表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/183

EPILOGUE-FOUR『嬉怒』

遂にエピローグ。

応援ありがとうございました!

「取り敢えず今日が私にとっての一つの最終日だね」


形式的なものだけど、、、聖女として、姫として、サニア=エーメルティーとして王国の皆の前へ姿を現すのは最後だ。

ゼノンを勇者として認め、力を与えるふりをする・・・それで終わり。


「・・・・君はどう思う?」


虚空に向け聞いてみた。

当たり前のように返事はなかった。

それが少しだけおかしくて、、、つい笑ってしまった。

扉が一度、二度と静かに叩かれる。


「はい」

「ゼノン様が謁見したいと」

「通して」

「分かりました」


侍従が暫くやり取りして、、、それから扉を開ける。

正装をしたゼノンが緊張気味の顔で入って来た。

普段から貴族のような服装をしているゼノンだったから正装姿は少しも違和感がなかった。


「似合ってるよ、ゼノン」

「いえ、、、聖女様の正装姿と比べられれば正直見劣り気味な気がします」

「結構重くて動きにくいんだよ?」


私は頭の上の丈長帽子をポンポンと叩いた。

これのせいで首が少し凝ってさえいるのだ。

ゼノンはそれを知るとならこれぐらいが良いのでしょうかと首をひねった。


「そうそう、髪形も糊で固められちゃったから寝転がれないしさ・・・最悪だよ」

「ふむ、、、女性ならではの悩みですね。」


勇者召喚の儀は一種の祭り扱いされている。

戦争前でそれなりに物資に制限が掛けられているはずなのに、それでも花火の音が外から聞こえる。

王宮からは覗けないけど、王都では屋台とかも出てるかもしれない。


「こんな重い服脱ぎ棄てて外に出たいなあ・・・ん?」

「・・・し、失礼しました!」


ゼノンが強張った顔をしていた・・・何でだろうと想っていたらいきなり彼は首を左右に何度も振った。


「外は雪が降り始めました・・・待機の間は一枚上着を羽織ることをお勧めします。では」

「・・・うん、わかった」


何しに来たんだろう・・・慌てた様子で外に出ていった。

外を見た、、、本当だ。

王国は大陸でも南の方にあるから雪が降るのは珍しい。

この雪も何年振りかといえるほどに。


「・・・・・・綺麗だなあ」


シノンがたまに訓練の一環で粉雪を操っていたことを思い出すなあ。

ふわりふわりと空から落ちてくる初雪がぽつりと落ちては地面に溶ける。

街の熱気に当てられたせいか積もることさえできないみたい。


「おにいさんはどうするつもりなのかな?」


王国に来たことは分かってるんだけど、、、それからどうなってるか分からない。

ガルブレイク将軍達も音沙汰つかめてないみたい。

王宮で侍従から聞いた話だけど銀髪姿で変な顔の人が雲を使って王国中の国旗を全て撃ちぬいたとか情報は混乱してるみたい・・・本当じゃないよね?噂だよね?


今日までおにいさんやシノンからの接触はなかった。

最も警備が厳しくなるのが今日なのだ・・・だから今日来るはずがない。

だけどなあ、、、『人の熱気で雲ができる』

雲みたいな性格のお兄さんは人が集まる場所ほどテンション上げて暴れ出す。


「・・・しんぱいだなあ」


もし今日出てきやがったら流石に私は怒ってしまうかもしれない。

せっかくここまで王国の為にと覚悟決めてるのに、あれだけやくそくしたのに平気な顔で現れでもしたら

私はおそらく攻撃魔術を叩きこんでしまうだろう。

それぐらい怒ってしまうと自分でも分かってる・・・そして同じくらい嬉しく思ってしまう自分がいることも分かってる。


「・・・やっぱうれしいかなあ?」


もし来てくれたら・・・童話のお姫様みたいに助け出してくれたら・・・やっぱり女の子としては嬉しいかな

ここが現実じゃなければそんな未来もあったかも


でもサニア=エーメルティーはもう分別のつかない子供じゃない。


私がいなくなれば王国は滅ぶ、そんなことは出来ない。

私が我儘を言えば言うほど誰かが犠牲になる。

私が助けてって言えばシノンやおにいさんが犠牲になる。


誰かを犠牲になんてしたくない、、、そんなことするくらいなら私が犠牲になるべきだ。


「・・・けども皆にそれを感じさせないために私は泣かないし、暗い顔はしないことにしてるんだよ?」


ゼノンが聞こうとしてたであろうことに応えた。

部屋にしんと私の声が響いた。

すこし、、、苦しかった。






雪がえんえんと降っている。

空は黒く染まっているのに、降ってくる雪は白い。

本当は晴れて欲しかったが・・・あられや大雪でないだけましだろう。


「雲に雪、、、まさかここまで嫌な組み合わせをこの日に見せられるとはね」

「十剣長?」

「ウルフォンか、、、どうした?」

「いえ、、、ご命令通りジョージさんとボボルノさんを捜索していましたが見つからなかったという報告を」

「見つけるまで戻ってくるなと命令したはずだが?」

「っ(涙目)」

「・・・冗談だ、そのまま外の警護に行ってくれ」

「え、寒いのに?」

「何だ?聖十剣はそんな一般兵士と同じような仕事はしたくないってことか?いつからそんなに調子に乗るようになったんだ、ウルフォン?」

「喜んで拝命させていただきます!」


ウルフォンが一目散に逃げていく・・・つい当たってしまった。

ついいつもより1.01倍辛く当たってしまった。

普段なら精神的に追い詰めるだけで肉体的に追い詰めることはしないのに・・・やはり自分の心の中に迷いがあるのだろうか?


ガルブレイク将軍に拾われる前から・・・この国で生きてきた。

だから王国を救える人間になれることに誇りすら抱いている。

けども、、、妹のように思ってきたサニアを犠牲にするなんて知りたくなかった。


「・・・いけない」


勇者として、、、『獄炎将軍』と同じ立ち位置に遂に立てるんだ。

もっと強くならなければ・・・もっと迷いなく進めなければ

腰の刀に手を置く、、、寒いせいだろうか、、、とても柄は冷たかった。





「準備が整ったそうです」

「どっちのだ?」

「勇者召喚の儀の方です」

「もう片方の方は?」

「流石に、、、あと一日頂きたく」

「そうか」


エルフで勇者副官のネイルの言葉を聞き、仕方ないかと納得する。

優秀な彼が言うならばそうなのだろう。

諦めはつかないがミスがないようにして貰わねば困るのも確かか。


「それにしても、、、必要なんですかアレ?」

「必要になる・・・かは分からん」


もし私がサクラやシノンと同じ立場なら勇者召喚の儀の前日の夜に聖女様を誘拐した。

・・・だが奴らは来なかった。

『熱感知』を張り巡らせどこから王宮に侵入しても分かるようにしているが、、、異変もない。


聖十剣の二人が行方不明になっていることからあ奴らが来ていることは間違いない。

だが、、、行方が分からない。

聖十剣が向かったはずの屋敷に異常はなし。

ミルは実験が気になって戻っただけだと答えるだけ・・・聖十剣は見ていないとさえ答える始末。

聖十剣の居場所どころかあ奴らがどこで何をしているかもつかめない。


少しずつ戦力を削ぐつもりか?・・・なら何故聖十剣二位、三位だけなんだ。

一番警戒が高まるこの時期に来るわけないし・・・奴らの目的が分からん。

この王国にいるのは間違いないのだ・・・間違いない。


「ネイル、、、私は老いたのかもしれんな」

「ガルブレイク様、、、エルフの私には人間の感覚はいまいちつかめませんが、、、32歳はまだ若いと考えます」

「・・・そういう意味では無くだな、若い連中の考えがいまいち掴めんという話だ」

「ああ、、、私も同じ側なので共感は出来ますが、、、そういう意味ならあなたの考えを私はたまに捉えられません」

「・・・悪かったな」


思わぬ反撃を受けた。

そういうものかと見た目だけは同じネイルと共に会場を目指す。

勇者召喚の儀は王宮大庭園で行われる、、、ここに王国民たちが次の勇者の姿を見に訪れる。

そしてこの日だけは王宮の出入りは自由であるため、当然警護は厳しくなる。


「・・・やはり分からん」

「ほら、ガルブレイク様。陛下にせっかく髪を整えてもらったんですからしかめっ面では威厳がつきません」

「何故それを知っている?」

「ゼノンさんがそうと言ってましたが?」

「あいつ・・・」


あの性格の悪いのが後釜か・・・でもあれを育てたのは私だ。


「他言するなよ?」

「当たり前です」


儀の会場は既に人で満ちていた。

この混乱の時期に生まれる勇者と言うだけあって一目でも見たいと願う国民が多いのだろう。


「ゼノンは多くの期待を背負うことになるな」

「あなたの時も同じような状態でしたよ?」

「・・・そうか?」

「まあ、ゼノン様ほどではないですがあの時も帝国と戦争中でしたからね」


今でも五感に鮮明に焼きついている、、、勇者がいなければいなかったあの混乱の時期を

雷の勇者と初めて戦うことになったあの時

光の勇者が敗れた日に行われたあの時

形式だけと信じたあの時

自分の力を自覚し、無力さを知ったあの時


「・・・・・もうこの話はよそう。召喚の儀が始まる。」


始まりの鐘が鳴る、、、終わりを告げる鐘がなる。

雪が徐々に徐々に降る量を増す中、祭壇にまず女王陛下が現れる。

彼女の奏上から始まる儀・・・形式とはいえ真面目に受けるべきか。

居住まいを正した。




「我が国は現在未明の危機に見舞われている」


私がこう述べた瞬間、王国民がざわついた。

それもそのはずだ・・・祝い事の席でいきなりこのような話から入るのだから。

歴代の儀はこのようなことはなかったのだから。


「驚いたかもしれないがどうか許してほしい。そして知っていて欲しい、、、この儀式自体が前代未聞の儀式であることを」


ざわつきがさらに大きくなる。

視界に映る人間は皆々動揺を示し体が左右にぶらついている。

・・・さすがだ。

そんな中でも『獄炎将軍』、『十剣長』は一分も動揺が走っていない。


「静まれ!そして彼らを見ろ!『獄炎の勇者』を!そして王国が選んだ三代目勇者候補を!」


こういう行為はあまり好まないがたまには良いだろう。

私の演説に対して微動だにしない勇者たちを見て王国民のざわめきが少しずつ落ち着いていく。

昔は『聖女勇者信仰』に逆らってやるぐらいの意気込みを持っていたが・・・こういうふうに王国民への影響力を思い知らされる度に削られていった。

やはり王国が生き残るには『聖女勇者信仰』が必要だと何度も何度も思い知らされた。


ほら、ガルブレイクとゼノンがそれぞれ席を立ち私の方に敬礼するだけで静かになる。

厳粛な空気が再び取り戻される。

・・・・・もう逆らうより利用する方が楽であることを私は知ってしまった。


「彼ら『勇者』たちと共に我々は戦わねばならない・・・帝国と英雄連邦と人間同盟の共同軍と」


王国を守るため

エルフと人は友であれるという信念を守るため

『彼女』達が託そうとする想いを守るため


「先にも言ったが改めて言う・・・危急存亡の瀬戸際だ。勇者の支持は当然のこと、、、国家総動員で闘わねばならない!さもなければ勝てぬ!本来勇者は一人であるはずのしきたりを破るのもこのためだ!どうか王国民よ分かって欲しい!そして私を信じて欲しい!必ずこの国を守ると約束する・・・この約束を信じて欲しい!」


私の声が自分の声ではない声のような気がする。

そんな声が反響していく・・・・会場中に。

今、魔道具を通してこの声は王国中に広がっているのだろう。

私の、、、私じゃない声が。


「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「「女王陛下、万歳!!!」」」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「王国に繁栄あれ!!!」」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「勇者様!王国を救ってください!!!」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「今度こそ雷の勇者を!!!!」」」」」」」」」」」


私の『王国の為なら親友も娘も殺してしまう』という暗喩を込めた声に皆が賛同する。

・・・・・もし我々が隠しているこの事実を知れば王国民はこの声にどれだけ応えてくれるだろうか?

どれだけ恨まれるのだろうか?


誰かの犠牲によって成り立つ我が国をこの愚王を・・・同じように認めてくれるのだろうか?


「ありがとう!王国民よ!あなたたちの王であれて私はとても嬉しい!」


迷うな・・・この『聖女勇者信仰』を・・・両刃の剣を使う覚悟を既に持っていたはずだ。


この薄氷を

この一本の細い糸を

この針山を


進むと決めたはずだ。


「では、、、奏上はここまでにする。今回の主役である聖女の姿を共に見ようではないか」





普段は閉ざされた

王国の中枢部でも滅多に入ることを許されない王族の居城ともいうべき本丸の門が開かれる。

輝かんばかりの光の幻影

そしてその中を進む一人の少女


彼女は白い衣裳に身を包み、顔には淡い化粧を施されている。

それだけなのに、、、女王陛下や古参の臣下は一瞬二代目聖女『氷巫女』を思い浮かべた。

文句のつけようがない程聖女として成長したサニアの姿だった。


王国民は湧く、、、感歎と驚嘆で・・・張り裂ける程の歓声を。

彼女を良く知らない人間でも聖女として完成されているのだと知ることが出来た。


彼女の未完成の時期を知る者は・・・泣いた。

あの小さな体にどれだけの苦労がかかったかを想像して、、、そしてどれだけの心労をかけたかを理解して。

成長せざるを得なかったこの戦乱の世を恨んで。


形式に則った舞を踊りながら彼女は徐々に祭壇へと近づく。

粉雪が幻想的に彼女を彩る。

浸みこむ白の妖精が彼女にぽつりぽつりと落ちては彼女の力となるように吸収されていく。


「惜しいな・・・」

「何がだ?」

「今のももちろんいいが・・・出来れば晴天で聖女様の舞を見たかった」

「そうだな、、、こんなにどす黒い雲が上にあっては・・・残念に感じるな」


ある王国民達がそんなことを言いながら空を見上げた。

聖女の舞はとても美しいのに、、、それを邪魔するように広がる黒雲を

徐々に徐々に下に下がってくる黒雲を


「おい、、、雲が段々下がってきてないか?」

「見間違いだろ?あんなに高い所にある雲がどうして下に降りてくるんだよ」

「いや、、、徐々に雪の量増えてきてるし」

「!?」


粉雪が雪嵐に変わる。

黒雲が城の上部に触れるくらいまで近づいて来ている。

そして王国民皆にその時になってようやく怖気が奔る。


「なんだ、この魔力・・・」

「全身に寒気が・・・風邪でも引いたみたいに」


全員の視線が黒雲へと向いたその瞬間、黒雲にいきなりガポッと穴が出来た。

そしてそこから『巨大』な『白い』大玉が・・・

世界が白く包まれた。


「ぶはあああああああっ、俺参上!」


視界がぶれ、、、やっとのことで回復する。

そして驚愕する。

いつの間にか聖女様の目の前に一人の男が立っていた。





「お、、、おにいさん!?」

「よお、サニア。一か月ぶり」


サニアが舞の道具を落としてしまうほど驚いている。

俺が現れたことか・・・それとも登場の仕方か。

まあ、登場の仕方の方か

出会った瞬間攻撃魔術一発覚悟だったし、、、それがないということはそれだけの覚悟があったのだろう。


「な、、、なんてことを・・・この儀式は王国で最も重要視されてる儀式なのに・・・指名手配どころか処刑レベルの重犯罪だよぉ!?」

「ぶはあああああっ、最強の登場の仕方だろ?」

「しかも超キチガイモードじゃん!?」

「ひでえなあ?」


サニアが俺の返答が気に入らないのか、たんたん脚踏みする。

可愛いなと思っていたら強い殺気を感じた。


―マスター、気をつけて―


「強い魔力がひいふうみい、、、ま、注意すべきは三人か」


ガチでヤバいのはゼノン、ガルブレイク、女王陛下

それ以外は『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』中なら何とかなる。

俺の魔力を警戒してか、周囲をジリジリと上級兵士が囲んでいる・・・当然その中には見慣れた顔も。


「よう、ウルフォン。お前は、、、一週間ぶりか」

「何を言ってやがる?」


あ、そっか。

今は黒髪で顔も普通に戻してるしな。

・・・これ以上罪を重ねると一族郎党××されるし黙っとこう。

っとお!?


「貴様、、、死ぬ覚悟は出来てるか?」

「ぶはああああっ、、、相変わらず恐ろしい威力な」


屈んだ頭上を巨大な鎖が通り過ぎる、、、当然その持ち主は血管を浮き立たせるぐらい怒っている。

さて、、、戦うかな?


「ちょっとおにいさん!?ここで二人が闘ったら皆まきこんじゃうよ!?」

「むしろそれがいいんじゃないか」

「ばか、、、もうバカ!」


サニアがぽこぽこ胸板を叩いてくる。

どうやらそれが更に怒りを注いだようで思わず冷や汗をかいてしまうほど濃い魔力を放出しながらガルブレイクが一歩一歩進んで来る。


「サニア、、、悪いがちょっと離れてて」

「どこにいたって同じでしょ!お兄さんのバカッ!」

「いや、、、巻き込む云々じゃなくてな?」

「くたばれ王国に害為すクソガキ『熱鎖撃』」

「お前は何をしてるんだ・・・『氷剣・氷停』」


バキバキバキッ

迫る鎖が全て凍りつき宙を舞う。

焔さえ停める氷の剣

当然それを扱うのは・・・・


「シノンまで何でここにいるの!?てか、なんで髪を青く染めてるの!?髪痛んでるじゃん!」

「・・・・・本当はもっと皆が揃ってから出るはずだったんだ・・・それをこのバカが調子に乗るから・・・・・・・はあ」

「聞いてるのはそういうことじゃないから!?」


シノンがため息をつきながら俺達の前に立つ。

彼女の手には『霜葉』

サニアが彼女に文句を言ってる間に仲間達がそれぞれ空から降りてくる。


「サクラ!黒雲もうちょっと早く下に降ろしてくれないとお前と同じタイミングで降りれないんだけど!」

「ぶはああああっ、、、細かい操作はこの状態じゃめんどくさいんだよ・・・片手間で出来るけど」

「じゃあ、しろよ!?」


金色の龍鱗が全身を覆い、紅き瞳をギラギラ光らせる少年。


「あ~あ、、、殺気がそこら中から飛んできている。君は長生きできなさそうだね、絶対に」


手についた粉雪を全て消し飛ばしている青年が呆れ顔でため息をつく。

何も言わずとも周囲を威嚇し、俺の死角を塞いでくれている。


「おにいさん、、、コウさんまで巻き込んでなにやってんのさ!?」

「ぶはあああああっ、、、人の苦労も知らないで・・・」

「なんで私がそんな目で見られなきゃいけないの!?」


俺達がグダグダ喋ってる間にも周囲の囲みは徐々に狭まりプレッシャーが強まる。


「取り敢えず追っ払おうか周囲を・・・」

「あいあいさー」

「簡単に言うなサクラ」

「魔術使うまでもないか・・・な?」


聖十剣、上位剣士、ガルブレイク、ゼノン

それぞれが魔力を高め迫ろうとして来る。

迫る死の警戒線

サニアが思わず叫んでしまう


「待って、皆!この人たちをころさ・・・え?」


『曇震伝波≪ドンシン・クロッシング≫』

『熱刃鎖』

『消滅を象徴する両腕』

『義龍の一撃≪ドラゴン・アタック≫』


不可視の震動がガルブレイクを鎖の大鎧ごと弾き飛ばし

上位剣士たちの攻撃魔術たちを二本の腕が掻き消し

ウルフォンたち聖十剣はシノンが出せるはずがない鎖を出したことに脚を思わず止めてしまいその瞬間トツカの拳から放出されるオーラに巻き込まれ打ち上げられる


「う、、、そ、、、?」


彼ら四人の周囲には空白が出来る。

・・・王国民が目を疑うような景色が。

彼らを王国民の中で誰より知っているはずのサニアが思わず唖然とするほどの・・・そんな世界。


「さ、行くぞサニア」

「え、ちょっと!?」


サニアの手を引いてある場所に向かう。

王宮の外でもなく、王宮の中でもなく、、、王国最強『女王陛下』の元に





「待て!」

「待つのは、あなたです」

「!?」


真っ先に起き上がったガルブレイクがすぐさま迫るが彼の前に立ち塞がるのは唯一無二の相棒シノン


「退け、、、少々『獄炎魔術』を使えたところで俺の前に立つな」

「私はこれから起こることを知っていて少々苛立ってるんです、、、同じ属性を持つ者同士どういうことか分かりますよね?」


熱が周囲の雪を雨に変える。

ぱらぱらと降り注ぐ雨そして周囲に散らばる濃密な怒気と殺気


「・・・シノンがまさかこれほどとは」


ウルフォンが思わずつぶやく。

加勢しようにも前の時とは全然違うことを肌で感じていた。

近づけばまずいことを肌で感じていた。


「邪魔しないでもらえるか?一応友の大事な時なんだ」

「龍か、お前は?」

「いんや、ただの龍人だ」

「僕もいるよ」


また加勢に向かおうとすればその瞬間に二人の男に攻撃されることを分かっていた。

・・・場所が悪い。

本気を出せば突破できようがそれをすれば周りの王国民を巻き込みかねない。


「まさか、、、ガルブレイク将軍が?」





「待つんだ」

「ぶはああああっ、やっぱ来るか」


サニアの手を引き女王陛下が座る玉座へと進む。

その前に立ち塞がるのは勇者候補ゼノン。

彼の刀はまだ抜刀されてないが濃密な魔力を感じる。


「聖女様、、、申し訳ありませんが加減できません」

「残念だが、、、今は俺が相手するわけにはいかねえんだ。」

「・・・なんだと?」

「上手くいけば後で闘うことになる・・・というわけでよろしく~」


黒雲から三人が飛び出してくる。

ゼノンが目を限界までかっぴらく。


「ジョージ、ボボルノ!?それに『牛鬼』の魔族!?」

「うっす十剣長、、、ちょっくら手合せ願おうか」

「儂はまだ魔力が回復せんで、、、補助に徹させてもらおうかの」

「まさか人前に出る羽目になるとは・・・」


三人がそれぞれゼノンにかかっていく。

実力は劣るとはいえゼノンの手の内を良く知る聖十剣二位・三位

更には強靭な肉体と常軌を逸した六刀流大剣術を持つビグラス

ゼノンはそちらにかかりきりになる

さ、今のうちに・・・と進もうとしたら背中に違和感を感じた。

強く濃密な魔力を感じた・・・俺の背後にいるのは一人だけ・・・サニアだ。


「おにいさん、、、王国滅ぼす気?」

「詠唱級魔術を背後で構えながらそれを聞くか?」


サニアが普段からは信じられない低い声で後ろから問いかけてくる。

・・・彼女の全力

・・・・・殺すつもりの攻撃魔術だ


「何で来たの?誰も犠牲にしないために・・・私はこの道を選んだのに」

「ぶはあああああっ、、、可愛い女の子助けたいって思いはそんなに間違ってるか?」

「頼んでない!」


彼女の声が嫌に大きく響く。

当たり前だ、、、完全拒絶の大声なんだから。

思わず崩れ落ちそうな彼女の言葉を、、、俺は右から左へ受け流す。


「俺は主人公だ。頼まれなくてもお姫様を救う生き物なんだよ」

「それは物語の中の話でしょ!?分かってるの私がいなくちゃ王国は滅ぶんだよ!?お兄さんは私から大切なものを奪おうとしてるんだよ!?」


サニアの大切なもの、命を駆けていいと思っているもの

それが『王国』そのものだってことは知ってるさ

でも、、、、、そんなことこの一か月考え尽くしたんだよ


「犠牲になるのは私だけでいいの!おにいさんも王国も犠牲にしたくないからこの選択をしたのになんできづっ!?」


『曇の支配権奪取≪ハッキング≫』で魔力をぶらし、後ろを振り向く。

目をぎゅむっとつぶって叫んでるサニア。

口紅を浅く引いてるのか若干妖艶で・・・だけど小さな可愛い唇

全部言う前に塞いだ(物理)


「むむむふう!?」


サニアがびくりと痙攣し、ジタバタ暴れ出す。

まるでシノンと同じような状態だ・・・偽装姉妹のくせによく似た奴らだ。


ハーフエルフィリアのせいで若干成長が遅れた早熟な体。

だが、、、そんな彼女だからこそ魅力的だ。

手に収まるぐらい小さな尻部を揉みしだき、一本一本小さな歯を形が分かるまでなぞる。


ああ、、、ビンビンだ。

サニアの笑うと出来るえくぼが出来る部分を何度もなぞり、その手は首筋をなぞり長い髪を何度も掻き分ける。

綺麗で滑らかで、、、シノンとは別の意味で癖になる彼女の髪を何度も撫でる。

勿論未だにジタバタ暴れる彼女の口は常にホールド状態だ。


三つ責めが効いてきたのか彼女は段々膝がガクガクし始めてる。


「マスター、、、『解けました』」

「んむうう?・・・ぶはっ、しょうがないか」

「ぶはっ、、、はあ、、、はあ、、、なにするのよおにいさん・・・初めてだったのに」


サニアが涙目で蹲るが文句は後で聞くぜ。

かなり名残惜しい気持ちよさだったが今回の目的はサニアとファイト一発ではないので仕方ない。

彼女をツバキに任せ、俺はようやく冷静になった頭をふるふる振る。

辺りを見渡せば皆が手を止め、俺とサニアの痴態を眺め呆然としていた。

本当に作戦を知らない俺の仲間達までポカンとしていた・・・言っておいたはずなんだが


「サクラしねえええええええええっ!」

「ぐっ、急に力が強く・・・」


一人の少女がぶちぎれてるのを除いて・・・皆呆然としている。

ガルブレイク、、、俺にその怒りが降り注がれないように上手く消化付き合ってあげてね?

修羅と化したシノンと目を合わせないようにしながら俺は女王陛下の前に立つ。

そして、、、彼女の元で跪いた。


「女王陛下に突然の無礼の謝罪を!しかしひとつ詮議していただきたい議題がございます!」

「・・・・へ?」


女王陛下は同じくあんぐりと口を開けていたが話しかけられたのが自分だと気付くと表情を引き締めた。


「王国へのクーデターを起こした人間の話など聞くつもりはないが?」

「これは王国の未来を憂慮したため起こしたものであります!」


『内在型身体強化』で強化した声が会場中に響く。

呆とした空気につつまれた場所が急に緊迫する。

しかし誰もが剣を交えるのではなく、耳を澄ませる。

直感的に聞くべきだと判断したのだろう・・・『主人公』の話を


「・・・・憂慮?」

「ええ、、、憂慮したのです。王国が今抱える帝国、人間同盟、英雄連邦との戦争について」


女王陛下からお前が何を言いだすという怒気が発せられる。

だが、常人では逃げてしまうほどのその怒気も主人公にはただの御褒美だ。

・・・ま、上手く話が進めばの話だが。

出来る限り不敬にならないよう口調に気をつけながら、、、そして周囲に気を配りながら話のペースを離すまいとする。


「陛下はこう仰られておりました。戦の為に勇者を生み出すと・・・そのお言葉に間違いはありませんか?」

「そのとおりだ」


何をいまさらと彼女は怪訝な顔で頷くが、、、俺は言葉を続ける。


「何故勇者候補がゼノンなのですか!」

「・・・・どういう意味だ?」

「俺の方が強い!俺が勇者であるべきだ!最も強い人間が勇者であってこそ戦争に万全の状態で挑める・・・そのはずでしょう、陛下!!!」


ざわざわざわざわ


王国民のざわめきが大きくなる

今度のざわめきは勇者たちでは止められない・・・『主人公』の言葉であるから

実際に聖十剣やガルブレイクやゼノンを難なく弾き飛ばす俺達の姿を見ているから

俺の言葉に納得しかけている・・・王国中枢部は違うようだが

女王陛下はさも面白いことを言うと大笑いする


「はーっはっは!何が憂慮だ、馬鹿らしい!お前にそれ程の強さがあると証明しきれるか?」

「ゼノンと剣を合わせるあの三人は俺の力で倒した者達です・・・証明になるかと」

「・・・・・そうなのか!」


三人が首肯する。

聖十剣や魔族と戦ったあの戦いの最も重要な点は『今』『この場所で』俺の強さを保障してくれることだった。

彼らの言葉、、、そして実際に証言してくれることで王国民たちがますますゼノンに不信を抱き、俺の言葉を信じる。

女王陛下もそれは分かっているのか苦々しげに顔を歪める。


当然だ。

今俺達を倒し放逐するのは簡単なことだ。

だがそれをしてしまっては王国中枢部に対して王国民は不振を抱く。

そして『聖女勇者信仰』が崩れる。


勇者は最強でなければならないし、聖女は最強の人間に勇者としての力を与えなければいけない


このルールを使いながら、、、このルールに今首を絞められている。

藪蛇をついたな、陛下・・・更に会話のペースを握ってやったぜ。

そして次の流れも大体わかる。


「つ、強さで選んでいいという話なら!帝国の雷の勇者を選んでもいいといえる!王国に忠誠を誓う人間だからこそ王国の勇者なのだぞ!?」


そう、、、こう来る。

でも、、、、、、それは弱い。

俺が王国民でないから忠誠心が弱いは・・・今は関係ないんだ。


「わかりました!」

「・・・な、なにをだ?」

「ご報告します、お義母様!私サクラ=レイディウスは聖女サニア=エーメルティーと清く淫靡な関係でございます!」


静寂が会場を包んだ・・・そして氷解した。


「「「「「「「「「「「「「えええええええええ!?」」」」」」」」」」」」


突然のカミングアウト

飛び交う悲鳴と怒号(今日一番)

もうわけわかんないと呆然する女王陛下

現実逃避しようと自分で自分の意識を断つサニア

ぶちぎれて更に父親に殺人魔術を行使するシノン


「女王陛下も皆さんもご覧になったでしょう!?恋人同士の熱いヴェーゼを!あれこそが王国への忠誠、、、否!聖女サニアへの愛の証明なのです!」


王国中にろくでもない話が喧伝されていく。

それはそれはろくでもないのろけ話(脚色済み)が


「私は彼女が修行の旅に出ている時に彼女と出会い、、、一瞬で恋に落ちました!モルロンド伯爵領の恋人の高台でいつも共にいることを約束し、、、酒を共に飲み干しました!あーんして貰うくらい彼女とラブラブでした!私が書いたポエムを彼女が読んでくれたこともありました!私のことをいつもいつも甘い声でおにいさんと呼んでくれました!二人きりの部屋の中で!屋敷のとある一室で!野外で!宿屋で!・・・ご想像にお任せしますが素晴らしいときを彼女と過ごしました!それはそれは素晴らしい時でした!最初はおっかなびっくりだった彼女も最近では言葉責めしてくれるように・・・それはそれはすばらしBUHAAAAAAAA!?」

「何喋ってるのよお!?」


真っ赤な顔したサニアが意識を取り戻したのか思いっきり顔を蹴り飛ばしてきた。


「何するんだよ、サニア!?」

「こっちの台詞だよ!今の会話王国中に聞かれてるんだからね!?本当に何やってるの!?」

「公開生告白だ・・・お嬢さんを愛してます的な」

「なんでこんなところでするのよ!?」

「そりゃあシノン共々俺は責任取るつもりでしたから・・・取り敢えずちょろそうなサニアからゲットしようかと。勿論約束通りシノンも嫁にもらう。」

「・・・・本当に死ね、ばあかばあかバカっ!」

「いっだだだだだ!?」

「マスターは本当に性欲の塊で下種野郎ですね!」

「そんなこと笑顔で言わずに助けてくれ!」


ツバキがジタバタ真っ赤な顔して暴れる小さな女の子を連れていく。

・・・・・・さてと可愛い恋人(本人未承諾)の為にも最後の決着をつけますか


「女王陛下!」

「・・・・なんだ」


もう疲れ切った顔でせっかくの美人が台無しな彼女に『ここで』提案する。


「俺とゼノン・・・どちらが勇者にふさわしいか決闘で確認させていただきたい!」

「よかろう・・・好きにせよ」


彼女は抗言するのも疲れたと手をひらひら振る。

よし、、、第一段階は突破だ。


第一段階『勇者候補になる』

第二段階『勇者の能力を持ちいずとも勇者を超越することを王国中枢部に知らせる』

第三段階『既に勇者級の力を持ってるのだからと王国中枢部に納得させ、サニアの命を使わせないで戦争に勝つ』


ここからが始まりだ。


「そうだ、サニア」

「何よ!」

「お前とシノンっていう美人な嫁さん手に入るんだし、勇者になれるしで俺は自分が犠牲になったとか思ってねえから」

「・・・・本当に死んで!ばかぁ!」


素直になれない嫁さんだこと・・・

種族:ホモ・サピエンス

年齢:15

職業:曇の奇術師

冒険者クラス:上級冒険者

パーティー所属:フェデラ

本属性:曇(黒) 補助属性:

本質能力:『補助する鬼才≪サポート・ギーニアス≫』


スキル:【発動級】『曇の壁≪ウォール≫』『黒曇衣≪コート≫』『曇の雨雨≪スコール≫』『曇の沼≪プール≫』『曇の一撃≪ショット≫』『曇の増成≪パンプアップ≫』『黒雲の蓑≪ミノムシ≫』『曇の支配権奪取≪ハッキング≫』『内在型身体強化』『動く曇道≪オート・ステップ≫』『曇の陶器≪クラフトワークス≫』『曇の小雨≪ウォーター≫』『曇感知≪サーチ≫』『曇靭紐≪クラウド・ワイヤー≫』『曇震伝波≪ドンシン・クロッシング≫』

【詠唱級】『曇神の審判≪クラウド・ジャッジ≫』『曇神宮の柱≪クラウド・ポール≫』

new

【発動級】『浸みこむ曇≪ソーク≫』

【詠唱級】『壊れるまで叩きつけられる曇神の破城槌≪エンドレス・ハマー≫』

称号:なんちゃって異世界人  甘ちゃん 災害指定生物 破門された人 ロリコン疑惑 変態 キチガイ 薄っぺらい奴 パーティー結成おめ 失い人 エロい人 自己犠牲の塊 疑心暗鬼 世界からあいらぶゆー!疑似暴走魔力適合者 外見悪役 

new

奇妙な友情「トツカさんのは完璧にあなたのせいです」

指名手配「ついにやったか・・・って気分です」

窃盗未遂「え、結局しなかったんだ、ふうん・・・って気分です」

ミルの舎弟「あ、褒め言葉じゃないです」

連続強姦未遂「もう性欲魔人な貴方は死んだ方が世の女性の為だと思います」

痴態公開「さいてー!」

勇者を目指す者「名前は立派だけど、、、目的が、、、ねえ?」

主人公を志す者「そろそろ自分が分かって来たんじゃないですか?」

兵装:ミルにそれぞれ魔改造された詳細不明

new

『大魔法玉』-???

『???』-???

『????』-???

装備:軽剣士用の軽めの衣服

特記:左腕と『斬篭手』が融合している。それによって斬龍の剣術『龍の剣術』を使用可能。ただしその技に耐えきれる刀を持っていないため真の力を発揮できない


閑話を出来るだけ早めに投稿し第四部終了したいと思います。

第一部閑話みたいなifですが結構今後の話含ませるつもりなんでネタバレ嫌いな人は・・・閲覧注意です!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ