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戦士の宴  作者: 高橋 連
序章 前篇 「建国の英雄王」
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アルベール

【アルベール】


 アルベールは少なからずの驚きを覚えていた。

 呪文を放った直後の完全な隙を突いたはずが、自分の斬撃がいとも簡単に受け止められたからである。

(見かけから魔導師だとは踏んでいたが、剣の腕も相当だな。俺よりも数段上か。世の中は広いな)

 アルベールは不思議と落ち着いた気持ちで、冷静に小男の実力を見切り、素直に自分より上と認めていた。

(しかし、簡単に命を呉れてやる訳にはいかん。しかたない、あれをやるか。あれをやると後がきついんだがな……)

 アルベールは体中の闘気を極限まで収束させると、全てを右手に持つ大剣へと注ぎ込んだ。大剣はアルベールの闘気に感応し、柄に嵌め込まれた魔力制御石が鈍く輝きだした。すると、大剣は命を吹き込まれた様に蠢きその形を変えてアルベールの腕を包み込む様に覆った。

 アルベールの腕が剣と化したのか、剣がアルベールの腕を飲み込んだのか判別は難しかったが、アルベールの右腕は肘の辺りから大剣と一体化していた。それと同時に、アルベールの体の中に凄まじい魔力と闘気が駆け巡った。

「グォウハァァァー!」

 地響きの様な息吹と共にアルベールは跳ねた。正確には、小男に向かって駆けたのだが、その異常なまでの身体能力によってまるで跳ねたかの様だった。

 変化したアルベールの恐るべき斬撃を、小男はまたもや受け流し、大地を操って巨大な岩石の刃を造りだして襲ってきた。

(この程度なら!)

 アルベールは生き物の様に襲いかかる無数の大地の刃をかい潜りながらそれらを打ち砕き、更に小男に迫った。その時、小男がまたも呪文を完成させて三つの分身を造りだすと、半包囲しながら襲い掛かって来た。

(こいつは……)

 人間離れした自分をして、防御に徹するしかない程の猛攻を繰り出す小さな薄汚れた男。明らかに人間の範疇を越える強さを持つ者であった。しかし、アルベールは、恐怖よりもその男との常識を越えた戦いに楽しさを覚え始めていた。

 いつ終わるともしれぬ激闘の最中、刹那的にアルベールは何かを感じた。聞こえたわけでも、見えたわけでも無かったが、確かに何かを感じた。それが何とは、はっきり分からなかったが、恐らく……己の命が尽きる時……と思われた。その瞬間、アルベールの中で更なる爆発が起こった。

 そう、まさに爆発。二つの魂、魔力と闘気、恐怖と愉悦、絶望と希望、何かが解け合い混じり合いながら打ち消し合う様な爆発。それが声となって口から溢れでた。

「うおおぉぉぉぉぉぉー!」

 アルベールの右手が更に変化した。

 肘までだった剣との融合が、一気に肩を越え、首筋まで達した。それと同時に闘気が弾け、自分の周囲を全て掴みとる様な感覚を感じた。

 自分と剣を交える三人の小男、生物の様に襲い掛かる大地の刃、宙を飛び交い煌めく無数の魔剣、そして、上空より迫り来る恒陽。いや、恒陽に匹敵する輝きと力をもつ何か……。

 大剣との融合率を更に上昇させたアルベールは、今までとは比べるべくもない速度と力を持って、周囲の物を打ち砕き、天より飛来した光の塊を薙払った。

さすがに打ち砕く事は出来なかったが、その軌道を変えられた光の塊――上空のイディオタが放った闘気を漲らせた巨大な魔槍――はアルベールの体を大きく外れ、大地に深く突き刺さって巨大な穴を穿ち、周囲に盛大な土埃を舞い上がらせた。


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