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第5章『意志』part3

第5章終了!

「か、体中が痛い・・・・いつもこんな負担がかかる動きしてるのかキチガイは・・・」

「だ、だれが・・・き・・・ちがい・・・だ」

「勝った二人が一番重症ってどういうこと?」


俺は魔力枯渇ギリギリの状態で、トツカは普段は非戦闘職のくせにメルキや俺みたいな動きをした後遺症で一歩も動けない。

ソファでぐだ~っとしてる俺達に一番元気なボボルノが呆れた視線を向けて来る。


「目が覚めてみたらどうしてこうも忙しくなる・・・」

「頑張った・・・んだ・・から少しは誉め・・てくれ・・・もごっ!?」


唯一回復魔法を使えるシノンが『治癒の粉雪』をトツカや俺に積もらせてる。

トツカはともかく俺は意味ないし、止めもぐっ!?

怒っているのかヤケクソなのかどっさりと盛られた大雪の中から顔を出す。


ミミアンに用意してもらった魔道具の大繩で縛り上げたビグラス

俺と同様回復処置を施されたお蔭で意識を取り戻した聖十剣第二位そして三位

更にはコウ達まで

かなりの大所帯がミル屋敷の客間でそれぞれくつろいでいた。


「あ、顔出すな!」

「むがっ!?」


客間の描写中に邪魔すんな!?

シノンに青白い大雪の塊を押し付けられ再び雪山の中に詰められる。


「お前はただでさえ治癒魔術が効かないんだから今日一日そこから出るな」

「ええ・・・俺頑張ったのに」

「問答無用だ!」


助けてくれりゃあいいのにコウもツバキも笑ってみてるだけだ。


「仲が良いねえ」

「ええ、二人は仲が良いです」


冷たい冷たい雪の山に押し込める行為が仲が良い二人の行為だとすると俺は体が持たない。

シノンに小がしたいので出ていいかと聞けば一日は出さないと言ったはずだという有り難いお布施を受けた俺はため息つくしかない。


「・・・漏らせと?」

「婚前前の女性にそんなこと言わせる気か?」

「・・・・・・・はあ、せめてお前の顔を見て話したいから顔だけは出させてくれ」

「っ!?、、、いいけど」


雪だるま状態で改めて部屋を見回す。

三つの陣営で別れた部屋・・・しかしその部屋の主と一人の女の子はいなかった。


「上手くまとまるだろうか・・・」

「大丈夫だろ?」


ミミアンにトツカと相談して渡したものが二つ。

ビグラスから奪ったミミアンを救える設計図が書きこまれた『巻物』

そして魔力紋に完全に合わせた魔力を何倍にも増幅させる共鳴鋼の原料『龍応石(?)』


どちらも簡単に手に入るものではない

魔国の技術と龍人の郷ですらそう手に入らない龍人の証

苦戦の末の戦功とドン・クラークのお土産のお蔭でもしかしたらミルとミミアンが助かるかもしれない


「『鑑定』で確認したけどあの二つを組み合わせれば随分溜魔石のグレードを下げられるはずだ」

「・・・じゃ、問題ないか」


トツカのお墨付きだし問題ないはずだ。


「待て、、、確認した?『商業7条』が掛けられていたはずである・・・」

「お、起きた?」


縄で縛られたビグラスがこっちを睨んでいた。

シノン、コウ、ツバキがずざっと庇うように前に立とうとするのを制して俺はビグラスと睨みあう。


「『商業7条』・・・確か商人として生きることを決めれば手に入る比較的手に入れやすい本質能力だよな?」

「そうである、、、契約の成立なしに品物が詐欺や窃盗で奪われないようにする本質能力。この世界の商業を支えるとすらいわれる本質能力・・・それをいったいどうやってかいくぐった!?」

「どうやってって言ってもな・・・」


開こうとした瞬間、急にボロボロ崩れ始めたからそれを起こす魔法効果を破壊しただけだ。

本質能力のせいだったか・・・妙に手強いので『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』で『曇の支配権奪取≪ハッキング≫』使う羽目になった。

桜からせっかくもらったなけなしの魔力ももうねえし、尊い犠牲者シノンも出るし散々だ。


いやあ、、、魔力枯渇でヘロヘロで良かった。

抱き付こうとして雪山に閉じ込められたお蔭で未遂で済んだ。

もう冷静だし怪我はどうせ治らんから出してくれと言ってるのに出してくれないのはその件のせいもあるだろう。


「「「なん・・・だと・・・?」」」

「どしたん?」


お蔭でこの様だと説明したところビグラスどころか聖十剣どもまで驚いた顔している。


「それが本当なら商業の秩序が崩れてしまう!」

「『商業7条』があるからこそ信頼取引が出来ているんだぞ!もしこのことが知られれば、金融・貸家業とありとあらゆる信用業務が成り立たなくなるわい!」

「こんなバカなことがあってたまるか!というか何故お主の周りの人間は平然としておる!」


ビグラスが責めるようにシノン達に怒鳴るが彼女らは顔を見合わせるだけだった。


「こいつが無茶さえしなければ私はいい」

「マスターは世界を動かす人ですしこれぐらいできて当然ですから」

「魔術の終着点は『有り得ない』を起こすこと・・・君たちも分かってるはずだろ?」

「キチガイだからしょうがないよ、、、一々驚いてたらキリがない」


・・・トツカは後でシメる。

今まで龍人だからと手加減してたが頑丈になったそうだし・・・ジェットコースターハイテンションサクラのさらに先の世界を見せてやろう。


「何て奴らだ。まさか全員こんなやつらだとは・・・」

「「シノンお前まで、、、『獄炎将軍』や『十剣長』が泣くぞ・・・」」


シノンがぎっと睨んで来るが・・・いや、お前は元から超過保護姉だったりと俺寄りだったぞ?


「ま、そういうわけで・・・そろそろかな?」

「二人が話し合い始めてそろそろ一時間・・・もう朝だしな」


気づけば窓から朝日が入る。

仮眠を取っていたとはいえ、、、やっぱり朝まで起きてるというのは本能的に眠気を引き起こす。


「ふあああああっ、、、ツバキ、、、わりいが俺は動けないし代わりに様子見て来てくんね?」

「はい」


ツバキが首肯し扉を開ける。


「・・・ミミアンさん?」

「う、、、う、、、」


扉の前にはミミアンがいた。

ツバキが声をかけると彼女はツバキに抱き付いた。

くぐもった・・・泣き声が聞こえる。


「たく、どうやら七代目はかなりの頑固者だったようで・・・シノン」

「なんだ?」

「・・・・・・・・え?分かんないの?」

「冗談だ」


術式が解除され、雪だるま状態から解放される。

長らく動かなかった体をパきぽき慣らしながら、皆を見る。


「サシで話してくるわ~」

「聖十剣は?」


そういえば大人しくしてくれてたから拘束何もしてなかったな・・・

俺がいなくなっても大丈夫かもしれんが、、、どうすっかな?

ま、いいか


「王宮には帰せないけど、大人しくしてくれてれば今まで通り拘束はしなくていい」

「我も拘束を外してくれていいのだが?」

「流石にアンタは無理・・・でもあんたも一週間後には解放する。我慢してくれ」

「・・・一週間後?」

「ま、楽しみにしとけって。あ、聖十剣も同じだし・・・少しの間我慢してくれるか?」

「どうするジョージ?正直俺はコイツ気に入ったし、しばらくお世話になるが」

「負けた身じゃ・・・殺されんだけ有り難い」

「あっざ~す」


扉を越え、、、ミルがいそうな場所に向かう。

ミミアンの作業場に。


「よお、ミルの兄貴・・・なに、女の子泣かせてんだ?」

「・・・・・・・・何だ変態か」


絵が氾濫する部屋の中、ミルは力なく倒れ伏していた。

その頬は真っ赤に腫れ上がってるのに対し、他の顔の部分は蒼白。

目に至っては生気がない。

取り敢えずズカッと地面に座り込み、話しかけてみた。

・・・ヤケクソって雰囲気だな、全部駄目になったって感じ?


「溜魔石がなくても、、、十分助かる方法を見つけたはずだ・・・なのに何で死んだ顔してる?」

「十分・・・か。そうだな僕たちの為にボロボロになってくれたみたいだな。無駄なことをしてくれてありがとう」

「無駄?何で?」

「魔族の技術ってことは・・・魔国でしか採れない原材料も必要ということだ」

「・・・あ」


戦闘職と生産職の常識が食い違い過ぎてたようだ。

そりゃそうだよな・・・普通そうだ。

うっわああとしかいいようがない気分に襲われる。


「え、、、王国の技術で代替できねえの?」

「出来る・・・が時間がかかる。ミミアンの為に溜め込んだ溜魔石が足りない。」

「んんん?共鳴鋼は計算に入れてか?」

「それでも足りない」


・・・結局王国につくか、魔国につくかしかないのな。


「なんつーか、、、ドンマイ?」

「君は、、、僕を怒鳴りに来たんじゃないのか?」

「いや、、、取り敢えず来ただけっつ~か・・・最後のお別れしたんなら一応挨拶しとこうかと・・・」

「最後のお別れ?」

「・・・・・・・・・聞いてねえの?」

「何のことだ?」


・・・・・・・ちっ

ミミアンが言っても無駄だって判断したのか?

それとも、、、言っても通り抜けたってか?聞いてくれなかったってか?


「おい、、、ミミアンと何を話した?」

「特に、、、何も」

「・・・・・・・・・・・・だから泣いたのか」

「何だよ・・・何だその責める目は!どうしろって言うんだよ!どうしたらいいんだよ!」

「・・・・・・・・・何も言いたくねえ・・・・・・信じてた俺が馬鹿だったよ」


王国についても溜魔石が足りない

魔国についても必要な部品がきちんと与えられるか分からない

状況が改善してもダメなものは駄目だった・・・・か。


「それでも、、、話し合ってほしかったよ」

「話し合う?何を?何で?」


いつもみたいに怒鳴る気が起きない、、、何でか知らんが。

あくまで俺はこの国にサニアを救いに来たから、、、これはサブイベントだからとか・・・そんな思いがあるわけではない。

同じくらい大事なことだって思ってる・・・だからだろうか・・・ただただどっと疲労感が溜まる。

そんな俺の態度に触発されたのか、、、ミルが掴みかかってくる


「何だよその態度は!お前に俺の気持ちが分かるか!?もうどうやってもミミアンを救えないって絶望する俺の気持ちが!彼女に償いきれないことをしてしまった俺の気持ちが!」

「はあ、、、しらねえ。言ってみろ、聞いてやるから」

「俺が無茶なことをお願いしたせいで・・・ミミアンは人間として生きれなくなった!本質能力を失って、、、大事な夢を壊された!そして、、、俺のせいで、、、普通に死ぬことさえできないんだぞぉ・・・」


自分で噛みついてきながら、自分で崩れ落ちていく。

どうしようもない壊れ性能だが、、、


「普通に死ぬ?」

「ミミアンは元の体の半分以上を失った、、、、そしてその為に生きるどころか考えることさえできなくなった・・・・・・今の彼女は魔道具がないと、、、いや魔道具に考えさせられてる状況で、、、自分で考えることすら出来ない、、、魔道具が生きてる状態なんだ!・・・だから俺は、、、彼女に償わないといけないんだ!せめて残った彼女の体が死なないように!自分で考えられない彼女が朽ち果てないように・・・それが僕に許された最後の贖罪のはずなのに!・・・それすらもう・・・ううううっ」


・・・・・・生きてるさ

ミミアンは死んでない。

魔道具に考えさせられてる?魔道具に動かされてる?

そんなことないさ。


「ミル、、、、、見てくれ」


顔を掴み、無理矢理手に持った一冊の本を向ける。

ミミアンが描いた魔道具を作ってるミルの絵。


「ひにくのつもりかぁ、、、そんなものを、、、彼女を『魔道具人間≪サイボーグ≫』にした・・・自分で考えることも出来ない生きるしかばねを作った俺に対する皮肉のつもりかぁ!」

「皮肉ではあるが、、、そう言う類の皮肉じゃねえ」

「じゃあ何のつもりだ!」

「ミミアンは・・・・・お前に笑顔でいて欲しかったんだよ・・・・自由気ままに魔道具作ってさえいてくれれば・・・それでよかったんだよ」

「そんなの、、、、出来るわけないだろ!俺のせいで、、、、彼女は、、、、彼女は、、、死んだんだぞ!?」

「死んでねえよ・・・・」

「はァ!魔道具師でもないお前に、、、ただの戦闘職のお前に何が分かる!僕が作った魔道具なんだから僕が魔道具作る姿が好きなのは当たり前だろ!そう考えさせられてるんだろ!」

「そうだな、、、わかんねえよ。魔道具使えても仕組みなんか全然分かんねえし、、、彼女が生きてるって・・・魔道具じゃなく自分で考えてる合理的な説明はできねえ」

「なら

「だがな!・・・・お前よりわかってる」

「なおごおっ!?」


絵をミルに良く見えるようもっと近づける。

鼻先にまで近づける、、、良く見えるように何も考えないように良く回る口も抑える。


「よく見ろ・・・よく見ろ・・・・そしてその後に・・・・・・いつも鏡で見ている自分の姿を思い浮かべろ」

「・・・・・・・・・!・・・・・」

「そうだ、、、美化されすぎてる」


魔道具に考える力があるとはいえ、、、絵を完全に模写する力はあっても、、、美化する力、、、自由に表現する力なんてない。

第一そんな力付属したらいくらミルの魔道具とはいえ、溜魔石がどれだけあってもすぐに干上がる。


「ミミアンは自分で考えてる・・・そして彼女は・・・自分でお前から離れることを決断しようとしてる・・・」

「・・・・いやだ」

「なら、、、もう一度話し合え・・・もう一度」

「・・・・・・・・・・」


ぼろぼろ黙って頬から涙を流すミル。

どんな心境かはわからない・・・がやっとミミアンと話し合う状態になっただろう。

部屋からでる・・・前に一つだけ伝えておこう。


「そうそう、、、もしミミアンと共に生きる決意が出来たなら俺を頼れ。メインストーリーついでにお前らも救ってやる。力は貸してもらうがな?」

「・・・・・・・・・」


部屋をでて、、、扉の前に立っていたミミアンを入れた。

そして、、、、、、皆と一緒に待った。






「悪いね、他にこの三人がいても大丈夫なところが分からなかったんだ」

「・・・・・・・魔道具盗みにいったはずなのに聖十剣二人に魔族一人を誘拐することになったのか。」

「説明いるか?」

「いいよ、、、混乱するだけだろうし」


メルキがギルド長室で混乱した頭を少しでも正常にしようと両コメカミをぐりぐりしている。

聖十剣二人にビグラス

目立ちすぎる三人をモルトリオンドの所有する建物で預かってもらうことになった。


「で?どうするんだい?」

「・・・ああ、方針は決まった」


ミルと契約を結んだ。

魔道具を援助してもらう代わりに王国から溜魔石を頂くことを。

後払い契約になるが王国よりも魔国よりも俺が一番信頼できるらしい。


「ふーん。じゃあ足手まといはいなくなるんだね」

「ああ」

「で、、、、どうやって救うつもりなの?方法に納得がいけば手助けしてあげるよ?」

「・・・・・・・・・」


呼吸を一度整える。

もう引き返せないから、、、しても無駄なことなのに・・・正しいかどうかをもう一度確認する。

・・・大丈夫・・・寧ろ・・・ツイてる。


「メルキの力は・・・借りちゃ駄目だ。今回は俺だけの力で切り抜けなきゃ・・・駄目なんだ。そっちの方が主人公だし。」

「・・・・納得いかなきゃ貸さないとは言ったけど、無謀だよ?」


天使メルキセデクは怪訝な表所で戒めてくる。


王国の種の魔術師であり二代目勇者『獄炎将軍』ガルブレイク

更に王国最強『女王陛下』

新将軍であり勇者候補『十剣長』ゼノン

更には聖十剣や厳しい訓練を受けた兵士たち


天使みたいな反則級の力がなければ・・・いくらミルの協力があっても無理だろう。


「どうしてもって言うなら、、、メルキの名前を貸してくれ。上級冒険者試験の時みたいに」

「・・・・・・・どういうことだい?」

「無理矢理奪うのは、、、多分無理。だから『正当な』やり方でサニアを取り戻す。」


メルキは俺が今回手に入れた今までの戦果を思い返し、、、あっと気付く。


「最初からそれは考えてなかったよね・・・いつから君はそんなに無謀になったんだい?」

「きっかけは・・・どうすればミルとミミアンが一番幸せかってことを考えた時からだ」

「、、、寄り道じゃないか」

「ま、まあそうなんだけどね!?でも、サニアを救うためにはこれしかないんだよ!」

「なるほど・・・それでも確率はイチからイチに変わるくらいだね」

「でもこの選択なら俺は迷わない、、、っで!?」


メルキはいきなりでこピンかましてきた。

額を抑えて蹲る俺の上で彼女はただ淡々と告げた。


「覚悟してたこっちの身になれっつ~の。流石の私でも『獄炎将軍』や『女王陛下』の相手は無理なんだからね?」

「っで~ッ!」

「聞け」

「んあ?」


メルキが俺の前にしゃがみ込んで来る。


「・・・皆は知ってるの?」

「まだ、、、、伝えてない」

「早めに伝えな・・・それは一つの裏切りに近いからね。」

「・・・・・・うん」

「ふふふ、、、みんな私より怒ると思うよ~」


トツカとコウは取り敢えず一発殴らせろと言うだろうし、ツバキは謝りながら蹴ってくるだろう

まあ、殺されはしないだろう。

・・・問題は





勇者召喚の儀まで残り四日


「こんな大事な時期に・・・何でココなんだ?」

「良いんだよ」


一日しっかり休んで魔力を回復させた。

そして一日ガッツリ使って移動した俺はモルロンド伯爵直轄領に来ていた。

南方にある王国とは違いここはもう冬に完全に支配されていた。

白一色・・・そんな場所になっていた


「たく、、、あと数日しかないのに」


シノンと二人きりでその都市を訪れた。

王都と比べると流石の商業都市とはいえ小ぢんまりして見える。

それでも、、、俺とシノンにとっては大事な場所だった。


「両頬を張らし全身足跡だらけの時は何事かと思ったが・・・まさか攫われるとは思わなかったぞ?」

「ははは・・・」


移動中はふくれっ面だったシノンもここに着くと少しだけ表情が緩む。

時期が時期だけに今からは訓練するよりも休む方が大事だって分かってはいるんだろう。

『だから』無理矢理ここに連れてこられたと思っているんだろう

・・・実は違う


「で、どうするんだ?」

「一回伯爵邸に挨拶に行って、、、その後は少し遊ぼう」

「はあ、、、、一日だけな」

「お?物わかりいいな」

「お前の我儘になれただけだ」

「失礼な・・・」


モルロンド伯爵とメリッサさんに久しぶりに会って、、、ついでに服とかいろいろ準備してもらった。

分かってるよとお洒落な服と軍資金と避妊具を渡してきたモルロンド伯爵は何も分かってない。

香水まで貸してもらって凄く甘ったるいにおいを振り撒けられた。


「・・・本質能力で蘇ったドン・クラークに会った」

「・・・そうか」

「恨んでないって言ってた」

「そう言われても気にしちゃうよねえ・・・」


『彼』を尊敬する二人は同じようにため息をつくのだった。


「ビグラスが言ってた・・・最近出来たインモラルの副官がソーラの外見によく似た少女だって」

「そっか、、、生きてるかソーラは」

「ああ、ドン・クラークやモルロンド伯爵には悪いが・・・今すぐには助け出せない。でもいつか必ず助け出す」

「彼はそれでいいって言ったんだろ?僕も依存はないよ」

「・・・ありがとう」


俺の周りには・・・礼を言わなければいけない人が多すぎる。



普段は戦闘用の服

なのに今日は俺は貴族の子女が着るような少しゆったりとした男性服

シノンに至っては珍しくスカート履かされてる。

珍しいなと言ったら、王国ではこれが普通だったと答えられた。

慣れないスカートでもじもじする姿を見たかったのにと愚痴ったら冷たい視線を返された。

『葉擦れ』も『霜葉』も『魔法玉ポーチ』も『青色の篭手』も、、、更には俺の『斬篭手』まで特殊な加工をされ取り外され今はミルの手の内に。


なんだかんだで初めてシノンと武器なし魔術なしで歩く。

大抵なんだかんだで武装してなくても『陰魔を象る胸鎧≪サキュラス≫』やら『黒曇衣≪コート≫』着たまま行動してたしな・・・


「で、どこ行く?」

「シノンの好きな防具屋さん行きますか」

「ちょ、待て!?何故そこなんだ!?」

「最近モフれてないとか寝言で言ってたじゃん」

「!?」


防具屋でだいたい数か月ぶりに来たシノンをもみくちゃにするケモ耳娘達。

果物水をちびちび飲みながら俺は眼福だとほっこりしていた。


「シノンお姉ちゃんが戦士じゃなく女の子の格好してるにゃ!」

「これは猫耳のつけがいがありますね!」

「着せ替えがいがあるシュー!」

「ああ、、、屈しないぞ・・・屈しないぞ・・・」


ケモ耳娘たちを撫でまわしながら説得力の無いことを言ってる。


「おにいちゃん」

「ん?」

「これでいいかにゃ?」


ケモ耳ようじょが俺に小さな手のひらサイズの箱を手渡してくる。

中身を確認した俺はうんと頷いた。


「サイズは変えれるんだよな?流石に確認できないし」

「はい、魔道具なのでぴったりはまるです。」

「どーも」


箱をポケットに入れ、ケモ耳幼女をシノンにけしかける

ケモ耳幼女がちょこんとシノンの膝に乗る。

シノンはすわっと目をその瞬間かっぴらく。

その手は神のごとき妙技でケモ耳幼女を撫で繰り回す。


「ああ、、、幸せだ、、、、」


シノンが遂に本音を暴露した。

楽しそうで何より。





「「「「「ありがとうございました、シノンおねえちゃん!」」」」」」

「っ/////」

「ふくくくく・・・・」

「サクラ、、、面白がってるな?」

「ごめんごめん、、、でも楽しかったろ?」

「・・・否定はしない」


だっていつの間にか彼女の頭には猫耳、尻には猫尻尾がつけられてる。

・・・しかもシノンが気づかない間に

教えてもいいが、面白いから放っておこう。

最近は少しでも強くならなきゃと獄炎魔術の訓練ばっかしてたし・・・焦ってるのかずっと余裕がなかった。


「・・・焦るのはこれからは俺だけでいい」

「何か言ったか?」

「いんや」


猫耳ピコピコ尻尾ぴょこぴょこ

そんな彼女を皆が見る。

青髪ではあるがそのせいか皆が誰だあの美少女はと目を見張る・・・変装してもやっぱ目立つな。


「・・・少し場所を移そう。」

「いいぞ」


高台に向かう。

かつてサニアと約束した地に。

雪が積もっているため、登るのに少々苦労したが何とか着いた。


「わざわざ高台にまで連れてきてどうするつもりだ?」

「ああ、、、伝えなきゃいけないことがある」

「?」


白の街

だからこそ暖色系の光が映える。

高い場所で風も強いが、、、昔来た時と同じく街が一望できる。


「ここでサニアと皆一緒にいれるようにするって約束した。」

「・・・そうか」


シノンが怪訝な表情をする。

ま、、、そりゃそうだ。

脈絡がないしな。


「だから俺一人d

「『氷小太刀』」

「あぶなっ!?」


季節的に冬・・・シノンにとっては一番いい時期だ。

発動級ですら躱すのが難しいくらいに。


「まだ全部言い終ってないじゃん!」

「うるさいバカ!」

「てか、スカートで暴れるな!」

「じゃあスカートで暴れさせるようなことを言うな!」

「ああもう、『曇靭紐≪クラウド・ワイヤー≫』!」

「んアっ!?」


めんどくさいので縛り付ける。

・・・名誉の為に言っておくが普通の縛り方したからな?


「離せ!また私を置いて無茶をするつもりなんだろう!」

「そうだけどさ・・・最後まで聞いてからどうするか決めようぜ?」

「ぬぬぬ・・・・いいだろう」


シノンは怒り狂って俺を害そうと魔力を高ぶらせる。

いいだろうと言いながらも漏れ出す魔力が周囲の雪をぶっ散らす。


「取り敢えず聞いてくれるか?」

「いいだろう・・・私は冷静だ」

「・・・(嘘つけ)・・・最初考えてた強引に王国からサニアを奪うのはやっぱり無理だ。戦力的にもサニアの為にも。だったらやり方を変えるしかない」

「お前は『一人で』って言った。お前は相棒の私を差し置いてまた無茶をするつもりだ」

「今回は寧ろそれでいいんだ・・・寧ろ俺一人の力で解決しないと駄目なんだ」

「・・・・わたしが獄炎魔術をつかえないからか?」

「ちがう」


いや、、、誰が弱いとか足手まといとかもう関係ないんだ。

シノンは俯く・・・と思ったら急にしゃべり出した。


「私は強い父にも優しい母にも憧れていた。二人のようになりたいと思っていたら・・・いつの間にか二人の属性を本質能力として受け継いだ。」

「あ、ああ・・・」

「それなのに、、、父は母の命を犠牲にして王国を守ることを選んだ」

「そっか、、、そうだよな」

「父が獄炎を持った瞬間、私の属性も炎から獄炎になった・・・・けども・・・・母の犠牲で得た力なんて使いたくなかった・・・そしてその力を使い勇者を名乗る父を許せなかった」

「あ、、、うん」


何だろう、、、最後の最後で凄く嫌な予感がする。

機嫌を取ろうとシノンさんの好きそうな場所を周ったが・・・女の子はどんなに楽しくても一瞬でその気持ちを失う人種らしい。

トツカ風に言うなら女コエェ・・・


「おい、、、シノンさん?」

「だがな、、、だがな?」

「シノンさん?、、、シノンさん?」

「私がこんなに無茶をしないでくれと頼んでいるのに・・・約束してくれない。そのくせにサニアとの約束の為に一人で王国と闘うというバカが目の前にいる。」

「・・・・・・・・ソデスネ」

「父とサクラ、、、どっちが許せないかといえばサクラのその態度の方が許せん」

「・・・・・・・・・一応あなたの為もあるんですよ?」


シノンが怖い・・・そういえば最近良く感じてた魔力とは別の感じな気がする・・・

寒気に馴染む魔力ではなく・・・寒気を消し飛ばす魔力。

え?こんなバカな状況で?


「母様が言っていた・・・曖昧にぼかす男は凍らせてしまえって」

「血気盛んなおかあさんだな・・・」


たしか『氷巫女』とか呼ばれてたらしいが・・・『獄炎の勇者』が寡黙なのに対して過激だ。

性格逆なんじゃないの?


「だが、、、足りない」

「足りてます。」

「足りない!」

「足りてます!」


シノンの髪が熱で揺らめく・・・高台の雪が水へと変わる。

似たような現象を見たことある・・・魔術の発動前に周囲に熱を放出するこの感じ。


「このうっとおしいモノを解け・・・『熱刃鎖』」


紅い熱の魔力が小さな刃になる。

鎖に無数のそれが付加される・・・・・そしてそれが動く。

引き千切るような音そしてぱらりぱらりと崩れ落ちる雲の糸の残骸。


「この属性はな・・・『獄炎』属性はな?」

「は、、、はい、、、」

「どうやら怒りが頂点に達すると使いやすくなるらしい。」

「・・・・・・・流石、流石シノンさん!」

「『熱刃鎖』!」

「う『曇の壁≪ウォール≫』!!」


当たり前のように壁は切り裂かれる・・・当然だ。

完全な『獄炎魔術』はかつての俺の切り札『嵐曇魔術』よりも威力があるとか言われてんだから・・・


「うらああああああっ!」

「誰だシノンのこんな厄介な才能目覚めさせたのは!」

「おまえだろうがあああああああっ!」

「そうでした!」


鎖の数は精々二、三本。

避けられるけど・・・当たれば痛いでは済まない一番駄目な折檻だ。


「サクラ・・・仕方ないよな?仕方ないよな?」

「凍らせるだけで済ませてた優しいあの時のシノンに戻ってぇッ~!」

「お前に必要なのは優しさではなく死の恐怖だ!」


目がイってしまってる彼女の怒りが刃に鎖に熱に伝わる

まさしく私焔の怒り。

シノンを傷付けて大人しくさせるわけにはいかないから避けるしかないしこういう時に便利な魔道具は今手元にない!


「お前が大切だからこうするんだ!」

「私とは約束しないくせに!サニアとは約束するくせに!」

「お前ら両方大切だよ!大好きだよ!」

「嘘つけ!私がどれだけいつも心配してると思ってるんだ!」

「ああああああああああっ!魔力切れになってから罰としてキスされたくなかったら落ち着け!」


ぴたっ


「「・・・・・・・・・・・・・」」


効果てきめんだな。

鎖が消滅し、魔力が一気に萎む。

怒りが消えたのか・・・シノンもようやくおち


「ま、、、また、、、あんなことをわたしにするのか、、、、」

「しませんけど?」


凄く真っ赤な表情でふるふる震えていた。

しかもさっきまで俺を死の恐怖に陥れるくらい攻撃的だったのに急に守り体勢に入る。

もうシノンさん可愛くなかったらお近づき願いたくない・・・本当にわけが分からん


「私が、、、わがままいったから、、、おしおきするのか?またあんな変なかんじにされるのか?」

「し~ま~せ~ん!」

「ひゃああっ」

「・・・・・・」


肩をガシッと掴めば急に腕で自分を庇おうとする。

・・・・・・なんかこういうの見たことあるな。

まるで俺が『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』を使ってた後みたいな。


「なあ、シノン?」

「は、、、はい」

「もしかして『獄炎魔術』って使った後に気弱になるとかそういう弱点あったりするか?」

「あ、、、あります、、、私も初めて完全な『獄炎魔術』使ったんで知らなかったんですけど・・・獄炎魔術使用中は体の中の怒りを使っていくので、怒りがふとしたひょうしに無くなると・・・反動で弱気になっちゃいます」


涙目で目を逸らし、、、震えながら彼女はそう言う。

シノンが俺に敬語とか!

・・・・・・元に戻った後が怖い。


「あ~、、、取り敢えず話聞いてくれるか?」

「はい、、、サクラ様」

「様・・・」


シノンが元に戻るまで三十分ほどかかった。

第6章で3話、エピローグで1話。

そして閑話1話で第四部は完結予定です!

閑話ではお師匠ちゃん出すつもりなんでよろしくお願いします!

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