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戦士の宴  作者: 高橋 連
三章 後編 「シャンピニオン山の戦い 其之参」
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ユィン

【ユィン】


 ユィンは〈銀の槍〉が持つ槍を破壊する事に狙いを定め、転移魔法陣を駆使して執拗な攻撃を繰り返した。しかも、相手に意図を見抜かれようと狙われている武器でその攻撃を受けるしか為す術がない点が、この戦術の優れた点でもあった。

 その狙い通り、〈銀の槍〉の槍はユィンの度重なる強烈な斬撃を受けて小さな亀裂が入り、いつ砕け散ってもおかしくなかった。そして、ユィンの攻撃を更に受け続けた〈銀の槍〉の槍は、遂にその時を迎えた。

 硝子細工が粉々に砕け散る様な音と共に、〈銀の槍〉の手の中の槍は、粉々に砕け散って鈍い銀色に輝く風となって消え散った。

 ユィンは勝利を確信した。

 この時を待っていたユィンは全身の闘気を爆発させ、全身を黒い刃と化した渾身の一撃を繰り出した。

(ユィーーーン!!)

 その時、〈オメガ〉の叫び声がユィンの頭の中でこだました。

 その〈オメガ〉の声に反応したのか、ユィンの人ならざる感覚が反応したのか、ユィンは繰り出した渾身の一撃を止めようともがいたが、その勢いは止められるものではなかった。だが、それでもユィンはとっさに身を捻った。

 身を捻りながらユィンが目にしたものは、その手に持っていた槍が鈍い銀色の風となって消え散り、空手となったはずの〈銀の槍〉の手に、光輝く何かが握られ、それが己に向かって迫りくる光景だった。

 水袋が破れる様な音と共に、ユィンは血飛沫と腸をぶちまけた。

 ユィンはそれでもとっさに転移魔法陣を使い、〈銀の槍〉の間合いから逃れた。

(ユィン! 回復は俺が引き受ける。傷口だけ部分変化できるか?)

(なんとか……やって……みる……)

(できなきゃ死ぬぞ。あとは何とか時間を稼げ!)

(あぁ……、わかったよ……)

 ユィンは血反吐を吐き、致命傷を受けながらも〈銀の槍〉に話しかけた。

「槍は砕いたはず……だ……。はぁはぁ……ど、どうして……」

 致命傷を負ったユィンに、〈銀の槍〉は油断する事無く間合いを計りながらその問いに答えた。

「お前を貫いたのは、俺の闘気を具現化して創り出した闘気の槍さ」

「闘気を……具現化……、お前……、す……凄いな……」

「お前のその腕のやつ、闘気を具現化したものじゃないのか?」

「お……俺のは……、闘気じゃな……い……」

 腹を押さえ、痛みを堪えるようにユィンはうずくまった。それを見た〈銀の槍〉は、ゆっくりと歩を進めながらユィンに近づいてきた。

「その傷じゃ、いくらお前が〈オメガ〉の力で回復力を高めようと助かるまい。強敵へのせめてもの情けだ。楽にしてやろうか?」

 ユィンは、力を振り絞って、言葉を続けた。

「う……腕の武器……は……、骨なんだ、ほ……骨を変化させ、闘気を……みなぎ……らせ……硬質化させた……ものだ……」

 ユィンはさらに言葉を続けた。

「き……昨日のさ……魚は美味しかった……か……?」

「てめぇ、死にかけて気でも狂ったか?」

「あ……赤い……花がきれい……だ……ね……」

 〈銀の槍〉はユィンに止めを刺さんと、闘気を具現化させた槍を構えた。激闘を闘った強敵が、死を前にして無様を晒す事に耐えられぬ様であった。

「いま楽にしてやるぜ……」

 それでも、ユィンは意味の分からぬ言葉を喚き続けた。そして、〈銀の槍〉がその手に持つ闘気の槍を繰り出そうとした時、ユィンの瞳が怪しく光った。


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