コンジュエ
【コンジュエ】
「なにっ!?」
空中で動きの取れない筈のユィンを狙った拳が空を撃ち、その隙を狙ってユィンの拳が有り得ぬ角度から迫ってきた。
コンジュエは辛うじてその攻撃に反応すると、両の腕に闘気を集めて交差させ、ユィンの拳を受け止めた。
(ぬうぅ!)
ユィンの攻撃を受け止めたコンジュエの両腕に凄まじい衝撃が走った。
今まで己の金剛掌を受け止める者などいなかったが、今初めて、最愛の弟子に授けた金剛掌によって、何物をも打ち砕く筈の金剛掌が受け止められたのだった。
(ユィンよ、でかした!)
コンジュエは命を懸けた闘いの中で、己の教えを受けその才を開花させた愛弟子を誇らしく思った。
感傷に浸るコンジュエを現実に引き戻す様に、ユィンが猛り狂う獣の様に襲い掛かってきた。
「せいっ!」
コンジュエは左拳でユィンの拳を受けてユィンの体勢を崩すと、右脚に凝縮した闘気を爆発させて金剛脚をユィンの脇腹に叩き込んだ。
拳の数倍の威力をもつ蹴りに闘気を込めた金剛脚の一撃は、異形と化したユィンさえをも砕くかと思われた。
しかし、ユィンはまたも空中に飛んで金剛脚を避けたかと思うと、何度か方向を変えながらコンジュエの周りを飛び交った。
(氷の盾か!)
コンジュエはユィンが空中で氷の盾を足場にしながら飛んでいるのに気がついた。
ユィンは精妙な魔力制御によって氷の盾を操作し、己の足場としてそれを空中で蹴り飛んでいた。
ユィンが空中で氷の盾を蹴り飛ぶ度にその速度は加速し、今ではコンジュエの周囲を黒い旋風と化したユィンが飛び交っていた。
「ガアァッ!」
そして、恐ろしい唸りと共に、死角からユィンの金剛掌が襲い掛かってきた。
(師の教えに己の技を加えるは見事……。しかし、その程度の動きではまだまだぞ!)
コンジュエはユィンの金剛掌を無理に受けずに流し捌くと、その動きを見切って足場となる氷の盾を次々に打ち砕いていった。
しかし、ユィンもコンジュエの動きに対抗し、飛ぶ速度を上げながら次々に氷の盾の法術を詠唱した。
(ユィンの法術の詠唱速度は素晴らしいな。ユィンの才は法術にこそあるか……。しかし、仕掛けが解ればどうと言う事はない。ユィン、このままでは詰んでしまうぞ……)
コンジュエの心配を知らぬユィンは、コンジュエが氷の盾を打ち砕くのと競うかの様に何度も氷の盾の呪文を詠唱した。
だが、コンジュエはユィンが凄まじい速度で造り出す氷の盾を次々に打ち砕いて行き、やがてコンジュエが懸念した通り、ユィンは足場を無くして追い詰められた。
「ここまでぞ!」
コンジュエは心を殺し、渾身の闘気を右腕の手刀に溜めた。そして、右腕自身を光輝く刃と化すと、その巨大な刃をユィンめがけて突き出した。
その瞬間、コンジュエの体の動きが止まった。コンジュエの意志とは裏腹に、その四肢はまったく動かなかった。
「なっ!?」
混乱するコンジュエの目前で、追い詰められていた筈のユィンが何かの呪文を唱えると、巨大な氷の槍が現れた。
(これは!?)
白銀の様に輝く氷で形創られたその巨大な槍は、その大きさ故に槍と言うよりは、まるで氷龍の牙の様であった。
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