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第3章『侵入』part1

午前三時、、、深夜と早朝の中間に

まだ暗いが東を見れば一時間後にはうっすらとオレンジ色の一筋の光が見え始めるだろう。

普通の人ならもう寝ち待ってる。

こんな時間に起きてる奴らは・・・ほとんどが何かをしようとしてる人間だろう。


「ぺっぺっぺ!」


口の中にまで詰め込まれた白い羽根を吐き出しながら、俺は近くの茂みから辺りを見渡した。

服に纏わりついた白い羽根は粘ついてるわけではないのに何故か取れない。

『曇の支配権奪取≪ハッキング≫』すれば何とかなるかもだが魔力コストが高い術式だから今はいいだろうと判断した。


「何故胸ばかり・・・」


シノンが嫌そうな顔で自分の胸元をパタパタさせる。

メルキの私的な怨念によって彼女の胸元ばかりに羽根が纏わりついている。

ツバキのせいでメルキが大暴れしたことで俺とシノンには嫌がらせかのように羽根をぶっかけられた。


「シノンは特にべとべとにくっついちまったなー(棒読み)」

「・・・(無言で胸元を手で覆い隠す)」

「取り敢えずマスターは牢屋に入っておきましょう」

「・・・はい、すいません」


見たくなるのは男の性。

だから俺は謝らない!


「謝ったじゃないですか」

「本能的に謝っちゃうのも男の性なんだよ!」

「静かに!」

「あ、、、ごめん」


コウに怒られてしまったので謝って、そして再び今回空巣に入る建物を改めて見る。

王国自体が中華風なノリなので、ミルの屋敷も全体的に赤と黄色で彩られている。

庭もそれなりに大きな庭園で庭師が何人もいなければ管理できないだろう。


「庭師はどこに住んでんのかな?」

「多分、、、離れのあの家じゃないか?」


トツカが指さした庭の隅には木造の小屋があった。

あれか?

屋敷と比べるとあまりにも質素・・・てか、人が住むようには見えねえけど。


「若しくは通いなんじゃないかな?噂だと屋敷には二人しか住んでないって聞いてるし」

「二人?」

「使用人とミルの愛人だとさ」

「・・・寧ろ愛人住まわせるための別荘みたいなもんか?」

「愛を示すために自分の財産全て置いてあるところに住まわせてるってやつだよ。偉く情熱的じゃないか」


コウが鼻で笑いながらそんなことを言った。

トツカはそんな彼の横で紅い目をじっと庭に向けていたがうんと満足すると俺達の方を見た。


「やっぱり庭には警戒すべきものは特に『視』えないよ。起動してる魔道具は一つもない。」

「じゃ、そろそろ行こうか」


さっきまでそれぞれリラックスしていた連中の空気がピリッと引き締まる。

ツバキはブーツのつま先をコンコンと床で整えてから俺の横に来る。


「最初から『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』で行きますか?」

「いや、、、操作能力や戦闘能力は高いけどあの昂揚感のまま侵入は駄目だ。静かに動いたり考えながら行動しなきゃいけない時にあの状態は向いてない。」

「そうですか、、、分かりました。」


ツバキはしょぼんとした表情で立ち去る。

・・・どうしたんだろうか?

普段はこんなに自分を売り出してくる奴ではないんだが

今日の空巣が成功したら少し話した方がいいかもしれない・・・深夜のあの騒ぎも何だかんだで何があったか聞きそびれたし

んなこと考えてるとコウが聞いてきた


「で、どうやって潜入する?」

「そうだな、、、取り敢えず屋敷の屋根の上にでも『動く曇道≪オート・ステップ≫』で行くかな?」

「いや、、、屋敷には直接降り立つのはまずいと思う・・・」

「暗闇に黒雲が溶け込むだろうから目立たんだろ?」

「屋敷にいるらしい二人に気付かれるのは良くない・・・あそこなら屋敷からは見えないんじゃないか?」


シノンが指さした先は大理石で作られた噴水だった。

成金趣味な感じがプンプンする。

屋敷と雰囲気がちょっと合ってない。

・・・が、シノンの案は間違いないだろう。


「じゃ、そうしますか・・・皆、準備はいいか?」


それぞれ首を縦に振る

それを確認した俺は噴水の真上にまでゆっくりと黒雲の道を進めた。

乗った瞬間空まで運んでくれる雲の道で出来る限り静かに移動していく。

空とはいえ他人の所有地にいることを自覚してるのか皆声を潜め気味に話す。


「取り敢えず着地するか・・・トツカは俺におぶさっとけ」

「悪いな」


もしかしたら地上に見落としてる魔力感知のトラップがあるかもしれない

魔力を外に漏らさない『内在型身体強化』若しくは自力の身体能力で各自着地する。

心の準備をしてあったせいか特に悲鳴を上げる奴はいなかった。

コウが皆無事なのを確認するとじゃあと言いはじめた。


「・・・さて、ここからは別行動の方がいいかもね」

「「「「?」」」」

「時間は限られてるし、それぞれ別個で探索した方が効率がいい」

「そうか?」

「魔道具に関して僕は詳しいから『鑑定』は必要ないし、罠とかもある程度は経験があるから一人の方が動きやすいんだよ」

「・・・そっか、なら

「「「コウ班、サクラ班、三人班で」」」

「・・・俺も一人の方が動きやすいけどさあ?そこまで笑顔で言わなくてもいいじゃん」


『豊富な経験』

『万知の鑑定』とその『護衛』

『空まで届く機動力』


分かれた方がいいのは分かるけどお前らからは


トツ「お前と一緒に行動してろくなことない」

シノ「同じく」

ツバ「ノリです」


という感情がありありと読み取れるんだよ!


「じゃ、俺は予定通り屋根から行く」

「僕は・・・適当な窓を消してそこから入ろうかな」

「じゃ、こっちは『鑑定』で脆そうな場所探してそこを崩して入り込むよ」


それぞれ方針を決めて別れようとしたとき、、、シノンがちょっと待ってと言いだした。


「おい、、、獣の唸り声が聞こえないか?」

「・・・唸り声?」


耳を澄ませてみると、、、確かに聞こえる。

トツカを見ると彼は慌てて首を振った。


「んな、馬鹿な!獣なんていたらすぐに『鑑定』で分かるよ!起動してる魔道具や警備に出てるであろう人間や獣がいたらすぐに分かる!」

「・・・だとしたらいったい」

「音が大きくなってる・・・すぐに分かりそうだ」


それぞれ武器を構え噴水を背に半円を組む。

一番最初に異変に気付いたのはやはりシノンだった。


「あちこち茂みが揺れてる・・・こっちを狙ってるみたいだ。」

「おいおい、、、魔力も音も出してないのに・・・何で感知してんだよ」

「獣だから・・・匂いじゃないでしょうか?」

「匂いで起動する魔道具ってことか?」

「さっきの小屋に隠されてたんじゃないのかな?視界に入らなきゃ流石の鑑定でも起動してない魔道具は分からないだろう?」


トツカが匂いで感知って・・・と賞賛を通り越して寧ろ呆れが入った表情になる。

だが、起動したら簡単に判別できるのか彼はすらすらと瞳に映る情報を読み上げる。


「コイツは『自律人形≪ゴーレム≫』だ。庭にある唯一の感知式警備システムだと、、、」

「機能は?能力は?」

「登録されてない匂いで起動してその匂いを追って侵入者を排除する・・・サクラ、お前の方に一匹向かった。」

「了解」


唯一の感知式警備システムなら魔術使っても問題ないだろう。

『葉擦れ』を引き抜きつつ、茂みに隠れる『自律人形≪ゴーレム≫』を茂みごと黒雲で覆う。


「『曇感知≪サーチ≫』」


黒雲に覆われたせいで黒く染まる茂みの中をもぞもぞと動く物体。

匂いを追う為なのかミルの趣味なのか分からんがその形状は・・・


「グルルルルッ!」

「なんて、、、悪趣味なんだ」


大型犬

しかしその体は殆ど生身ではなく、魔道具に置き換わっていた。

『自律人形≪ゴーレム≫』つったら土や鉄で作られてる物が主流だがこれも『自律人形≪ゴーレム≫』なのか?

魔道具犬は俺に鉄の牙をちらつかせながら嚙みつこうと飛び掛かって来た。


「生物っぽい見た目だし出来れば斬りたくねえけど・・・」


『葉擦れ』をカウンター気味に顎へと突き出す。

しかし、それは出来なかった。

口が異常に変形していって穴が開き、俺が貫いた先はただの虚空だった。

まずい、自分から腕を口腔の中にツッコむ形になってる!?


「『消滅を象徴する両腕』!」

「ギュウン!?」

「・・・サンキュ」

「言ってる場合じゃない!後何匹いるんだ!」

「お、おう!」


コウが顎と胴体を、境目をかき抱くことで消し離してくれた。

おかげで魔道具犬は機能を停止したので、また腕を切り離さずに済んだが・・・魔道具犬はまだいるらしい。


「『曇感知≪サーチ≫』」


黒雲を庭中に拡げていく・・・そして気づく。


「この犬、あの小屋からわんさか湧いて来てる!」

「何だって!?」

「『鑑定』!・・・なんてこった!隠されてたのは魔道具犬じゃない!『匂いで起動して』『魔道具犬を生み出す』魔道具だ!」

「はあ!?」

「十数匹ならいいが・・・こうも増え続けると面倒だよ!」


生物では考えられない動き

相手の行動を瞬時に判断し的確に行動するまるで『人』の思考能力

流石に面倒だぞ・・・


「トツカ・・・匂いが無くなったらいいのか?」

「シノン!何言ってんの!」

「無くなったらいいのかと聞いてるんだ!」


シノンがトツカに詰め寄っている。

そうこうしてる間にも俺やツバキやコウに多くの魔道具犬がガルガル攻撃してくる。

一匹倒しても次から次へと群がろうとして来る。

シノンも遊んでないで手伝ってくれ!


「消しても消しても数が減らないよ!」

「蹴りきれません!」

「くそ、、、早速『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』か!?」


とはいえこんなにややこしいのが大量に群がってくる状況でツバキに黒雲を纏わせる時間があるかどうか・・・

更にいうとツバキと俺は魔道具犬たちに既に分断されている。


「仕方ない、、、『土蜘蛛』を

「必要ない!」


シノンはそういうと懐から小瓶を取り出した。

そして『霜葉』で小瓶を砕き斬る。

小瓶の中の液体が飛沫になって舞い散るが、、、それはすぐに氷の粒に。


「皆、目を閉じろ!『冷たい風が運んでく』『寒さと霰を』『気を凍らせ流れてく』『氷剣・氷河』!」


言葉に従い目を閉じた瞬間、肌が痛くなるほどの冷たい風と共に何か霰のようなものがビシバシ当たっていく。

魔道具犬たちは何か異変を感じているのか、動きを止める。

そして黒雲が更に異変を感じ取る。

鎖がいつの間にか地面あちこちに散らされている。


「・・・溶かすぐらいの熱ならいけるはずだ!『熱放出』」


ぶわっと地面から熱気があふれる。

雪がたまに降るくらいの季節、、、なのに今自分は春の陽気の中にいるかのように感じる。

雪解けの季節、、、そんな暖かさの中に


「・・・魔道具犬が」


ツバキがおお!と言う表情を見せる。

それもそのはず魔道具犬たちが小屋へとぞろぞろ戻って行ってる。

まるで俺達がいなくなったかのように


「シノン、、、何したんだ?」


使えない魔術を使ったせいか、地面に膝をつき息を荒げるシノンは割れた瓶を見せてきた。


「キツ目の香水の飛沫を凍らせて、、、辺りにばら撒いて、、、それを溶かした、、、私たちの匂いも、、、香水の氷飛沫が当たってるから、、、周りと同じ匂いに、、、だから、、、匂いが消えたことに、、、なる、、、」

「「「「おお!」」」」


確かに服を嗅いでみればどこかキツ目の花の匂いがする。

獄炎魔術を使いこなせなくても、使い道はあるもんだな・・・

いや、今まで諦めずに使ってきたからシノンだからこそこういう応用が出来るんだろう。

こんな時間的にギリギリじゃなく、、、時間がきちんとあれば彼女も足手まといなんて呼ばれなかっただろうに。


「サンキュ」

「はあ、、、はあ、、、もう大丈夫だ」


俺の差し出した手を掴んで彼女は立ち上がる。

その頃には息はもう整っていた。



―――――――――――――――――――――

窓から見える景色はどうやら食卓のようだ。

大きな机には椅子が一つしかない。

使用人がこんなに大きな机を使うわけないし愛人用か?

どうやらミルは最近帰ってきてないようだ。


「『消滅を象徴する両腕』」


予定通り三班に分かれることになった。

少しトラブルはあったがどうやら屋敷の人間は寝ているか若しくは外に出ているのかは知らないが気付いていないようなので、そのまま決行することになった。

・・・あれだけの物音がして気付かないんだから人がいるはずないが

窓をすうっと消滅させて体を屋敷の中にいれる。

よく掃除が行き届いているのか家具にはホコリ一つない。

食卓に魔道具はないだろうから、さっさと出よう。


ドアを開けると早速魔道具を発見した。


「・・・廊下にこれだけの魔道具を飾るとは」


魔装加工された鎧だろう。

ガラスのショーケースに飾られた厚布で造られた軽鎧。

見た目はとても質素。

しかし、ただの鎧じゃない。

これは一応鞘なのだ。


「・・・先代ミルの作品か」


紹介の為か鎧の側には説明板があった。

えらくまるまるとした女の子文字で説明が書かれていた。


―『二番鞘・排出鎧』

剣工士として名高かった6代目ミルの作品。

6代目ミルの作品は戦乱の中で殆どが他国に売り渡されたり、紛失・破損するものが殆どです。

特に失踪する直前に残した『七鞘・七剣』は王国ですら殆ど行方を知りません。

この『二番鞘・排出鎧』は弟子である現在のミルに譲渡されたために現存している数少ない一品です。

能力は鎧の中に封じ込めた剣をすごい速さで放出します。

ミル様にお願いしたらどれだけの速さで出るか見せてもらいましたがすごくはやかったです。

びゅんってとんでいきました、そして陛下に怒られました。

でも、陛下の怒ってる顔を絵にして見せたらこれは一本取られたと許してくださいました。

流石陛下です、度量が広い。


最初の方は分かるけど、最後の方は抽象的すぎる。

とはいえサクラの持つ『七番鞘・常識外』の能力を知ってるので大体わかる

識別できない速度で飛ぶのか、もしくはテレポートでもさせるのだろう。


「そしてこの文章を書いたのが、、、ミルの愛人かな?」


ミルにお願いしたらなんてこと書けるのは愛人くらいだろう。

・・・だが、文章の書き方といい、文字の形といい若干幼すぎる気がする。

ミルの年齢は知らないがもしや、、、、


「ミルは幼女趣味?」


その瞬間、ゾクッと背中を怖気が襲った。

屈んだ瞬間大きな塊が頭上を通り抜ける。

ドゴンと壁に大きくめり込んだのは・・・鉄球!?


エルフっぽい形のおおきな耳がついた鉄球は耳をぱたぱたさせながらめり込んだ壁から脱出し再び迫ってくる・・・・もしや特定のキーワードで起動するトラップ!?

そんなバカっぽい魔道具まで作ってるのか、ミルは!?


てかここじゃ、逃げ場がない!

食卓に戻り隠れようとしたが、扉を突き破って鉄球は入ってくる・・・魔道具犬とは違い、音以外の感知要素があるのか!?

ここなら広さもあるし腕も存分に振り回せる・・・仕方ない鉄球を迎え撃つ!


「『消滅を象徴する両腕』!」


頭部を庇うようにクロスした両腕に武器としては扱えないぐらい大型の鉄球が飛び込んで来る。

ズシンと体全体に重さがかかる。

これが示すのは、、、消しきれないということ


「な、、、なんで!?」


魔力密度が高いと消しにくいという弱点はあるものの、自分が認識できる物はどれだけ時間がかかっても必ず消せるのが僕の本質能力

ゴースト・シーフや不可視の毒ガスなど認識できない物でない鉄球が何で・・・

その時、わずかに削れてはいたのか鉄球のカスが少し飛んできた。

たまたま顔に張り付いたそれを見て、、、少し絶望的になって来た。


「何で、、、ミルはこんなものまで持ってるんだ!?」


『天使の羽根』

世界一頑丈な存在力を染み込ませた一品

『土蜘蛛』でなら消し切れるかもしれないが、、、屋内では土がない!


「サクラ、、、どうやら僕たちはミルを甘く見てたかもしれないよ・・・」


屋敷かと思っていたが既にここは要塞だ・・・上級冒険者すら簡単に跳ね除ける程の

遂に腕をこじ開けた鉄球がノーガードのコウの胸に沈み込んだ。

コウにとっては見慣れた『メルキセデク』の羽根が鉄球の動いた軌道の跡をパラパラと舞っていた


――――――――――コウ・レイペンバー 気絶により『リタイア』


「そういえばなんだが」

「何です?」


トツカさんが念入りに屋敷の外観を『見回す』中、シノンさんと私は周囲を警戒してました。

そんな時にシノンさんが少し疲れが残っている表情で辺りを見渡しながら私に話しかけてきました。


「そのブーツの能力は『飛翔』に『纏炎』らしいけど、どれくらい使えるんだ?」

「私自身は魔力を外部に放出できませんから・・・取り敢えず試しにつけてみた溜魔石は下級のものですし・・・取り敢えず『纏炎』はブーツの周りに火を纏うだけで、火の玉は出せません。『飛翔』は節約したいので魔力消費の関係上、二回ジャンプが限界ですね。」

「二回ジャンプ?」

「まあ、プロペラや花を取っても、もっと上質な溜魔石が無い限り飛ぶこともファイアーボールを出すことも出来ないってことです。ついでに言うとジャンプで踏んづけたからといって蹴りの威力が増すわけではないので敵は倒せません。」

「花?プロペラ?・・・ツバキ、サクラみたいに混乱すること言わないでくれ」


シノンさんに溜め息をつかれました。

・・・例えが分かりにくかったでしょうか?

とはいえどう説明すればよいでしょう・・・難問です。


「お~い、こっち来てくれ」


私が少し悩んでいるとトツカさんが何か見つけたようです。


「大体屋敷の外観を見て回ったんだけど、多分ここから入るのがベストだ。」

「理由は?」

「『鑑定』では見えない中までは分からないけどここに魔道具を置くのはまずないんだ。」

「・・・なるほど、水場ですか」


少し上を見上げると換気用の小さな窓がありました。

多分、湿気を取るための窓でしょう。


「風呂やトイレに罠を仕掛けるのは馬鹿らしいってことか?」

「精々鍵くらいだし、それぐらいなら『鑑定』しながらのピッキングで開けれるだろ」

「鍵が魔道具だった場合は?」

「大事な倉庫につけると思うけどな、、、そん時は第二候補のトイレの換気窓だ」

「・・・ここから入れればいいが」

「私もそう思います」


三人で願いつつシノンさんが造った氷の足場に乗ります。

トツカさんが窓のカギを『鑑定』して、ほっとため息をつきました。


「大丈夫、、、普通のカギだ。」

「なら、、、入れますね」

「ガラス溶かして空いた隙間からピッキングする・・・『ミニバーナー』『針金生成』」


トツカさんはあらかじめ掬っておいた少量の土から一本の針金を錬成しました。

軽く炙って溶かした窓に穴をあけ、内側のカギを針金で開ける。

前にトツカさんを鍛冶師向きだと私自身が評価しましたが、あれは間違いでした。

トツカさんは空巣の方が向いてそうです。


「さ、入ろうか」

「よし、先に行く。二人は私の後に」

「トツカさんは私につかまってください」

「う~ん、女性に抱えられるのは心理的抵抗があるが仕方ないか」


シノンさんが先に降りて、周囲を確認した後トツカさんを抱えた私が降り立ちました。

お金をふんだんに使ったのでしょうか?

凄く広いお風呂場です。

多分五人、十人平気で入れるのではないでしょうか?

湯を出す口は立派な石像になってたり、床が滑りにくいように加工されてます。

職人の心遣いが所彼処に見られます。


「愛人さんの為に作ったんでしょうか?」

「多分そうだろう。男がここまで風呂好きとは思えないし・・・?」


シノンさんは排水溝に屈み込むと一本の毛を見せてきました。


「これ、、、何か獣の毛に見えるんだが」

「いや、ウサギの毛だ。それも長さから耳の毛」

「ウサ耳・・・ですか」


なぜかミミアンさんを思い浮かべてしまいました。

シノンさんも同じなのでしょう。

私より先にトツカさんに尋ねました。


「獣人の毛か?」

「いや、それなら『鑑定』で分かる。それは正真正銘ただの兎の毛だ。」

「そうか・・・」


どうやらただの杞憂のようです。

風呂場に長居する理由もないので脱衣所をぬけ、私たちは一階の廊下に出ました。


「・・・一部屋ずつ見ていくしかないかな」

「まじか」


流石王国一の魔道具作成士の屋敷。

一階だけでも恐ろしい数の部屋があります。

トツカさんも流石に『鑑定』しきれないのか目を揉みほぐします。

シノンさんがうんざりと言った表情でため息をつきました。


「取り敢えずここにはないみたい」

「どこにあるんでしょうね?」


部屋全てを見て回る時間は流石にありません。

でも、どこから探せばいいかさっぱりわかりません。


「・・・魔道具が置いて有りそうな場所か」

「トツカさん?」

「保管を考えるなら環境に気を使うはず・・・だったら気候の変化を考えないように・・・日光や空気があまり変化しないように・・・」

「地下か?」

「多分、、、だから空気の流れを見てみる」

「『鑑定』ってそこまでできるのか?」

「出来るよ。魔力消費酷いけど」


トツカさんはそう言うと地面に顔をつけ、目を紅くし始めました。


「少し休ませてもらうぞ」

「お好きに」

「ふう・・・」

「シノンさん、、、大丈夫ですか?」


やはり獄炎魔術は『陰魔を象る胸鎧≪サキュラス≫』を外したシノンさんでさえ体に負担をかけるようです。

獄炎魔術をコントロールするのに魔力を相当消費したのか、シノンさんはぐでえっと座り込みました。

顔にも少し陰りが見えます


「ああ、、、胸鎧をつけない分昔よりは余裕がある。心配せずともこんなところで倒れるつもりはない」

「そうですか、、、」


シノンさんの隣に座って彼女の様子を診ていきますが、魔力を充填することは出来ないので今はどうしようもありません。

マスターとM・Mみたいに魔力をあげれればいいのですが・・・

その時、私とシノンさんの様子を横目で見たトツカさんが作業しながら口を開きました。


「どうしてもキツイっていうなら君のブーツの溜魔石を砕いて飲ませな」

「え?」

「溜まってた魔力を体に入れれば少しは魔力が充填されるから」

「は、はい」


溜魔石を砕いて水筒に水と共にシノンさんに飲ませました。

・・・すると、シノンさんの呼吸が見る間に和らぎました。

魔力が回復したのでしょう。

シノンさんが思わず目を見張ります。


「溜魔石に、、、こんな効力が?」

「知られてないと思うよ、石を砕いて飲むなんて普通しないだろうし。それにその石は王国でしか取れないから高価だ。」

「本当に『鑑定』ですか、トツカさんの本質能力・・・」

「そうだっていってんでしょ」


・・・なんかこれ以上ツッコんでも押し問答な気がします。

大人しくシノンさんの隣で座っておきましょう。

邪魔するのも悪いですし


「そういえばですが、シノンさん。よく香水なんて持ち歩いてましたね」

「ん?ああ、サニアに女らしくしろとよく言われててな。皮肉なものだよ、、、昨日の買い物の際についサニアを思い出して買ってしまったものを戦闘で使うことになるとは・・・」

「シノンさん・・・」

「今度はサニアに選んでもらうさ・・・それまで女らしさはいらない」


シノンさんはそう言うとすっと立ち上がりました。


「どうだ、トツカ」

「ああ、、、地下へとわずかに流れる空気がある」

「それから見ていくか」


三人で一つの部屋に入りました。

どうやら当たりのようです。

そこには魔道具が並んでました。


「これが?」

「いや、、、こいつらはブラフだ。」

「ブラフ?」

「ここは魔道具を保管する場所ですよと『誰かの眼』を『誤魔化す』ための」


トツカさんはそう言うと下の絨毯を指さしました。


「これをめくると隠し部屋がある・・・」

「じゃ、めくりましょう。シノンさん手伝ってください」

「ああ」

「「せえの!」」


二人で絨毯をめくるとそこには隠し部屋へと続く扉がありました。


「・・・罠があったらすぐに知らせるために俺から入る」

「分かった」

「了解です」


トツカさんが扉を開くとその先は階段でした。

一体どこに繋がるのでしょうか・・・これだけ多くの魔道具が並べられているのにこれらよりも凄い魔道具があるのでしょうか?

私たちはトツカさんを先頭に進みます。

その先にあるのは一つの扉でした。


「開くぞ・・・」

「ああ」

「はい」


トツカさんは扉を少しずつ開け、、、そして中を一瞥するとバタンと急に扉を閉めました。

そして口を布で覆いながらこっちを振り向きます。


「罠があった!視線をキーに起動する魔道具だ!」

「何だって!?どんな機能だ!?」

「とにかく口を塞げ!何かで覆え!」

「トツカさん、おちついてください!」

「くそっ!こんなしっかり隠してあるんだ!最初から気づくべきだったんだ!」


トツカさんはどこか慌てた様子で頭を掻きむしります。


「取り敢えず早く魔道具を壊しましょう!」

「駄目だ!中に入るんじゃない!」

「じゃあ、どうするんだ・・・うっ」

「ど、どうしたんですかシノ・・・あ」


目がくらくらして思わず膝をついてしまいます。

明らかに異常なのに、目が覚めるどころかまぶたが重く・・・


「睡眠ガスが、、、扉から、、、漏れ出してる、、、早く、、、出ないと」


トツカさんも睡眠ガスを吸ってしまってるのかずざざざっと壁をずり落ちます。

駄目、、、このままじゃ、、、、

そして私たち三人は意識を失いました。


――――――――――ツバキ、トツカ・ドラガン、シノン・エルリングス  気絶により『リタイア』

ミル「天使の羽根使いたいでやんす」

陛下「わかったでやんす」

王国役人「王国金貨〇〇〇〇枚でおねがいでやんす。ついでに私立ギルド『モルトリオンド』の立ち上げも認めるでやんす」

メルキセデク「わかったでやんす」


みたいな流れがあったとかなかったとか

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