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戦士の宴  作者: 高橋 連
四章 後編 「シャンピニオン山の戦い 其之四」
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ジョルジュ

【ジョルジュ】


 クロードの〈騎操兵〉の残骸に隠れ、二機の〈騎操兵〉を精神能力で遠隔操作していたジョルジュの疲労は、尋常のものではなかった。

(ジョルジュ、やれるか?)

(あぁ、大丈夫……だ……。決めるぞ……)

 疲労の極みにあったジョルジュは、最後の力を振り絞って崩れ倒れた自分の〈騎操兵〉を立ち上がらせると、〈竜殺し〉に向かって駆けさせた。

 止めを刺したと思った〈騎操兵〉が向かってきた事に、〈竜殺し〉の注意は完全にそちらに向けられた様だった。〈竜殺し〉は右腕を振り降ろして、向かってきた〈騎操兵〉を打ち砕いた。

 〈騎操兵〉が砕ける轟音と破片が舞い飛ぶその隙を突いて、ジョルジュは精神念動力でクロードの〈騎操兵〉が持っていた大剣を、〈竜殺し〉に向かって投げた。

 ジョルジュが命を削って放った大剣は、真っ直ぐに〈竜殺し〉に飛んで竜の鱗を割り、その血を大地に吸わせた。だが、それは致命傷とはならなかった……。〈竜殺し〉の注意を正面の〈騎操兵〉に完全に惹きつけ、さらには後方の死角から狙った一撃。ジョルジュは完全な一撃を放った筈だった。

 〈竜殺し〉に精神障壁を張る間を与えずに、その体を貫く筈だった大剣を、〈竜殺し〉は戦士の直感か、死の予感か、大剣がその身を貫く刹那、何かを感じ取って後方を振り返った。そして、打ち砕いた〈騎操兵〉の残骸を盾として大剣の一撃を受け止めたのだ。

大剣は〈騎操兵〉の残骸を貫いて〈竜殺し〉の鱗を砕き、その身に突きたったが、わずかに刀身の先が刺さったにすぎなかった。

 だが、必殺の一撃だった筈の大剣を防がれたジョルジュの瞳には、敗北の影は見えなかった。その瞳の奥には、勝利を確信した男にだけ宿る、猛々しくも冷徹な輝きが煌々と輝いていた。

 〈竜殺し〉が後方から迫る大剣に気づき、それを防いだ時に、ジョルジュの勝利は確定していた。

 ジョルジュは最後の力を振り絞って大剣を投げ放つと、〈竜殺し〉が大剣に気づき振り返った後に、自分の〈騎操兵〉に落とさせていた剣をも精神念動力で操り、〈竜殺し〉の振り向いた背中に狙い放っていたのだ。

 強力な精神念動力の使用により、ジョルジュの肉体は痩せ衰え、頭髪は雪の様に白く変じ、立つ事さえできぬ程に消耗していた。瞳の輝きがなければ老人に見えたかもしれない。

(やった……ぞ、俺は……やったぞ!)

(ああ、お前は本当に良くやった……。後は俺に任せておけ。〈竜殺し〉から必ずお前の命は救ってみせる)

(〈竜殺し〉……から……? 一体……?)

 ジョルジュが最後の命を掛けて放った剣が〈竜殺し〉の背中を貫こうとした瞬間、〈竜殺し〉の全身が、全身の鱗が黄金色に輝いた。

 今まででさえ圧倒的だった生命力、魔力、闘気をも遙かに凌ぐ質と量の力の流れが周囲に巻き起こった。

 完全な不意を突き、精神障壁を張れなかった無防備な筈の〈竜殺し〉の背中に剣が触れると、黄金色に輝く鱗には傷一つつかず、剣の方が粉々に砕け散った。

「そ、そんな……馬鹿……な……」

 全ての力を使い果たし、大地に横たわるジョルジュの口から驚きの言葉が漏れた。その時、ジョルジュの中の〈シグマ〉が〈竜殺し〉に向かって思念波を送った。

(〈竜殺し〉。俺だ、〈シグマ〉だ)

 ジョルジュは、遠のく意識の中で、〈シグマ〉の思念波を微かに感じ取りながら、気を失った。


竜殺しとジョルジュの戦いも、いよいよ大詰めです!!


今後とも宜しくお願いします^^


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