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第4章『遊盤』part1

こわかった

つよかった

すごかった

やさしかった

きれいだった

だからわたしのなりたいひとは『ききょうさん』になった。

そしてききょうさんみたいに、だめなおにいちゃんをささえてあげないととおもった。

だってわたしたちはもうふたりきりなんだから

わたしがしっかりしないと




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「でぃきじょー、、、かっこわりい」


なんか困ったことがあったとき、気付くと俺の前にはよく自動販売機がある。

そしてストレス発散の為に飲み散らかしたであろう味付き牛乳の山々、、、圧倒的山!

途中から流石に体に悪いと気づいたのか緑茶のペットボトルが混じってるのが少し腹立たしい。

病院の休憩スペース

その一机を占領しぐったりと机に伏せるのを周りの人たちが何コイツ・・・みたいな目で見てくる。

・・・サクラの気持ちが妙に分かる瞬間だった。


「ぢぐしょー、いぜがいの方でもやぐにたでなかったら・・・私のいびはなんなんですがぁ!」


自棄飲みしているのは椿だが。

寧ろ俺はNPC。

周りに迷惑をかけないように、少しづつ片していっている。

皆気味悪がっていつの間にか迷惑をかける人自体休憩スペースからいなくなってるが

ちなみに少しづつなのは誰かさんがそんな俺の動きを見るや否や、無駄な身体能力で妨害してくるからだ。

ほら、、、片づけようとした手をいつの間にかホールドしている。


「まずだ・まずだ!きいてまず!?」

「はいはい、、、聞いてるよ~」

「なんでずか、ぞのでぎとうな態度!まじゅだ・まじゅ、、、言いづらい!馬鹿!アホ!」

「お前が自分で決めたんじゃねえか!?」


椿は俺の腕をがっしりとホールドし、それでいて足をガンガン踏むという鬼畜成分が詰まった行動をやってのけながら泣き喚いていた。

落ち込みたいのは俺の方なんだけど!?


妹に兄とは思えないとか言われてかなり落ち込みながら、病室の外に出てみれば泣きじゃくる椿に抱き付かれ今に至る。

古畑さんによるとのぼせてしまった彼女を寝かしつけていたら、急に起きてどっかに行ったと。

そして帰って来たと思ったらわんわん泣き叫びずっとこの状態だと。

寝不足そうな古畑さんに泣きじゃくりのまま押し付けられても・・と押し返すことも出来ないから休憩スペースで話を聞こうとした。

でもさっきから支離滅裂で分からん!


「異世界でなんかあったか?サクラに襲われた?」

「むじろべいわぐじが、かげでないですうううう!」


妹めんどくさっ!

片方は勝手に結論付けるし、もう片方は理由も言わずにワンワン泣き叫ぶだけだし。

いや、、、体力があるせいか一晩中泣き叫んでもまだ泣き止まない椿の方が悪質だ。


「まじだ・まじだ~~~~!」

「・・・なんだその言い方は」


我儘で傍若無人で・・・そして意味が分からない。

何がマジなんだ・・・おい。


「うまれてぎでぼべんばばい~~~~!」

「・・・話聞けや」


朝顔と桔梗さんの中間点のような彼女は普段は綺麗だが、、、こういう時はまるで子供みたいだ。

大人と子供の中間・・・どちらかというと大人よりだけど。

危ういようで、、、しっかりしていて。

それでいて俺に今は泣きついている。


「朝顔もこんな妹だったらよかったんだがなあ・・・」


感情を溜め込まないある意味バカな妹。

こういう風に自然と支え合える兄妹ってのは少し新鮮だ。

心を安らげてくれる妹、泣きつける兄。

俺と椿の関係はそんな兄妹関係だ。


朝顔と俺は・・・・お互いに自分がしっかりするからお前はその後をついて来いってある意味傲慢な考えを押し付け合ってるんだよな。

それを今日今更になって気付かされた。

朝顔も俺も自分がしっかりしなきゃって考えてたみたいだ。

だからこんな風にお互いが不必要までに干渉しようとして、、、そして上手くいかなくなる。


「・・・朝顔も俺も結局は桔梗さんの影響受けてたのか」


あの時俺の後ろにいたはずの小さな妹は後ろで闘う決意をしてたのか・・・

そして俺は彼女が小さいゆえに舐めてかかって・・・

兄としてそれはどうなんかなあ


「ますだ・ますだぁ!!」

「・・・惜しいな」


後二文字じゃないかと彼女の頭を撫でる。

桔梗さんほど長くなく朝顔ほど短くもない・・・ああ、そっか

朝顔はお父さんや桔梗さんの血だけど、椿はお母さんに似てるんだ。


「ははは、、、道理で泣き上戸だと思った」

「・・・?」


椿が?という表情でぐすぐすしながら俺を見る。

お父さんがお母さんを怒らせると決まってお母さんは子供みたいにわんわん泣いてた。

子供っぽいと子供の俺に思わせてしまうぐらいに・・・感極まるといっつもそれだった。

そしてきまってお父さんが根負けして、、、そう


「大丈夫だ・・・お前の兄貴はここにいる」


泣き止むまで抱きしめてたな。

俺を抱きしめに来ときながら、俺が抱きしめることになってるのには若干違和感を覚えるが椿はやはりお母さんに似ている。

言葉調が明らかにはっきりしてきて、、、俺のシャツがぐちょぐちょになる頃には彼女は復活してた。


「『兄様』、、、もういいですから」

「・・・おお、新鮮な響きだ。」


桜と呼び捨てにする父さん似の・・・俺似の頑固妹と比べなんて素直な妹だ。

初めて妹という存在に萌えたぞ!

未だにひくっひくっと泣きすぎたせいかしゃっくりを繰り返している椿を抱きしめ続けながら、俺は昔を思い出しながら少しずつ椿に聞く。


「どうしてこんなに泣いた?」

「異世界でもこっちでも、、、ひくっ、、、全然役に立ててなくて、、、ひくっ、、、せめて少しでも役に立とうと、、、ひくっ、、、兄様を許してもらえるよう朝顔さんにお願いしに言ったんです」

「・・・余計なことを」


背中を優しく叩いてやりながら、彼女の言葉をただ聞いてあげる。

彼女のしたことをただ否定しないで聞いてあげる。

そんな簡単な兄貴っぽい行動すら、、、実は初めてだったりする。

俺って、、、本当に、、、駄目な奴。


「それで朝顔さんがブチ切れすぎて朝食もとらずに練習してぶっ倒れたのか?」

「はい、、、」

「それで余計なことばかりしてる自分が嫌になったと?」

「はい」

「・・・・・・・・・・はあ」


黒のメイド服を取っぱらって、私服にした意味を分かって欲しかった。

サクラめ、、、全部俺に押し付けやがって。

こう言うセリフを吐くのは本来主人公の役目なんだからな?


「お前は俺の妹なんだ・・・全部抱え込むな。・・・兄貴に全部押し付けて、椿は笑ってりゃいいんだよ。役に立つために俺の元に来たなんて二度と言うな」

「・・・兄様」

「常に抱きしめさせてくれる妹なんてただでさえ俺得すぎるだろ?・・・これ以上君がなにかしてくれるなんて・・・そんなに多くの幸せはこんなNPCにはもったいない」


椿には椿としてここで自分を見つけて欲しい。

あっちの異世界と違いここでは自分はこうだなんて決める奴はいないんだから。

戦わなくていいんだから。

この世界を楽しんでほしい、、、あの時俺を救ってくれた君にはもっとこの世界を楽しんでほしい。

だからその為には・・・


「俺一人で朝顔とは決着付ける・・・もう心配すんな」

「はい、、、兄様」







どうしよう

勢いよく妹に宣言してはみたものの、何も答えを見つけられなかった。

椿だったら素直だから楽だが、朝顔は強情頑固なお父さんや桔梗さん似。

下手に近づけば蹴り殺される。

取り敢えず最低でも俺と朝顔の関係があの屋上の時前にまで戻さなきゃいけないのは分かるが方法が分からなかった。

安心してむにゅむにゃ俺の膝を枕にしてる妹の為にも・・・なんかいいアイデアないですかねぇ


「困った時はHYaHaa!知恵袋だ。」


足りない頭をいくら絞っても答えが出ないときは出ない。

スマホをカチカチ弄って、答えをもらうことにしよう。

クラスメートになんか困ったことがあるとすぐにHYaHaa!知恵袋を使っているという話を聞いたことがある。

なんかすぐに返信してくれるそうだ。

本当に困ってる俺にこそふさわしい!


「えと、、、、お礼の設定?」


おお、無料じゃん、お礼なのに無料じゃん!

どうやらHYaHaa!知恵袋の回答者たちはほぼ無償で答えてくれるらしい。

まさに金欠気味の俺にピッタリだ!


―妹と仲直りしたいです―

cherry―0213さん

『妹が傍若無人で反抗期です。しかも最近僕の父親が隠し子として新妹を連れてきちゃいました。妹はいきなり姉が出来ることに耐えられないのか僕と新妹を家から追い出しました。妹と新妹を仲直りさせるために、まずは説得しようとしたのですが近づけば蹴り殺されます。まずは話し合いが出来るぐらいにまで妹と仲直りしたいのですがどうしたらいいですか?』


・・・お、来た


―回答―

T.ktm-0522さん

『妹さんはおそらくツンの時期であるかと思う次第であります。その年頃の妹は取り扱いが難しく、質問者さんもお困りでしょう。しかも年頃の娘さんに父親の不貞は一番あってはならないことです。こうなるともう男性に対して毛嫌い以上の感情を抱いてるはずです。


、、、なるほど。

つまり朝顔は兄どころか男性に対して信用できない状態になってると

そんな状態だとしたらどうしたらいいか・・・

続きを読む。


ですからまず、二人で何故男とは獣であるかを実戦教育で教え込んで男とはそんなもんなんだと納得させましょう。諦めさせられればあなたの勝ちです。あ、でも最初は紳士的に口づけから・・・分かりますよね?』


・・・諦めさせるなよ、そして分かんねえよ。

取り敢えず違反報告をクリックし、T.ktm-0522に報復してすっきりはしたが、その後に集まる意見もほとんどが使い物にならないものだった。

やっぱ無料掲示板で聞いても欲しいものが集まるとは限らねえか。


~~して妹を手懐けるみたいな案が多かったがそれは使えない。

何故なら朝顔は頑固だからいくら人が説得しようが自分の考えを曲げるような奴じゃない。

朝顔にこちらの目的を悟らせないように動き、朝顔自身に自然と仲直りを持ちかけさせないと駄目なんだ。

ついでに俺の信頼回復、そのまたついでにお父さんの下半身の信用回復

・・・無理じゃね?



「・・・古畑さんはやれるって信じてるみたいだけど」


古畑さんに椿と共に押し付けられた2通の招待状と1通の朝顔宛の脅迫状。

これを使えば朝顔と同じ土俵で会話だけは出来るだろう。

うちの生徒会会長は本当に良くできた人だ・・・嫌味じゃないよ?

でも『それから』どうするかが問題だ。

『主人公』みたいに行き当たりばったりでやれるわけがない。


サクラみたいに運命を望みのまま引き寄せられる人間じゃないんだ俺は・・・

ある程度方針と砲身が上手くいくという確信がないと、駄目だ。

やみくもに動き回ってるだけじゃ、今まで以上に状況を悪くする。

・・・駄目だ。

方針が出来てもそれが本当に大丈夫なのかって確信が少しももてない。


NPCは能力がないからこそ慎重にならなきゃいけない

自分の言葉に説得力を持てないからこそ・・・確信を持てる状況を作らなきゃいけない

今の俺じゃ朝顔を納得させられない。


「・・・・・・兄として見れないか」


そりゃそうだ。

自分ですら如峰月朝顔の兄にはふさわしくねえって思っちゃてるもん。


中学陸上期待のホープ

可愛く明るい性格(猫被ってる)

人望も厚く来年はスポーツ特待生で鷺ノ宮高校に進学確定


そんな彼女の兄貴が俺?

・・・どこが?

分かってたことだった、ふさわしくないって。

それでも俺は・・・・・・・・彼女の兄でいたかった。


「如峰月君」

「・・・・・・・・朝日奈さん?」


鈴がちりんと鳴るように俺と椿しかいない休憩スペースの空気が変わった。

入り口から頭がくらくらするほどの香りを伴って暖かい風が舞う。

処理しきれないほどの鼓動が爆発しそうなほどの音を出す。


朝日奈楓がそこにいた。


でも、彼女がいるという現実を受け入れるのに脳の処理はしばらくかかった。


「なんで・・・いるの?」

「お見舞いに来たんだよ。面会謝絶で会えなかったけど」

「いや、、、何で来たの?」

「えとね、優が教えてくれたの。如峰月君の妹さんが倒れたらしいって」

「女子バスケ部は・・・今日はオフじゃないだろ?」


朝日奈さんは椿が散らかした紙パックの山々をぱっぱと片づけながら返事をする。


「え?ああ、お休みもらっちゃった。」

「お休みって、、、今が大事なときだろ?他人の妹の心配してる場合じゃないだろ?」


ただでさえ生徒会に入ってもらってるっていう負担をかけているのに・・・

ただでさえ新人大会が終わってこれから新体制で頑張っていこうって時なのに

ただでさえそんな体制の副部長であり主力なのに

何でその君がここにいる?


朝日奈楓はすとんと俺の向かいに座るとピンと俺の額を指で弾いた。


「他人じゃないよ。朝顔ちゃんは私にとっては大切な妹みたいなものだしそれに・・・」

「・・・?」


そして一拍おいた後、ドヤ顔で言ってきた。


「他人じゃなくて、友達でしょ?」

「・・・本当に君は主人公だよ」

「え?主人公?」

「なんでもない」


タイミングもピッタシ

まさに今と心が折れるギリギリに

彼女は俺の元に来てくれた


一回ぐらいないか?

今この瞬間に大好きなあの娘が会いに来てくれないかとか思ったことが

それが今俺の前で起こってる。

・・・しかも偶然なんかじゃなく彼女の意思で

自分の大事なものを押しのけてまで


「ごめん、一回ぶっ叩いてくれないか?」

「いいよ」

「え、即答っすか?」


ズパン!

朝日奈さんが笑顔で頬を殴って来た。

・・・目が眩む。

頬というよりコメカミに当ててきたせいもあるが、朝日奈さんは本気でグーで殴って来やがった。


「いっだあ・・・」

「そりゃそうだよ。本気で殴ったもん、、、三週間分ぼそっ


スナップを利かせ、硬く握りしめられた拳

殴り慣れてないのか紅く腫れてしまった拳

そしてすっきりしたのか満面の笑み

痛みはあるけど、彼女の笑みを見れて幸せすぎて

まるで童貞のバカな夢の中に今いる気分になる。

・・・やっぱ痛い、夢じゃない。


「殴ってから聞くけど、何で殴らせたの?もしかしてもう一回殴っていい感じ?良いよね?良いよね?」

「いや、、、もう大丈夫。夢の中か確認しただけだし」

「遠慮しないで?」

「いや、結構!」


朝日奈さんはそう?と残念そうに拳を納めた。

いつから人を殴ることに病みつきになっちゃったのこの超越美少女は!?

朝日奈親衛隊が歓喜しそうじゃないか!


小さな拳に与えられた痛みによって少しだけ感覚鋭敏化が働く。

未だ俺の膝ですやすや熟睡してる妹2がいるので本当に少しだけ敏感になる。

その感覚で朝日奈楓の表情が、、、彼女の笑顔がいつもより少し固いことを感じた。

朝顔のことで憂鬱になっていたせいか、、、若しくはただ単に頭が働いてなかったせいか

彼女の笑みが、、、、固いことに気付けなかった。

いつもならすぐに気づけることなのに、、、全然気づけなかった。


「朝日奈さん、、、、もしかしなくても怒ってる?」

「・・・・・・・・・・・・」


彼女の笑顔が一瞬で消え、、、表情だけで俺の質問に答える。

そして返事の代わりにあげられる拳


「うん、本当に痛いからその手を降ろしてくれませんか?」

「・・・いや」


てか、好きな娘に何度も殴られてるとこれもいいかなとか思いはじめちゃうし本当にやめようぜ!

取り返しつかないから!


朝日奈楓はあまり怒ることがない。

穏やかで優しくそして人をむやみに傷付けない。

もしかして一発殴ったことで堰が外れました!?


「いや」

「ぶふっ!?」

「いや」


一発喰らってもう一発・・・待っていたのに来なかった。


「・・・・?」

「いや」

「?」

「いや」

「あ、朝日奈さん?」

「いや」


もう一発ぶっ叩かれ、、、そして他の女共みたいに連発してくるかと思った。

やっぱり彼女は他の女の子と少し違う。

弱弱しく、、、それでいて何度も俺の頭をぽかぽか叩く。

強い怒りを出しきって、、、、そして次に彼女の心に何があるのか

何か堪える為に、、、でも堪え切れないのか

俺の頭をとん、、、とん、、、と置くぐらいの強さで叩く。


「・・・ごめんね」

「いや」

「・・・・・もう、傷付けちゃ駄目だ。」

「っ!」


彼女の小さく凄く安心する手を握る。

どんな表情をしてるか分かんない

見れないし、見てはいけないことだけは分かった。

取り敢えず顔を伏せて俺を叩く手を、、、これ以上傷つけさせたくなかった。


「『まだ』、、、そうなのか?」

「駄目なのに、、、胸がチリチリして、、、痛い、、、ずっと、、、ずっと」


彼女が主人公になった『あの日』

そして俺がNPCであることを自覚してなかった『あの日』

『あの日』に俺は彼女を支えたいと想った。


今でも変わらないけど、、、今の俺と『あの日』の俺には二つの違いがある

一つは今の俺がNPCであるということ

主人公は自分で問題を解決できるってことを俺は知ってる

寧ろ手を出す方が邪魔になるって知ってる


「『桜ちゃん』・・・何でキスしたの?何で優のことを名前で呼ぶの?苦しくて苦しくて胸が焼けこげそうになるのに、、、何で?」

「・・・・・・・・・・」


いくらでも彼女に出せる手はあるし、いくらでも捧げられる想いはある。

そして俺はずっとここからいつも君を思ってる。

けど、、、、ごめん。

俺には既に大切なものが増えすぎた。

だから君の尋ねた中に隠された『求め』に応じれない。


「優子が観覧車から落ちかけて暴れた、、、体の動きを封じなきゃ二人とも落ちそうだったんだ。そして、、、白凪優子を優子って呼ぶのは、、、責任を取らなきゃいけないから、、、どうしようもなかったとか言い訳してうやむやにしないためだよ」

「・・・他に方法はあったんじゃないの?」

「『友達』に嘘はつかない・・・朝日奈楓に嘘をつけば・・・俺は心が壊れる」


泣いているのか

怒っているのか

苦しんでいるのか

彼女の手は強い感情が籠っててとても熱い

苦しくて、、、いっそのこと離して逃げてしまいたかった。

でも、、、、これ以上逃げたくなかった。

彼女からも朝顔からも、三週間逃げてきたけど椿と約束したからにはこれ以上逃げたくなかった。


沈黙の二人とこんな時でも寝息をたてる一人

俺の答えは・・・彼女を納得させられなかったみたいだ。

当たり前だ。

彼女の隠した『求め』に答えを出してないんだから


「目、、、つぶって。顔、、、見られたくないから」

「・・・分かった」


目をつむる

彼女が何も言わずに立ち上がった。

手が振りほどかれた、、、柔らかい感触だけがずっと残る。

そして香りだけ残して、、、無言で立ち去った。

音でそれを聞いた・・・どんな顔をしていたのか見なくても想像がついた。

彼女の余韻と感触が、、、、俺を責めているようにずっと残った。


「兄様・・・」

「・・・気まずい思いをさせたな」


目を開く。

椿が膝の上から俺を見ていた。


「追ってあげないと」

「駄目だ。朝顔が優先だ・・・朝日奈さんに構う余裕は今はない」

「不器用すぎませんか?約束はしましたけど、、、どうせ兄様は何も思いついてないんですよね?」

「それでもだ」

「・・・駄目で不器用な兄様」


椿はそういうとコロッと寝返りを打った。

そしてまた寝息をたてた。

・・・抓ってやろうか?

言い寝逃げした椿の頬に手を伸ばす・・・その時手元のスマホが鳴った。


「・・・・・・本当に主人公だわ」


朝日奈さんからメッセージが一件

どこから打ったのか、、、どんな顔で打ったのか、、、、どんな気持ちで打ったのか分からない。

でも、、、このメールは俺を少しだけ変えてくれる。


―From朝日奈楓―

あなたが私に嘘をつけば心を壊すと言ってくれたように、私は如峰月桜と言う人物を信じています。

私の幼馴染は・・・ずっと変わってません。えっちで不器用で頑固で、、、最低な人だけど、、、あなたは誰かの為にずっと頑張ってきた人だから。ずっと周りの人を笑顔にしてきた人だから・・・だからがんばって

―To如峰月桜―


「・・・最低か」


彼女の言葉は俺を落ち込ませ


「それでも・・・信じてるか」


俺に自分を信じる力をくれた。

俺の中で方針と確信が出来た。

だって、、、主人公が、、、、あの朝日奈楓が、、、、俺の大好きな女の子が、、、俺を信じてくれてるんだぜ?

俺が自分を信じてやらないでどうするよ!


「朝日奈さん、、、ありがとう。そして、、、ごめん。」


君の笑顔を見たいと、、、ずっと見たいって目指した重要NPCだけど

近づいていたはずの地位だけど・・・しばらく目指すのはやめる。

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