イディオタ
【イディオタ】
黒い球を黒い眼へと変化させ、ユィンの力を吸い取らせていたイディオタに〈アルファ〉が警告した。
(おい、あんまり吸わせると、小僧の命まで吸い尽くしてしまうぞ!)
(小僧の変化が解けるまでは吸収させるのじゃ)
やがて黒い眼はユィンの体からあらゆる力を吸い取り、ユィンは遂にその変化までも解ける程に力を吸収された。
(変化が解けたわい!)
(はやく術を解け! 小僧の奴ぐったりして動かなくなっているぞ!)
イディオタは印を結んで黒い眼を消滅させると、飛ぶ様に駆けてユィンの元へと急いだ。
ユィンの元に着くと、イディオタは急いでユィンの体を抱き起こした。
(げげっ! 心の臓が止まっとるわい!)
(馬鹿野郎! だからあれほど言ったんだ! 急いで蘇生させろ!)
イディオタは己の生命力をユィンに注ぎ込みながら、魔力と闘気を混ぜ合わせたものをユィンの心の臓へと直接送り込み、その衝撃で蘇生させようとした。
イディオタの必死の蘇生と、ユィンの強力な生命力のおかげで、ユィンは無事息を吹き返した。
「おお! ユィン、すまなんだ。術が効き過ぎたようじゃ。大丈夫か?」
イディオタに抱きかかえられながら、ユィンはゆっくりと頷いた。
「老師の……術……は、すご……い……です……」
死にかけてまで己の術を誉めるユィンに、愛おしさを感じたイディオタは涙を流して抱きしめた。
「お主は最高の弟子じゃよ!」
(おい、そろそろ放してやれよ)
〈アルファ〉の言葉に、イディオタはうるさそうに答えた。
(なんでじゃ! 麗しい師弟愛に嫉妬しとるんじゃろ!)
〈アルファ〉は言うか言うまいか悩んだようだったが、ユィンの様子を哀れに思い、言葉を続けた。
(お前の大量の涎と鼻水を顔面に受けた最高の弟子が、酷く辛そうなんでな……)
そう言われてイディオタがユィンを見ると、イディオタの泣き顔から垂れた大量の涎と鼻水をその顔に受け、苦しそうな表情であった。
(汚いのぅ……)
(お前の涎と鼻水だろうが! さっさと拭いてやれ!)
(そんなに怒らなくてもええじゃろうが……)
イディオタはユィンの顔を手拭いで拭いてやると、横にならせて、ユィンとの闘いで激しく消耗しているにも拘らず、己の生命力のみならず魔力と闘気も注ぎ込んでやった。
ユィンはやっと一息つき、自分で立てるまでに回復した。
12月22日まで、毎日21時更新を致します。
23~26日まではお休みして、27日より三章がスタートします!!
宜しくお願い致します^-^