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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第五部:かつて交わした約束は曖昧なままで心に残る<王国編>
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第2章あなたの名前を聞かせてpart2

胸糞悪いあの邂逅の次の日。

見合いをするためにわざわざ学校を休むことになった。

桔梗さんも同じ・・・というか仕事を今日に向けて少しずつ片づけていたらしい。

それだけ準備できてたのに何故俺の方に連絡が無かったのか・・・遺憾であります。


適当な部屋に案内され適当に雑魚寝して

適当に起きて適当に飯をかっ喰らって

適当に着替えて適当に髪を整えて

適当に車に乗って適当に会場に来て

そして誰の為かも既に分からないし何のためにやってるかもわからない見合いだ。


目の前の人間の顔が良く見えない。

視界には確実に入っているはずなのに記憶に入って来ない。

明らかにおかしい


なのに口だけはぺらぺらと動いていた。

表情だけは適度に動いていた。

態度だけは限りなく会ったこともない如峰月空木を体現できていた。


「そろそろ二人で散歩でもして来たらどうかしら空木?」

「詩音さんがそれでよろしければ」


桔梗さんも一人で問題ないと判断したのか華のある外面の良い笑顔で俺に話を振って来た。

正直見合いと言っても基本的には付添人同士が話し合うのが普通だから話すことは少ない。

よって見合い相手の女の子のことも付添人の父親らしき人とも内容の無いことをたまに話すくらいだ。

正直頭に全然入って来ないが、数分前のことが既に曖昧になってるんだから余程どうでもいい事を話しているのだろう。


「ええ、問題ありません。なあ詩音。」

「はい」


父親らしき人が首肯し、娘がそれを事後承諾する。

パワー関係がよく分かる。

・・・・・・どこの家もそういうもんなのな。




「「・・・・・・・・・」」


雪が積もれば景色は大体同じになる。

なのに金がかかればそれは変わる。

雪の積もり方、雪が溶ける時間・・・白と緑と枯

これらの組み合わせが手間暇と時間で芸術に変わる。


だからと言って話が盛り上がるわけはなかった。


・・・・・だろうなあ。

伊月とだったらスポーツ系

優子だったら女子が好きそうな話

朝日奈さんなら勝手に話してくれる

だが、見合い相手の子の少女が何に興味を持つのか分からん、興味もねえし。

そもそも片方は上流社会なのに対してこっちは下流だぞ・・・・本当に如峰月家は誤魔化せるとでも思ってたのか?



中庭を窓一枚隔てて眺められる暖房がよく効いた廊下

そして中庭をじっくり眺められるようにと備え付けられたソファに見合い相手の少女と座っていた。

端と端にそれぞれ座って

・・・・あ、そもそも話が出来る状態じゃなかったわ。


「「・・・・・・・・・」」


よく考えたら話回してたの主に桔梗さんと付添人でこの女の子と直で話してないしな。

付添人同士の見合いかよとツッコもうかと思ったぜ・・・

家出中の空木君がどうしたいかは知らんが、今回の見合いでいい印象植え付けとかないとな。

やる気は起きんが・・・・いってみようか。


「散歩つったってさっき会ったばかりの二人で盛り上がるとでも思ってんかね・・・なあ?」

「・・・・・・口調が」

「!?」


いきなり何やってんだ、俺ええええぇぇッ!?

監視者(ききょうさん)がいない+長い黄昏時間のせいで気が抜けてた・・・

俺は何事もなかったかのように景色を眺めた。

ああ、、、雪景色・・・とてもきれいだ。

ただ隣の少女は何故か急に近づいて来て裾をくいくい引いてきた。

体が少々揺れる程の力で。


「口調変わってませんでした?」

「・・・・・・・・」

「ねえ、ねえ?」

「・・・・・・・・」

「ねえってば」

「ああ、もう認めてやるよ!こっちが素なんだよ!」


空木君ごめん、、、でも一番悪いのは家出した君だ。

今日から如峰月空木は『人のいないところでは粗暴な口調でしゃべる外面の良いクソ野郎』になってしまうが俺は謝らん!

・・・・・・・やっぱ謝ろうかな?

さっきまでは借りてきた猫のように大人しかったくせに余程俺が失敗したのが面白かったのか優越感たっぷりの気配を伴って彼女は俺に話しかけてくる。


「空木さんって普段から外面いいんですか?」

「ああ、外面だけで生きてるような男なんでね」

「へえ、、、私もお父様とかには口調とか注意されるからあまり喋らないようにしてるんです」

「いやあ、、、単純にそれはお父様ぁ?が嫌いなだけだろ・・・てかお父様ってあの付添人?」

「自己紹介・・・・しましたよね?」

「・・・・・・・正直君の名前だけ覚えてりゃいいかなって思ってたんでね。」

「ちなみに私の名前は?」

「・・・・・・・・サ・エ・ツ・キ・シ・オ・ン」

「うっわ、ぎりぎり・・・・漢字の方は覚えてない感がすごく伝わってくる」


すんごい呆れた声で反応された・・・・失礼な『冴突師恩』だろ?

覚えてるって・・・・・多分。

未だに顔は頭に入って来ないが段々喋ってる彼女の声が凄くアニメ声と言うか妙に特徴的であることに気付いた。

テンションが低いときはそれほど気にならないが、楽しそうに話すときの声はとても高いオクターブになる・・・なのに不思議と心地よかった。

眠るときに耳で響けば心地よさを感じると思えるほどいい声だった。


「ちなみに私がいくつかさっきの話の中でしゃべったんですけど覚えてますよね、当然」


俺と同じく猫被ってたようでそのせいで気付かなかったんだろう。

見合いってお互いのことを知るための機会のはずなのに・・・まったく。

・・・・・・・・てか、早速俺の鳩尾を的確に抉る質問を頂いた。

顔は全く頭に入って来なくても体格ぐらいは頭にぼんやりと入ってくる。


着物を着ているが体格は椿と大きく変わらない。

間違いなく俺と同年代・・・ってか見合いなんだから当たり前か。

となると年上・同級生か年下かだな・・・・・・・

まあ、年上だったらもう少し落ち着いてるだろうし同級生だったら言わずもがな。


「・・・・・・・・・15?」

「残念、14です。」

「・・・・・・・ということは中二か」

「中三です・・・・・本当に適当に話してたんですね、さっきのお話のときは」


・・・・・・・顔中を脂汗が覆う。

やっべ、、、、上手くいってたつもりだがもうアラ出てるわ。

しかも空木君に適当とかいうマイナスイメージがついてしまった。

やっべえ・・・・今更誤魔化す訳にもいかんしな。

こうなりゃこれ以上悪いイメージを持たれないように動いてくしかねえ。


「ああ、認めるさ!男らしく認めてやりゃあ!正直大人共の見合いかよって考えちまうぐらい大人たちが喋ってたから殆ど話覚えてないよ!聞き流してたよ!」

「ま、年齢の話はしてなかったんですけど」


ナンダト?


「てめぇ、、、カマかけやがったな・・・・」

「お互い様ですよね?」


そう言いながら彼女は持っていた巾着袋から筆ペンを取り出した。


「脳味噌足りないみたいだし、こうしときましょう?」

「ええ、拒否権なし?」


運動をあまりしない傷一つない指だった。

妙な柔らかさをもった指が汗ばんだ俺の左手をとる。

そしてくすぐったい感触がしばらく続く。

手を拘束されてるので顔やら髪やらが俺のパーソナルスペースを遠慮なく侵す。

少しでも離れようと顔をそむけているが・・・どうやら筆ペンでいろいろ書きまくっているようだ。


「・・・・・ 耳なし芳一の状態じゃねえか」

「こうすれば忘れないでしょう?」

「だからって・・・」


ようやく解放されたと確認すれば、まるで出来の悪い政治家のカンペじゃないか。

名前から年齢・・・挙句の果てにはスリーサイズまで。

とんでもない量の文字が手の甲だけでは書き切れず手の平にまで・・・

てか、、、、


「その体格でDカップは嘘だろ」

「・・・ホントです」

「いやいやいや、、、、着物である程度縛ってること計算しても・・・無理っしょ」

「お母様はDなので私も将来的にはそうなります!」

「ああ、、、そういう言い方する同級生一人いたわ・・・」


胸板少女(あさひな)さんも中学時代同じこと言ってたな・・・

朝日奈さんの母親の巨乳遺伝子を受け継げなかったみたいで中学時代はまだ発展途上だしぃ的な言い方をよく言っていた。

最近は貶される前に潰すが・・・・彼女も気付いたんだろう

人間に三次性徴はないと。


「・・・んまあ、中学生ならまだ成長すっだろ」

「なんですかその可哀想な者を見る目は」

「いやあ、例え間違っていても気付かないふりしてあげた方がいいときもあるし」

「誰か間違い教えました?」


声で語っていた。

下手なことを言えば・・・・・・と。

年下にそういう感じされても残念ながら怖くない。

スルーだな、スルー。


「いや、このおびただしい数の文字列殆ど間違いだらけじゃないか。まず名前の漢字も違うし」

「いや、、、そこは合ってますよ!?」

「え、『冴突師恩』だろ?」

「『皐江月詩音』です」

「「・・・・・・・・」」

「トイレ」

「ちょっと!?」


相当見え張りな彼女との見解の違いを正し始めれば間違いなく、俺じゃなく会ったこともない空木君に被害が出るのでいったん落ち着こう。

食い下がろうとする彼女だが、年下しかも武道経験ナシなら簡単に引きはがせる。

するっと引きはがし、ふわっと椅子に座らせる。

・・・・いやあ、椿やら伊月やら朝顔とかと比べると楽だわあ。

何があったのかとポカンとしているうちに逃げ出した。





「取れねえ」


水で何度も消し流そうとこすったが筆ペンで書いただけのはずが全然取れない。

細く綺麗な流れる筆文字で描かれたプロフィールを見てため息をつきながら待たせた彼女を拾いに戻る道の途中だ。


「てか、俺って一体・・・」


最初の一言目からボロだすわ、年下の女の子に手玉に取られるわ・・・

挙句の果てには冴突師恩は意外とお嬢様じゃないし。

ま、、、、字は流石に綺麗だが。

伊月みたいななんちゃってお嬢様ではないようだ。

話す口調は俺に近いが仕草の一つ一つから育ちの良さが伺える。


「やっぱ違うな」


育ちはやはり一つの世界だ。

ここは異世界じゃなく現実。

物語みたいにシンデレラが必ず王子と結婚できるわけじゃない。

それ相応の『住む世界』の『釣り合い』がいるんだ。


「・・・てか、迷った?」


ただでさえ縁のない一流ホテル、しかも無駄に広くて階が多い。

見合い相手を待たせているはずの場所から遠く離れた場所に気づけばいた。

フロントマンに聞こうにもどこにいるんだか

多分現在地はイベントホールエリアかと思うんだが、フロントマンの姿は見えない。

やってるイベントは結婚式のせいかこの階のホテルスタッフは皆、ホール内にいるのかも。

道に迷ったと無関係の俺が会場内に行く訳にも行かないしな・・・


「如峰月君?」

「・・・」


朝日奈さんの声がした。

どうやらかなり疲れているようだ。

だって今日学校なのに何でここに彼女がいる?


ただ1つ言わせてもらうとすれば

俺が彼女の声を聞きまちがえるはずがない。

俺は今、、、ピンチだな。


振り向けば朝日奈楓がいた・・・・・俺と同じく学校を休んでいたんだろう、朝日奈楓がいた。

ぶわっと暖かい気持ちが全身を巡りその後頭からつま先に掛けて冷たいものが巡った。

・・・・・・何でここにいる!?


「やっぱり如峰月君だ!学校休んでどうしてここにいるの?しかもスーツなんて着て!」

「・・・」


眩しいばかりの笑顔

そして壁といわんばかりの胸板

そのせいか、露出の少ないドレスを纏っていた。

・・・なのに彼女が非日常の姿をしているように見え、そんな姿を公然に晒して欲しくないと思ってしまった。


「・・・」


それはともかく状況を整理しよう

彼女の家、朝日奈家は朝日奈さんが小学校の頃に堀り当てた石油のやり繰りで成り上がったプチセレブだ。

当然知り合いの結婚式として、こういった一流ホテルに招かれることもあるだろう。

彼女にとっては普通の日常。


だが、、、俺にとっては『非日常』だ。

如峰月と本来縁のない如峰月桜が何故こんな場違いの所にいるのか

それを説明すれば今自分が見合いしてることまで話さなきゃいけない。


「もしかして、、、朝日奈楓さんですか?」

「え、、、何言ってんの?」


引き気味の彼女に向けて普段なら絶対したくないもう俺幸せです的な満面の笑みを浮かべる。

そして出来る限り空木イメージで格好つけて一礼した。


彼女に出来れば嘘はつきたくない。

彼女に見合いしてたことを知って欲しくない。

だから嘘も本当も混ぜることにした。


「初めまして、僕の名前は如峰月空木。桜から話は聞いてますよ」

「・・・・・・・いやいやいや!何言ってんの如峰月君!?」


ちっ、、、流石幼馴染。

そう簡単にはごまかせないか・・・・だが俺は知っている。

彼女が主人公であることを。


「よく似てるでしょう?従兄なんですよ。以後よろしく、綺麗なお嬢さん。」

「・・・・・・・・確かに如峰月君に似てるかもしれない」


主人公は騙されやすいんだ。

ちょろい彼女は半分信じかけている。


よし、絶対に俺ではしないことを積み重ねて更に確証を与えてしまおう。

俺は左手で彼女の手を・・・取ろうとして気持ち悪いことになってるのに気付いたから右手で優しく握り彼女がその行動に反応する前に・・・・口づけを落とす。


「うひゃあああああっ!?」

「・・・ふふっ」


ぞわっと全身に鳥肌を立てた朝日奈さんがとても運動できる服装ではないにも関わらず敏捷な動きで俺から飛びずさる。

・・・うん、俺も如峰月桜としてドン引きしている。

空木イメージに引きずられすぎてぞわって今更なってる。


まあ正直唇は、しあわせになってるが。

凄い滑らかでまるで唇に唇を落としたかと思うほどだった・・・・・・

流石朝日奈さん!


「今っ、今・・・・ほほほ如峰月君の顔で何してくれてるんですか!?」

「いえ、、、桜からとても可愛らしいお友達がいると良く写真を見せられてはいたのですが実際会ってみるとあまりに可愛らしく我慢できず・・・・」

「自供!?てか、桜ちゃん私の写真持ち歩いてるの!?」


余程ぞわってしたのか唇を落とされた小さな手のひらをもう片方の手で押さえ俺から半身を隠しふるふる震えている。

・・・・・・・如峰月空木を名乗っていて良かった。

普段の俺がこんなことしたら今頃『優子と葵の制裁☆タイム!』である。


ん?

よく考えたらセクハラしても嫌われるのは空木君じゃないか!

セクハラし放題だ!

場所と時期もいい感じだから朝日奈親衛隊もいないし!


「お気に障ったのなら手を私に拭わせていただけますか?」

「・・・・ひあっ!?」


この際セクハラしまくろうとハンケチーフを片手に彼女の優しい手触りの手を取る。

異性に触られるのが余程恥ずかしいのか緊張し強張る彼女に優しく微笑む。


「落ち着いて、、、すぐ済みます。」

「は、、、はい」


すぐ済まないけどね!

出来る限り丁寧に彼女の手の甲に唇をつけた部分を丁寧に拭う・・・ふりをして俺のもう片方の手は彼女の手の温度、触感、オーラを悦しむ。

ふおおおおおおおおおっ!


「す、すいません、、、、そろそろ・・・」

「いえ、、、まだ拭いきれてないので」


確実に俺を如峰月桜ではないと判断したのか一刻も早く離れたがってる彼女を無視して手をにぎむぎする。

彼女は簡単には解放してもらえなさそうと紅い顔のまま溜め息をつくと・・・・何かに気付いたのかこちらをまっすぐ見てきた。


「そういえば、、、如峰月君に従兄がいるなんて聞いたことないんですけど?」

「ご心配なく、僕も最近知りましたから」

「ご心配なく?」


こくりと首を傾げる小動物のような彼女を見てると抱きしめたくなる。

そんな甘い時間を過ごしていた俺だったがいきなり濃厚な殺気を感じた。

・・・・・・・まあ、そうだよなあ。


「ホオヅキ、、、、ネエサマ二、、、、ナニシテイル?」

「・・・・・本当にごめんなさい!」


条件反射で謝ってしまう。

朝日奈義弟君が朝日奈さんの後ろに立っていた。

そして俺の手首を万力のように握りしめる・・・・中学生とは思えないバカ力で。


そりゃそうだ、、、、普通こういう場って家族で来る。

朝日奈親衛隊がいないからと油断していたが彼女の貞操を守る最強の守護者がいたのをすっかり忘れていた。

朝日奈楓の周りを固める逆ハー要員の一人、朝日奈冬夜。

可愛い姉を狙う野獣は殺していいと考えているキチガイイケメンさんだ。



明らかに今すぐ手を離さなければ殺すと目が訴えかけていた。

てか、どこから持ってきたのか手にはカッターナイフが握られている。

まずいな、スーツが汚れる!?

にすぐさま彼女の手を離すことを選択した。

・・・・のだが


「あの、、、朝日奈さん?」

「・・・・・・・・・」

「貴様アアアアアッ!」


いや、俺のせいじゃないし!?

朝日奈さんは離そうとした俺の手をまじまじと見るためにがっしりと俺の左手をホールドしていた。

朝日奈義弟君は血の涙を流して俺を呪う。

てか、、、一応弟なんだから少しは姉への愛情は押さえろバカッ!


「皐江月・・・・詩音?」

「ああ、今見合い中でして!その相手が自分を忘れて欲しくないと書きまくられてですね!だから離してぇ!」

「見合い・・・・皐江月・・・詩音・・・」

「シネエえええっ!」

「うおおっ!?」


本気で(タマ)取りに来やがったこのバカ義弟!

朝日奈さんがシリアスモードに入ってる上で俺達バカ二人は避けて斬りかかって殴り返すを繰り返す。

朝顔さんやスーザ先生の折檻で鍛えられた俺だからこそノーダメージで済んでいるが狂気と凶器を向けられれば流石に怖い。


「朝日奈さんいい加減止めて!」

「はっ、、、、冬夜、駄目でしょ!」

「ちいっ、命拾いしたな如峰月桜!」

「俺、今は如峰月空木だから!空木だから!」

「そうだよ!この人は如峰月桜じゃないよ、従兄だよ!」

「そんなことどうでもいい!如峰月桜は親衛隊総出で狩る!」

「どうでもよくないよ!?大事なことだよ!?」


流石に会ったこともない空木君の罪まで被らされてたまるか!

・・・・あ、今は俺が空木だった。

気づけば周囲に人だかりが集まってきている。

だよなあ、、、こんだけぎゃあぎゃあ騒いでたら人目につくよな。

なんとかその場を納めようと義弟君の意識を刈り取りに動く・・・・ところで携帯が鳴った。


「・・・生徒会lineの通知?」


最近になってようやく作った生徒会グループのラインの通知音が鳴る。

忙しいのに何だと確認する。

一応大事な連絡入ってるかもしれんしな・・・・・


<古畑>―生徒会室に今、桜君訪ねてきた人がいるんだけど彼どこにいるか知らない?

<新聞>―今日休みですよ

<白凪>―どうせサボりですよね、家に連絡とってみたらどうですか?

<古畑>―楓ちゃんみたいに用事の可能性もあるしなぁ・・・会いに来た人も忙しいなら出直すとか言ってるし

<伊月>―ああ、、、、昨日から帰ってきてないんですよ

<伊月>―スーザ先生に帰ってきてるか確認しときましょうか?

<白凪>―どこほっつき歩いてるんだか・・・・てか誰が会いに来たんですか?

<古畑>―ま、、、、取り敢えず如峰月君もこのline見るかもしれないし・・・・イイかな?

<新聞>―個人情報・・・・

―古畑が新聞を退会させました

―伊月が新聞を招待しました

―新聞が参加しました

<新聞>―ちょ!?

<古畑>―桜くーん、如峰月空木君って人が訪ねてきたよー

<新聞>―てか、個人lineで送ればいいんじゃ・・・・

<古畑>―あ、、、忘れてた

―古畑が新聞を退会させました

<古畑>―(๑´ڡ`๑)てへぺロ♡

―白凪が古畑を退会させました

―伊月が新聞を招待しました


えと、、、、、どうやら如峰月桜を家出中のはずの如峰月空木が訪ねてきたと・・・・

何しに来たんだ?

めんどくさいことにならないといいがと頭を掻きむしりスマホをポッケにしまう。


「・・・・・・・・・・・(じいいいいいいいいいい)」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


さて、、、、、俺をまじまじと見つめてくるこの美少女をどうしようか?

彼女の手にはスマホが握られている。

さて、、、、、どうしようか?

逃げなきゃ!!!


「如峰月くううううううううううううううん!」






さて、、、、、、どうしようか

ホテルと言う閉鎖環境ではいずれ怒り狂った朝日奈楓嬢か朝日奈義弟に見つかる。

そして何より俺の正体を知ってる二人に捕まると連鎖的にいろいろばれかねない。

そういうわけでホテルを飛び出した俺の選択は間違ってなかったはずだ。


「うっわ、、、何ですかこの雑な並べ方?」

「黙れ、馬鹿!」


ショーケースの中のフードを眺めていた華姿装の少女が不満げな顔で睨んで来る。


「空木さん、その言い方は酷くないですか!」

「だからって店員の前でそういうこというなよ・・・俺が悪かったけどさ」


ホテルを飛び出し車道に出てタクシーを止めた。

桔梗さんから何かあっては困るからと予算はもらっていたからだ。

・・・・・ところが俺の後をついて来ていた一人の少女が気づけば相乗りしていた。

探しに来てくれたようだが俺が飛び出していくのを見て反射的に追いかけてしまったらしい。

流石にタクシーから追い出すわけにもいかず、、、、、気付けばホテルから離れた場所に。


ホテルに戻るわけにもいかない。

しかも見合い相手の中学生と土地勘のない街にいる。

スマホを見れば桔梗さんからの大量の着信・・・・事情を説明しようにも事情がバカすぎて説明したくない。

取り敢えず外に二人で出てますとメールで連絡だけ入れておいた。


「・・・・・・・・取り敢えず見合い続けますか」

「・・・・・?」


バカみたいな状況だが、、、、、一つだけ良かったと思えたことがあった。

これとこれが食べたいですと俺が奢る前提で言ってくる少女。


髪を後ろで小さな団子に纏めている。

きめ細かい白い肌のせいかうなじがとても綺麗に見える。

中学生だからかまだ全体的に幼い印象を持たせるが、均整の取れた手足から全体的に上品な印象を感じさせる。


やっぱり育ちが良いんだろう、、、深窓の令嬢という言葉がよく当て嵌まる可愛い女の子だ。

なのに話してみれば凄く親近感を感じてしまうのは屈託のない笑顔と話し方のせいだろう。

うん、、、、、何より生意気なのが良い。

裏表がない性格だからか話すのが楽だし、何より楽しい。

いろいろ問題のある性格であればこういう女の子が後輩だったら毎日学校楽しいだろうと思えた。


「あ、も一ついいですか?」

「ああ」


色々リセットされたお蔭でようやく彼女の顔が見えてきた。

・・・・本当に申し訳ないことをしたと思う。

自分の都合で彼女自身と全然向き合ってなかった。

こんなに可愛いのに・・・・それに気づいてあげられなかった。


「こっからだな・・・・」

「さっきから何言ってるんです?」

「良いからさっさと決めろ、いくらでも買ったるし」

「どうしたんです、急に?」


こっからは自分のエゴだ。

冴突師恩はどうせこの先会うことのない少女だ。

けどもそれとこれとは話が別だ。

今のままじゃあ六月のあの時と同じだ。


『勝手に塞ぎこんで』『勝手に人を遠ざけてた』あの時と


俺は変わろうとしてるんだ・・・・あの時のどうしようもない俺から。

だから、、、、今から俺は

全部忘れてただ単純にこの冴突師恩に罪滅ぼししようと思う。

自分の都合で適当に扱ってしまった彼女への謝罪を・・・今からの二次会で。



くだらない過去にいつまでも縛られてちゃあ駄目なんだ。

主人公の側にいる為に主人公を笑顔にする為に

自分の過去ぐらい綺麗に乗り越えないといけない


だから俺は自分と戦う

そして勝つ


だから・・・・今から俺はこの少女と『まともに』ぶつかってみることにした。

冴突師恩じゃないですよ、彼女の名前は皐江月詩音です。

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