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第6章『役割』part3

目の前に立派な門があった。

神々しいまでに光り輝き、、、左右の門柱はごてごてしいまでの奇妙な装飾。

自然と体がここに吸い寄せられた。

何もかも嫌になって辿り着いた場所が・・・何故かここだった。


「なんで?」


思わずそう呟いてしまった。

いつもは寂れてるしもっと小さいし、、、何より封鎖されてるはずの鷺ノ宮高校裏門。

思考は近づいてはいけないって訴えかけてる。

でも心と体はそれに反抗する。

・・・気づけば水の中だった。

でも真上は光が見えたからすうっと浮かび上がるだけだとすぐ気付いた。

顔を水面に出し、深呼吸する・・・自然の中でしか嗅げない木々の匂い。

湖そして青色の葉が生い茂る木々。

暖かい気候のせいか、水も風も苦痛じゃなかった・・・暖かい?

今は冬のはずなのに?


「・・・ここは?」

「帝国でも限られた人間しか入れない聖地です」

「!?」


私は、、、生まれて初めて成人した男の人のアレを見てしまった。

目の前には水浴び中の・・・裸の男の人がいた。

良く鍛え上げられた肉体・・・綺麗とさえ評せるほどの・・・って


「うわあああああっ!?」

「私の台詞ですよ、全く・・・」


目の前が真っ白になった。





どうやらぼうっとしてたみたい・・・


「優?」

「あ、、、ごめん」


楓と帰りにご飯を食べることにしたので、ハンバーガー屋に来てた。

そろそろ雪が降りそうな季節だから電車とか大丈夫だろうかとつい憂鬱になってしまっていた。

顔を彼女の方に向けると、、、ふくれっ面でも可愛い顔があった。


「・・・・・・・・」

「な、何で頭撫でてくるの!?私ちょっと怒ってるのに!」

「つい、、、ね?」


撫でたくなる可愛さ・・・さすが楓。

彼女にはどれだけ負けてても劣等感は抱かない。

それを越える分の撫で繰り回したい愛おしさを感じるだけだ。


「ちょ、やめてよお!」

「にひひ、、、ごめんごめん」

「もう!、、、あれ?」

「え?」


窓側の席に座ってたんだけど、影しか認識できないほどの勢いで窓の景色を黒い人影が通り抜けていった。

えっと思って影の行き先を目で追えば、既に遠くへ走っていってしまっていた。


「な、何!?」

「鷺ノ宮高校の制服着てたよ?」

「よ、よく見えたわね」


楓は天然な性格や小柄な体格とは裏腹に反射神経や運動神経はかなり良い。

普段から近くにいるはずなのについ忘れてしまうけど・・・


「葵ちゃんだった気がする・・・」

「そうなの?」

「じゃなかった?」

「いや、見えなかったし」


片づけ終わって解散して、、、確か葵は親から連絡受けたとか言って一人で帰っちゃったけど・・・もし葵だとして何でこんなところを?

いくらなんでも見間違いじゃないかな?

普通の人なら私みたいな考えするぐらいで普通は行動しない。

でも、私の親友は普通じゃない。

ハンバーガーを手に持ったまま立ち上がると大声で宣言する。


「おいかけよう!普通の様子じゃなかったよ!」

「・・・だと思った」


しばらく寒いから出来れば外に出たくないとえんえんと言い続けたが、結局彼女は折れなかった。

諦めて彼女と外に出る。


「葵ちゃんは、、、あっちに行った気がする!」

「その超感覚を信じて寒い中走れって言うの!?」

「行こう、優!」

「申し訳ありません、御二方」

「ふえっ、いつの間に!?」


もうこれは満足するまで付き合わなきゃいけないかと半分あきらめ気味に思っていたら、急に声をかけられた。

声をかけてきたのは高校生ぐらいの着物姿の少女と執事服姿の少年だった。

何故二人ともコスプレしているのか・・・そして何故和洋を揃えないのか・・・意味が分からない二人組だった。

執事服姿の少年が私たちの方に一礼して話しかけてくる。


「先程『葵ちゃん』と仰られていましたが、もしかして伊月葵嬢のことではありませんか?」

「そうですけど・・・あなたは?」


不審に思って思わず聞き返すと、彼はこれは失礼しましたと慌てた様子で着物姿の少女を紹介し始めた。


「こちらは卯生月美織様です。そして私はその『侍従』の『勝海』と申します。」

「「・・・はあ」」

「美織お嬢様と伊月葵嬢がお話しされている最中に急に伊月葵嬢が席を立たれ駆けだされてしまい現在後を追っている最中なのでございます。よろしければどちらへ向かったか教えていただけないでしょうか?」

「えと、、、あっちです」


思わぬコスプレ人間の登場に勢いが削がれたのか、楓が指さした方を確認した執事さんはありがとうございますと言ってすごい勢いで走り出した。


「では、行ってまいります!」

「・・・ほどほどにね」


どこか疲れた様子の着物のお嬢様はふらふらっと手を振り返した。


「大丈夫ですか?」

「ええ、、、あの二人がまさかあそこまで早いとは思ってなくて・・・」

「は、はあ・・・」


近くのベンチに向かうよう手を貸してあげる。

ふうとようやく落ち着けた様子の彼女は私たちの服装を見てあら?と小首を傾げた。


「もしかして葵ちゃんと同じ学校の方ですか?」

「ええ、鷺ノ宮です。」

「そうですか!それはよかった!」

「「?」」


ふんわりとした雰囲気をようやく取り戻した着物少女は両手をとんと合わせると笑顔になった。


「今度そちらの学校に転校することになったんです。よろしくお願いしますね!」

「そうなの!?よろしくね!」


・・・ああ、また変な奴が来た。

変人二人がお互い自己紹介し始めるのを見て、私は溜め息をつかざるを得なかった。





「桔梗、きっきょー、KIKYO!!!」

「スーザ、、、暑苦しい」


家に久しぶりに帰ったら、俺よりもっと久しぶりに帰って来た人がいた。

スーザ先生が超幸せって顔で桔梗さんに抱き付いている。

ソファに座る桔梗さんは困った顔をしながらも特に抵抗はしていない。


「ただいまっす」

「あ、帰れたんだ」

「おかげさまで」


朝顔が当たり前のように桔梗さんの横に座る。

そしてスーザ先生と同じく抱き付いた。


「桔梗さん!」

「朝顔、、、あんたは少し背伸びた?」


桔梗さんになでなでされて朝顔はとろんと目を細めている。

・・・最初から桔梗さんが朝顔たちに命令してくれれば三週間も家を追い出されずに済んだんじゃないだろうか?

桔梗さんは本当に女殺しだ・・・そういえばと椿を見てみれば、彼女は相変わらず俺の隣にいた。


「何か?」

「いや、、、ここまで来たら椿も桔梗さん!って飛び込むべきじゃね?」

「暑苦しいのでいいです」

「そういうとこ桔梗さんっぽいな・・・」


ちょっと冷静ぶってはいるが椿はしきりにきょろきょろしている。

・・・なんだかんだで自分の家に来るのは初めてだろうしな。

どこが自分の場所かもわからず、居心地悪そうにしている。


「座ってな」

「え、あ?」

「うっわ桔梗にも朝顔にもそっくり!ごめん、ちょっと抱き付かせて!」

「ふわあっ!?」


スーザ先生の隣に座らせる。

すると如峰月家の女系の血にのみ反応する金髪美女が早速反応し始めた。

桔梗さんが少し楽になったとほうっとする横で、椿がぎむぎむスーザ先生に抱きしめられてる。

朝顔は幸せそうだし、スーザ先生はもっと幸せそうだ。

伊月がいないのは残念だが家族全員集合・・・・かな?


「うし、久しぶりに料理させてもらおうかな・・・桔梗さん、何か食べたいものあります?」

「なら、私も

「逃がさないよ!」

「ふえぇ兄様ぁ・・・」


椿が涙目になって助けを求めてくるが桔梗さんをゆっくりさせてあげたいし・・・今日ぐらい我慢してくれ。


「特にないけど・・・朝顔何が食べたい?作ってあげる」

「え?桔梗さんが作ってくれるんですか!?何でも食べます!」

「おい、朝顔・・・いつもの低カロ低カロはどうした」

「ああん!?」

「・・・なんでもないです」


桔梗さんは長い髪をくるくると纏めバンスクリップで纏めるとさっと立ち上がる。


「桜、鍋にするから手伝いなさい」

「ほいほい」


桔梗さんがこの家の主である以上、女尊男卑は当たり前。

喜んで馬車馬のように働かせていただきますよ。

騒がしいリビングを出て、キッチンへと向かう・・・が早速問題が発生した。


「「・・・スーザ(先生)」」


料理してくれない+料理できない二人のせいかキッチンは大量の軍用レーションの残骸が転がっていた。

正直ゴミが散乱して料理する環境じゃねえ。


「まずは片づけからっすね・・・桔梗さんは全部済むまでリビングで休んでてください。片づけ済むまでの間にの適当なつまみや酒用意するんで」

「・・・そうしたいのはやまやまだけど、これを見てあなた一人に任せる程私は鬼じゃないわ」

「本当は散らかした本人にやらせたいんすがね」

「・・・・・・・さっさと済ませましょう」


俺と桔梗さんはスーザ先生の家事スキルがわざとやっているんじゃないかと思うぐらい壊滅的なことを知っているので、大人しく掃除することにした。


「そういや急にでしたね、お休みとれたんすか?」

「ひとまず様子見って段階なんで任せてきたの・・・一日だけの休暇」

「労災って言葉知ってます?」

「私自身が雇い主なんだしどうしようもないでしょ?」

「・・・市長がいませんでしたっけ、上に?」

「ああ、いたわねそんなの・・・」


桔梗さんは本気で忘れていたようでアンタ天才ねと肩を叩いてくる。

桔梗さん・・・あなたは副市長の分際でどれだけの権限を持ってらっしゃるのでしょうか?

てか、自分で自分の休暇を削るってどんだけ労働キチなんだよ。


「体に良くないっすよ?」

「いいわよ、どうせ結婚したら辞める仕事だし」

「え・・・そうなんすか?」

「如峰月家からは連絡ないけどいずれは見合いの話が来るだろうし・・・」

「・・・・・・如峰月家」


如峰月家の意向を無視して俺達の面倒を見てくれてるらしいが、家の方では厄介者扱いされてないだろうか?


「あ」

「どしたんです、桔梗さん?」


桔梗さんは如峰月家というキーワードで何か思い出したのか、彼女にしては珍しくあんぐりと口を半開きにしたまま固まった。

しかも俺が目の前で手を振っても呆然としているぐらいの衝撃。


「桔梗さーん?」

「・・・ハッ」

「どしたんすか?」

「・・・・・・私は普段忙しいの」

「・・・そうすね」

「一息入れましょう、、、コーヒーどこにあったかしら?」

「あ、冷蔵庫にアイスあると思いますけどどします?」

「すぐに呑みたいからそれで」


桔梗さんは手渡されたアイスコーヒーをぐぐっと飲み干した。

そして、、、、覚悟を決めた顔で俺の肩に手を置いた。

何でしょう、、、甥ですよ僕は?


「如峰月家から連絡があったのよ・・・つい最近」

「・・・お父さん関係っすか?」

「違う」


だろうな・・・今更すぎるし。

てか、なおさら何の用事だよ。

桔梗さんは一度目を閉じ頭の中で整理をしてから口を開いた。


「あんた、、、特定のお付き合いしてる女の子いないわよね?」

「はあ!?いるわけないでしょ!」

「じゃあ、付き合いたいとか思ってる女の子は?」


朝日奈楓・・・だが彼女と俺は釣り合わない。

だからいるかいないかで言えば


「・・・・・・・いないといえばいないすね」

「そう、、、話が早いわ」


桔梗さんはにっこりと笑顔になる。

普段は無表情か仏頂面が多い彼女の笑顔に思わず心臓を握りしめられる。

頬に思わず熱が高まる、、、耳まで熱くなる。

桔梗さん距離近いッ!


「ねえ、、、借りを返してもらっていいかしら?」

「は、、、はい」


こ、こんな場所で?

み、皆リビングにいるのに?

ち、血がつながってるのに?

め、目をつむる・・・俺からは自信がないから


「じゃ、お見合いしようか!」

「・・・・・・・・・・・」


目を開いた。

目の前には桔梗さんの顔が広がっていた。

特に肉体的な接触もなく、鼓動の高まりとかよく考えたらそんなんなかったわ

・・・・・・・・・・てか、今桔梗さんなんつった?


「いま、、、なんて言いました?」

「お見合いしよっか!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ!?」


桔梗さんは驚く俺からそっと目を逸らした。

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