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戦士の宴  作者: 高橋 連
五章 後編 「シャンピニオン山の戦い 其之五」
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ユィン

【ユィン】


 ユィンが放った無数の黒い飛礫は、三体の闘神像を頭部から真っ二つに砕き折り、更には〈片目〉にも僅かだが手傷を負わせて退がらせた。

(よし! ここからは一気に行くぞ!)

 ユィンはそう言うと、新たな呪文を発動させようとした。

(おい、あの飛礫は一体?)

(あれはイディオタ様から学んだ転移の術の……)

 〈オメガ〉の問いにユィンが答えようとした瞬間、ユィンの体に撓る鞭なものが絡みつき、その動きを封じた。

(こ、これはっ!?)

 ユィンは全身に魔力と闘気を巡らせてその鞭の様なものを引き千切ろうとしたが、力を込めれば込めるほど、それは引き締まった。それどころか、太ささえ増した様に見えた。

(馬鹿者め! やられたな……)

 ユィンは〈オメガ〉の言葉に周囲を見ると、砕き破壊したはずの闘神像の腕が伸びて己に巻きついているの確認した。敵を打ち砕き主導権を握ったと思い込んだ慢心と、呪文発動及び新たな術式の詠唱の隙を突かれたのだった。

(〈オメガ〉、急いで解呪をする! 演算を補助してくれ!)

(もう遅い!)

 〈オメガ〉は出来の悪い生徒を諭す教師のように、ユィンに説明した。

(見ろ。あの闘神像を覚えているか? 三色の腕を持っていただろう。火、水、土の三系統だ)

 〈オメガ〉は更に言葉を続けた。

(その三系統の魔力を宿した腕が融合しあい、既にその腕は有機物に変じている)

 〈オメガ〉の説明に、ユィンは絡みつく腕を見た。それは交じり合いながら色を変え、今では太い緑の蔓の様になっていた。

それは大地へと根を伸ばし、大地の魔力を吸い上げて強度を増しながら、その根で何か巨大な魔法陣を大地に描いている様に見えた。

(まさか……)

 ユィンの言葉を受けて、〈オメガ〉がその先を言った。

(そうだ。有機物に変じている為、その触手を解呪する事は出来ない。しかも、そいつは大地に根を降ろして描いた魔法陣によって、大地から巨大な魔力を吸い上げてその強度を加速度的に増している)

(だが、有機物であるならば、無限に魔力を吸収できるものではないはずだ! やがて限界に達して自壊……)

 話しながら己の掛かった術の最後に気付いたユィンに、〈オメガ〉が補足して話を続けた。

(そうだ。やがて限界に達したその触手は、己が集めた巨大な魔力を暴走させて自爆する。お前を道連れにな……)

 ユィンは全身に魔力と闘気を集めて、全力でその触手から逃れようとしたが、既に逃れ得るものではなかった。

(無駄な足掻きはやめろ。見ろ、奴にとってその術は必殺の術なのであろう。既に距離を取って傍観している)

 〈オメガ〉の言葉通り、〈片目〉は既に構えを解き、距離を取って触手の自爆に備えながら、ユィンの最後を見ていた。

(ユィン、今回はぐだぐだ言っている暇は無いぞ。一気に行くぞ!)

(ああ!)

 ユィンは〈オメガ〉の言葉に頷くと、全身の魔力と闘気を一気に爆発させながら融合させて、それを全身に駆け巡らせた。それと同時に、ユィンの全身から影の中に潜む闇の様な闘気が溢れ出し、その姿を包み込んだ。


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