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戦士の宴  作者: 高橋 連
二章 後編 「シャンピニオン山の戦い 其之弐」
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ユィン

【ユィン】


 ユィンは立ち上がれるまで回復すると、ふらつく足で歩きながら、イディオタの描いた黒い球の術の魔法陣を見にいった。

「おい、ユィンよ。無理をするな。もう少し力を注いでやるから、回復に専念せい」

 イディオタの言葉に、ユィンは頭を下げながら答えた。

「老師、有り難うございます。かなり回復しましたのでもう大丈夫です。これ以上は老師の命に係わります故。それに、あの術の魔法陣だけはこの眼で見ておきたいので……」

 ユィンはそう言うと、ふらつきながら魔法陣の所まで歩いていった。そして、その術式を解析し始めた。

(これは凄い……。しかし、読めない文字も多いな。この文字は一体……)

 ユィンが思案に耽っていると、右腕に高熱を感じ、次いで激痛が走った。

「ぐあっ!」

 右腕を見ると、何か高熱の槍で貫かれたような傷がついていた。

「ユィン! 逃げろ!」

 イディオタの叫び声に気づいて辺りを見ると、ユィンの後方から陽光を反射して煌めく筒の様な物を持った王国軍の兵士達が、駆けながらユィンを狙って魔力の塊を発射していた。

「ぐうぅ……」

 ユィンは立ち上がって逃げようとしたが、右腕の傷と、回復が十分でなかったせいで、立ち上がる事さえ出来なかった。

王国軍兵士達は、ユィンをその手に持つ筒の射程に捉えたのか、片膝をついて狙いを定め、一斉に筒から魔力の塊を発射してきた。

 ユィンは己の愚かさを恥じ、後悔した。

 イディオタの言葉を聞かずに己の体力を過信して回復に専念せず、更には魔法陣に夢中となり、殺気を発する兵士が近づく事にも気づかないとは……。そして、その愚かさによって今、その命を失おうとは……。

「ユィン!」

 イディオタの叫びがユィンの耳に聞こえた。

(老師、すいません……。弟子ユィン、先に逝く不孝をお許しください……)

 王国軍の兵士達の持つ筒の様な物から一斉に発射された魔力の塊は、狙い違わずユィンへと真っ直ぐ放たれた。

高密度に練られた魔力の塊は、肉を貫き、骨を絶ち、無数の穴を体に穿ち、そこから大量の血を噴き出させた。

 ユィンは大量の血に塗れながら、己の愚かさを呪った。


12月22日まで、毎日21時更新を致します。

23~26日まではお休みして、27日より三章がスタートします!!

宜しくお願い致します^-^

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