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戦士の宴  作者: 高橋 連
三章 後編 「シャンピニオン山の戦い 其之参」
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銀の槍

【銀の槍】


 〈銀の槍〉の怒りは頂点に達しようとしていた。

 ユィンと名乗る青年は、〈銀の槍〉がじじぃと呼ぶ老人を殺した上、その老人の伝言と言って攻め寄せる王国軍から逃げろと言う。

 〈銀の槍〉が知る老人は、誰よりも――〈銀の槍〉よりも――強く、誰よりも〈銀の槍〉を愛してくれた父の様な存在であった。

(じじぃがあんな若造に負けるわけがねぇ。きっと卑怯な手で殺られたに違いない。ましてや王国軍から逃げろなんて言うはずがねぇ……)

(〈銀の槍〉よ、すこし冷静になれ)

(うるせぇ! 〈ゼータ〉、少し黙ってろ!!)

 〈銀の槍〉に頭の中で話しかけていた〈ゼータ〉と呼ばれる者は、〈銀の槍〉の罵声に沈黙した。

 〈銀の槍〉が頭の中で〈ゼータ〉と話している間に、ユィンは背を向けて歩きだした。

「待ちやがれ! どこに行く気だ!」

 〈銀の槍〉は、爆発しそうな殺気を隠そうともせず、ユィンに向かって怒鳴り声をあげた。

 〈銀の槍〉から発する殺気に気づいたのか、ユィンはさりげなく間合いをはかる様に足を止め振り返った。

「〈竜殺し〉にも伝言を伝え、老師の部下達の退却を手伝いに行く……」

 ユインは〈銀の槍〉に、そう話し始め、〈オメガ〉を託された事を告げた。

(〈オメガ〉を託されただと!?)

(〈銀の槍〉よ、〈オメガ〉の名を知っているという事は、あの青年の話は本当だろう……)

(ぶっ殺してやるっ!!)

(ま、まてっ!)

 〈銀の槍〉は、〈ゼータ〉の制止も聞かず、闘気を爆発させて、ユィンの頭部めがけて銀槍を繰り出した。

 最初に攻撃を受け止められた時よりも激しい音が響き渡った。

 ユィンの両の手の武器は、先程よりも凶々しく強固な形に変化しており、体をも黒い鎧が覆いつくしていた。

(〈銀の槍〉、槍を引き戻せ!)

(離れやがらねぇんだよっ!)

 〈銀の槍〉の繰り出した銀槍はがっちりとユィンの左腕の武器に受けられたまま、僅かとも動かなかった。そして、ユィンは左腕をそのままに、銀槍の内に体を潜らせる様に重心を移して空いている右腕と共に体を捻り込んだ。右腕の武器の切っ先は、真っ直ぐに〈銀の槍〉の心の臓を狙っていた。

 またもや、静寂に包まれた山の中に、激しく何かがぶつかり合う音が鳴り響いた。

 〈銀の槍〉は寸での所で槍を戻し、ユィンの右腕の武器の一撃を受け止めると、そのまま後ろに退がって距離をあけた。

(おい、落ち着け!)

(あぁ……)

(奴をよく見ろ!)

〈銀の槍〉は〈ゼータ〉に言われ、落ち着きを取り戻すと共に〈ゼータ〉の言わんとする事を理解した。

(あの野郎が体に纏っているあれは……、闘気か魔力を具現化した物か?)

(ああ、恐らくな。だが只の闘気士ではあの様に異様な魔力を放つものを具現化できまい)

 〈銀の槍〉は拗ねたように〈ゼータ〉に言い返した。

(悪かったな。ただの闘気士で!)

 〈銀の槍〉の様に闘気を高め、その闘気を武器や体に漲らせて戦う戦士は闘気士と呼ばれていた。

(こんな時に詰まらん事を言うな。お前は只の闘気士ではなかろうが。それよりも、お前の銀槍で奴の闘気の鎧を貫けるか?)

 〈ゼータ〉の問いに、〈銀の槍〉は少年の様な笑みを浮かべ答えた。

(さっきの一撃であいつの腕の武器の強度は大体掴んだ。体に纏う鎧は腕の武器程の強度はあるまい。俺の闘気を込めれば、あんな鎧は薄紙と同じよ!)

(ならば、いくか……)

(応っ!!)

 〈銀の槍〉は〈ゼータ〉に威勢良く答えると、全身に闘気を漲らせ大地を蹴り飛んだ。


宜しくお願い致します^-^


明日は14時にアップ予定です!


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