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第3章『侵入』part3

外を全く気にしていなかったのは良くなかったか

実験中だというのについ新型『自律人形≪ゴーレム≫』の開発を進めてしまった。

エマやミミアンにも注意されるが魔道具を作るときに、外部の音を遮断する魔道具を使わないと集中できない癖は直さないとな


屋敷の罠を確認しに行ってみれば窓は残骸一つなく破壊されてるところがあり、風呂場の換気窓を通るためか外には氷の足場がある。

どれだけ暴れてくれたんだ・・・賊はどうやら一人じゃないらしい。

よりによって魔族連中がやって来るこんな日に来なくてもいいだろうに。


「賊の姿は見えんであるな」

「・・・まだ屋敷の中にいるのかも」

「ならば気配で分かるのである」

「なら、いいが」


ビグラスはいろいろ目立つから客間で待ってもらい、心配になったからこの家の同居者の元へ向かった。

扉の前で一呼吸

恐らく彼女は昼から絵に没頭しているはずだから外の変化に殆ど気付いてないはずである。

ノックをしても気付かないほどの集中力だから、いつも通り予告なしに扉を開けた。

・・・よかった。

どうやら彼女に危害はなかったようだ。

彼女に危険があればすぐ分かる魔道具を持っているから分かってはいたが、実際に目で確認しようやく安心できた。



部屋はいつも通り今まで彼女が描いてきた絵が散乱していて唯一ある足場に机と椅子が申し訳程度に置いてある。

彼女の作業場なのだし彼女のもう一つの部屋は整理されてるんだから問題ないのだが、、、少し整理した方がいいのではとも思う。

エマはこれでも整理された方とか言っていたが・・・

そんな部屋の中で彼女は珍しく本を読んでいたようだった。


「み、ミル様!?どうしたんです、急に!?」

「・・・ミミアン、珍しいね。この時間に絵を描いてないなんて」


彼女は驚いた表情で座っていた椅子から立ち上がると手に持っていた本をばたんっと机に伏せた。

椅子を薦められたが長いするつもりはなかったので、断る。

ミミアンはそうですか・・・というと自分だけ座ることも気まずいのか椅子から立ち上がった。


「今日は筆がのらなかったので・・・外も騒がしくて怖かったし」

「へ、部屋から出たのか!?」

「・・・いえ?どうしたんです、血相を変えて?」


ミミアンは可愛い仕草で小首を傾げる。

・・・いや、出てないなら好都合だ。

まだ、誤魔化せる。


「ああ、そのことだ。変態が屋敷に侵入していていつも通り警備システムが追っ払った。だが君がもしかしたら賊に会う機会があったかもと思うと不安になって・・・」

「追っ払った?今は安全なんですか?」

「ああ、罠にかかり気絶した賊が入るはずの牢に入ってなかったからね。撤退したんだろう。僕も撤退する賊の姿を見たし。」

「なら、このことは王国に報告しますか?」

「っ!?いや、特に取られたものはないし・・・庭が荒れて人を呼べる状況じゃないし・・・今回はいいよ」

「そうですか?ならいいですけど・・・」


王国の連中とビグラスがぶつかれば戦闘になる。

今はどちらにつくかまだ決めてないのだから、、、困る。

それにミミアンには今はまだ知られたくないことが多い。


僕の家には二人の同居人がいる。

エマという今年で24になる女性の使用人と僕が部屋を訪れるまで本を読んでいたらしいミミアンだ。

エマは今僕に変装して王宮にいるから、今この屋敷にいるのは彼の言葉を信じるなら僕とミミアンとビグラスだけのはずだ。


「ミル様、、、大丈夫ですか?お顔色がよろしくないようですが」


ちょいと背伸びをして彼女が僕の頬に触れる。

額に触れたいのだろうが彼女の背は低いから、頬にまでしか手が届かなかった。

冷たい手、とても冷たい手。

彼女の作業場は絵を保存するために暖房を置いてない。

寧ろ外より寒いぐらいだ・・・なんか今日はより寒く感じるが。

冬のせいか・・・


「大丈夫だ。」

「そうですか。」


彼女の笑みは暖かかった。

未だ頬に触れている手は凍りつくように冷たいのに。


「・・・ん?左腕を取り換えたのか?新品じゃないか。」

「っ!?え、ええ・・・パターナイフで指を切ってしまって」

「・・・だから絵を描くのを止めていたのか」


出来ればしばらく絵を描いていてもらって、、、外のことなんて忘れていてほしいが。

けども、集中力が切れてしまっているなら無理強いできない。

頭部のウサ耳がピコピコ動く彼女と同じ目の高さになるようにしゃがみ、彼女の肩を掴む。

突然そんなことをされたのか少しカチコチになってるが・・・敢えてそうしたのでこれでいい。


「いいか、ミミアン?」

「は、はい!」

「今、大事なお客さんが来てる・・・だがその客は女性を毛嫌いしてるんだ。だから今日の朝までここから出ないでほしい。」

「わ、わかりました!」

「出来れば、、、僕かエマが戻るまで。そして出来ればこの魔道具をドアにつけておいてほしい」


客間から出来るだけ離れておいてほしい・・・彼女にビグラスを見て欲しくない。

王国を裏切ろうと考えていることを知って欲しくない。

念の為にと懐から小型の溜魔石がつけてある魔道具を取り出す。


「は、はあ、、、いいですけど、これはなんですか?」

「新型の外の音を遮断する魔道具だ・・・本を読むならいるだろう?」

「いや、大丈夫ですよ?溜魔石勿体ないし」

「感想を聞かせて欲しいんだ・・・頼めないか?」

「わ、分かりました・・・」

「ありがとう、、、頼むよ」


・・・彼女の頭を撫でながら心の中で勝手に誓わせてもらおう。


君は僕が護ると


魔道具を必ず使ってもらうことを何度も念押ししてから僕は扉を出た。

その扉にこっそり、外に出れないように扉を閉じたままにする魔道具を設置して。





ミミアンは扉が閉じられるのを確認すると、ふいいと息を吐き出した。

そしてミルが遠くに行ったことを確認すると絵の山へともぞもぞ潜り込んでいった。


「・・・この魔道具を勝手に持ち出したことをばれたかと思いました。」


彼女は絵の山の中に突っ込んであった一枚の巻物を取り出すと、べラララと広げた。

そして巻物に手を触れた。


「うおっ!?」


どたっと何処かに落ちる音。

そして閉じていた目を開くと庭に設置した隠し部屋の中へ

眠る三人と傷を負った青年を介抱していたサクラ=レイディウスは突然現れたミミアンに驚いた様子だったが彼女だと分かるとふいいとため息をついた。


「気配もなく現れるもんだから驚いたぜ。見つかったかと思った。」

「心配せずとも、この中は気配も魔力も外に出しません。」

「そりゃ、助かる・・・正直、防御術式や隠密術式とかは苦手なんだ。」

「ついでに応急処置も苦手みたいですね・・・」


ミミアンはコウに強引に巻きつけられた包帯をみて、ため息をつくと替わって下さいと言った。





「う、、、、ううん」

「起きたか、トツカ?」


強制的に眠らされたせいか、嘔吐感があるようで気持ち悪いと言いながらトツカが目を覚ました。

彼は辺りを見渡しながら、ぼうっとした顔と紅い目で俺の方を見た。


「ミルの屋敷で捕まった奴は警備用『自律人形≪ゴーレム≫』に牢に入れられるはずだけど・・・ここは?」

「庭の地下の隠し部屋だ。」

「隠し部屋・・・地下にあるなら視覚外だな。分かんねえはずだわ・・・しかもこれ、部屋自体が魔道具じゃん。」

「提供者に礼を言っとけな」

「・・・え?」


トツカはぼうっとしてるのかはっきりしてるのか分からない顔で俺が指さした方を見ると驚いた声を上げた。


「ミミアン!?」

「どうもです。」


彼女はウサ耳をピコピコさせながら、読んでいた本から頭を上げた。

トツカは立ち上がろうとして、ふらふらっと倒れそうになったので支えてやる。

なのに俺にお礼も言わずに彼女に向け言葉をかける。


「え?え?もしかして君がミルの愛人!?」

「そうだ、彼女こそミルの兄貴のコレだ」

「ち、ちがいます!」


俺が小指を立てて、そうだと言えば彼女は慌てて首をブンブン横に振った。

トツカは俺とミミアンの様子を見て、訝しげに目を凝らすとため息をついた。

俺をジト目で睨む。


「嘘をつくな、、、ミルの愛人じゃなくてダッチワイ

「二人ともここから追い出しますよ!?」


ミミアンが涙目で俺達に向け、本を放り投げてきた。

『魔道具人間≪サイボーグ≫』にしては非力なのか、大した力は無く簡単に投げてきた本を掴んだ。

トツカをもう少し休んでろと再び寝かせてから、俺はミミアンに悪いと謝り本を返した。


「なんか街中では変な噂たってますけど、そう言うのはノーセンキューです!」

「悪かったって・・・」


ミルの兄貴もミミアンも気にしていたようだ。

特にミルの兄貴なんて屋敷の中でミルのことをロリコンだとか悪口を言った人間をボッコボコにする罠まで仕掛けてるぐらいらしいし。

ちなみにコウは未だに気絶していて、目を覚まさない。

上級冒険者をノす威力って、一般人だったら死んでるぞ・・・


「ちなみにどんな罠にかかったんだ?」

「睡眠を誘引する魔力ガスを出す罠にかかったんだ・・・」

「え、そんなのありましたっけ?魔道具倉庫に倒れてましたけどあそこには罠は設置されてないとおもうんですけど・・・」

「っああ、そうか!眠ってたせいでちょっとボケてたかも・・・アハハハハ」

「?」


なんか誤魔化してるようなので、ミミアンに聞こえないようにトツカに話しかける。


「おい、シノンもツバキも未だに眠ったままだ・・・一体どんな罠にかかったんだよ(ぼそぼそ)」

「わかるだろ、男なら・・・隠したいものの一つや二つくらい・・・特に女性と同居してる男なら絶対に隠したいものが・・・(小声)」

「隠したいもの・・・ああ(囁き気味)」


エロ本か。

魔道具倉庫地下にはミミアンや使用人には見せられないエロ本があるんですね、ミルの兄貴!

トツカは魂にエロ本を取り込んだ、いわゆるエロ本魔族。

トツカも年頃の幼妹と最近まで同居していたこともあり、ミルの兄貴の気持ちは痛いほど分かるのだろう。

ま、入った人間に催眠ガスぶっ掛けて、部屋から追い出す罠仕掛けるのはちょっと引くけど。


「どうしたんです?」

「「いや、なんでもない」」


俺達はミルの兄貴の兄貴っぷりに感激し、今はそっとしておくことにした。

ミミアンは訝しげな顔をしていたが、まあいいですと言った。


「コウさんの治療はお二人さんが目覚めてからになりそうです。それから出ましょう。」

「ああ」

「ちょ、ちょっと待って!何で二人が協力してるんだ!?何で一緒に出るんだ!?」

「・・・ええ、一から説明するのか?」

「いやいやいや、流石にめんどくさがられるのは想定外だったよ!」


トツカがたじたじしながら、ええっと抗議の声を上げる。

しゃあねえなあ・・・


「ミミアンに頼まれたんだよ、、、俺達の脱出を手助けする代わりに、ミミアンを連れ出すってことを」

「お前、遂に年下の女の子にまで手を・・・サニアちゃんとお前の距離が妙に近いと思ったらこのぐらいの年頃の女の子が好みなの?」

「やめろ!サニアにはまだ手を出してない!」

「ええ?」


トツカあああああああああ!

ただでさえサニアと話してるときのシノンの眼は殺気の塊だったんだぞ!?

偽装姉とはいえシノンにそうと勘違いされたら、過保護姉なシノンのことだ・・・最低でも局部を氷漬けにされ砕かれる!


「ええ?じゃ、どうして俺達なんかと、、、こんなキチガイがいる俺達なんかと?」

「お前、ハッキリ言い過ぎだから!」


いっそ気もちいぐらいにはっきりと俺を貶しやがったトツカの質問に対して彼女は二つ・・・と理由を述べた。


「一つ目はもちろん実力があるということ・・・魔族と剣一本で闘ったことからあなた方の元なら私は安全だと分かりました」

「見てたのか・・・・」


じゃなきゃ俺を助けてくれたタイミングがピッタシだったことに説明つかねえけど。

トツカは半分納得し、半分疑問の表情。


「でもキチガイがいるんだぜ?」

「『曇靭紐≪クラウド・ワイヤー≫』(満面の笑顔)」

「うわあああっ、エロ本でみたことあるよこの縛り方!」


取り敢えずお仕置きとして宙に紐で縛って吊るしたが喜ばれただけだった。

それどころか、でも縛り方甘くねとか言い出す始末なので二人で考察することにした。

ミミアンがふるふる震えながら口を開く。


「も、もう一つの理由を話していいですかねぇ?」

「あ、ごめんな」

「ミミアン、どうすればもっとこれに近づけるかな?」

「知りませんよ、もう!そんなもん見せないでください!取り敢えず私が全部話し終わるまで、二人とも何も話さないで、何もしないでください!」

「「はあい」」


は、話が進まない・・・

少々ミミアンに説教される形で俺達は彼女の境遇と何故彼女が俺達についていくことになるかを知ることになるのだった。


「もう一つは私の機能であなた方は善良だと分かってたからです。」

「・・・そなの?」

「ああ、そういう機能がある・・・てか、ミルの戦わせたくないって意思を強く感じる。戦闘機能は一切ないくせに感知する機能は山のようにつけてある」


トツカにそうなの?と聞くと彼はそうらしいと首を縦に振った。

そして、感嘆の声を上げる。


「世界は広いな・・・『魔道具人間≪サイボーグ≫』なんてステータスがあるなんて。」

「私は元が人間ですから」

「・・・ちなみになんだが、自分から望んで『そう』なったのか?」

「ふふっ、まさか。ミル様に助けていただいたんです。」

「「・・・?」」

「元々は王宮から派遣されたミル様の護衛でしたがしくじってしまって・・・死にかけていたんですがミル様に魔道具で延命処置を施していただいて『魔道具人間≪サイボーグ≫』になりました。」

「護衛?もしかしてそれなりに強かったのか?」

「ま、まあ、、、それなりにはですが」

「ふ~ん・・・そういえば気になってたんだが『魔道具人間≪サイボーグ≫』ってどういう状態なんだ?」

「それは、、、トツカさんの方が詳しいんじゃないでしょうか?」


彼女は少し躊躇う様子を見せ、トツカを見た。

バトンを渡されたトツカは君がそれでいいならと言うと気乗りしない様子で俺に説明し始めた。


「『鑑定』で確認した定義によるとな、、、死んだ生物を材料に作るのが『自律人形≪ゴーレム≫』、死んだ人間を魔道具で延命させるのが『魔道具人間≪サイボーグ≫』だ。」

「・・・ごめん」

「いえ、本当に嫌だったら言わせませんから。それより知っておいてほしい情報はもう少しあるんです」

「・・・この情報か?『自律人形≪ゴーレム≫』も『魔道具人間≪サイボーグ≫』も魔力を自分で放出できないから、溜魔石を使ってるっていう」

「そうです。」


この世に生きているすべての生き物には魔力が流れている。

それがないということ・・・それすなわち、死んでいるということ。

暖かい笑みの彼女は魔道具に『生かされてる』

しかもそれだけじゃなく、、、


「・・・つまり、溜魔石がなくなるとミミアンは?」

「はい、延命と思考の補助を手伝ってくれている魔道具達が動かなくなります。」

「ちなみにここを出る為に協力してくれって言ってたけど・・・今どれくらいの溜魔石を持ってるんだ?」

「これだけです」


彼女はそう言うと懐からころころと石を二つ取り出した。

ツバキが使っていたのと比べると明らかに上質な物だが、、、数少なくね?

トツカがそれを見て、はあっ!?と大きな声を上げる。


「一日分もないじゃないか!?量も質も足りない!」

「はあ!?」


二人揃って彼女をどういうつもりだという目で見つめると、彼女はさすがですねえと頬を掻いて『笑った』。


「トツカさん羨ましいです。そんなになんでも分かる便利な本質能力を持っていて、、、私も便利な本質能力を持ってたんですけど『魔道具人間≪サイボーグ≫』になってから無くなってしまったので。」

「いやいやいや、アンタの考えまでは流石に読めない!一体、何のつもりだ!まさか俺達に自分の死に場所を作ってくれって言うつもりじゃないよな!?」


トツカがガッとミミアンの肩を掴むが彼女はそんなトツカの顔をキッと見ると一言発した。


「落ち着いてください、そんな熱血はノーサンキューです。」

「だって・・・」

「私がミル様に常に感謝してるのはあの人に終わるはずだった命を救ってくれたからです。意味わかりますよね?」

「・・・・でも」

「トツカ、、、最後まで聞こう」


俺もトツカが掴みかからなかったら掴みかかっていただろう。

でも、、、彼女の眼は全く自暴自棄じゃなかった。

覚悟している眼だった。

彼女には大きな借りがあるし、、、話を全て聞いてからでも遅くないと思った。

トツカを引っぺがし、俺の横に強引に座らせる。


「でも!」

「最後までだ!・・・それからでも遅くない」

「すいません」

「いい、、、ただし、説明はしっかりしてくれ。誰も君の死なんて望んでねえから」

「一度死んでるんですよ?」

「二度も言わせんな」

「きちんと説明しなきゃいけないみたいですね・・・どうして私がこうするのか」


彼女は人選誤っちゃったかなと冷や汗を少しかいていた。

その様子はとても死人のものには見えなかった。

だから俺は彼女が二度目の死なんて馬鹿げた答えを出すなんてなおさら許せなかった。


「私はご存知の通り溜魔石が無いと機能を停止してしまいます。でも、最近溜魔石の流通に制限がかかってるんです。」

「制限?」

「はい、三国が王国に戦争をしかけるという噂が立ち始めているのはご存知ですか?」

「「・・・・・・・ああ(噂じゃないらしいがな)」」

「そのせいか、王国は上質な溜魔石の流通を制限し始めたんです。」

「はあ?何で?」


溜魔石なんて魔力が出せないツバキぐらいしか需要はないだろ?

そう思って怪訝な声を上げてしまったが、トツカはやれやれと首を振って注意してきた。


「ツバキちゃんが使ってたランクの低いやつならサクラの考えてる通りかもしれないけど、お前が実験場で闘った『戦争用キラーゴーレム実験体七代目ミルチューン』みたいなのすら動かせるエネルギーの物まであるんだ溜魔石は」

「それに魔力切れの人でも魔力回復の手段に使ったり、溜魔石付きの魔道具なら普通に戦闘で使えますから」

「・・・なるほど」


王国でしか採れない以外にもそんな効果があるとは・・・希少価値を押し上げているはずだ。

ツバキの低レベルの溜魔石ですらブーツの数十倍のお値段だったし。

まさか詐欺で買わされた本を即効で売り払う羽目になるとは思わなかった・・・意外と王国では流通されてない珍しい奴だったらしく高く売れてよかった。

ま、財布が空なのは変わらなかったが。


「私を動かすために必要な溜魔石は元から王宮で管理されるレベルの上質な溜魔石でした。」

「よくそんなの使わせてもらえたな」

「ええ、ミル様には優先的に貴重な素材が送られますから」

「へえ、、、流石『ミル』だ」

「でも最近になって戦争の噂のせいで流通制限がかかり・・・ミル様の研究に使う分を差し引くととてもじゃないですが私の生命維持に回せる分には足りません」

「・・・王国め」


どれだけ他人に犠牲を課すつもりなんだこの国は!

サニアだけじゃなく、こんな闘えない少女にまで犠牲を強いるつもりか!

・・・サニアがこの国を大事に想ってなかったら潰していた。

それぐらい、今、俺ははらわたが煮えて沸騰していた。

怒りで頭に頭痛が奔るほどに


「ミル様は王国に抗議を出してくれました・・・こんな私の為に。対して王国が供給量を通常に戻す条件は『戦争の局面を有利にする魔道具』を発明し更にその魔道具には『供給量を通常に戻す必要性』があることでした。」

「もしかして、、、あの実験場のゴーレムは?」

「ええ、、、ミル様は『戦争の局面を有利にする魔道具』であり『供給量を通常に戻す必要性』がある『自律人形≪ゴーレム≫』を発明しようとしてました。・・・でも、出来るはずがありません。ただでさえ少ないのに私に必要な分を省いて残り少ない僅かな溜魔石で研究なんて」

「あれで・・・・」


ミルの兄貴が何故彼女にここまで入れ込むかは分からないが、、、彼はやはり優秀な魔道具師だ。

不足ばかりの状況で聖十剣並の物を作るとは。

それでも・・・俺には分かる。

確かに強いが今更、聖十剣が一人増えても戦争の局面は変わらない。

『勇者』クラスの力がなければ、、、、王国は救われない。


「悪循環でした・・・ただでさえ研究に必要な物資が足りてないのに、それを私に回しているんですから。そして結果が出ないことに業を煮やした王国は・・・ついに『ミル』の称号を剥奪すると警告を」

「追いつめられてたのか・・・君もミルの兄貴も」

「私はミル様に言いました、、、もう大丈夫です、十分に生かしてもらえましたからと・・・その日からミル様の様子はおかしくなりました。」

「魔国と連絡を?」

「・・・ええ、彼の権限でも知ることが出来ない技術を知ろうと魔国に接触をしていたみたいです。私に隠そうと動き回ってましたけど、同じ家に住んでいるんです。何となくきな臭さは分かりました。」

「そして、ビグラスをみて確信を持てたと?」

「はい」


ようやく雲を掴むような理解だった状況が把握できた。

魔国の人間はミルに技術提供をする代わりに魔国への寝返りを求めてるのか。

でもそれでも・・・まだわからないことが


「なあ」

「・・・・・・」

「君がしようとしてるのはミルへの裏切りだ。何でだ?」


人が人としての信念を曲げてまで、、、今の地位を捨ててまで、、、生まれ育った故郷を捨ててまで

ミミアンを生かす方法を探ってるのに、当の本人は死のうとしている。

そんなバカの肩を持てっていうのか?

理由によっては協力できんぞ。

ミミアンは俺の質問に答えることなく俯く。


「なあ」

「・・・・・・」

「なあ」

「・・・・・・」

「なあ!」

「サクラ」


トツカが止めろと手を引いてくる。

・・・・・・サニアにもし『同じこと』をされたら

ミルの兄貴は俺が今想像してる何倍もの心の傷を負う

俺は、、、同じ立場に立ってるからこそミミアンが黙ってるのが許せない。


そんな俺の顔に本が突き刺さった。

あっという間の出来事だった。

顔にびたんと張り付き、、、そしてずりおちていく。

視界が再び開けた。


気付けばミミアンが泣いていた、、、ぼと、、、ぼと、、、と床に涙を落としてた。


「・・・じょうがふあいじゃないえふか!びうじゃまがたのじぞうび、ばぼうぶヴぉぶぐっべるぶぁおがびゅきなんべぶばらあ!」

「・・・・・なんて言った?」

「えと、、、『しょうがないじゃないですか。ミル様が楽しそうに魔道具を作ってる姿が好きなんですから』」

「ばべるばびょぼぶびばっべ!びばばびぼびべ!ばばべぶばべばいばばいべぶば!」

「お願いします」

「『帰る場所を失って、今まで通り笑えるわけがないじゃないですか』」

「!?」


トツカが器用に訳してくれる。

ミミアンは『魔道具人間≪サイボーグ≫』なのに人間だった。

感情を言葉にして、、、行動にして、、、、ある意味人間以上に俺達にぶつけていた。


「ばばびばびばら!びびゅばべばっべぼ!びぶばまがばばえびゃえん!」

「・・・トツカさん」

「えと、、、『私がいたら、いつまでたってもミル様が笑えません』」

「ぼびばいびべる!びっぼぼぼばばば!ばびぶべべべべ!ばばびぼばびば!ばぼびぼぼ!びびばばむばびぶびば!びべるんべぶよ!ばばばばばばび!たびばびたって!ぼべをばばんべびるbっべぶが!」

「・・・トツカさん」

「はい、はい。『お慕いしてる人の為に何かしちゃいけないんですか!私の好きなあの人の一番大好きな部分が消えるんですよ!あなたが同じ立場に立って、、、それを我慢できるんですか!』・・・なあ、サクラ」

「全然聞こえなかったが・・・わかった・・・ああ、わかったよ!」


俺は落ちた彼女の本を拾うと、泣きじゃくる彼女の手に強引に押し付けた。


彼女が投げつけてきた本・・・それは画集だった。

描かれてるのはミルが魔道具を作ってる絵だった。

かなり『美化』された絵だった。

ミルの兄貴がこんなに美形なわけがない・・・でも、彼女にはそう見えるんだろう。

すっごく気持ちいぐらい良い笑顔で笑っていた。


「否定できるわけねえ・・・君のその想いを俺は否定できない!わかったよ、ちくしょう!」


誰かのための行動、、、笑顔を守るためにとる行動

俺はそういうのに弱いんだよ!

例えミルがどんなに否定したって・・・俺はミミアンを連れていくことを決めた。


「びぐっ、びぐっ・・・」

「たく、、、サニア救いに来たのにえらく寄り道になるな・・・」

「それがお前だよ、サクラ」

「うっせ」


トツカがにやにやしながらそういって俺の肩を叩いてきた。

シノンやツバキに見られなくてよかった・・・いくらなんでもこっぱずかしい。

強引に髪を掻きむしると、ようやく落ち着いたミミアンに話しかけた。


「まず、、、君の意思を尊重する」

「はい」

「けど、、、、ミルの兄貴と最後に一回話し合ってくれ。たとえ反対されても君の味方でいるつもりだ・・・けど今のまま勝手に消えるのは絶対に良くない。ただミルの兄貴を傷つけるだけだ。」

「・・・・・・・分かりました」


目を兎のように腫らした彼女はこくりと鼻をすすりながら首肯した。

それを確認した俺は気合を込めて、頬を一度はたく。

そして鞘を無くして床に放置された『葉擦れ』を握るとこれからのことを二人に話す。


「よし、、、取り敢えず俺が邪魔なビグラスを復讐の念を込めて丁寧にボコッとくからその間にっと!?何だぁ!?」


かっこよく立ち上がろうとしたら部屋がガッコンガッコン大きく揺れた。


「まさか、気付かれたんか!?」

「いえ、、、庭全体が揺れたみたいです!」

「・・・外の様子見れるか?」

「は、はい!」


ミミアンが戸棚からガサゴソと水晶を取り出してくる。

どうやら溜魔石付きでは無いようで手渡されたそれに俺が魔力を込める。


「発現キーは!」

「『映し出せ』『場所を』です!」

「『映し出せ』『ミル屋敷の庭を』!」


手にある水晶から大量の魔力の粒子が舞い、色がついたそれらが外の様子を再現する。

傍らで見ていたミミアンが何で!?と立ち上がる。


「何で、聖十剣二位と三位が来ているの!?」

「しかも、、、ビグラスと戦闘中だ。」


三人とも戦士としては上位の存在。

彼らの高速移動を追いきれないのか、再現像は画が荒い。

けども、ミミアンが言うなら間違いないだろう。


「・・・このままじゃ勝った方にミルがつく形になるかもしれない」


今のこの状況から察するにミルがどちらにもつかずであることがばれているんだろう。

そして両国の代表で争いに発展しているのか?

今まで通りにはもういかないだろう・・・どちらかにつくかを表明しなければならなくなった。


魔国が勝てば魔国に

王国が勝てば王国に


・・・ミルはこのまま自分の未来を何も決められず流されていくのだろうか


ミミアンのことも

自分の魔道具師としての未来も

利用されるだけ利用され・・・そして最後は?


「自分で決めなきゃ駄目だ・・・」

「サクラ?」

「自分で決めなきゃ・・・誰かに決めさせられた道なんて・・・進んじゃだめだ。」


ミミアンが不安げな表情で再現像を見つめてる。

彼女がどうなるか・・・それを決断するのは彼女自身だ

ミルが魔国に行くと決めようが王国に残ると決めようが・・・それを決断するのは彼自身だ。


俺の尊敬する公国で最も嫌われ最も好かれたあの人は・・・自分で決めたことだけしろといった。

そうすれば絶対に後悔しないからと。

そしてそれが誰かのためならば・・・・その人と話し合えって

何度も何度も話し合えって

それで決めるからこそ、、、その決めたことは後悔しないものになるって


今、、、王国と魔国は間違いを犯した

一人の漢の選択を、一人の恋する少女の選択を勝手にこうと押し付けようとしている

無理矢理考える時間を、、、話し合う時間を奪って、、、彼らの未来を強引に捻じ曲げようとしている


絶対に駄目だ。


「ミミアン、、、外に出してくれ」

「おい、、、どうするつもりだよ!」

「あの喧嘩止めて来る・・・」

「駄目です!今更出たところで王国と魔国の両国に介入してどうなるんですか!」

「分かってんのか!今介入したら両国に喧嘩売ることになるぞ!サニアちゃん本当に救えなくなるぞ!」


俺の言葉に二人が反対してくる。

・・・そうかもしれない

そうかもしれないけど、許せなかった。

ミルとミミアンから話し合う時間を奪おうとする、、、身勝手な両国の代理戦争を俺はただ許せなかった。


「ミミアン、、、トツカ、、、行かせてくれ。ミミアンとまだ話し合えるのに、、、ミルからその時間を奪いたくない。」

「・・・・・・分かった。俺も行く。少しでも情報がいるだろ」

「二人ともどうしたんです!?私の為にそんな危険なことしないでください!死ぬのは私だけで十分です!私が死ねば彼は今まで通り何の心配もなく魔道具作りが出来るんですから!」

「何も言われず黙って死なれてか?」

「っ!?」


ミミアンが引き留めて来るが、、、根拠としては不足だ。


「確かに俺は君とミルの兄貴が話し合ってそれでも・・・どうしてもだめだったら君が死ぬ場所を作る約束はした!ミルから君を奪う約束をした!」

「ならっ!どうして戦うんですか!どうして今日初めて会った私たちの為なんかに・・・」

「話し合ってからだ!そうしないとお前ら二人とも・・・後悔するぞ!」

「でも」

「ああ、もういい!最後に一つだけ聞くぞ!」


俺は彼女の顔をぐいっと掴み逃げられないようにする。

怯える兎少女・・・やはり彼女は死んでなんかない。

今、ここにいるんだ。

だから、、、俺はミミアンには後悔ない未来を選んでほしい!

彼女の未来を一人で背負おうとしたミルの兄貴に彼女の声を聞いてほしい!


だから


「ミルに会いたくないのか!このまま勝手に離れて本当にいいのか!お前らの未来を・・・赤の他人に決められて・・・本当にいいのかあぁァ!!!」

「う、、、うう、、、、、、」

「トツカ」

「『鑑定』によるとだな・・・」


何も答えないからトツカの方を見る。


「良くないってさ」

「それ本当に『鑑定』か?」

「今回ばかりは鑑定じゃない」


トツカの視線の先には庭へとつながる出口が作られていた。

二人で外に出ようとした瞬間、後ろから涙でだみ声になってしまった声が投げかけられた。


「な、、、なんで、、、ここまで、、、してくれるんですか?」

「んなの決まってるよな、トツカ?」

「ああ」

「「ミルの兄貴に」」

「一生分の貸しを作って」

「秘蔵のエロ本借りるためだ!」

「「え?」」

「え、違うのか?」


・・・おい、トツカあああああ!?

台無しだろうがああああああっ!!!!

次回から第4章『遊盤』

来週中に第四部終わらせたい、、、絶対無理だけど。

でも、、、、それぐらい目指して更新スピード上げてきます!

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