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戦士の宴  作者: 高橋 連
序章 前篇 「建国の英雄王」
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イディオタ

【イディオタ】


(おい、イディオタ!)

 勝利を確信したイディオタに、〈アルファ〉が警告の叫びを発した。

 上空のイディオタが、天より巨大な魔槍をアルベールに向かって放った刹那、アルベールの右腕が更なる変化を見せたのだ。

(まさか!)

 イディオタがそれに気づいた時、上空より放たれた巨大な魔槍が、完全に剣と化したアルベールの右腕によって薙払われた。

軌道を逸らされた魔槍は、大地に深く突き刺ささって巨大な穴を穿ち、周囲に盛大な土埃を舞い上がらせた。

アルベールはその衝撃で生じた猛烈な突風と土埃によって全ての視界が遮られた隙をつき、獣の様な寧猛さと機械仕掛けの様な正確さでイディオタ達に襲い掛かった。

 最初に宙を飛び交い襲いくる魔剣と大地の刃を悉く破壊すると、アルベールは魔剣を操る二人のイディオタの心の臓を素早く刺し貫いた。

魔力を具現化した魔剣を両手に持っていた二名のイディオタは音も無く地に倒れ伏し、それと同時に、破壊した大地の刃の破片で脳天を割られた上空のイディオタが落下して大地に叩きつけられた。

(おい、イディオタ、いけるか……?)

(わからん……)

(如何にお前とて、遺物だけならまだしも、あの結界までとなると厄介だな)

(ああ。それに、遺物との融合率があそこまで上がるとは……。正直、戦うよりも研究したいくらいじゃ)

(どうする、ここは一旦退くか?)

(だめじゃ、奴の意識がいつ消えるかわからん。今ここで決着をつけるしかなかろう……。それに、向こうが逃がしてくれんわい)

 イディオタは〈アルファ〉にそう答えると、右手に握る〈デルタ〉の剣で左腕を深く斬り傷口を地面に向けた。そして、その左腕から地面に流れる血をもって、両足で素早く魔法陣を描きながら呪文の詠唱を唱えだした。

(イディオタ、詠唱中にくるぞ!)

 〈アルファ〉は隙が出来やすい呪文の詠唱中にアルベールが仕掛けてくると踏んで、イディオタに警告を発した。しかし、分身を倒したアルベールは、しばらく呆然と立ちすくんでいた。

(奴はどうしたのだ?)

(わからん。もしかすると、同調率が上がって己の体を駆け巡る力の大きさに驚いてるのやもしれん。術が完成するまであのまま呆けていてくれると助かるんじゃが……)

 だが、イディオタの願い虚しく、アルベールは後方のイディオタに向かって、突然、背を向けたまま弾ぜた。飛びながら体を回転させ、全身から溢れだした強烈な闘気で周囲の空間を斬り裂きながらイディオタに襲い掛かって来た。

(くるぞ!)

 イディオタは〈アルファ〉の叫びの半瞬後、右腕の剣を構えなおしながら〈アルファ〉に答えた。

(何とか間に合ったわい! 仕掛けるぞ!)

(正面からだと〈デルタ〉が折れかねん。最初の一撃は受け流せ!)

 〈アルファ〉の忠告に頷いたイディオタは、アルベールの強烈な一撃を受け流しながら体を回転させると、逆にアルベールの首筋を狙って剣を薙ぎ払った。しかし、アルベールはその剣を受けずに、後方に飛んで距離を取った。そして、剣を構えながらまたも動かなくなった。

(奴は連撃で押してくると思ったが……。力の反動か?)

(そんな気配はないがのぅ。儂の術を読んだか? それとも、儂の強さに恐れをなして降参する気になったのかのぅ)

(押されまくっているくせに、お前は阿呆か)

(…………)

 数瞬の間の後、アルベールは構えを解き、訝しむイディオタに向かって、言葉を発した。

「俺の命をやるよ」


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