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第5章『意志』part2

「『内在型身体強化』!」

「『詠唱短縮爆槍式:四の型』!」


三回轟音が響く。

サクラが地を蹴った音

ボボルノが足元を爆発させ加速した音

ボボルノの爆発エネルギーを込めたパルチザンと黒雲を纏った『葉擦れ』がぶつかる衝突音。


「ははっ、すげえ爆発エネルギー!」

「っ!?」


今は無き『常識外』を使っていたサクラは押し退けられる感覚に慣れている。

衝突の際に爆発が起きて、剣が跳ね除けられる瞬間既に行動を起こす。

運動エネルギーに逆らわず、身体を宙で一回転。

そして龍と同等の力を喰らいバランスを崩したボボルノに初撃。

右手から迸る黒雲の槍達。


「『曇の一撃≪ショット≫』×沢山」

「黒雲!?お前まさか『種の・・・ぐあっ!?」


ボボルノが全てまともに喰らいはじけ飛ぶ。

加減のせいか、聖十剣の防御技術のせいか・・・ゴロゴロと転がったのは奇しくもジョージの横だった。


「生きとるか?」

「・・・なんとか」


ボボルノは直撃した腹部を抑えながら立ち上がる。

ジョージはその様子を見て眉をしかめた。


「急所を狙わなかったのか・・・?」

「狙われて欲しかったの?」


ボボルノがそう尋ねるとジョージはふいと目を逸らした・・・それが答えだった。


「酷いよ、ジョージ!」

「お前と組まされるたび間近で爆発音を聞かされる儂の身になれ」

「え、そんなに気になる?良い音してると思うんだがなあ」

「人間、他人が出してる音は嫌に感じるものじゃ・・・そろそろ儂の方の準備が出来そうじゃ」

「そうかい・・・」


ジョージの黒と紫で彩られたナイフに濃密な闇の魔力が纏わりはじめていた。





「サクラ!二位の方の爺さんが何かするつもりだ!」

「そうか・・・」


聖十剣三位の方のエルフが二位の爺さんを守るように前に出てきた。

・・・やっぱり気絶させるならメガ盛りクラスじゃないとキツイか。

とっさに組んだ魔術だったから沢山になっちまったが、、、まあ初撃入れられただけでも御の字か。


「通さないぜ・・・ジョージには指一本触れさせない」

「いいよ。好きにやって構わない」

「「「は?」」」


三人の唖然とした声が揃う。

ここまで来たら本気を出してもらいたいからな。

じゃないと『この先』の方針が立たない。


「聖十剣最強・・・ゼノンの本気がどれくらいかを正確に測る良い機会だ」

「お主、、、、、、何者じゃ?」

「ゼノンの本気を測るために俺達の準備を待つだと?」

「ああ」


疑い深げな雰囲気が出ているので嘘じゃないと『葉擦れ』を鞘に・・・鞘が無いので地面に突き刺す。

トツカがおいおいと駆け寄ってくる。


「折角奇襲が出来て有利なのにその好条件を捨てるのか!?」

「サニアを救うためには聖十剣の本気を知らねえといけない・・・いいチャンスだ。」

「でも、、、」

「大丈夫だ・・・それに聖十剣の二人にはこの戦い以降協力してもらわなきゃいけないことがある。その為には本気で一度俺と闘ってもらわなきゃいけない」

「・・・・・・・分かった。そこまで言うならいつも通り『視』せてもらう」


『紅眼』のトツカが後ろに下がる。

聖十剣は訝しげな表情を見せるが、、、術を練り始めた。

ぼうっとそれを見てると警戒気味にパルチザンを構えていたボボルノが口を開く。


「なあ、、、一体なにが目的なんだ?」

「一人の少女を救うため・・・ああ今は恋のキューピッドだった」

「ふざけてる・・・ようには見えないな」

「そうか?主人公が醸し出す軽い雰囲気・・・って感じなんだが。」

「寧ろ、、、重い。無警戒のように見えて攻撃すれば瞬時に返される・・・そんな感じだ」

「名高い聖十剣にそう評してもらえるとは光栄だ」


いつの間にかジョージの隣には闇の魔力で作られた一つの人間大の人形が


「本気の我々と闘う、、、その言葉に偽りないか?」

「・・・ああ」

「なら・・・少し儂の本質能力を教えてやる。」

「聞いたことで俺が有利になるなら要らないぞ?」


ジョージ爺さんは自分の持つ儀礼用のナイフを隣に立つ闇人形に沈みこませながら首を横に振る。


「聞いたところでそう変わらん」

「・・・?」

「『英霊憑依』・・・昔は自分に憑ろしていたが体が老いたので今はこの『大闇人形』が代替してくれておるがの」

「『英霊』?」

「難しい意味はない、、、死んだ強者の力と知識を、、、応えてくれた魂の力を借りる術だ」


英霊たちは気難しい、、、そう言いながらジョージの顔は楽しそうだ。

辺りに本来見えないはずの魂たちがふわふわと浮かんでいる。


「『強者と闘える』『相手を気にいった』、、、様々な条件がなければ答えてくれん。だから滅多に使えん本質能力じゃ。・・・そのはずなのじゃがお主、、、余程過去に素晴らしい強者と相対したことがあるのか?お前が相手と聞くや否やすぐに答えてくれた魂があった。」

「・・・・・・死んだ強者?」

「条件は自分の意思で闘うことらしいが・・・まあ、他に良い強者も見つからんからそいつを今から憑ろす」


過去に会った強者

そして死んだ強者

英霊とまで呼ばれるほど強い魂・・・・


待て、、、、そんなの一人しか俺は知らない。

あの時、、、俺に進む勇気をくれたあの人しか知らない。


「本質能力『英霊召喚』」


闇人形が人の肌の色をとる。

のう面だった顔はよく知った表情へ・・・そして闇人形の体格は大男へ

ニ、三度きょろきょろと辺りを見渡した彼はふてぶてしい顔でにやあっと笑いながら手を挙げる。


「よう、久しぶりだな」

「・・・・ドン・クラーク?」


俺が疑問の声を上げたのは・・・彼の姿が最後に見たあの瞬間より若かったから。

・・・俺と同じ年齢ぐらいまで若返っていた。


「どうやら一番強かった時の肉体で闘えるようだぜ」

「そんなに俺と・・・戦いたかったか?」

「・・・・まあな」


ドン・クラークの全身から魔力が迸る。

龍の魔力・・・それも濃密な。


「『狂竜化』」


姿を龍の鱗を纏い、、、その手を完全な鉤爪上に。

狂竜化・一段

人間の姿を残してはいるが、、、かつて見た一段以上のプレッシャー


「おい、、、魔力をどれだけ使うつもりじゃ」

「ジョージ!?」


どうやら魔力の負担は聖十剣二位に賄ってもらうらしいが、、、詠唱級六連発しても顔色を変えなかった聖十剣が膝を思わずつく。

それもそのはず・・・意識を保つだけでかなりのエネルギーを消費してるんだから。

元々は意識を暴走させるぐらい危険な本質能力なんだから


「おい、トツカ」

「は、はい!」


何故かトツカの名前を知ってるようでドン・クラークは俺の後ろのトツカを指さす。

トツカは急に話しを振られてえっ!?と驚いたようでいつもとは違う上がり気味の声で返事をした。


「よく『視』とけ・・・正しい『狂竜化』の使い方を」

「え?」

「聖十剣三位!巻き込まれたくなかったら二位を連れて離れとけ」

「あ、ああ・・・」


聖十剣達が思わず首肯してしまうほどの圧倒的なプレッシャー

これが・・・聖十剣の本質能力か。

制限付きだからより強力なものだとか・・・呼び出されたのが全盛期のドン・クラークだとか・・・いろいろあるだろうが・・・正直周り気にしてる余裕はないかも


「「『内在型身体強化』!」」


魔力の流れを増していく。

濃密な魔力と魔力が先にぶつかり

そして視界が歪む


「ぶっ!?」


ぐにゃんぐにゃん視界が歪み、そして強烈な痛みが全身に走る。

ばっこんぐっしゃん転がりながらやっと気づく

殴られたのだと


「気をつけろ?今の俺は『狂竜化・三段』を使ってたあの時の俺より強い」

「ちい、、、『黒曇衣≪コート≫』全開!」


極められた技術とそれを最高まで活かす肉体

そして注ぎ込まれる膨大な魔力

その結果として生み出される圧倒的な速さに対抗するには効率非重視の『外装型身体強化』しかない!


「『龍の剣術―迫』!」

「おっと、、、それは喰らわねえぜ?」

「っ!?」


速さにギリギリ追いつける・・・取り敢えず距離をとろうと剣で拳を受け弾き飛ばそうとした。

しかしドン・クラークは剣にあたる寸前で拳を止め蹴りに切り替える。

同じく足で受け止めて・・・けれども力負けする。


「サクラ!」

「近づくな!巻き込みかねない!」


聞こえたかどうかも分からないがトツカの声が聞こえた。

取り敢えず叫んで剣を前に構える。

剣と拳が弾けあい、、、そして幾度も幾度も打ち合いになる。

嘘だろ、、、斬龍の剣術を組み合わせてるのに軽くあしらわれてる。


「おいおい、、、こっちはまだまだスロット上げれるぜ?」

「ぐ、、、らああああああっ!」

「お?」


『曇靭紐≪クラウド・ワイヤー≫』+『曇の沼≪プール≫』

平面的な拘束と立体的な拘束

地面から伸びあがった紐がギシギシと締め付け、雲の沼が動きを封じる。

二重の拘束で締め付けた彼に繰り出すのは螺旋回転の突き


「『穿ち跡』!」


キ―――ンと生理的に怖気が立つ削る音

火花が散るほどの激しい回転速度

龍の剣術まで組み合わされた魔喰龍に喰らわせたあの時以上の剣技


「・・・・・くそっ!」


『狂竜化・二段』


より深く刻み込まれる龍の鱗

より激しくなる魔力の放出

僅かに彼を貫きながらも、、、致命傷にはならない。


「らああああっ!『義龍の一撃≪ドラゴン・アタック≫』!」

「げほあ、、、」


ぶちんと『曇靭紐≪クラウド・ワイヤー≫』が断ち切られ、、、うっとしげに足を一振りするだけで黒雲の沼が掻き消える。

そしていつの間にか俺のパーソナルスペースへ忍び込む狂竜人・・・拳が腹にめり込む。

再び転がされ、、、、吹っ飛ばされ、、、、地を何度も転がりながら跳ねる。


「げぼあ、、げぼっ、、げぼっ、、、、ぶあっは!」

「ふう、、、少しストップだ」


這いつくばり口から涎をだらだら掃き出し嗚咽する俺にドン・クラークは追撃してこない。

防御重視の、、、瞬間的な強化が出来る『黒曇衣≪コート≫』を纏ってなかったら・・・俺は今の一撃で腹に大穴を開けていただろう。


「聖十剣二位!残り時間は!?」

「はあ、、、はあ、、、、魔力残量的に三分じゃ。湯水のようにに魔力を使いおって・・・」

「なら、、、時間ねえな。立て、サクラ!」

「はあ、、、はあ、、、ぼほっ、ぶほっ!」


鼻水と涎を強引に拭い立ち上がる。

こっちは既に立つのもやっとなのに・・・相手の傷は腹部の穿ち跡ぐらいだ。

出血はそれほど多くない・・・下手したら塞がりかけてる。

好条件がそろっていたせいもあるだろうが、、、調子に乗っていたかもな。

相手に好条件を与えすぎた・・・ツケとして残り三分も存在できる化け物級の強者がいる。


「最初からそれで闘ってくれたら、、、アンタは死なずに済んだんじゃねえのか?」

「ああ、、、お前が強かったらな」

「はあ、、、はあ、、、はあ、、、、」

「『内在型身体強化』を使えていればもっと効率よく戦え、、、アイスドスライムを倒せる力も残ってたかもしれねえ」

「はあ、、、はあ、、、わかってるさ・・・」

「全部見てた・・・あの世でな。お前の弱さのせいで魔国の連中にティレンが奪われたことも知ってる」

「それは、、、本当に、、、悪かった」

「悪い?」


ドン・クラークの魔力が激しく、、、感情を糧に更に燃える。


「なら、、、魔国に行って取り返して来いよ」

「はあ、、、はあ、、、出来ねえよ。今は・・・まだ・・・」

「俺はあの時言ったはずだ・・・ティレンは任せたって」


・・・ソーラを取り返しに行ける力は多分ある。

けども、、、その為にサニアを見捨てろってか?

できるか。


「ソーラは・・・・必ず救う・・・・」

「今すぐ行けよお!ティレンをよお!」

「わりい、、、かはっ!?」


頭を下げようとした頭を抱え上げられ、頬に一撃もらう。

またゴロゴロと転がされ、、、そしてドロっとした感触が頭部から流れる。

・・・こりゃ皮膚が切れたか?


「そうか、、、ソーラの本当の名前はティレンって言うのか・・・そう名付けたかったのか?」

「あ?」

「ソーラを託されておきながら、、、アンタから大事な信念をもらいながら、、、こんなことになってて、、、本当にごめん。謝りたかったんだ、、、ずっと、、、ずっと」

「てめえ、、、道理で術式に気合が足りねえと思ったら・・・俺に罪の意識感じてやがったな?」


俺が頭を下げた瞬間、魔力のプレッシャーが急激に減った・・・?


「てめえの信じた道を進め・・・後悔しないように進め」

「・・・・・・・は?」


かつて聞いた言葉を、、、何度も心で繰り返した言葉が再び耳から入る。

・・・俺が裏切ってしまった彼が・・・再び俺にその言葉をかけてくれる。

優しい言葉を・・・・・かけてくれる?


「ソーラのこと気に病むな・・・俺があの場にいなかったのがわりいんだから」

「さっきまでと言ってることちげえだろ・・・?」

「俺がお前と闘いたいと思ったのは、、、一発気合いを入れてやろうと思っただけさ」

「・・・は?」

「俺が色々与えたアドバイス、、、おめえがどう活かしてるか気になっただけだ」


共鳴鋼で作られた『葉擦れ』

龍と同等にまで高められる『内在型身体強化』

彼の死と血肉で築かれた今の俺の武器と技術

それを・・・確かめたかった?


「わりいな、、、理不尽なこと言って・・・おめえに責任なんてあるはずねえのに」

「いや、、、正直俺を責める為に戦うのかと思ってたから・・・・」


ドン・クラークはカッハッは!と大きく、、、でも人を不快にさせない明るい声で笑う。


「俺がそんなちっせえ人間だと思うか?」

「・・・・いや」

「だろ?」


体の中で、心の中で

彼の眼を見れなかった自分がいたことにようやく気付く。

普通に戦っていたつもりなのに、、、彼の体を傷付ける事を恐れていた自分に気付く。


負い目を感じていたからか

人形とはいえ彼の体に傷をつけることを拒んでいたのか

再び彼が死ぬ所を見たくなかったし、それが自分の手でというのがとても嫌だったからか


「だから、、、俺を安心させてくれねえか?」

「・・・・・・・・・いやだ」

「おめえが俺より強かったって、、、だからソーラを守り切れなかったのがおめえならしょうがなかったって諦めさせてくれ」

「・・・・・・いやだ」

「俺にお前を殺させないでくれ、、、お前を恨ませないでくれ」

「恨んでくれてもいい!、、、だから、、、だから、、、あんたを傷つけさせないでくれ」


心の錠が外れる音がする。

そして視界が歪む。

さっきまでとは違う意味で嗚咽が漏れる。

苦しい、、、さっき以上に苦しくないのに苦しい。


「リセイガあるうちに・・・俺をアンシンさせてクレ『キョウ竜化・三ダン』」


魔力が残り少ないのに、、、彼は更に自分の入れる時間を自ら削っていく。

痛みをこらえながら、、、骨格を龍と同じに

人と同じ大きさ・・・しかし集められて凝縮されたエネルギーは僅か一瞬にも満たない間だけ龍を越える。

・・・・・・・いやだ、例え彼が理性を失った化け物だとしても

それを傷付け殺せ?しかも俺にそれをしろと?

そ、そうだ・・・・『動く曇道≪オート・ステップ≫』で逃げ回れば、、、あと数瞬にも満たないうちに彼は存在できなくなる・・・それなら彼を傷付けな


「サクラ、逃げるな!」

「ハッ」


遠くから、、、トツカが呼びかけて来る。

凄く怒った表情で、、、凄く大事なことを叫んでる。


「安心させてやれ!お前が心配だからこの人は今!苦しい思いをしながらお前が本気を出せるように本気で闘ってくれようとしてる!」

「でも!」

「魂が削れ始めてるんだ!」

「!?」

「自分が失う苦しみを味わいながら、、、今この人は最後にお前と闘えることを楽しみにしてる!」

「、、、、、勝手だ!」

「勝手じゃねえ!元はあの人を不安にさせたのはお前だろ!しっかり笑顔で送り返してやれ!それが一番おまえらしいだろうがあああああああああああああっ!」

「いやだいやだいやだ!」

「そんな卑屈なお前に、、、、俺は救ってもらった覚えはない!俺が救われたのは、、、俺がついていきたいと思ったのは、、、どんなに無謀でも!ムカつく笑み浮かべて!挑んでくお前を!最後まで笑わせて笑わせてえ笑えるそんな未来を作ってくれるお前を手伝いてえと思ったからだ!シノンもコウさんもサニアも飛龍様もツバキもメルキセデクさんも!みんなみんなそんなお前だからついてきたんだ!だから戦え!逃げずにへらへら笑っててくれ!頼むからよおお!」

「あああああああああああっ!主人公は楽じゃねえなあ!」

「そうだよ!でも、、、、それでも逃げないでくれ、、、サクラァああああああああああ!」

「うああああああああああああああああああああああ!」


楽しいことばかり起こると思ってた

もっと周りの人間が笑えるものだと思ってた

そんな人が主人公だと思ってた


でも、、、主人公に近づけば近づくほど、、、周りは俺にもっと俺であることを期待する。


「アリガトナ、、、『義龍の咆哮≪ドラゴン・ブレス≫』」


かつてアイスドスライムを吹き飛ばした・・・それの何倍もの威力のシロモノが迫る。

避ければ簡単だ・・・でもトツカは俺が逃げないように俺の背後にいる。

俺が逃げないようにいてくれる。


「『巨大な巨大な黒雲よ』!『更に集まれ』!」


主人公は辛い


周囲の女の子を救えるけれど、、、彼女の憧れや身勝手さを全部受け入れなきゃいけない

救いたい人たちを救えるけれど、、、その代りに彼らの望む俺でいなけりゃいけない

心地いいけど、、、たまに逃げたくなる、、、それでも周りはそれを許してくれない


「『更に凝縮』!『更に狙え』!」


それでも主人公であるからこそ

アリアにシノンにサニアにスカイにトツカにツバキに

トーリにサマンサさんにコウにメルキにモルロンド伯にメリッサさんに

ソーラに龍巫様に斬龍にトチキさんに支部長に

コンボスさんにサマンサさんにオオラ夫妻に

ドン・クラークに

会えた


「『連続放出』!」


全ての魔力をかけてでも守りたいと思える人たちに会えた

生きて欲しいと願う人たちが増えた

幸せにしてあげたいと思える人が増えた


そうだよ・・・俺は大切な人全員に幸せになって欲しいんだ


それが俺のなりたい『主人公』だし

皆がなって欲しい俺だし

間違いなく俺自身なんだ


「『壊れるまで叩きつけられる曇神の破城槌≪エンドレス・ハマー≫』アァァァァァァ!」


金色の光と黒の奔流がぶつかり、、、そして周囲に撒き散らせる。


「ボボルノ、、、」

「何?」

「綺麗だと思わんか?」

「そう、、、だな・・・」


生き様と意地と誇りと

二つの光がぶつかり合い黒雲に金の粒子が纏わりつく。


「「あアあアあアあアあアあアあア!」」


二人の声が重なり、、、、拮抗する。

叫ぶたびに魔力が高まり芯の芯まで使いきろうとさらに声を張り上げる。


「ドン・クラーク!」

「アア!?」

「俺!あんたみたいに誰かに嫌われてでも・・・正しいって思えることが出来る人間になるから!」

「ヤッテ・・・ミロヨ!」

「ああ!」


『曇の増成≪パンプアップ≫』


黒雲が周囲の自然魔力をいつも以上に吸収しさらにさらに増していく。

維持時間を減らす代わりに一時的に威力を底上げする。

拮抗していた力関係が変化する。


暴走魔力を不完全ながらも扱える者と既に限界が近づいていた者


「ミテ・・・・ル・・・カラ・・・ナ」


黒雲が押し潰しもみくちゃに消し潰す

強力なエネルギーが・・・暴れ出すエネルギーが直撃する。

龍の咆哮を消して、、、サクラの想いを乗せて

そして、、、彼の意識は永遠に眠りについた・・・強い安心感を伴って





「終わったのか?」

「・・・・・・・・」

「ジョージ、、、魔力枯渇か」


聖十剣二位が魔力枯渇

自分の何倍もの魔力を保有してるはずの彼が魔力枯渇で意識を失っているという現実を受け入れがたいが、受け入れざるを得なかった。

庭には巨大なエネルギーがぶつかり合った余波で人以外何も残ってなかった。


「・・・・・・・危険であるな」

「!?」


いつの間に意識を取り戻していたのか・・・芯の芯まで力を使いきり魔力枯渇で倒れる『種の魔術師』の前に魔人ビグラスが立っていた。


「待て!どうするつもりだ!」

「どうと?殺すに決まっておろう・・・この歳で既にこれだけの力・・・成長すれば魔国の脅威となるであろう」

「止め、、、っ!?」


駆けだそうとした足が動かない・・・気づけば脚に大量の闇が纏わりついていた。


「動けるのはお主だけ、、、先に拘束させてもらったのである『常闇の剣』」

「くそっ、、、詠唱級の拘束魔術か!?」


同じく詠唱級の魔術をぶち当てれば解けるかもしれないが・・・そうすれば脚は消し飛ばされるだろう。

脚の完全再生など・・・簡単に出来るものでない。

その一瞬の逡巡が命とりだった。

魔人もそれなりに魔力が限界だったのか一本だけ生み出した『常闇の剣』を振り上げていた。


「まずは一人目・・・」


くそっ、、、こう見えて俺は気にいった者には優しいんだ・・・脚ぐらい犠牲にしてや


「大丈夫だ、、、必要ない」

「え?」


耳元で声がした。

しかしそれを認知した瞬間、後ろの気配が既に消えていた。

パルチザンを足に添えたまま固まる。

・・・おいおい聖十剣の認知速度より早く動ける奴はあらかた気絶してるはずだろ?


「ぬあっ!?」

「たく、、、最後まで世話の焼ける奴だ」


常闇の剣が蹴り折られ、ビグラスが蹴りの余波だけで吹き飛ばされる。

全身に回る龍の鱗肌、、、そしてギラギラ闇夜に光る『紅眼』


「『義龍の一撃≪ドラゴン・アタック≫』」

「かはっ・・・・・」


そして再び消えたと思ったら既に吹き飛ばされ中のビグラスの後ろへ

金色のオーラを纏った拳が遠慮なく背肉を掻き分け、、、ビグラスは今度こそ意識を失った。





ドン・クラークさんのお土産、、、それは失敗した『狂竜化』と成功した『狂竜化』の両方のサンプルだった。

彼は義龍の転生候補に一番近かった。

だから『義龍の咆哮≪ドラゴン・ブレス≫』や『義龍の一撃≪ドラゴン・アタック≫』といった同じように『狂竜化・三段』に至った人たちでも使えなかった技が使えた。

しかし彼は憎しみによって正しい変化が出来てなかった・・・スイッチを開くための感情に振り回され本来得られる力を得られなかった。

よって転生できなかった。


俺トツカ・ドラガンは義龍候補ではない。

もしそうならとっくに龍応石は肩から外れていた。

自然に転生するか『狂竜化』出来ていた。


ここからは想像であるが・・・『鑑定』が邪魔をしていたのかもしれない

全てを知る能力がある俺には驚くといったことがあまり存在しない。

『大体全部』わかってしまうから新しいことに出会った経験がないしそのせいか他の龍人達より感情が若干薄い。


人が怖いと思う時ちょっと怖いな

人が悲しいと思う時ちょっと悲しいな

人が怒ってる時俺はちょっと怒ってる


そのお蔭で俺はあの集団狂竜化に巻き込まれずに済んだ。

だが、、、サクラと旅をしている間は、、、常に感情が昂ぶってる。


無謀なことを本気でやるのを人並みに呆れたり

くよくよしてるあいつを見ると人並みにイライラできる

怒鳴って笑ってと・・・自然に感情が動く


ドン・クラークの動きを見る中で、、、『鑑定』が『義龍の力の引き出し方』と『感情による制御』を学んだ。

大きな力の動かし方はメルキさんやサクラを『視』て、、、イメージは掴めてた。

だから、、、難しくはなかった。

でも、、、、、言ってるだけなら簡単だが、実際はそんな簡単なことでは無いとも思えた


俺の姿を見て、、、ボボルノが唖然とし、、、呟く。


「・・・『狂竜化』?」

「いや、、、『鑑定』は残ってるから本質能力としてではなく、、、これはただのスキルだ」

「こ、これだけの力が、、、、一端のスキル?」


スキル『義力行使』

義に熱い龍だったと聞いている、、、友や大切な人を守るために戦った最強の龍だったと聞いている。

龍が転生するのは自分と似た人物だと言われているから・・・友を守ろうとした俺に力を貸してくれたのかもしれない。

だから、、、、、こんな才能もない俺に力を貸してくれたのかもしれない。

ありがとうございます義龍様、、、お蔭で義に反することなく友を救えました。


ぽろっと龍応石が肩から外れる・・・

これからは守られるばかりじゃなく守るために戦える・・・

少し安心して・・・少し不安になった

そして嬉しさが安心も不安もごちゃ混ぜにして飲み込んだ。


「俺は気持ち的にまだ戦いたいんだが・・・どうする?」

「いや、、、実はもう魔力切れなんだ」


ボボルノは両手を上げて降参の意を示した。

・・・勝ったのか。


「そっか・・・じゃ、屋敷に皆を運ぶの手伝ってくれ」

「・・・殺さないのか?」

「サクラが勝手に始めたから何で戦ってたのかさっぱりわからないんだ。だからサクラが目覚めてからだ・・・心配しなくてもコイツは人をむやみに殺さない」

「じゃあ、そもそも何で俺達襲われたんだ?」

「魔国と王国がミルをかけて争ってたから止めるため・・・だったかな」

「は、なにそれ?」


被害者である聖十剣二人。

彼らが襲われたのは、全てはビグラスの勘違いとガルブレイクの微妙に鋭い勘のせいだと気付くのは後の話。

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