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戦士の宴  作者: 高橋 連
一章 前編 「殺刃の剣士」
30/211

レンヤ

【レンヤ】


 老人に押しまくられて、レンヤにはもう為す術がなかった。

 空の両手で駆けてきた老人の周りには、いつしか無数の剣が宙を舞い飛び、その手にも剣が握られていた。

 しかも、その剣は老人の周囲で消えては現れ、現れては消え、神出鬼没さながらに恐るべき速度で的確に急所を狙って繰り出された。

レンヤは捌く事さえ追いつかず、体中に無数の傷を受け、全身を己の血で朱に染めた。

 先ほど受けた傷もかなりの深手であった為、レンヤはもう体を動かす事すらままならなかった。

 しかし、無数の剣に斬りつけられながらも、レンヤは老人の呼吸を図り、自分に止めを刺す瞬間に相討ち覚悟の一撃を叩き込むつもりで、僅かながらでも急所をずらして攻撃を凌いでいた。

そして、多量の出血の為にレンヤの意識が断ち切られ全身に張りつめた緊張が弾けかけた時、老人が最後の止めの一撃を繰り出してきた。

 レンヤは飛び消えそうになった意識を呼び起こし、宝剣を握る両の手に不断の覚悟の力を込めて握りなおした。恐らく、老人は止めを刺す為に己の心の臓狙ってくるだろう。レンヤは己の心の臓に老人の剣が突き立った瞬間に、全身全霊を込めた一撃を老人に浴びせる覚悟であった。

 レンヤの読み通り、老人の手に持つ剣がレンヤの心の臓を寸分違わずを刺し貫いたその瞬間、レンヤは両腕で握った宝剣を撃ち降ろした。いや、撃ち降ろそうとした。

 だが、その前に、頭の中に鈴の音の様な響きが木霊した。

(リーン…………)

 レンヤは我に返った。

貫かれたはずの心の臓には剣は突き立っておらず、老人の剣は今まさに、レンヤの首を落とさんと宙を走っていた。 

 レンヤは、振り上げた剣を撃ち降ろさず、体の前に構えて、老人がレンヤの首を狙って放った剣を受け止めた。

 しかし、そこで力尽き、崩れるように大地に倒れ伏した。


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