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戦士の宴  作者: 高橋 連
四章 後編 「シャンピニオン山の戦い 其之四」
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竜殺し

【竜殺し】


 〈竜殺し〉の体に凄まじい力が漲った。それはその身より溢れ出でて具現化し、周囲に凄まじい竜巻を起こして結界を張った。

 その結界は、真の姿を現す〈竜殺し〉を護るのではなく、まるで真の力を覚醒させた〈竜殺し〉を封じているかの様だった。それほど、真の姿に戻り覚醒した〈竜殺し〉の力は、神々しく強大なものであった。

(エドワードよ、久方ぶりのその体だが、すぐ行けるのか?)

 〈シータ〉の言葉に、〈竜殺し〉は珍しく真剣な声で答えた。

(加減が上手く出来ぬかもしれん……)

 〈シータ〉は〈竜殺し〉の言葉に、落ち着いて答えた。

(力の解放は俺の責任だ。お主は己の成すべき事を成せばよい。その身の力を使って何事も起こらぬはずもない……。承知の上じゃ……)

(まあ、お前に出来るだけ迷惑を掛けぬ様に努力させて頂こう)

 〈竜殺し〉はそう言うと、二機の〈騎操兵〉に思念波を送った。

『お前等は言っていたな。人の力で竜を殺せるわけがないと……』

 〈騎操兵〉二機は、恐怖で混乱しているのか、固まった様に動かなかった。〈竜殺し〉はさらに思念波を送った。

『その通りだ。竜を殺せるのは、同じ力を持つ竜だけだ。〈竜殺し〉の力、とくと味わえ!』

 〈竜殺し〉は周囲に吹き荒れる巨大な竜巻を打ち砕き、その身を現した。最強最大の伝説の生物。巨大な四肢と翼を持ち、何者をも打ち砕く牙と爪、最強の闘気と魔力、最高の叡智を兼ね備えたその生物を、人は恐怖と畏敬の念を込めて、竜と呼んでいた。

 〈竜殺し〉の姿を見た〈騎操兵〉のうち、大剣と盾を持った大型の〈騎操兵〉は恐怖に我を失い、大剣も盾も全てを投げ捨てて駆けだした。全ての魔力を込めたのか、脚部の魔導回路は凄まじい速度でその巨体を浮かせ走らせた。

(エドワードよ、逃がすのか?)

 〈シータ〉の問いに、〈竜殺し〉は新しい遊びを見つけた子供の様に、楽しげに答えた。

(ははっ、まさか!)

 〈騎操兵〉の倍以上もあるその巨体ながら、〈竜殺し〉の動きは素早かった。巨大な翼を一振り羽ばたかせると、凄まじい速度でその身を動かし、逃げ出した〈騎操兵〉の前面に舞い降りた。

『うわああぁぁぁぁぁっ!』

 大型の〈騎操兵〉から悲鳴が轟くと、〈竜殺し〉は残念そうに頭を振った。

(戦士とは少ないものだな……)

(お主相手に、それは酷であろう)

 〈シータ〉の言葉に、〈竜殺し〉は何かを思い出す様に答えた。

(いやいや、そうでもないぞ。あの黒髪の青年、ユィンとかいったか。あ奴なら正面から向かってくるであろう。たとえこの姿であろうともな)

 恐怖に呆けたのか、その動きを止めた大型の〈騎操兵〉に、〈竜殺し〉は右腕を軽く振り降ろした。

 複雑な魔術式と特殊な精錬方法によって、尋常ならざる強度に鍛え上げられた〈騎操兵〉の装甲が、砂糖菓子の如く崩れ潰れた。

『クロード!!』

 その時、もう一機の〈騎操兵〉から怒号が轟いた。そして、〈騎操兵〉の機体から恐るべき殺気を放ちながら、大地を駆け飛ぶ様に〈竜殺し〉に向かってきた。

(戦士がいたようだな)

 〈シータ〉の言葉に、〈竜殺し〉は首を振って答えた。

(まだだ。あいつが戦士たる者かどうか、俺が見極めてやろう!)

 〈竜殺し〉は周囲の空気をその大きな顎から吸い込むと、体内で闘気と魔力、それに生命力を混ぜ合わせて爆発させ、轟音と共に吹き放った。

 それは全てを燃やし尽くす紅蓮の炎となって、迫りくる〈騎操兵〉に襲い掛かった。


読んで下さって有難うございます^^

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