながら叫んだ。

「雷水の巨人じゃ! すごいじゃろ! 触ると感電するぞ」

(雷水の巨人? 先ほどの溶岩の竜の様に、二属性魔術か……。今度は水に雷の属性か)

「では、今度はこちらから行くかのう!」

 イディオタがそう叫ぶと、雷水の巨人は大地を蹴りながら、その巨体に似合わぬ速度でユィンへと駆けてきた。

 ユィンは呪文を詠唱し、印を結んで魔力を凝縮させると、六枚の氷の盾を造りだした。その氷の盾を己の周りの宙に漂わせて防護させて、新たな呪文を詠唱しながら雷水の巨人を待ちかまえた。

 ユィンの間合いへと踏み込んだ雷水の巨人は、ユィンを狙って巨大な拳を繰り出してきたが、その拳をユィンの周りに浮かぶ氷の盾の一枚が受け止めた。

 空気中で放電した様な音がしたかと思った瞬間、雷水の巨人の拳を受けた氷の盾が粉々に砕けた。だが、ユィンもその間に唱えていた詠唱を完成させると、雷水の巨人に向けてその魔力を解き放った。

 放たれた魔力は、ユィンの指先から炎の矢となって雷水の巨人へと飛び、その体に突き刺さるように吸い込まれた。そして、体内で篭もった爆音を響かせながら爆発した。

 ユィンは雷水の巨人の攻撃を氷の盾で防ぎながら、次々と炎の矢を放った。その全てが雷水の巨人に命中し、雷水の巨人の体内で爆発した。

体内で炎の矢が爆発した瞬間、雷水の巨人の動きが止まったかに見えたが、すぐに動きだし、なんら損耗している様子はなかった。

(やはり核を破壊しなければ止まらぬか……)

 無数の炎の矢を放った疲労によってユィンの動きが鈍った隙をついて、全ての氷の盾を打ち砕いた雷水の巨人の拳がユィンの体に触れた。

 それはほんの僅かであったが、ユィンの体を強烈な電撃が襲った。

普通ならばそれだけで心の臓が止まる程の電撃だったが、ユィンの頑健な体は耐えた。しかし、電撃の衝撃によって、一時ユィンの動きが止まった。イディオタはそれを見逃さなかった。

 雷水の巨人は高く飛び上がると、ユィンの頭上で逆さにした碗の様に大きく広がり、そのままユィンを包み込んで体内に取り込んだ。

(しまった!)

 ユィンがそう思った瞬間、先程とは比べ物にならぬ電撃が、ユィンの体を駆け巡った。


お読みくださり、本当にありがとうございます!


今後ともよろしくお願い致します!



ブックマークしてくださった方、有難うございます^-^




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