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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第五部:かつて交わした約束は曖昧なままで心に残る<王国編>
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第2章あなたの名前を聞かせてpart3

今回ちょっと短め

「楽しかったか?」

「・・・・・まあ」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「色々予想もしないトラブルがあったんで、、、それを考慮していただけると・・・」

「何だって?」

「すいませんでした、完全に僕のせいです・・・」


よっぽど心配だったのか二、三時間後には両家によってあっさり捕まった。

てか、冴突師恩の執り成しがなかったら誘拐的な扱いされていたかもしれない。

朝日奈さんのせいでつい変なテンションになっていたがよく考えればお嬢様を街連れ回していいわけがなかった、桜反省。


えらく丁寧に(それが無性に怖かった・・・)それぞれ両家の使用人たちに家へと強制送還された。

そして俺はすぐさま如峰月水仙の書室へと呼び出された。

・・・・叱られるかと思いきや何か書にいそしんでるんですけど。

なんか放置なんですけど。


「ちなみにどこに行ったんだ?」

「喫茶に、服屋、、、その後に映画・・・です。」

「・・・・・そうか」


正座する俺の前ですらすらと手元の紙の内容を筆で別の紙に書き写してる。

文字はとても達筆なのに筆を持つ手は色白で壮年の男の手とは思えない。

目は切れ長で眉間にしわをよく寄せるのか濃い跡が残っている。

一方笑うことは殆どないのだろう。

ほうれい線がない代わりに歳を取れば大抵の人には出来るはずの目元口元に笑いしわは全く見えなかった。

桔梗さんやお父さんのお父さんなんだなと思うと同時に、どちらかと言うとお母さん似の俺とは似てないなと思った。


「これか?」


俺に無言で正座させるほどの怒ってなさそうな声と態度なのに、そうされる気迫を常に放ったまま俺の視線が自らの手元に向いているのに気付くと彼は机から写し取っていた元の紙を俺に手渡してきた。

内容は・・・・・皐江月家への謝罪状だった。


「皐江月?」

「・・・・・・・・何故疑問形なんだ?」

「いや、、、確か冴突家でしょ?」

「そうだったか?」

「「・・・・・・・・・・」」


無駄に長い沈黙が続く。

何か話そうと話題を探したが如峰月空木が俺を訪ねてきていたことぐらいしか思いつかなかった。

・・・・・・家出中らしいし、そっとしておいてやろう。

無言で黙りあう数瞬の後、先に口を開いたのは水仙の方だった。


「ま、冴突(?)のお嬢さんは楽しんでくれていたようだしこんなものはいらないか」

「えぇ?」


この気まずい状況はなんだったんだよ・・・・水仙は延々と書き綴られた紙をくちゃくちゃに丸めるとゴミ箱に捨てた。


「「・・・・・・・・・」」

「えと、、、、、まだ空木君役必要ですか?」

「・・・・・いきなり頼んで悪かったな」


水仙は俺の質問に答えずに封筒を裾から取り出すと俺に手渡してきた。

・・・・・分厚いんですけど

凄く分厚いんですけど

恐らく封筒の中に入っているのはバイト代だと思うが、、、、、千円札か図書券ですよね?

もし万札だとしたらやっべえ額になりそうなんだけど?


「今は開けるなよ?」

「・・・はあ」


言われなくても怖いから開けねえよ・・・

封筒をスーツの裏ポケットに突っ込むと、ちょうど桔梗さんが入って来た。


「失礼します・・・?」

「ああ」


桔梗さんは少し訝しげな表情で一礼すると俺の隣に座った。


「そろそろ帰ろうかと思います」

「そうか」

「・・・失礼します」


帰る挨拶を済ませ二人揃って家を出る。

車に乗るや否や桔梗さんは鬼のような形相で俺のすねをガンガン足蹴にし始めた・・・って痛゛い゛!


「痛いよ、桔梗さん!」

「話をややこしくしやがった戦犯が何言ってんのよ!!!」

「一応、空木君じゃないようにばれないで済んだでしょ!?」

「これから空木は『見合い相手の中学生の女の子を平気で連れ回すチャラ男』って噂されるけど?」

「・・・・え、何だって?」

「・・・・・・・・・・フン!フン!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!」


ヒールで蹴らないで、足に穴が開く!

いいじゃん!

どうせ会ったこともない従兄なんだし!

完全に俺の上位互換なんだから少しぐらい苦労ってもんを知った方がいいじゃん!


如峰月の女は皆、脚力が強いようだ・・・・絶対青痣になってるだろうと思える程念入りに蹴られた。

桔梗さんはかなり疲れているのか珍しく俺の前で電子パイプをふかしている。

初めて会ったあの時から彼女は俺達兄妹の前でタバコは吸わなくなったので珍しいと思った。

自分の決めたルールを破らないようギリギリのラインとしての電子パイプだと思うが、、、彼女は普段はこう言った妥協を許さない。

余程疲れているのだろう・・・肺胞の隅々まで届くほど大きく吸って、体全身の空気を吐き出すように長く大きく煙を吐き出した。


「ふう、、、、アンタも吸う?未成年でも吸える嗜好品よ?」

「いや、、、、いいです」

「レッドブル味らしいけど・・・悪くないのに」


俺を蹴って憤りを晴らしたらしい副市長としての適性に疑問を感じるさるお方は疲労困憊と言った様子で疲労と共に紫煙を吐き出す。

そんな様子を見てると凄く自分のしたことが迷惑をかけてたことを痛感する。


「・・・すんません、勝手して」

「今更謝ってもねぇ・・・皐江月家の執り成し大変だったし、朝日奈家のお嬢さんまで騒ぎ起こしてるとかで何かそっちまで如峰月家で何とかしてくださいとか言われるしで・・・謝って済むもん?」

「ううっ・・・・」

「まあ、、、、結果的にはいい方向に繋がるのはやっぱアイツの血なのかな?」

「え、まじっすか?」

「向こうのお嬢さんが結構乗り気らしくてね・・・あんた中学生誑し込むとかやるわね」

「人聞き悪いこと言わんで下さい!」

「偽名使って人に会ってる時点でどうかと思うけど?」

「・・・・・・・・はあ」


訴えれば確実に俺が勝てると思う。

でも、、、凄く疲れそうだ。

俺が黙りこくったのを見て満足げな顔をした桔梗さんは『ま』っと纏めらしきものに入った。


「空木もそろそろ持ち金尽きて帰ってくるだろうし、、、そしたらアンタの作った空木像を再現させるだけね。後は向こうがやるでしょ・・・お疲れ様」

「あ、お疲れ様っす」


お互い頭を下げ合って顔を見合わせる。

桔梗さんはそういえば・・・と何か聞きたいことがあるのか迷っている顔をしていた。


「聞きたいことがあるなら遠慮しないでいいっすよ?」

「・・・・・・じゃあ、聞いていい?」

「うっす」

「最初の時と見合い終わりの時でアンタの様子が全然変わってた・・・・それは何で?」

「・・・・・・・恨みつらみをぶつけるよりも今はその人を見るべきかなって」

「・・・・・・・・・・やっぱりアイツの血かしら?」

「外見似てないのに?」

「うっさい」


桔梗さんはまたガシッと脚を思いっきり蹴って来た。

そして余程疲れていたのか大きく欠伸をすると寝ると宣言して頭を垂れた。

すぐさま聞こえる規則正しい寝息・・・・流石時間キチ。

寝るまでのわずかな時間まで惜しいのか?


「・・・今更ですけど桔梗さんがいてくれたからってのもあるんすけどね?」


自分の間違いに気づくきっかけを与えてくれた・・・というかまた同じ間違いを犯さないように気づかせてくれたのは俺の主人公朝日奈楓だ。

でも、、、、桔梗さんが優しくなかったら

桔梗さんが育った家じゃなかったら・・・・・俺は如峰月家を本気で嫌っていただろう。


「・・・・・・・ぶふっ」

「・・・・・寝てますよね?」


桔梗さんが噴き出したような音を出した。

やだ、、、、聞こえてなかったわよね?

桜、恥ずかしい。





「朝顔、、、ちょっとだけ大事な話だ」

「・・・・・・ん」


もうこの時期になると中学三年生の人間が家庭にいる家はピリピリするものだ。

だがうちの場合、朝顔は優秀なのでそれほど心配はない。

既にスポーツ推薦で鷺ノ宮に進路が決まっている。

推薦で進路が決まったせいか高校から大量の課題が出されるわ、高校陸上部の方に顔を出さなきゃいけないわで推薦だから楽と言うわけでもないが、、、家から帰って来た時彼女は暇そうだった。


「何?」


桔梗さんは市役所に直接戻ったので俺だけ帰って来た。

桔梗さんはどうしたとか、家を空けてどこに行ってたとか、そもそもお帰りなさいとも言わず彼女は俺と向かい合って座った。


「如峰月家に行ってきた・・・・」

「そ・・・・」


うちの妹は正直ドライで冷たい・・・・普段俺に見せてる顔でそう答えた。

結構な覚悟で言ったつもりなのにあっさりスルーされた。

桜、悲しい。


「何か空木っていう従兄がいるらしくてな、、、、そいつの代わりに見合い出てくれって」

「・・・・うん」


でも、それなりに興味はあるのだろう。

彼女はきちんと相槌を打ってくれた。


「『俺達』の家族とはやっぱり思えないけど、、、、『お父さん』の家族は悪い人たちじゃなかったよ」

「そっか、、、、」

「今でも許せないし、、、、朝顔と絶対に会わせたくないけど、、、、、ガッツリ嫌うのは何か違うとは思えたんだ、、、、、甘いかな?」

「私は会ってないからどうとも・・・・」

「そりゃそうか、、、、、じゃあ次は会いに行くか?」

「やだ」


そこだけはハッキリと彼女は口にした。

桔梗さんの頼みでも彼女はそう口にするだろう。

何となくそう思った。


「わかった、、、、つまんない話だったが朝顔には聞いておいてほしかったんでな・・・ありがと」

「・・・・・・コーヒーでも淹れようか?」


ごめん、コーヒー飲めないの知ってるよね?

そう言いたかったがこれが彼女の俺に出せる最大限の優しさだろうから・・・

丁重にお断りした、、、、そしたら拗ねた。

なんでやねん。





こたつで目が覚めた。

右目に鈍痛が奔る。

椿がドタドタと階段を駆け下りてきてリビングに飛び込んできた。


「兄様、マスターは!?」

「落ち着けよ、、、、ぐっ!」

「鋭敏化!?」


椿がすぐに俺の様子を悟ったのか体を抱きしめてくる。

随分慣れてきたな俺も椿も・・・・・

抑えた右目から痛みが消えていき、、、、息の荒れも収まっていく。


「もう、、、大丈夫だ」

「大丈夫って顔じゃないですよ・・・・」

「あまりうるさくすると朝顔たちが起きるから」

「・・・・あ」


痛みで涙が零れ落ちる。

その目でも今が深夜であることは分かる。

ツバキに手渡されたティッシュで丁寧に涙を拭う・・・・


「兄様、、、」

「わるい、ちょっと待ってくれ」


台所に移動し水を蛇口から直接飲んだ。

そしてそのまま顔と頭も冷やしてしまう。

・・・・・・ようやく人心地だ。


「サンキュ」


椿は本当にメイドみたいだな・・・・俺が顔を上げるとすぐさまタオルを手渡してくる。

流石『補助する鬼才≪サポート・ギーニアス≫』

まあ、、、学生服もこんなことさせるのは想定してなかっただろうが・・・


「そんなにどたどた走って、伊月は起きなかったのか?」

「そういえば、、、家にいませんでした」

「夜のロードワークか?あいつの剣なら心配ないかもしれんが一言言っとかねえとな・・・・」

「それよりも兄様・・・・」

「ああ、、、、大事には至ってないが、、、、気が進まないんだよなあ」


サクラは死んでない。

ツバキと二人で造り出したあの変な黒球がサクラの全身を呑み込む前に地盤が先に崩れた。

そのお蔭か黒球に呑みこまれる前に崖下というか、、、たまたま出来たクレバス的な場所に入り込め二人とも助かった。

とはいえ、、、、俺の記憶はそこまでだ。

そこでサクラの意識が完全にシャットされたのでこっちに戻らざるを得なかったのだ。


「黒球に巻き込まれずに済んだが、意識を失ったまま殺し屋(アリア)と二人きりだし、魔力はあの黒球のせいでほぼ枯渇してるから冬山を生き残れるかの保障もないし・・・・」

「道理で王国に戻ってきていないと・・・・」

「てか、あの魔術なんなんだ?」


あの魔術形態は俺ですら初めて見る。

あんなに静かなのにあそこまで怖いと思ったのは初めてだ。

椿は俺の質問を答えにくいのか目を逸らし唇を嚙む。


「兄様とマスターがバイパスを切っていた時がありましたよね?」

「ああ、、、、結構あったな」


空き巣やらなんやらで結構俺への影響を気にした時期があって俺の意識を完全に落としていた時期があった。

そうか、、、あの時に開発してたのか。


「『獄炎将軍』の鎖を断ち切る奥の手として開発したんですけど殺傷能力が高すぎて禁じ手に・・・・それに一度試した時は森が一つ粉々になりました・・・・制御も完全に出来てないのです。」

「『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』のリスクって本能解放だけじゃないのな・・・」

「今まではあんなに無謀じゃなかったのに・・・・」


思考まで戦闘特化にさせる『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』

感覚バイパスをつないでいた俺だからサクラの気持ちを理解できる。

アレは堪え切れるものじゃない・・・・とてもじゃないが人間に乗りこなせる技じゃない。


「あの暴走がまた起きるようなら・・・・二度と使わせるな」

「はい、、、、、」


つい最近まで彼女は自分の存在価値を俺達に使われることで見出していた。

でも今は違う。

自分のしたいことをすることで自分の存在価値を見出せるようになっている。

兄としてそう求めたし妹として彼女もそれを首肯した。

だからこそ、、、、彼女はサクラの無茶を許さない。


「取り敢えず救援を・・・・生きてればの話だが。」

「はい、既にシノンさん達が向かってます」

「分かった、眠れないかもしれないがもう寝とけ・・・・」

「はい、、、、おやすみなさい。」


椿が再び寝室へと戻って行った。

・・・・その後ろ姿に声をかけるべきか迷った。

言うべきか迷った。

そして結局言えなかった。


完全にこっちへ戻される前に感覚バイパスで伝わったことがあった。

彼の体を流れる暴走魔力

それは彼に力を与える代わりに二つのリスクを課している。


一つ目は資格なき力を引き出した時二度と魔術を使えなくなり体を蝕まれるリスク

二つ目は他の魔力を跳ね除ける性質上治癒魔術が利かなくなる点

例外ともいえる魔法陣級治癒魔術も細胞操作も完全に失われたものを復元する程までには至らない。

何が言いたいかと言うと、、、、、彼の右目は『もう二度と』復元できない。

それを今知っているのは俺と、、、、意識を失った彼の元にいる彼女だけだろう。


「・・・・・寝よう」


取り敢えず寝なきゃいけない。

じゃなきゃ彼がどうなっているかは分からないのだから

・・・・・・・・生きててくれよ

次話から主人公が絡まない話を一章詰め込みます。

個人的にそういうのはつまらないと思っていますが必要なので仕方ない・・・

勿論一章分飛ばしても話は通じるようにしておきますので温かく見守って下さい笑

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