表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/183

第2章『激情』part3

静寂の空間

付き合ってもない女の子の家で二人きりで夜を明かす・・・いや、駄目でしょ?

そういうのやっていいのは主人公だけだ。


俺はあくまでNPC。

我が家には妙齢の女性やら同級生やらうじゃうじゃ住んではいるが二人きりはまずい。

まずいってことは当たり前のように分かる。

いくら親御さんが良いとか言ってもそれぐらいは分かるんだ、僕!


「じゃあ俺は帰るし・・・」

「どこに?」

「・・・公園?」

「お母さんの言う通り、家にいなさいよ。一人にするのは正直不安。それに病気のこともあるし」

「うっ・・・」


優子は呆れたような視線をこっちに向けて来る。

いや、それでも泊りはまずくないですか?

流石に・・・ねえ?


「じゃあ、こうしたら?明日は休みだし今日は朝まで二人とも起きるっていうの」

「・・・何か変わるか?」

「ほら!時間が遅いだけで遊びに来ている・・・的な・・・感じ?」

「疑問形で返されても俺は判断できねえよ?」

「うっさい!取り敢えず、二人ともずっと起き続けてれば問題ないの!」

「んな無茶な、、、」


白凪優子さんはハイ決定と叫ぶと居間のこたつに足を入れた。

そしてこたつ机をばんばん叩きながら俺も座るよう催促する。

・・・優子も優子で焦りまくってんな。


「ほら!宿題してれば朝になるでしょ!」

「・・・そんなに宿題時間かからんしょ」


どう頑張っても一時間もかからんだろう。

第一今日は学校をぶっちしたから宿題が何なのか分かりません!

それに常に持ち運んでる鞄の中には最低限の筆記用具は入っているが主な勉強用具は生徒会会館に置きっぱなしだ。


「じゃあ、、、テレビでも見る!」

「・・・そうしますか」


優子は理不尽にも怒りながらテレビのリモコンをつける。


特番『私の初めてのキスについて』

バラエティー『恋の駆け引きのコツ』

金曜映画『駆け落ちについての映画(濡れ場中)』

トーク番組『性犯罪について』

他に見れそうなものといえばテレビショッピングや妙な韓国ドラマ


「ドレミル?」

「・・・テレビ消そう」


優子は大人しくウンと頷くと電源を切った。

金曜のゴールデンタイムなのに何でこんなに気まずい番組しか放映されてないんでしょう?

こんなの見れるほど俺も彼女も心臓強くない。

てか気まず過ぎて話出来ないんですけど!?

こういうのって苦情どこに出せばいいですか!


「そ、そうだ!ラジオとかは!?」

「え?ラジオ?」

「そ、そうだよ!テレビが駄目でもFM放送ならマシなのあるだろ!」

「コンポ使えば聞けるだろうけど・・・面白いの?」

「テレビよりはマシだろうよ」


彼女は足をこたつに入れたままぐいっと寝転んで近くの戸棚から小型のコンポを取り出した。

音楽CDとかをレンタルした時に使うのだろうか?

ホコリはそれ程かぶってなかった。

ついでに言うとぐいんと伸ばした背中は少しエロかった・・・いや、こういう冗談は今は危険だ。

出来るだけ彼女をじろじろ見ないようにしながら手渡してきたものを受け取る。

・・・うん、いけそうだ。


「音楽ばっか流れるのと、トーク系」

「藪蛇つつきたくないし、音楽系」

「賢い選択だ。」


チューニングする前に彼女とグッと指をたて合う。


「・・・確か音楽チャンネルは」


昔中学時代に技術の授業でラヂオを作らされたことがある。

完成されたそれを持って帰ってからというものの、朝顔さんに五月蠅いと叩き壊されるまで毎日弄ってた記憶がある。

記憶の通りにガガガと小うるさい調整音を聞きながらチューナーを弄ってると段々ガガガが意味のある音に変わっていく。

なんかスローなゆったりとした曲調が一瞬流れる。

後は一番くっきり聞こえる位置にチューニングするだけなのだが・・・


「「・・・この曲知ってる?」」


ラジオで流れる曲って・・・テレビの音楽チャンネル以上に玄人向けだな。

最近の曲も流れるけどその為にこの長いメロウを聞き続けるのはドギツイデス!

音楽好きにはたまらないのかもしれないが俺も優子もそこまで深い音楽ファンじゃない。

よく考えれば中学の頃も自分が作ったラジオがラジオとして機能してたことに感動していただけで別にラジオを好んでいたわけでもない・・・

第一、好きじゃない音楽って聞いてると眠くなる。

てか、絶対寝かせるための選曲だろ・・・


「なんか眠くなってきた」

「ラジオもダメだな・・・」


優子がふあっと思わず欠伸をこぼす・・・金曜日もっと頑張れよ!

ラジオをしまいつつ、再び相談に入る。


「どうする?朝まで起きるってよっぽどじゃなきゃ無理じゃね?」

「そうはいったって・・・」

「ゲーム機とかないの?」

「・・・お母さんが集めてるのあるけど」

「自分は好きじゃないのか?」

「血が出てグロいのばっか・・・」

「ああ、、、苦手なのね」


白凪母は意外にもゾンビ系ゲームが好きらしい。

俺も嫌いじゃないが・・・怖がらせてまでしたいわけではない。

怖がって涙目の姿は見たいが・・・


「いっそDVDでも見るか?」

「DVD、、、そんなに数ないし、、、種類が、、、」

「取り敢えず持ってきてみ?」

「わかった・・・」


彼女はしぶしぶと言った表情で五、六枚持ってきた。

おおう・・・

ゾンビ映画と今時の青春映画しかない。

青春系映画でもいいけど、、、優子はともかく俺は寝るね。


「いっそのことゾンビで眠気覚ますか?朝まで背後が怖くて眠れないみたいな」

「・・・死ぬ?」

「それは物理的に殺されるのか、死ぬほど怖いのかのどっちなのかに寄る」


彼女にとってゾンビ映画はよっぽど怖いものらしい。

彼女の眼に入らぬように部屋の隅へと追いやった。

さて、どうっすかな?


「・・・お」

「どしたの?」


・・・素晴らしいプランを思いついたんだが

俺って天才じゃね?


「DVD借りて来るわ。レンタルショップは大抵深夜二時まで開いてるし。近くにないか探してくるわ。」

「そのまま帰って来ないっていう案なら却下」

「・・・俺ってそんなに分かりやすいか?」

「うん、、、寒いからこたつに早く戻って」


優子さん鋭いっす。

俺は大人しくこたつに戻って・・・


「じゃあ、どうすんのさ!一日中走り回って凄く疲れてるんだけど!正直少し目を閉じれば眠る恐れがあるよ!」

「しかたないでしょ!悪いのはテレビ局とラジオ局と私の母親よ・・・メディアは全部滅びればいいのよ!」

「メディアのせいにすんなよ!メディアの皆さんは俺らみたいな複雑な視聴者想定してねえんだよ!そこまで考えて構成練ってねえんだよ!」

「もう、、、いやあっ!」


優子はこたつに潜り込んでしまった。

・・・自分だけ勝手に寝てねえだろうな?

のそのそとこたつを抜け出して彼女が潜った側へと足を運んでみると彼女の頭だけ出ていた。


「・・・・・」


ぷるぷる頭のアホ毛が震えてるから起きてるんだろうが・・・引きづり出すにはこたつの中に手を突っ込まなきゃいかん。

今までの前科からろくでもないことになるのは目に見えてるからやめておこう。

とはいえこたつに潜ってたら絶対寝てしまう・・・

そして相方がいない俺も寝てしまうだろう。


「・・・お」


よくよく見ると彼女の頭頂部からアホ毛がちょこんと出ていた。

・・・気になる。

とても気になる。

まあ、アホ毛ぐらいならいいよな?


「ひうっ!?」

「うおっうう!?」


ピンと弾いた瞬間こたつがドガンと揺れた。

恐る恐る彼女の様子を伺うが・・・大丈夫ですよね?

殴られたら今の俺は一瞬で眠っちまうぞ?

プルプルしてるのは変わらないが、、、返事すらしないのは怒ってるからか?


「ひやあっ!!?」

「ごめん、、、つい・・・」


返事がないならと人差し指一本でちょいちょいとアホ毛をつついてしまう。

撫でればついっと元通りになり、弾けばぴちんと戻ってくる。

指で絡めれば滑らかな感触を伴ってするっと巻き付いてくる。

これは、、、朝まで遊べるか・・・も・・・?


「人の頭で遊ぶな!」

「おお、顔だけ出てきた・・・いだっ!嚙むなよ!?」

「がるるるるっ!」


顔だけひょいっと出してきた狂犬はアンテナ(アホ毛)で感じ取っていたのか俺の人差し指を嚙み千切らんばかりに喰いつく。

必死で引き抜くがこたつの中で茹で上がった彼女はガチンガチン歯を鳴らしている。

てか、それでもこたつから顔以外出さない。


「がるるるるるるっ!」

「・・・(そおっと手を伸ばす)」

「がぶっ!」

「お前は犬かッ!?」


白凪優子が猛犬モードに入ると話を聞かない。

それを今までの彼女との経験から知っている。

そして彼女が正気に戻るにはそれなりのショックが必要・・・

まああんときの・・・き、キスほどの衝撃はいらんだろうがな?


「がぶうっ!がぶがぶぎゃぶうっ!」

「いだだだだっ!ごめんて、思い出しただけだって!しないって!」


指が美少女の涎でべとべとになっている。

とはいえ痛みのせいで全く性的興奮を感じません。

・・・いだっ!?

ちょっと!鬱血してるんですけど!?


「もお、、、べとべとじゃんかよ」

「がるっ!」


サクラならニコニコ笑顔で『後で舐めたりしゃぶりまくってもいいんだな、この唾液?』とか言ってしまえるだろうが俺はそこまでキチガイじゃない。

手を洗いに台所へと歩いていった。

たく、、、嚙み跡が充血するとかどんな顎の力してんだか

優子との付き合いはまだ短いせいか顎の力がここまで強いとは予想外だった・・・

嚙みに嚙まれまくった両手をしっかりと水で冷やした。


居間に戻ろうとしたら開きっぱなしの扉を確認した。

こういうの閉めとかないと空気が冷たくなるからな・・・

戸を閉める前に確認した部屋は多分優子の部屋だろう。

ベッドの上には俺が手伝って獲得したあのラノベのマスコットのぬいぐるみがあった。


「・・・そだ」


居間に戻ると優子は未だにこたつの中に潜り込んでいた。

再び彼女の頭の前で跪くと再び彼女の顔がもそもそっと出てきた。

不機嫌って顔してるんだが、俺は口を開く。


「ノートパソコン置いてる?」

「・・・どうするの?」

「アニメでも一緒に見るか」

「あに、、、め?」

「どうしたんだよ、ほら『兎少女と釘バット』」

「あれ・・・二人で?」

「一回見たんなら見直そうって話だ。一期十三話構成で二期まであるから全部見ると七時間。ついでに映画も見れば約九時間。おそらく朝までもつ!」

「理論上は可能かもしれないけど、不健康じゃない?」

「意外といけるだろ。試してみりゃあいけるかもしんねえじゃん」

「・・・いいけど」


『兎少女と釘バット』は中学時代に名も知らない少女に借りパクされてから原作もアニメも読見ストップしているが、元々結構好きだった作品だ。

正直見るたびに待ち合わせをすっぽかされたことを思い出させる古傷を抉る作品だが、白凪と趣味が合う作品はそうそうないから仕方ない。


「お待たせ」

「おう・・・て、何で隣に座るんだよ」

「ノートパソコンの画面ちっさいんだからしょうがないじゃん。」


優子はノートパソコンを持ってくると、何を血迷ったか狭いこたつなのに俺の隣に座り出した。

別に俺が入ってる面の側面にでも入ればよかろうに、彼女の腕と俺の腕がどう頑張っても当たるぐらい密着している。


「もうちょい、離れられません?」

「うるさい・・・ほら、耳出して」

「なっ!?」


ぐいっとイヤホンを耳に詰め込まれる。

片方だけつけて、もう片方は相手に・・・いわゆる恋人イヤホンである。

なんなの、今日の優子さん!?

こっちから触れられたら嚙みつくくせに、優子さんから接触多いんですけど!

こんなにベタベタしてくる女の子でしたっけ!?


「イヤホン、、、スピーカー音絞れば良くね?」

「深夜になるとそれでも隣に迷惑になるの!」

「そうなん?」


一軒家に住んでるから分からないがアパートってそんなに隣を気にしなきゃいけないんだろうか?

でもイヤホンのせいか、さっきより心なしか近づかないといけない・・・

彼女の身動き一つ一つが実感できてこそばゆい。


「じゃ、じゃあパソコン使わせていただきます」

「うん、、、でもDVD持ってんの?」

「ネットつなげりゃどっかにあがってるだろうよ」

「あがってるって・・・それ違法じゃない?」

「軽犯罪だし、警察も真面目に取り締まるのはその動画をあげてる人までだよ」

「ええ、、、」


優子は若干大丈夫なの?という顔をしてるので、動画投稿サイトのサイト閲覧者数を見せてやる。


「一々この数取り締まってたらキリねえって」

「・・・そうだね」


最近アニメ会社もそれを悟ってか、寧ろ原作やグッズの販促目的でアニメ作ってるらしいからな。

若干、DVDの売れ行きに支障が出てるのは否定しないが。


「てなわけで、問題はほぼ生じないっと」


だからといって対策しないなんてことはないようで、大手の動画サイトでは殆ど『遅すぎました』だの『この動画は○○会社の申し立て云々かんぬん』と並べてあった。

それでも探せば見れるサイトは幾らでもある・・・こりゃあもう執念だな。

その執念があるならDVD買ってやれ。


「じゃ、見ますか」

「うん」


明るいテンポのオープニング中は黙って聞いて、本編中は大体内容を二人とも知ってるから二人で関係ないことを話しながらダラダラ流し見。

エンディングは見たいときは見て、大抵流して。

一期をいつの間にか見終わって、二期に移行して・・・なんだかんだで時間を消費していった。


「ねえ」

「ん?」


二期の四話に差し掛かったぐらいのこと優子が動画を止めて話しかけてきた。

時刻は既に日付を超えていて・・・欠伸を噛みしめながら俺は彼女を見た。


「いつからその病気だったの?」

「・・・なんで?」


いきなり変なこと聞くなと言いたいところだったが優子は逃がしてくれなさそうだった。

・・・見せるもん見せちまったし隠しきれそうもない。


「いいから」

「・・・夏休みの終わりぐらい」

「そんなに前から!」


優子があまりにも驚いた表情をするので、慌てて誤魔化しておく。


「つっても悪化し始めたのは最近で・・・皆に迷惑かける程じゃなかったんだ」

「・・・そうなの?いつから?」


もたれかかれば押し倒せる距離

少し手を伸ばせば抱きしめられる距離

感覚鋭敏化になっていれば彼女の香りで理性を失う距離

彼女の吐息が肌にあたる距離

彼女の瞳には当たり前のように俺の姿だけが映る


なのに彼女はさらに詰め寄ってくる


「優子、、、近い、、、」

「そんなことより、、、いつから?」

「大体生徒会メンバー決まってから・・・」

「嘘じゃない・・・の?」

「嘘じゃない・・・ぞ?」


彼女はそれを聞くとすっと元の距離に戻った。

とはいえ、密着する距離なのは変わらない。

優子はきちんと整えられた眉をしかめながら、マウスを指でなぞる。


「なら、、、あの時のキスはなんだったの?」

「・・・っ」

「なんであの時から無理に私を優子って呼ぶの?」

「そ、それは・・・」

「私は・・・桜からの『キス』をどう受け止めたらいいの?」

「あ、ああ・・・」


白凪優子とここまで真面目な話をするのは初めてだ。

取り敢えず今分かるのは朝顔みたいにぼかしていい場面じゃない!

さてはコイツ、俺を逃がさないために家に招きこんだな!


ちょっとトイレと逃げ出せないようにわざわざ隣に座り

ちょっと距離をとれないようにイヤホンで動きを封じ

ちょっと話を変えれないようにあそこまで儚げな表情を・・・ほっとけない表情を!


「・・・ゆ

「ちなみに変なこと言ってごまかそうとしたら折角治った捻挫した方の足蹴り飛ばすから」

「、、、はい」


よく分かってらっしゃる!

感覚が鋭くなってる今の俺にはそれは一番やってはいけないことです!

ちなみに二番目にやってはいけないことは俺を窮地に追い詰めることな!


「あの時さ・・・桜が妹と抱き合ってて・・・病気って嘘ついて女の子に簡単にああいうことできる人だと思ったんだ」

「・・・」

「でも、、、病気が本当で、、、でもそしたら私にしたあのキスは病気のためなの?・・・それなら殺してやろうぐらいで済ませられるけど」

「・・・えっ」


忘れていたが、彼女は俺の命を狙っている・・・忘れてたよ


「なのに、あの時は病気じゃないっていうし・・・分かんないよ。そして返答によっては桜を本当に殺さなきゃいけない」

「・・・・・・・・えっ」


バチチチッ!バキン!

白凪優子さんがマウスを壊した。

もし俺が勢い余って抱き付きでもした時は使うつもりだったのかいつの間にか手には生理的嫌悪感を感じさせる音と火花を発する小型のスタン○ンが握られていた。

・・・・・思い詰め過ぎです。

若干引くわ!

でも、物理的にも精神的にも引けないようにされてる!

この策士め!


「ごまかすならさ・・・楓の前で優子って呼ばずに今まで通り白凪でいいじゃん・・・そうもしない」

「いや、それは・・・

「でもこうやって近づいてみても抱き付こうともしてこない」

「・・・・・・」

「ねえ、、、、あなたにとって私って何なの?」


優子はそう言うと俺の膝の上にぼとんと倒れこんできた。

太ももに近い位置に頭を乗せここからは顔が見えない。

でも、、、笑ってるはずがない。

・・・・・・少し甘く考えてたな

ここは現実なんだ、、、キスはどう言いつくろったとしても関係性を変える。

『分かっていた』ことなのに・・・・甘く考えてた。

白凪優子の・・・・この美少女のファーストキスを奪った責任は・・・とても重いことなのに

彼女のこれからを決める・・・大事なことだったのに


「白凪優子を・・・君を優子って呼ぶのは関係性の変化から逃げないためだ・・・」

「・・・・・・・・・」

「君との関係を変化させた・・・君を状況はどうあれ傷つけた責任を・・・取る方法が今は思いつかな

「死n

「思いつかないからぁ!」


俺も薄々それしかないとは思ってるけど!

それしかないのは分かってるけど!

でもそれしたら誰かが悲し・・・・まないけど!

他の選択肢探してもいいじゃん!


「思いつかないけど、、、せめてあの時のことから逃げてないって、、、向き合ってるって、、、優子に示したかったから・・・

「から?」

「俺は君を優子って呼び続ける」

「・・・楓の前でも?」

「何でそこで朝日奈さんの名前を出すかって突っ込みたいけど、、、そうだ」

「妹の前でも?」

「そ、そうだ」

「お母さんのまえでも?」

「そそそ、そうだ・・・いでっ!」


優子はそれを聞くとぎゅむっと俺の脚を抓った。


「嘘つき」

「・・・最後だけだろ」

「でも、、、」

「でもって、うおっ!?」


いきなり起き上がるや否や俺を押し倒してきた。

優子はにこにこ笑いながら俺に跨って来た。

これは・・・逆レ

待って心の準備が・・・


「私だけ傷ついたんだからあなたも傷つかないとね♪」

「・・・・物理的ですかぁーッ!」


耳元でバチバチ音が鳴ってるけど、、、もしかしてスのつくアレですか!?

肉感的で精神的な方がいいです!

出来れば等価交換のやつにしましょう!

だからこそ仕返しになると思います!

寧ろそっち系で倍返しお願いします!


「待ってくれ!心の準備が出来てない!」

「ふふふ、、、何が逃げないよ、、、何が向き合うよ、、、もっと分かりやすく責任取りなさいよ」


バチバチバチバチ耳元で鳴っている。

優子は俺の胸を服ごとぎうっと握りしめ、、、痛い、痛いです。


「もしかして、、、怒ってる?」

「あたりまえでしょ!」


白凪が俺の胸を更にぎうぎう捻じってくる。

・・・てか、そこ乳首巻き込んででででででっ!


「どれだけ悩んだと思ってるの!あんたが優子って呼ぶたびっ・・・呼ぶたびっ・・・どれだけ・・・どれだけ・・・」

「・・・・・・」

「どれだけ楓に言い訳してきたと思ってるのよおっ!」

「結局朝日奈さんがらみね!分かってたよ、ちくしょー!」


優子はギリギリギリ乳首を胸板ごとねじり、耳元の火花は今まで以上に大きく聞こえる。

・・・・・・これは新手の拷問ですよね、条約違反ですよね

優子は烈火のごとく怒っていた表情を急に緩める。

その理由は・・・


「何?乳首捻じられて痛がってるの?」

「・・・(まさか)」

「ふふふふふふふふふ♪」

「イダダダダダダダダッ!!!」


両手で片方ずつ捻じりに捻じってくる!

それも笑顔で!

右乳首は右回り!左乳首は左回り!

痛いです!


「右は右~♪左は左~♪慣れて~きたら~♪それぞれ逆に~♪」

「いだい、いだい、痛いっ!」

「ふふふふふっ、ホントに馬鹿なんだから桜は♪」

「笑顔怖い、笑顔怖い!」

「なに?もう一回?」

「イダダダダダだッ!」


更に強くニコニコと

耳元の火花は当たってるのか当たってないのか

手から離れてるのに自立で動いているのかしら!?

優子さん痛いです!

謝りますから、許してください!


「ふふふふふふふふふ♪桜ってホントに・・・最高♪」

「ありがとう、取り敢えず離しでででででっ!」

「ただいま~」

「「・・・・・え?」」


二人揃って声の方を向くと優子さんのお母さんが立っていた。

頬をひくつかせ、ドン引きしながら


「優子、、、こんな遅い時間からとか、、、性癖そうなの?、、、とか言いたいこといろいろあるけど、、、まだ、、、お母さんは優子にそういうのは早いと思うの」

「・・・・・・い」

「「い?」」

「いやああああああああ!」


隣部屋の人が『一晩中うるさくて眠れなかった、特に最後の方の悲鳴』と本気で苦情に来た。





「いやだ、帰りたくない!」

「何言ってんのよ!私にあれだけ迷惑かけといて家に帰らないなんて言わせないわよっ!」

「ほぼ優子の自滅だろっ!俺のせいだっていうつもりか!」

「そうよ!だから桜が妹に痛めつけられる姿を見てスッキリしに行くのよ!」

「いやいやいや!人の不幸を見て笑えるのか!明日から心から笑えるのか!」

「笑える!心から笑えると思う!腹抱えて笑えると思う!」

「お前それでも人間かっ!」

「これこそ人間よっ!」


翌朝

殆ど寝てない頭のせいか何を言ってるかお互い曖昧なまま

俺達二人は(一名にとってはほぼ強制的に)久しぶりに如峰月家に向かっていた。

本気で抵抗すればバチチッと音と光が痛みを与えようと迫ってくるので、口だけの抗議である。

まあ、優子さんに引きづられてるが


「・・・はあ」

「なによ、その呆れたようなため息は!」

「いや、、、この状態で家帰ったら朝顔がなんて言うかなと・・・」

「それを見て笑いに来たの!大声で笑ってやる!あーっはっはって!」

「白凪たん・・・」

「誰が白凪たんよ!」

「悪かったよ、悪かったって!だから首筋にそんなん当てようとしないでくれ!」

「がるるるるっ!」

「ちょ、待って・・・・ん?」


携帯が鳴った。

受話器に耳を当て・・・・優子を置いて走り出した。

朝顔が、、、朝練中貧血を起こして学校で、、、倒れた。






兄貴が分からない


急に姉を連れてきた

あんなに楽しそうにしていたフェッシングをあっさりとやめた

好きな人に失恋したはずなのに未だに縛り付けられている

まだ引きづってるはずなのに他の人とキスしたらしい


たった二人の兄妹のはずなのに、、、何でここまで兄貴を理解できないの?

家族って何なの?

家族ってもっとお互いを信じあえるもんじゃないの?


桔梗さんとお父さんの間にあった兄妹の絆


私はそれを兄貴との間に感じられない


何も話してくれない、応援すらさせてくれない


私は兄貴を兄と思えない


「だから、兄貴を家族と思えない」


病院のベッドの上

朝顔は表情を変えることなく俺に淡々とそう告げた


「・・・そうか」


俺は何も言えないまま『如峰月朝顔』の病室から出るしか出来なかった。

『兄』として何も出来なかったし何も言えなかった。



そもそも



『兄』として何かする権利があるはずなかった

次章から第3章。

予告通り空巣に入ります。

第3章『侵入』お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ