第1章持つ者と持たざる者part1
「決着が着かないですね・・・」
「そうだな」
サクラが振り降ろした斬撃は繰り出す前に全て詠唱省略式で相殺されて、ゼノンの詠唱省略式も繰り出す前に最速の刀技で相殺されていく。
気づけば剣技の残光がそれぞれの体に纏うように広がっている。
橙色の結界と白色の結界がお互いを侵食するように境界を争っている。
脚は一歩も動かず、剣は対照的に走りに奔る。
「お互いに大技を出せないみたいだ」
「くわあっ・・・そうだね」
「コウさん、仕事じゃないと本当に眠そうっすね」
「こういうメリハリも一流には必要さ」
「はあ・・・」
「くっそ!」
「しつこいなあ!」
何度目かもわからない剣戟の後、示し合せたかのようにお互い大きく後退した。
ゼノンも俺もこのままでは永遠に終わらないことを分かってしまったからだ。
お互いに更に『奥の手』をきる為に後退した。
烈しい運動のせいで溢れてくる額の汗を拭っている間にゼノンは腰から鞘を抜きだす。
そしてゼノンは鞘の口を空へ向ける
「『自然なる刃を呼び出せ』」
鞘から溢れだす色
紅、蒼、碧、獅子、鳶・・・・炎、水、風、土、闇
手に握る光の白剣を合わせれば自然属性六剣の完成だ。
ゼノンを守るように五剣が彼の周囲を飛ぶ。
おそらく自分の周囲に魔力の波を放出し、その上に剣たちを乗せているんだろう。
浮かすだけではなく操るまでのレベルとなると操作難度は超地獄級だろうが
「・・・まずは様子見かな?」
「そんな余裕は与えないさ、、、『詠唱短縮自然式:六ノ一』」
ゼノンの腕の動きに合わせ魔力の波が動き、それに乗った六つの剣が空を駆けて来る。
炎が水が風が土が闇が光が
それぞれ固有の魔力を纏いこちらへと駆けて来る。
「『斬技―龍橙閃』!」
指に肘に二の腕に肩に全身の力を体が痛みを感じるまで込めてそして振り抜く。
橙色の一閃が空を駆け、一剣一剣を弾いていく。
地を割り炎を切り裂き
水を散らし風を拡散させ
「もう一発!」
「させないよ!」
「!?、、、しまっ」
弾かれた四剣の内、赤と青の剣をキャッチしたゼノンが迫って来たせいで一瞬気を取られる。
気づいたときにはもう遅く闇と光が刀に突き刺さる。
『葉擦れ・変染態』は触れたものを葉擦れと同じ物質に変える能力。
当然この『葉擦れ・龍刀態』も同等の硬度を持つし詠唱級魔術も魔力の込める量次第では耐えられる、、、じゃなきゃ斬龍の剣技に耐えられない。
追撃のゼノンに気を取られなければ完璧に弾けていただろう。
既に『内在型身体強化』では対応できない距離にゼノンが
赤を構え、蒼を赤の剣に添える
四つの剣も俺の周囲を虎視眈々と狙いながら空を舞っている
「『詠唱短縮自然式―六ノ二』!」
「『黒曇衣≪コート≫』!」
こんな時は外装型身体強化しかない!
強化体制を切り替え、ゼノンの二色の混合突きを何とか刀で防ぐ。
その時にできる僅かなラグを狙い撃つかのように俺へと殺到してくる四本の槍剣。
ゼノンを払いのける、、、その力が『外装型身体強化』では用意できずゼノンに動きを封じられる。
「終わりだね」
「まだだ!『二重混合型強化≪ミックス・アップ≫』!」
奥の手その二
速さと瞬間的な防御力を求めた『外装型身体強化』、強さと効率性を求めた『内在型身体強化』
どちらかに頼ればどちらかが疎かに・・・なら両方使えばいいじゃない。
魔力を十全に込めた『黒曇衣≪コート≫』、、、そこに四本の剣が突き刺さる。
鉄の棒を四本叩きつけられた衝撃は予想を超えるもので内臓がひっくり返りそうになる。
だが、、、雲の鎧が致命傷へ繋がる位置へと刀が至るまでに僅かな時を作ってくれる。
その瞬間に体の奥底から力を凝縮し、、、巡らせる。
「『斬技―龍橙旋』!」
斬撃を飛ばす『斬技―龍橙閃』に対して、『斬技―龍橙旋』は周囲に迫を飛ばす剣。
刀からというよりは全身から出ているのではといえるほどの強大な迫が刀から迸り六剣だけでなくゼノンまで弾き飛ばす。
「なっ!?」
「お土産だ!『斬技―龍橙星』!」
ゼノンが空中で宙を掻く。
俺は全身を振り切り、そして外と中からの身体強化の力を全て刀一本に集める。
そして撃ち放つ。
空気を切り裂き甲高い異音をたてる橙色の流れ星が地上から宙へと・・・・そして空に浮かぶゼノンへと
「え、『詠唱短縮自然式―六ノ三』!」
慌てて腕を突き出すゼノンの前に六剣が集まる。
高速回転し、六色が混ざり合う回転盾。
橙色の閃光がそんなもの意にも解さないと勢いを落とさず突き刺さる。
「これでも駄目か・・・・」
俺は唇を噛みしめながら手に纏わりついている『曇靭紐≪クラウド・ワイヤー≫』を引き宙を舞う『葉擦れ・龍刀態』を引き寄せた。
刀を取り再び前に、、、出ようとしてふらつき膝をつく。
まずいと思いながらも、、、それほどまずいともいえなかった。
「はあ、、、はあ、、、、なんて奴なんだ君は」
ゼノンの周囲に折れた六剣が散乱している。
渾身の魔力を込めたあの一投はゼノンの武器たちを叩き壊した。
俺の最大強化に七代目ミルの尽力による斬龍の技にオオラさんの技術が加わった結果なのでむしろ当然だ。
だが、相手にとってはそれなりに驚くべきだったことらしい。
ゼノンは俺と同様魔力を使い過ぎたのか、技を受けた反動でふらついたのか片膝をついて荒い息をしていながら愚痴をこぼす。
「六代目ミルの作品でもう手に入らないんだぞ・・・『七鞘・七剣』程ではないとはいえ貴重な品だったのに・・・」
「はあ、、、はあ、、、それは申し訳ないが俺の刀は一流の職人が二人も関わってんだ・・・当然の結果だ」
「その自由な発想は七代目ミルに、、、剣の丈夫さは龍人の郷ってところかい?」
「よくご存じで・・・そろそろ休憩は良いだろ?」
「・・・・・・そうだね」
ゼノンは鞘を構え、俺は葉擦れを構える。
この戦いは正直ポーカーゲームに近い。
どちらが勝ってもおたがいこの先に『獄炎の勇者』ガルブレイクとの戦いが差し迫っておりその戦いに向けて奥の手を温存しておきたい。
つまりこの戦いの決着はどちらがどれだけ奥の手を温存し、消耗少なく勝てるかによる。
「折れた剣でも、、、後一度は使えるか、、、『詠唱短縮自然式―六ノ四』」
「・・・今までで最大かよっ!『巨大な巨大な黒雲よ』『更に集まれ』『更に凝縮』『更に狙え』『連続放出』!」
本当なら間に合わなかった。
だがゼノンも消耗が激しかったのか僅かに時間に隙があった。
お蔭でギリギリ詠唱級が発動できた。
「『壊れるまで叩きつけられる曇神の破城槌≪エンドレス・ハマー≫』!」
「種の魔術、、、いいだろう!受けて立とう!」
光が更に闇を濃くし、闇が光を際立たせる。
闇と火が混ざり合い、地獄の業火に
水と光が混ざり合い、聖なる霧に
自然属性の概念から外れてしまったそんな属性たちが融合を加速的に繰り返し万色の一本の大きな槍へと変わっていく。
対する技は詠唱級の概念を外れた強化詠唱級に位置付けられる大技中の大技。
既に半分を斬っている魔力を惜しげもなく注ぎ込み
強大な槍へと変えて放堕する。
ぶつかる直前人々はゼノンの技が勝つと考え、、、直後にその考えを否定する。
『曇の増成≪パンプアップ≫』
外部の魔力をこれでもと取り込みゼノンの攻撃の何倍もの規模に膨れ上がった黒雲。
見た目以上の魔力と威力。
術の威力や質などはゼノンの方が上であるが、それをものともせぬほどの質量へと。
万色が黒を食い荒らしていく
烈しくそして静かに
しかし徐々にその勢いは落ちていき、黒へと染められていく
大きな虹色の閃光がか細い一線へとそして頼りない灯へ
そして暴虐へと呑み込まれる。
ゼノンは幼いころから天才だった。
平民の家から生まれたとは思えないほどの器量の良さとその才能。
ガルブレイクに拾われ師事してからは僅か五歳にして既に頭角を表した。
聖十剣の象徴ともいえる詠唱短縮式を考案し六代目ミルの協力で実用化させ
僅か十二で聖十剣四位を任され
多くの人々から既に次代の勇者と評されていた。
そして彼自身もそれを疑わなかった。
が、、、、帝国との度重なる戦争の中でその自信はあっさりと砕かれた。
ガルブレイクが不覚を取り、女王陛下が駆けつけるまでの僅か数分の間だけ帝国の雷の勇者と闘った。
そして今までの自分がいかに今まで幸運だったか思い知らされた。
『種の魔術』を使えるということ、そして使えないということがどういうことかを思い知らされた。
発動級一つで剣が折られ
詠唱級一つで心を砕かれ
腕の一振りで守るべき兵たちを千も二千も目の前で雷光で灼かれた。
女王陛下が駆けつけ、、、彼女と雷の勇者の戦いを瀕死の状態で呆然と眺めた。
結果、、、彼はいかに自分が『持たざる者』であるかを自覚した。
『種の魔術師』一人に勝てず勇者を名乗れる訳が無い。
自分を拾ってくれた師匠ガルブレイクの後を継げるわけがない。
なんて自分は浅はかだったのかと
その戦の後帝国の度重なる襲撃が一時的に鎮静化し、王国に一時的な平和が戻った。
そこからゼノンは今まで以上に力を磨いた。
より剣を、より魔術を、より技能を、よりセンスを、より魔道具を
天才が自分を『持たざる者』として努力をするのだ・・・その結果は当然異例のものに。
彼は僅か一年で聖十剣一位に到達する。
しかしそれでも彼は自分を『持たざる者』と捉え修練を重ねる。
誰もが彼を恵まれた『持つ者』と考えている中、彼だけが自分を『持たざる者』と考える。
そして修練の果てにゼノンは『持つ者』と『同じ力』を欲した。
黒雲が押し流される。
いや、消し飛ばされていく。
そして同時に周囲の魔力がゼノンがいる場所に急激に引きずり込まれていくのを感じた。
俺は今日一番の怖気を感じ、『二重混合型強化≪ミックス・アップ≫』フルスロットルで空へと逃げる。
黒雲を掻き分けて飛び出してきたのは発動級かと思えるほどのドッジボールぐらいの小さな玉。
空気の歪みがなければ気付かないような透明の玉。
それがふあっと上昇しながら飛んできて『普通に』女王陛下の結界を突き破って遥か高く空へと飛んでいった。
あまりにも異様なその光景に
観客も
結界を突き破られた女王陛下も
ガルブレイクですらも
俺も
呆然としてしまった。
「六代目ミルの傑作『七鞘・七剣』シリーズの『六番剣―零埜武』。僕の本質能力を最大限に引き出す刀だ。」
ゼノンが強大な魔力を無色透明なガラスのような長剣一本にまとめ上げている。
あまりに強大だから剣に納められないと剣の周囲に纏わせた結果、人間一人軽く飲み込める程の大きな光球になるほどに。
さっきのアレは・・・・アレの一部を撃ち出しただけってことね。
ゼノンは余裕の表情を見せるべき時なのに、、、その顔はどこか悔しげだった。
そして強大な圧力を地面に降り立つ俺に『無自覚に』掛けつつ語り出す。
「種の魔術が何故あそこまで強力なのか・・・それを知り同じ位置に立ちたいと願った時僕の本質能力は生まれた。」
「・・・種の魔術を使えるようになるのじゃなく、同じレベルに立つための本質能力ってことか」
「僕の本質を良く表してる、、、そう思わない?」
「ああ、、、」
流石に危険と判断したのか、、、結界では既に抑え切れないと悟った女王陛下が闘技場周囲の国民たちに避難の指示をかける。
ゼノンは周囲の王国民たちの混乱を帯びた声や動きなど意にも介さず言葉を続ける。
「『外装魔臓≪アウター・マナ≫』・・・君たち種の魔術師たちと同じく、周囲の魔力を自分の魔術を核に集中させ、より強力にする本質能力だ」
俺やアリアが使う『曇の魔術』は核を作りだしそこに周囲の魔力を纏わせることで強力な雲を創り出す
ガルブレイクやシノンが使う『獄炎魔術』は鎖の楔一つ一つに周囲の魔力を纏わせ熱を発生させる
本来一魔術師でしかない俺達が災害を引き起こすまでの力を持てるのは『種の魔術』の周囲に漂う膨大な自然の魔力を使える点にある。
「・・・・・しかも俺達より強力だ」
獄炎魔術ですらここまで強力な魔術になるだろうか?
ある程度距離は離れているはずなのに、目の前から死のイメージが払しょくしきれない。
次の瞬間死ぬんじゃないか、そんな考えがずっとエンドレスに頭の中を駆け巡る。
「種の魔術師である雷の勇者と闘って、、、僕は『種の魔術師』と同じ存在になりたかった。それが僕の魔術の終着点だった・・・種の魔術師と同じ力を得ることが僕の願いだったんだ。」
「・・・・・・・・・」
ゼノンが独白のように語っている間に桜から俺への魔力変換は済み、ほぼ全快している。
だが、、、、劣性に追い込まれていることを自覚していた。
ツバキが今にも駆けだしてきそうなのを目で制しつつ、ここが大きなターニングポイントになることを自覚していた。
「これから僕が放つのは、、、王都中の自然魔力を込めた万色属性の一閃『虹蛍光』。正真正銘最後のカードだ。まさかここまで奥の手を引きづり出されるとは思ってなかった」
「俺だってアンタがまさか実質的な『種の魔術師』だって知ってたら最初から『曇脈展開«クラウド・アクセス』で戦っていた・・・奥の手二枚も切らされるし散々だ。」
「そういえば何故あの黒い状態にならなかったんだ?」
「・・・・・・・・・・」
周囲の人間は皆それぞれ保身に入っていて俺達の話なんて聞いてやいないだろう。
・・・・なら問題ないか。
「あんたが奥の手を隠したのと同じ理由もあるが、、、王国民に勇者の能力を持ってるって見せるためには誰が見ても明らかに強くなってるってことをゼノン戦とガルブレイク戦で見せるためだ。」
「・・・・・・・・どうやら君と僕は見ている先が違うみたいだね」
「だからこうして争うことになってるんじゃないか」
「それもそうだ」
二人して笑う。
そしてそれぞれ切るカードと最終的な手札を決定する。
「ここからは連続だな、、、『曇よ』」
「師匠を越える為に、、、僕は今『種の魔術師』達と同じレベルに立たせてもらう!『虹蛍光』!!!」
全身から溢れだす黒雲が闘技場中を満たしていく。
ゼノンは黒雲など気にもせず剣に纏わりつく光球を放出する。
着弾まで距離的に十五mほどの距離
それまでにいくつ術を使えるかがポイントになってくる。
「『曇の支配権奪取≪ハッキング≫』!」
「当然そうくると思ったよ!」
黒雲が『虹蛍光』に纏わりつき魔術を剥いでいこうとするが、触れた瞬間黒雲が蒸発されていき一向に自然魔力を剥げない。
それどころか周囲の魔力を粗方吸われたせいか黒雲をいつも通りに生み出すことが難しくなっている。
ゼノンの本質能力は自分の強化と同時に『種の魔術師』の弱体化を図るものらしい。
「決まれ決まれ決まれ決まれ決まれ決まれ決まれ決まれえええええぇぇぇぇッ!」
「くっそおっ!『曇の一撃≪ショット≫』×『曇の増成≪パンプアップ≫』×メガ盛り!」
次から次へと術式を練ってはぶつけていく。
徐々に『虹蛍光』と俺の間に黒雲が凝縮していく。
なのに、、、少しも安心できない。
ゼノンが決まれと一言叫ぶたびにその脅威が増しているようにすら思える。
「無駄だ種の魔術師!今なら降参を認めるぞ!」
「誰が!」
「その若さで命が惜しくないのか!」
「こっちはいつでも自分を賭けてるんだよ!」
既にお互い論理が崩壊している。
そうこうしている間も距離は既に十をきっている。
「なんだ、、、ゼノン兄様はあんなことまでできるのか?」
「知っていればマスター一人で闘うことを絶対に許さなかったのに・・・」
ツバキが唇を噛みしめ悔しそうに言う。
闘技場は既に多くの人が退避してしまっている。
残っているのは女王陛下に父様・・・後は私たちみたいに彼に運命を委ねている者や一部の物好きぐらいだ。
サクラの超キチガイモードを彷彿とさせる濃密な魔力が大きな光球となってゼノン兄様から放出され、サクラが必死で黒雲をぶつけ少しでも威力を削ごうとしている。
超キチガイモードなら何とかできたかもしれないが、、、、どうするのだろう
ゼノン兄様が降伏勧告をしているようだが、サクラはそういう物語の主人公らしくない行為を嫌う。
死なざるをえない状態になれば潔く死ぬことを選ぶ。
サクラ=レイディウスとは、、、そういう奴だ。
そんなあいつを、、、私は否定しなければならない。
左腕に楔を生み出していく。
・・・・・・・・・凄く魔術を使いにくい。
自己資本魔力だけで形成する『氷魔術』は普通に使えるが、周囲の魔力で形成する『獄炎魔術』は殆ど形成できない。
サクラも疑似暴走魔力が使えなければ黒雲を生み出すことすら出来なかっただろう。
しかし疑似暴走魔力を持ち、、、大きなレベルアップを果たしたはずの彼ですら、、、力が足りない。
光球がじりじりじりじりとサクラの喉元へと迫っていく。
いざとなれば、、、、『獄炎魔術』でサクラを吹き飛ばしてでもサクラの命を、、、!?
サクラが術式を使いながらこちらを睨んでいた。
今はそこで黙って見てろと目で伝えてきていた。
そうか、、、ここまで危ない状況なのにツバキが闘技場に飛び出していかないのは、、、サクラが目で制していたからか。
目を見て分かる、、、彼はまだあきらめていない。
けど、、、、けど、、、
「ばか!」
バカねぇ、、、、シノンがそんなことを大声で叫んできた。
黒雲を生み出し、けしかけて・・・・・・少しずつ目を凝らせば分かるぐらいは『虹蛍光』を削れてきている。
最後の一手を用意しながら『曇の一撃≪ショット≫』をどんどん放出していく。
そして一瞬槍と槍の間を槍で埋めていく。
確実にそして光球を削ぎながら、俺と光球との間に圧縮された壁へ変えていく。
変幻自在の雲
だからこそ槍が壁へと一瞬で変わることも可能
しかし
「駄目だ、サクラ!」
防御魔術は苦手です。
明らかに詠唱級を越えているゼノンの魔術の終着点をしのぐだけの力は無い。
見てられないと飛び出そうとするシノンをコウとトツカが抑えている。
とはいえ抑えてる彼らも魔力を高めている様子から最悪彼らも介入するつもりだということが分かる。
「絶対に来るな!」
シノン達がぴたりと止まる。
サニアもまた。
術式を限界まで濃縮していき壁を限界まで厚く密にしていきながら俺は叫ぶ。
「最初に言っただろうが俺一人で超えなきゃいけないところだって!今は信じてくれ!それだけでもっと俺は戦える!」
疑似暴走魔力よ、爆発しろ。
剣に限界まで注ぎ込んだ暴走魔力。
『葉擦れ・龍刀態』を解除し、黒雲の壁の中へと『葉擦れ・変染態』を突き刺す。
そして叫ぶ。
「『染まれ』ええええええっ!!!!」
黒が茜色に染まる。
八メートルの厚さの大壁、、、、橙色の輝きの防御壁。
『葉擦れ・変染態』の能力は触れた物質を葉擦れと同じ物質に一時的に変える。
つまり今この瞬間、この大壁は八メートルもの大きさの名工オオラに鍛えられた共鳴鋼の塊になる。
それはどんな防御術式よりも固く強靭な防御になる。
「それかあの時の術を防いだのは!」
ゼノンはまだ抗うかと笑う。
戦闘好きだというのもあるだろうが、、、種の魔術に対しての無制限の羨望が種の魔術師が強いことに安心してもいるんだろう。
「だが、それでいいのか!?」
共鳴鋼の壁
それが遠慮なく削られていく。
ゼノンが追加魔力を注ぎ込みでもしたのか更に巨大化した光球が勢いよく壁を削っていく
そして一気に貫いた。
壁を貫き俺の眼前まで迫る即死級の技
だが大分削れた
「『斬技ー黒橙銀』!!」
剣にまで光珠が届くぎりぎりで剣を引き抜き、『葉擦れ・龍刀態』に変化させる。
別個で練っていた魔力を惜しみなく注ぎこんで使う技はただ最速で斬るだけの技
単純で、だからこそ強力な斬龍の奥義
コントロールを失った光弾が二つに分断され空へと駆けて、自然に還る。
刀を剣に戻し、拳を固め駆ける。
俺の背後でおそばせながら黒雲に橙色と銀色が混ざった斬線がふわっと浮かび上がった。
「『曇の一撃』」
ゼノンは無抵抗のまま脱力している。
演技でも何でもなく、ただもう戦う力が残ってないんだろう。
別に徹底的にいたぶらなきゃいけない訳じゃない。
黒雲のいつもと比べると弱々しく進む槍がトコンとゼノンを押し、彼は尻餅をついた。
「・・・まだ種の魔術師と戦うのは早かったかな?」
「ちげえよ、、、俺みたいなチートと他の種の魔術師を一緒にしちゃいけない。アンタは既に種の魔術師を下手すりゃ超えてる」
「君にそう言ってもらえると、、、不思議とそう思えるんだから不思議だ」
ゼノンは晴れやかな顔だった。
そして助け起こしてくれるかと手を上げてきた。
彼の手を掴み引き上げる。
その時彼が耳元で囁いてきた。
「『獄炎将軍』は僕の何倍も手強い。」
「、、、知ってるさ」
「君の信念が曲がらないことを祈ってるよ」
女王陛下が上空に一弾、魔術の花火を打ち上げた。
勇者が決まった事を告げる花火だった。
「何ですか、これは・・・」
銀髪銀眼の少女は呆然と呟き、立ち尽くしていた。
桃色髪の少女がそんな彼女を心配げに見上げた。
彼女達の視線の先は一つの闘技場。
勇者が誰になるかを見届け力を得る前に聖女ごと殺すつもりだった。
・・・が、出来なかった。
勇者になったのはアリアが大切な人に分類していた人だったから
また再会を約束した人だったから
「ししょー?」
「大丈夫です、ティアラ・・・」
桃色髪の少女が袖を引くのに対してアリアはどこか虚ろに返事をする。
「殺さなきゃいけない人が少し殺しにくくなっただけです」
アリアの目は覚悟を決めていた




