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戦士の宴  作者: 高橋 連
三章 後編 「シャンピニオン山の戦い 其之参」
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ユィン

【ユィン】


(いきなり実戦で使うとは、お前は馬鹿なのか凄いのか……)

(老師の教えを無駄にはせん!)

 ユィンは先のイディオタとの戦いの際、イディオタが使った魔導戦闘の術を真似て使ったのだ。

 仕掛けは至って簡単だった。敵の周りに、定められた魔法陣から魔法陣へと瞬間移動する転移の術の魔法陣を無数に描き、その魔法陣を使って敵の周りを瞬間移動しながら死角から攻撃を繰り出す。だが、仕掛けは簡単でもそれを実行するのは至難の業であった。

 まず、敵と戦いながら気づかれずに転移の魔法陣を描かなければならなかったが、転移の魔法陣自体が簡単な魔法陣では無い上にそれらを複数用意しなくてはならない為、その作業は困難を極めた。また、それら魔法陣を稼動させる為には莫大な魔力と高度な魔導技術が必要であった。

 敵前で気付かれる事なく複雑な魔法陣を幾つも描き、更には膨大な魔力と転移魔法陣を制御しながらの近接戦闘など、通常の人間には不可能に近かった。それを〈銀の槍〉という強敵を前にしてユィンはやってのけたのだ。しかも、先の戦いで初見の術だというのにである。尋常ならざる魔導の才能という他はなかった。

 ユィンはその転移魔法陣を使って〈銀の槍〉の死角から襲い掛かったが、ユィンの攻撃は全て〈銀の槍〉に受けられ、未だに致命傷を与えるには至らなかった。その度に、異なる強い意志を宿した物質同士がぶつかり合う音が響き渡った。

(ユィン、なかなか考えているじゃないか)

(〈オメガ〉、お前俺を馬鹿にしてないか?)

(いやいや、本当に誉めているのさ。あの〈銀の槍〉相手にお前は良くやっているよ)

 〈オメガ〉と話しながらも、ユィンは魔力と転移魔法陣を制御しながら無数の魔法陣を駆け巡り、〈銀の槍〉の死角から必殺の一撃を打ち込んでいた。

 しかし、〈銀の槍〉もイディオタに認められてその弟子となっただけあって、その戦闘の勘は天才的と言ってよく、ユィンの攻撃を辛うじてだが全て受け凌いでいた。だが、それが精一杯で、避ける事や、ましてや反撃に転じる事まではできなかった。

(ユィンよ、ひとつだけ教えといてやろう……)

(もったいぶってなかなか教えてくれない〈オメガ〉にしては珍しいな)

(よく覚えておけ。好機こそ危機であり、危機こそ好機なのだと……)

(なんだ? 謎掛けの様だな。好機が危機って言うのは今のこの状態の事か? 俺の策に手抜かりがあると言う事か?)

 ユィンの問いかけに、〈オメガ〉は間を置かずすぐに答えた。

(いや、手抜かりは無い。良い策だ)

 ユィンは執拗に攻撃を繰り返した。そして、その攻撃を〈銀の槍〉は槍で受け続けた。

 これが永遠に続くかと思われるほど、ユィンは正確に無駄なく〈銀の槍〉を攻撃し、〈銀の槍〉はそれを銀槍で受け止めた続けた。二人の闘志がぶつかり合うかの如く、互いの得物ぶつかりあった。


読んで下さって有難うございます!


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