竜殺し
【竜殺し】
ジョルジュとの激闘を終え天空へと飛び去った〈竜殺し〉は、その姿をまた人型に戻し、シャンピニオン山中腹のとある場所に降り立っていた。
(おい! もうその辺にしとけよ。今より〈竜の国〉まで飛ばねばならんのだぞ)
足元に描いた巨大な魔法陣へ、全身の魔力と闘気を注ぎ込んでいた〈竜殺し〉の頭の中に、〈シータ〉の声が響いた。
(ああ、そうだな。これ位で良いか)
〈竜殺し〉はそう言うと、額の汗を拭いながら、全身から迸っていた魔力と闘気を静めた。そして、飛翔の呪文を詠唱すると、周囲の木々の上まで舞い上がった。
(どうした? まさか人型のまま飛んで帰るつもりではなかろうな?)
(いや、下で変化すると、周りの木々を倒してしまうからな)
〈竜殺し〉はそう言うと、全身の魔力と闘気を爆発させて、竜身へと変化――元の姿に戻ったと言う方が正確だが――すると、背に生えた長大な翼を大きく伸ばした。
(高度を大分高くして飛べよ)
(地上から見て大きな鳥だと思われる位にか? そんな事せずとも、姿隠しの結界を張って飛べば良いだろうが)
〈竜殺し〉の言葉に〈シータ〉が怒鳴り返した。
(お主が後先考えずに魔力を使わなきゃそうできたがな! いま一時は結界を張れるだろうが、〈竜の国〉までの間ずっと結界を張っていられるのか?)
〈竜殺し〉は己の不利を悟ると、黙って背中の翼をはためかせ、凄まじい速度で空を斬り進む様に空高く飛翔した。大空高く舞い上がって見る景色は、〈竜殺し〉にとって久方ぶりのものであった。それは〈竜殺し〉の心を落ち着かせた。
〈竜殺し〉は暫しシャンピニオン山を眺めた。
(この山にも世話になったな)
(そうだな。イディオタがここに居を構えてからだからな)
〈竜殺し〉と〈シータ〉は長らく住んだシャンピニオン山に心の中で別れを告げ、礼を言った。
(では、久しぶりに故郷に帰るとするか……)
〈竜殺し〉の言葉に〈シータ〉も明るく答えた。
(ああ、本当に久しぶりだな。王もお主の帰還を喜ぶであろうな)
(はぁ。帰りたくない……)
〈シータ〉は珍しく、〈竜殺し〉を慰める様な口調で答えた。
(まあ、分かるが……。致し方なかろう。お主が竜身に変じたのみならず、その力の封印をも解いたのだからな。封印が解けた事は既に向こうにも伝わっておろう。なれば、一度は〈竜の国〉に戻らねばならぬであろうが)
(分かっているよ……)
〈竜殺し〉は〈シータ〉にそう言うと、その長大な翼をはためかせて北へと向けて飛翔した。
北に向かって飛び進む〈竜殺し〉の目に、山道の砦の残骸を撤去し、山頂の〈山塞〉に向かって進む王国軍の姿が見えた。
(ふむ……)
〈竜殺し〉はそう呟くと、急降下し始めた。
(おい、何度も言うが、人間への力の使用は……)
(分かっている!)
〈竜殺し〉は〈シータ〉にそう叫ぶと、姿隠しの結界を張り巡らせてその姿を隠すと、言葉を続けて〈シータ〉に尋ねた。
(イディオタ様がご不在の今、イディオタ伯軍の総指揮権は、高弟の中でも筆頭であり砦の指揮を任されている俺にあると考えて良いよな?)
〈シータ〉は〈竜殺し〉の問いに、何を今更とその考えを図りかねた怪訝な様子で答えた。
(まあ、そうだな。〈銀の槍〉と〈刀鍛冶〉は死亡しておるし、元からお主の方が上席にあるのだから、その解釈に問題はないであろうな……)
〈竜殺し〉は〈シータ〉の答えに満足げに頷くと、竜身の口元を綻ばせる様に笑った。
(よし、ならば俺が己の指揮権の範囲内で己の城を破壊しようと、誰に文句を言われる筋合いも無いな)
〈竜殺し〉のその言葉に、〈シータ〉は漸く〈竜殺し〉の意図する所を悟った。
つまり、〈竜殺し〉は山頂にあるイディオタの居城、〈山塞〉を山道の砦の様に破壊し、王国軍の追撃を阻止しようと言うか嫌がらせをしてやろうと言う事であった。
(まあ……そうだな……。確かに、人間界の法律上も、〈竜王憲章〉においても、己の指揮下若しくは所有する物の破壊は、自由ではあるな……。だが、怪我人が出るとまた話が変わってくるぞ)
(分かっているよ。ユィン達が退去してから大分と経っているし、王国軍は今だ山頂に辿り着いていない。今なら大きな爆発が起ころうと、怪我人が出る事はあるまい)
(では、ささっと終わらせろ)
(良し、では一つ派手にいくか!)
〈竜殺し〉はそう言うと、王国軍の頭上を一気に飛び越えて山頂の〈山塞〉上空につくと、姿隠しの結界を解いた。そして、指先に小さな火炎球――と言っても、それは巨大な体躯を誇る竜族からみて小さなと言う事であった。その火炎球は人間の背丈ほどの直径があり、人間からすれば如何程の魔力が込められているのか想像も出来ぬ程の大きさであった――を創り出した。
〈竜殺し〉の指先の火炎球は、燃え盛る緋色から輝く黄金色を経て、眩いほどの白色へと素早くその色を変えていった。その火炎球の変化が終わると、〈竜殺し〉は何気ない動作で火炎球の宿る指を〈山塞〉へ向かって軽く動かした。
それに伴い、火炎球は凄まじい唸りを上げながら〈山塞〉へと一直線に突き進み、その中央に聳える一番高い塔を圧し折って〈山塞〉中央にめり込む様に激突した。その瞬間、〈山塞〉が大きな爆音と共に燃え弾け、黒く焦げた瓦礫の山へと変貌した。
(あれでは地下の施設は残っているぞ。良いのか?)
〈シータ〉の問いに、〈竜殺し〉は素早く呪文を唱えて姿隠しの結界を張りなおしながら答えた。
(ああ、あの施設は残しておく。ユィンが〈山塞〉に到着してから手を打つ時間位はあった筈だが、そのままにしているという事は、きっとイディオタ様の研究を灰にするのは忍びなかったのであろう。それに、〈銀の槍〉や〈刀鍛冶〉は死んだが、レオナールはまだ残っているからな。俺も奴に、イディオタ様の研究をより良き事に使って欲しいからな……)
(そうか。ならば何も言うまい)
(よし、では今度こそ、帰るとするか……)
〈竜殺し〉はそう言うと、背の巨大な翼を震わせて真っ直ぐに天へと突き進むと、やがて雲をも突き抜けた。そこで姿隠しの結界を解くと、北の凍土にある〈竜の国〉を目指し凄まじい速度で飛び始めた。
北へ向かって飛翔する〈竜殺し〉に向かって、〈シータ〉は何事かを思い出した様に言葉を掛けた。
(お主、〈竜の国〉に戻った後の事は考えているのか?)
(ん? 特に考えてはいないが……。まあ、何かの役職には就かされるだろうな……。国境の守備隊長辺りかな。しかし、改革派の頭を殺っちまったからな……。改革派の激高や報復等の争乱を避ける為に、元老院の末席を与えられて飼い殺しって所かな)
その答えに、〈シータ〉は溜息混じりに口を開いた。
(今の竜族内は最早その様な事ですむ状況ではない……。改革派と保守派の対立は、数百年前にお主が改革派の……)
〈シータ〉はそこまで言ってから突然言葉を止めたが、〈竜殺し〉は気にする様子も無く、笑って先を促した。
(もう昔の事だ。気にせずさっさと話せよ)
(そうだな、すまん。お主が改革派の王太子を殺して争乱を未然に収めた数百年前よりも、今の〈竜の国〉の状況は深刻なのだ……)
〈シータ〉の言葉に、〈竜殺し〉は驚きを隠さずに問い返した。
(どういう事だ!? 改革派はあれから力を失い、保守派の爺達にも何事かを起こす力は……、そうか、奴等、あいつの弟を、王子を担ぎ出しやがったか!)
その〈竜殺し〉の言葉を、〈シータ〉は否定した。
(いや、それはない。と言うか、幼かったあのお方も、今では賢明な王太子へとご成長された。元老院が担ごうにも、乗せられる事はあるまい。また、そうなればさすがに王も黙ってはおるまい)
(では、どういう事だ? あれから改革派と保守派の勢力は拮抗し、お互いに動けぬ筈だ。それに、俺がイディオタ様の弟子として人間の世界で暮らす事で、改革派も保守派も様子を見るという事で納得したのではなかったのか?)
そこまで言って〈竜殺し〉は、ある事に気がついて蒼白となった。
(まさか、俺が追放の期間を過ぎても〈竜の国〉に戻らなかった為に、改革派が暴発を……)
その言葉を聞いた〈シータ〉は、慌てて言葉を遮った。
(いや、そうではない。落ち着け。原因はお主とはまったくの無関係だ。今より数十年前、イディオタ様がアルベール王と出会うよりも更に少し前に、ある一人の人間が〈竜の国〉がある凍土に迷い込んだのだ。その男は疲労と凍傷で瀕死の重傷であったが、王は〈竜王憲章〉に基づいてその者を手当て為される事にしたのだ……)
〈竜殺し〉はその言葉に頷いた。
(そうだろうな。〈竜王憲章〉では人間と竜族の相互扶助が定められている。まあ、既に滅んだ人間の王国の王と竜王との間で大昔に結ばれた協約だから、人間側は覚えちゃいないだろうがな。しかし、それがどうして問題になる? 〈竜王憲章〉に則った判断であるし、その後、その人間の記憶を消して送り返せば済む事だろうが)
〈シータ〉はその〈竜殺し〉の言葉に溜息をつきながら答えた。
(その記憶を消して返すと言う時に、問題が生じたのだ……。その人間の記憶を消すと言う事は、竜族が魔力によって人間に危害を及ぼす事になると改革派の連中が申し立て、〈竜王憲章〉に対して違憲だと騒ぎ立てたのだ)
(馬鹿な! 記憶を消さずに返せば、それこそ〈竜の国〉の存在自体が人間達に知られ、争乱の種に成りかねぬでは無いか。だからと言って、その人間を殺しては、それこそ〈竜王憲章〉に反する。記憶を消して返すほか手立ては無かろう)
〈竜殺し〉の言葉に、〈シータ〉は頷きながら言葉を続けた。
(そうだ、それしかない。改革派の連中もそれを分かって騒ぎ立てたのだ。奴等は〈竜王憲章〉を犯して人間に危害を加えたという前例を欲したのだ。如何に〈竜の国〉を護る為といえど〈竜王憲章〉が破られた前例が出来てしまえば、その後は〈竜の国〉を護るという建前の元、人間に対して堂々と攻勢を掛けられるからな……)
(しかし、そんな馬鹿な事を王はお認めになるまい。如何に改革派が騒ごうと、その人間の記憶を消して返すほかないだろう。その後、奴等が〈竜王憲章〉を持ち出して騒ぐなら、こちらも〈竜王憲章〉の解釈で対抗すれば良い事であろうが。それがなぜ深刻な対立に繋がったのだ?)
〈シータ〉は事態の深刻さを表す様に、大きな溜息と共に先を続けた。
(愚か者は、改革派の連中だけではなかったのだ。王は恐らくお主と同じご判断をされていたであろう。しかし、一時と言えども改革派の弁に屈するのを潔しとしなかった保守派の者達は……、その人間を改革派が言う通りに記憶を消さずに返したのだ。そのせいで〈竜の国〉に異変が生ずれば、それこそ改革派の奴等の責任に出来ると言ってな……)
〈竜殺し〉は怒りをも通り越し、呆れ果てた様に頭を振って答えた。
(そうか、奴等は〈竜の国〉の安全さえも政争の具とする程愚かであったか。〈竜の国〉の行く末を案じればこそ、改革派も保守派も意見を戦わせていた筈なのに、今やその安全を脅かしてまで争うとは、本末転倒とはこの事だな。それで、王はどうなされたのだ?)
(本来であれば、人間を無断で帰した保守派の者を処罰せねばならぬが、それをすれば改革派、保守派双方激化するとお考えになられ、処罰はなされなかったのだ。自分の命であると仰ってな)
(そうか。泥を被られたか……)
(しかし、やはり記憶を消さずに人間を戻した事により、厄介事が起こったのだ)
(厄介事とは? 如何に人間に〈竜の国〉があるという話が伝わろうとも、凍土の奥深くまで探しにくる者はおるまい? 例え来たとて、無事に辿り着くとは思えぬが……)
(だが、居たのだ。探そうと思った人間が。しかも恐らく、凍土の奥深くであろうと辿り着くであろう、正確には辿り着かせられるであろう人間がな)
〈シータ〉の言葉に、〈竜殺し〉は訝しげに問い返した。
(辿り着かせられる、とはどう言う意味だ?)
〈竜殺し〉の言葉に〈シータ〉は説明を続けた。
(探そうと思い立ったのは、北方のルーシア帝国の皇帝だったのだ。彼は凍土を長く彷徨い無事に帰還した男の話を、世間が頭のいかれた法螺話と談じたその話を信じたのだ。そして、大規模な遠征部隊を編成し、凍土の奥深くを探索しようと計画したのだ)
(よりにもよってルーシア帝国の皇帝とは、馬鹿な話だ……)
(ああ、そうだ。馬鹿げた話だ。凍土の奥深くに遠征など命を捨てる様なものだし、例え辿り着いて〈竜の国〉を見つけたとしても、数百の遠征部隊がどうこう出来る訳も無い)
(まさに、金と時間と命の無駄使いだ)
〈シータ〉は〈竜殺し〉の言葉に頷いた。
(ああ、まさにだ。しかし、貴族という人種は、己の命でなければ塵芥程にも思わぬものだ。ましてや皇帝ともなれば、貴族の親分みたいなものだからな。有り余る金と時間と、他人の命を使ってその馬鹿げた遠征を行おうとしたのだ)
〈シータ〉の話をそこまで聞いた〈竜殺し〉は、それが〈竜の国〉にもたらす深刻さを即座に理解した。
もし、人間達が〈竜の国〉の近辺で遭難でもすれば、先の人間と同じ様に助けねばならず、その際、前と同じ様に記憶操作の事で改革派と保守派が揉めるであろう。たった一人の男の話だけで遠征部隊が派遣されたのだ。大勢の人間が同じ様な記憶を持って帰れば、今度はもっと大規模な遠征軍がやって来るであろう。また、遠征部隊、もしくはもっと大規模な遠征軍が〈竜の国〉に辿り着いた時は、更にその対処が問題となる。
人間は竜の強大な力を恐れるであろうし、それを己達の争いに利用せんと考える者も現れるであろう。だからと言って彼等を皆殺しにするのは容易いであろうが、それこそ〈竜王憲章〉に真っ向から抵触する。
〈竜王憲章〉は、竜族の唯一にして例外なく遵守すべき法であり、それは王といえども抗えぬものであった。故に、竜族には護憲執行官という〈竜王憲章〉の解釈権とそれらを遂行し遵守させる為の執行権をもった官職が定められていた。
この護憲執行官に与えられた解釈権と執行権には、王であっても従わねばならず、その為、王と護憲執行官は兼務できぬ事となっている程であった。しかし、近年はその制度も形骸化し、通常は王を補佐して政務をとる王太子が任命される事が慣例となっており、そういった意味では王が兼任しているのと変わりはなかった。
事態をある程度理解した〈竜殺し〉に、〈シータ〉は更に先を続けた。
(事態を考慮なされた王は、ある決断を下されたのだ。それは〈竜王憲章〉に照らせば違憲となる行いであったかも知れぬ。しかし、護憲執行官が不在であった為、王は強引に〈竜王憲章〉に抵触せぬという判断をくだされたのだ)
言葉を続ける〈シータ〉の口調に、言い知れぬ重さを感じた〈竜殺し〉は、〈シータ〉の言葉を待てずに問い返した。
(王は一体何を決断なされたのだ? まさか、人間達と争いを……)
(王がそんな愚か者で無い事はお主が良く知っておろう。王は人間達と新たな契約を結ぶ事をご決断されたのだ。正確には、一人の人間との契約だが)
(一人の……人間……?)
(王はルーシア帝国の皇帝個人と契約をかわされたのだ。契約は代々の皇帝個人に受け継がれる。その内容はルーシア帝国に万が一の事が起こった時は、竜族が皇帝及びその家族を保護する。その代わりに、ルーシア帝国皇帝はその領土内の永久凍土地域にある〈竜の国〉への不干渉を約束するというものだ)
〈シータ〉の言葉に、〈竜殺し〉は直ぐには言葉を返せなかった。しかし、幾つかの思考の流れを纏めると、〈シータ〉に問い返した。
(確かに、〈竜王憲章〉には人間との新たな契約を結んではならぬと言う条文は無かったはずだ。また、特定の人間に保護を与える事も禁止はしていない。そして、皇帝個人と家族の保護、つまり特定の人間を安全に保護するだけならば、人間同士の争いに加担しているわけでも、人間に危害を加えている訳でもない、と言う判断か……。かなり灰色な解釈だな……)
〈竜殺し〉はそこまで口にしてから、竜族の現状を理解した。
いま〈竜殺し〉が自分で感じた様に、竜王の結んだ契約は竜族の唯一の法である〈竜王憲章〉に違憲しているかどうかの判断がかなり難しかった。違憲と断じれぬ代わりに、合憲とも言えぬ所に、その危うさがあった。
本来であれば、護憲執行官がその解釈権をもってこの事例を判断する事になっており、通例ではその護憲執行官は王太子が勤めている為、王寄りの解釈がなされて合憲となり問題にならぬはずであった。
しかし、今の王を補佐するはずの護憲執行官であった王太子は、先の内紛の折に〈竜殺し〉がその手で殺めた相手であった。その後、王太子となるべき王子はまだ幼かった為、護憲執行官は空席となっていた。それが今回は仇となったのだ。
(そうか。やはり、俺の罪はそう簡単には許されぬらしいな……)
(馬鹿な事を言うな! あの時お主がその手を汚さねば、それこそ多くの命が失われていようぞ)
〈竜殺し〉は〈シータ〉の言葉にしばし瞼を閉じたが、あえてその事には触れずに言葉を続けた。
(とりあえず、俺は急ぎ帰国し、その内紛を収める為に立ち働かねばならぬと言う事だな……)
(ああ、本来はイディオタ様が王の依頼で近々〈竜の国〉へ赴かれる予定だったのだが、こんな事になってしまった……)
(あのお方にそう何度も頼ってばかりもおれぬであろう。俺に何が出来るかは分からぬが……。この命で何事かを成せるのであれば、喜んで竜族の為に尽くそう)
(エドワード……)
〈竜殺し〉の言葉に、〈シータ〉は掛ける言葉が見つからぬ様子であった。〈竜殺し〉はそれを察すると、明るい口調で言葉を続けた。
(では、さっさと帰るぞ!)
そして、体中の鱗を黄金色に輝かせながら、凄まじい速度で空を切り、雲を突き抜け、北へと飛んだ。
竜殺しは前編でも個人的な背景を説明できなかった登場人物なので、
終章で書いてみました。
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