第2章『激情』part2
今さらですが対照表
現実 桜睡眠(サクラは現実に意識を持っていけない) → 異世界 サクラ起床(桜は霊実体としてサクラをサポート)
現実 椿睡眠 → 異世界 ツバキ起床
現実から異世界への転移は基本『意識』のみ
それぞれの世界に意識を受け入れる身体があるという理解をお願いします。
M・M≪マスター・マスター≫のいる世界に来て、如峰月椿となってから三週間が経ちました。
大体の知識、記憶はM・Mの記憶を受け継いでいるので問題はないのですが異世界に慣れ過ぎたせいかたまにこの世界についていけなくなってしまうこともあります。
「さ、椿ちゃんこっちこっち」
「はい」
古畑真琴さんはM・Mの先輩です。
とても頼りになりますが面白いと思ったらなんでもしてしまう困った人で、人の弱みを握る天性の才能を持つという点ではとても困った人です。
M・Mの出来るだけ側にいれるよう新聞部に入ったので私にとっても先輩にあたります。
ちなみにクラスもM・Mと同じです。
「普通の家ですね。」
「普通の家だよ?」
案内されて辿り着いた家はM・Mの記憶にある一般的な一軒家でした。
古畑真琴さんは当たり前じゃないかと頬をひくつかせていますが、M・Mの中にある記憶では古畑真琴さんはいつも謎予算を持ってるということだったのでもっと豪邸かと思っていました。
古畑真琴さんは私の表情から察したのか苦笑いしました。
「ここは私の父の家だからなの。真っ当な稼ぎ方ならこんなもんでしょ?」
・・・つまり古畑真琴名義の豪邸がどこかにあるということでしょうか?
改めて古畑真琴さんの底知れなさを感じ取りながら私は古畑真琴さんの家へあげていただきました。
「ただいま。この娘が泊めるっていってた椿ちゃん」
「おじゃまします。」
「お帰りなさい。ゆっくりしてってね。」
古畑さんのお母様はリビングのドアから顔を出して私たちに笑いかけるとすぐに顔を引っ込めました。
「張り切っちゃって・・・今日はお客さんもう一人来るから張り切ってるみたい」
「お客さんですか?」
「う~ん・・・すぐにくるから待ってようか?」
古畑真琴さんは話を急に切ると、取り敢えず私の部屋においでと二階への階段を上がります。
異世界で旅をよくする関係上他の方の家に泊まる機会は多いですが、こっちの世界では引きこもりさん以外の家に泊まるのは初めてです。
だからでしょうか、いつもより周りをきょろきょろしてしまいます。
階段の隅にぬいぐるみを置いてあったりと少し少女趣味を感じさせる家具のレイアウト
古畑真琴さんの趣味でしょうか?
それともお母様の趣味でしょうか?
「適当に座ってね」
「あ、はい」
もしかしたら家族みなさんがそういう趣味なのかもしれません。
古畑真琴さんの部屋のデスクにはパソコンと写真立てが。
写真立てには家族全員で編み物をしている写真がありました。
普通男の人は敬遠するものですが古畑真琴さんのお父様はとても楽しそうです。
戸籍上の家族はともかく、血縁上の家族がいない私には実感がわかないものですが・・・たぶん暖かい家族なんだろうなあと思います。
そういえばM・Mは大丈夫でしょうか?
私と同じで異世界と現実に体が二つあり意識を飛ばすことで世界を越えるM・Mですが、彼は私と異なり感覚鋭敏化という恐ろしい爆弾を抱えています。
少しだけなら問題ありませんが深刻なレベルに達すると・・・記憶だけもらっているはずの私でさえ全身が震える程です。
最近は毎日抱き合ってるので落ち着いて来てますが、感覚鋭敏化を過度に使う機会がありその状態で精神的負荷がかかったりなんてしたら・・・体ががくがく震えます。
「ちょっと作業したいから本でも読んでてくれる?」
「はい」
机の上には暖かいココア
空調で適切に保たれた部屋
外は風が吹き付けとても冷たいのに、ここはとても快適です。
「M・Mは大丈夫でしょうか・・・」
多くの人に追い掛け回され
今日の宿すら決まらない
女の子達には避けられて
サポートすると意気込んでやってきた割に私は何も出来てません。
それどころかいつの間にか側にさえいれない現状があります。
「気にしないようにね?」
「・・・?」
いつのまにか古畑真琴さんが私の横に座ってました。
ようやく作業終わったよーと言いながら彼女は大きく伸びをしました。
それから顔を上げた私の頭をくしゃくしゃっと撫でました。
「桜君は何だかんだでたくましいから大丈夫だって」
「・・・たくましい?」
異世界でのM・Mはマスターたちと比べると正直弱いです。
だから感覚鋭敏化になりました。
だから遂、たくましいという言葉に疑問で返してしまいました。
「そりゃあ精神的には脆いよ?でも、あいつは腹決めればどんな時でも突き進めるから」
「、、、そういえば」
新聞部に入ると決めた時
誰も発言が出来なかった主人公二人の言い争いに割り込んだり
刃物を向けられても最後まで少女を切り捨てなかったり
観覧車の屋上から自分が落ちそうになっても胸の中の少女を守ろうとした
そうです。
弱い部分ばかり見てしまっていたけど、、、M・Mは強いんですよね?
それなら本当に私は『いらない』存在ですね。
寧ろM・Mを苦しめてばかりで・・・ごめんなさい
「ま、姉妹間で仲が悪いのが今回の原因かもしれないけどさ。そういうのは会話の数が増えれば自然と仲良くなれるよ。実際私も最近になってとことん話した結果仲良くなった人いるし。ま、今回の件は私と如峰月にかかれば・・・」
「せめて私が壊した二人の仲を元に・・・(ぼそっ)」
「ん?なんか言った?」
「いえ、、、ちょっと用事を思いだ
「おじゃましま~す」
決意新たに立ち上がろうとしたら扉が開かれました。
お、黄金色のオーラが立ち昇る人が入って来ました。
ななな、何でここにいるんですか!?
古畑さんを見ると彼女はふいっと目を逸らした。
「いやあ、、、生徒会の仕事教えてくれる代わりに手近な美少女を用意しろって言われてて・・・」
「そういうことだから、、、取り敢えず一緒にお風呂に入りましょうか(柔かいながらも逃げられない腕の組み方を決める)」
ばるんばるんと揺れる巨物にホールドされた私は最後の抵抗を試みますがどうやらすでに手遅れなようです。
「いえ、、、用事があるので(M・Mの記憶でこの人は要注意人物だったと再認識+涙目)」
「あ、気を利かせて薔薇浮かべといたからごゆっくり~」
「あ、気が利くわね♪」
「確信犯ですよねっ!?薔薇とかもう確信犯ですよねっ!?」
「さ、今日は寝かさないわ」
「ひいっ!」
細くモナリザのような指が優しく淫靡に私の尻部をなぞります。
古畑真琴さんは逝って来いと手を振って来ます。
そして、、、黄金比さんに引きづられ私は薔薇の世界へ・・・
M・Mの心配してる場合じゃありません・・・私の貞操の危機ですっ!?
「さ、隅々まで綺麗にしましょう?」
「ひゃあんっ!?」
助けてください、M・M!!!
そういえば椿は大丈夫だろうか?
一度も古畑さん家にお世話になったことがないのでイメージ的には魔○村だが、明日学校で聞いてみてもいいだろう。
ちなみに追いかけ回された件についてだが感覚鋭敏化のお蔭で助かった・・・
刃物が飛んできてもマトリックス張りの避け方したもん。
てか、穂のちゃん先生に君の冬休みは奉仕作業に変わるだろうという最低なノストラ合法ロリダムスの予言をされたが聞こえなかったふりしてもいいですか?
だって感覚鋭敏化は音が伸びるように聞こえるからハッキリ聞こえるはずないモン!
聞こえるってことは俺と同じ速度世界で穂のちゃん先生が動いてたってことになるからねっ!
「うっけえ、、、ようやく落ち着いてきた」
感覚鋭敏化も椿のお蔭でようやくコントロールが出来るようになってきて、取り敢えずゆっくり休めば十分元に戻れるようになってきた。
これなら一晩暖かい所でゆっくり休めれば大丈夫だろう、、、椿様々だわ。
椿に一度最低レベルまで落ち着けてもらったお蔭か、感覚鋭敏化も随分と余裕が出来ている。
とはいえ連続でなっちゃうとレッド判定だがね。
ちなみに今日逃げる為に連続使用してるけど死亡フラグにあたりますか?
椿と今日は離れ離れの予定ですけど死亡フラグですか?
今まで一人でいけたんだし一日ぐらい大丈夫だろって考えちゃったんですが死亡フラグですか?
「新聞君、これとこれどっちがいい?」
「分かったよ!泊めればいいんだろ、ちくしょう!」
一人は苦しい。
なら巻き込もう。
俺はコンビニで購入した実姉物のエロ本と小陽ちゃんとよく似た髪形の少女が載ったエロ本をそれぞれ掲げて新聞君に笑顔を見せた。
泊めてと言ったら厄介ごとに巻き込まれたくないと拒絶された。
悲しくて仕方ないので黙示で『君の家にこれが郵送されることになる』と示しただけなのに新聞君ったらあんなに涙目になって・・・
ちなみにハマリュウも新聞君も親友なのに、ハマリュウにはこういう脅しをしなかったのは新聞君には屋上での暴露についての仕返しをしてなかったということを今更思い出したからというわけではない。
「何で今なの?せめて後一週間ぐらいおいてくれたらいいのに・・・」
「そこまでいやがらなくてもいいじゃないか。なにかあんの?」
新聞君は疲れた顔で腹の底から憂鬱だとため息をつく。
最近はなかったが五月ぐらいにハマリュウと二人で新聞君家に泊まりに行ったことすらある。
それなのに何故今回だけはそこまでいやがるというのか・・・
「最近用事ないから小陽ちゃんが家に来なくなったんだよ」
「そうなん?」
そういや一時期生徒会選挙の関係で毎日家に来られてたとか聞いたけど、あれからはそう来なくなったようだ。
新聞君の眼はそのはずなのに疲れ切っている。
「家に来なくなったのに何で疲れ切ってんの?」
「だから疲れ切ってるんだよ・・・」
「新聞君、、、いつからそんなにそこまでドМに・・・」
「ふふふ、、、ドМになれたらどれだけよかったか・・・」
「ん、どういうこと?」
新聞母「ゆ、佑!?実の姉、小陽ちゃんの次は男なの!?もうあなたが分からない!」
新聞姉「ヒイッ、ゆ、佑くん!?まさかおねえちゃんをその友達といっしょに襲うつもりなの!?佑くんの本にそういうこと書いてあったけどホントにしようとするなんてっ!」
新聞父「まあまあ、二人とも。佑も思春期だからな。男にだって興味持ったりするよな?・・・父さん分かってるぞ。」
「こういうことになるんだよ・・・」
「小陽ちゃんが来てもカオス、来なくてもカオスってか・・・」
「寧ろ毎日来てくれてる方が新聞家は平穏を保ててるっていうね・・・」
新聞君の眼は涙が溜まっているのか少しキラキラしていた。
てか、この状況どうツッコんでくれようか・・・
家に入って玄関から既にこれだしな・・・
お母さん、もっと息子を信じてあげて!
お姉さん、弟のじゃないとはいえ、弟のエロ本読み込むとか寧ろ期待してません!?
お父さん、逆にその理解は息子を傷付けてるから!
言いたいことは沢山あるけれど、ツッコんだら負けな気がした。
「家族会議をします!」
「・・・新聞君。いきなり呼び出されて状況が分からないんですけど?なんか如峰月くんまでいるし」
「小陽ちゃん、本当にごめんなさい」
新聞君が反論もせずに小陽ちゃんに土下座している。
新聞母が新聞佑のお嫁さんは誰であるべきか家族会議をしますと言いだした。
帰ろうとしたら新聞君にまあまあと強い力で拘束され今に至る。
てか、お嫁さん候補が俺と小陽ちゃんと書かれている時点で既にカオスだ。
「もう、またこんな茶番を・・・」
「へえ、『また』なんだ・・・」
「いつもはもっとおちついてるよっ!」
お嫁さん候補達(?)に対してお婿さん候補が涙目で抗議する。
落ち着いていれば御淑やかな人だろう新聞母は泣きながら会議を進める。
というか、がんがんお婿さん候補を揺さぶっている
「聞いて佑!姉とは結婚できないの!男とは結婚できないの・・・幸せになれないのよお!」
「知ってるよ!知ってるから離して!」
「離して!?お母さんはあなたを思ってるのにぃ!反抗期なの!?おそばせながらの反抗期なの!?」
「新聞君のお母さん、いつものように眠っておきましょうか。いち、にの、さん。」
「うぐっ!」
もうこれは会議ではない、もはや洗脳だ。
そしてそれをいつものことと言いきって謎のほぼ物理的な催眠術で眠らせる小陽ちゃんも小陽ちゃんだ。
一番キレてる新聞母が眠ったことによってようやく新聞家は静かになった。
「たく、、、こんなことになるってわかってんなら言ってくれよな。お願い損じゃないか。」
「ここまでひどくなるとも思いたくなかったっていう・・・考えもあったんだよ」
ああ、最悪の状況になってませんようにっていう期待の心ね。
「姉さん、悪いけど・・・」
「まさか、、、駄目よ!そういうのは好きな人としかしちゃいけないの!姉弟なのよ私たち!しかも4
「寝ててください!いち、にの、さん!」
「うぐっ!」
肉弾的な催眠術によって勉強し過ぎなお姉さんも眠らせられた。
誰ももうツッコまなかった。
新聞君は多分皆にお詫びとして夕飯でも振るまってあげてとでも言いたかったのだろうか・・・
もう涙目か涙を流してるのかの境界があいまいな彼は最後の希望の父親を見る。
「父さん、悪いけどデリバリー電話してもらっていい?」
「・・・ん?ああ、分かってるよ。呼べばいいのなデリバリーヘ
「「お前は何を分かったんじゃあああああっ!!!」」
「うぐっ!」
「・・・もう催眠術は無理があるな」
物理的催眠術によって眠らされた三人
でも、夢の中の佑くんは彼らにとっては理想なのだろう
それぞれ安らかな顔をしている
「佑、、、小陽ちゃんと幸せにね・・・」
「佑くんっ、ダメダよ!それはっ、、、ああっ」
「佑、、、やはりお前は俺の息子だ」
もうどうしようもないぐらい安らかなんだが
息を荒げて肩を上下させる新聞君にこれ以上迷惑をかけるのも忍びない・・・・・・・・・・心から思ってるよ?
「じゃ、新聞君。今日はもう遅いし、帰るね」
「はあ、はあ、はあ・・・・」
返事すらない、、、どれだけ気が荒立ってるのか・・・
自分にも責任があるので申し訳ないが埋め合わせはまた後日・・・
「はあ、、、、はあ、、、、小陽ちゃん。黄金比派の人と連絡とってる?」
「はあ、、、、はあ、、、、いえ、どうしてです?」
「今日如峰月君が黄金比派に追われてたんだよ」
「待って、二人とも・・・落ち着いて・・・ね?」
「はあ、、、、はあ、、、、ちなみに理由は?」
「はあ、、、、はあ、、、、理由なんているかい?追われてた・・・」
「それで・・・」
「「ジュウブンダッ!!」」
「また追われんのかよッ!?」
もう嫌だ・・・
もう限界だ・・・
走り過ぎて寧ろ笑えてくる・・・
「肺が、、、熱いんだけど、、、」
新聞君にブラフ(例:あ、小陽ちゃんが後ろに)
小陽ちゃんに詐欺(例:あ、新聞君が可愛い女の子ナンパしてる)
この二つを上手く使い分けることによって狂人二人を仲間割れすることに気付いたのがついさっき。
既に時間は夜
寒さは既に吐息が白くなるほどに・・・
体は寒さで震えてるのか痙攣して震えてるのか分からなくなってきた
「ぐっ、ぐっ、、、げほおっ!げほげほっ!」
緑茶で口を潤おそうとしたらむせてしまった・・・水分補給も出来ないぐらい弱ってんのか?
残った気力でゆっくりとベンチに腰を落ち着ける。
「ふぁれ?」
するっと滑って倒れ伏してしまった。
汗で滑ったのか?
ずずるずると転がってしまった・・・頬に冷たい風があたる。
首筋から入る風が腹を撫で、ズボンの裾から逃げていく。
「はあ、、、はあ、、、、これ、、、、ヤバい奴か?」
気付いたころには遅いということがある。
体の機能がほぼ上手くいかない程の疲労、、、いや感覚と体がずれてる。
寒さという厳しさ
限界までの体力消費
そして休む『べき』ときに休まなかったツケ
なにより椿がいると安心しきって使ってはいけないものを使い過ぎた・・・
俺は主人公じゃないんだ・・・サクラが使ってはいけない暴走魔力を平気で使ってる所をずっと見てきて・・・つい感覚鋭敏化を調子に乗って使っちまってた。
俺は、、、ただのNPCなんだ・・・調子に乗っちゃダメっ!
「・・・俺ってヤバいときほどふざけてるな」
耳が足音を伝えて来る。
夜の鷺ノ宮、、、それなりに人はいるようだ。
闊歩する人々の足音、鼓動、脈動、、、リアルに感じ取れる。
でも、その代償か耳は不快な痛みを残してる。
目を閉じ耳を塞いでも、鼻は閉じられない。
女性用のシャンプーの香りが鼻の奥まで浸透し、、、そして鼻を貫く。
脳にまで侵食するほどのその臭いが脳をまるで直接ほじくり返されるほどの違和感をもたらす。
「は、、、、は、、、、はははははあははははっはははっ!」
怪しいか!周りの視線を感じるよ!
ついでに気持ち悪いと思われながら近づいてくる人影を感じる!
NPC卒業か?警察しょっ引かれて卒業か!?
周りの人間皆冷たいし!
妹にすら嫌われてるし!
もうどうでもいいわ!
てか汗気持ちワリィっ!スライムに全身つつまれた見てえだ!
ヌメッどころか、ヒリヒリするがな!
てか、いつもこんな感じかもな!
こんなんで触られたら優子も避けるってもんだぜ!
朝日奈さんが虫を見るような目で見て来るぜっ!
伊月が人の話を聞かないわけだぜっ!
「別に避けてないよ」
汗で気持ち悪いからな!気持ち悪いからな!寧ろ気持ち悪いしかねえよ!
「たく、、、熱でもあんの?」
あっつい!?
バックバク脈動してるんだけどっ!
何か焼きゴテみてえなの押し付けられてるんだけどっ!?
「ちょ、手で額触ってるだけで何なのよ・・・」
八方ふさがりな状況を作っちまった俺への罰ですか-ッ!?
「これ、、、椿さんの言ってたことホントだったんだ。全然聞こえてない・・・しかたないなあ」
・・・!?
誰かが抱きしめて来る。
でも、、、誰だよ!
椿がいるわけないし、、、感覚が鋭敏になり過ぎて近くにいる人が寧ろ分からない
見えすぎて、聞こえすぎて、匂いすぎて、考え過ぎて、感じすぎて
温かみと柔らかさ・・・・それだけしか分からない
「ごめんね、桜。病気のこと嘘だと思ってた。」
「・・・ありがとう、優子。そして、何でここにいる?」
「買い物帰りの通り道だから・・・」
「そうなん?」
警察官より見られたくない人にとんでもない姿を見られてしまった。
しかもボロボロ泣いていたようだ。
そんな状態で紅い顔した女の子に抱きしめられていた。
温もりとか柔らかいとかいろいろ訊かれていた。
・・・・死にたい
「お風呂、、、すいません」
「いいよ、服は大丈夫?」
「あ、なんとか・・・」
白凪宅、、、といってもアパートに無理矢理連れてこられた。
居候という既に人間の底辺にいながらも女性の家に転がり込むという最後の一線だけは超えないようにしていたのに・・・
最後のプライドというものを一応優子に対して主張してみたりもしたのだがあっさり今のアンタにプライドなんてあるの?と言われて撃沈した。
「パジャマはジャージじゃないんだね。」
「ゆ、、、白凪。スウェットじゃダメだったか?」
「別に、、、スウェットあるのに何でジャージだったのかなって」
「あん時はジャージで行くかって天啓が・・・てか、これで来たほうが良かったか?」
「どちらかというと」
「そうか、、、、やっぱりお洒落は分からねえ」
「あん時って?」
「いや、、、なんでもないっす!」
白凪『母』にツッコまれたため慌てて誤魔化した。
優子はそんな俺の様子をニマニマしながら眺めている。
こいつ、、、自分の家の中では強気になるタイプだな・・・
とはいえ暴露系では俺がお縄になるしかないので絶対にそっち方面にはいけない。
てか言わないで下さい、お願いします。
社会的にも精神的にも死んでしまいます・・・あ、精神的にはもう瀕死だったわ。
「ま、お腹空いてるでしょ?よかったら・・・」
「あ、すいません。いきなり押しかけたのに」
白凪母が薦めてくれたのは夕食だった。
そういえば朝昼ほぼ取らずじまいだったな。
そういう細かいとこしっかりしとかないからストレスたまって感覚鋭敏化を余計に悪化させちまったんだろうなぁ・・・
「いただきます」
「優子、アンタはどうする?」
「お茶とおにぎり一つだけ頂戴」
「そ」
机に並べられたのは二人分の夕食、そしておにぎり一つとお茶。
まさかと優子を見ると先に言葉を重ねられた。
「夕食を食べる時間には遅すぎるから今日はもういいの」
「・・・そなの?」
「ん」
結構こだわってるのは知ってたけど、、、そこまで?
時間は九時を少し超えたぐらい。
俺が色々迷惑かけたせいで一時間ほど遅れたみたいだけど・・・それで?
「ごめんな、俺もつきあ、、、むぐぐっ!?」
「いいから食べて・・・お母さんの料理残したら承知しないから」
「ふぁい」
優子に物凄い勢いで箸ごと口に料理を突っ込まれた。
口に突っ込まれたレバニラを噛みしめ・・・飲み込む。
それは腹にすとんと落ちた。
「!?・・・うめえ」
「あら、どうも」
「でしょ!」
「うん、美味い・・・家庭の味・・・マジ久しぶりすぎる!」
最後に食ったのはいつだろうか・・・まさに家庭の味だった。
自分でいくら作ろうとしても一度も出来なかった家庭の味だった。
レトルトやインスタントみたいな塩が強すぎるわけでもなく、自分で作ったみたいに薄すぎるわけでもなく・・・効率とか楽とか全く考えない誰かの為に合わせた良い味だった。
小四の頃、、、母さんが作った食事
高価でも特別なもんじゃなかった・・・もう何の献立かも覚えてない
でも、、、その味はもしかしたらこんな味だったんじゃなかったのか?
朝顔に食わせたいなあ、、、俺よりも母さんの料理を食べれた時間は短いんだから。
「今度・・・妹連れてきていいですか?」
「ちょ!?何言ってんの!?」
「あらあら・・・まるで妹さんを紹介されるみたいね」
「・・・今のは忘れてください」
優子に耳を引っ張られて、ようやく気付く。
なんか身内紹介する流れになってる!
てかよく考えれば・・・今の流れも・・・
「でも、お母さん感心しないわ。こんな遅くに彼氏連れてこられてもこんな食事しかもてなしできないし」
「「!?」」
「言い忘れたけど急に仕事は言っちゃって今から出なきゃいけないの・・・どうしましょう?今日はもう遅いし大人の責任として泊めなきゃいけないけど、社会人として仕事に出なきゃいけないし・・・でもそうすると二人きりでしょ?」
しかもいらん気使わせてるっ!?
「お、お母さん!あくまで公園で倒れてたから連れてきただけでっ!これは保護なの!救急医療奉仕義務を果たしただけなの!」
「そ、そうです!泊まるなんてそんな厚かましいことできるほど面の皮厚くないです!」
「そうなの?でも、、、なら余計に一人で帰すのは不安だわ。今日は泊まっていきなさい」
「いや、、、二人きりはまずいでしょ」
「優子、どうするの?」
「・・・え、私が決めるの!?」
「じゃ、私は決めるわ。泊まっていきなさい。ま、恋人じゃないなら大丈夫でしょ。」
「「大丈夫じゃない!」」
「あ、今日は遅くなるから・・・・」
「「余計な気回さないで!」」
「行ってきます」
・・・本当に二人きりにしやがった。
少し先取りネタを
『空巣』実行予定一時間前AM0:00
「起きろ」
「ふあああっ、おはよう。シノン。」
仮眠から目を覚ます。
既に皆は目を覚ましていたようだ。
桜の方は余程いい思いをしていたのか、顔がまだ紅い。
爆発しろ。
桜のバイパスを作戦結構前だが切ってしまった。
取り敢えず、シノンたちはそれぞれ準備してるようだが目を覚ましたのにぼうっとしてる奴もいた。
「ツバキ?どした?」
「・・・・・・・」
ぼうっと虚空を眺めるツバキの前で手を振る。
ところがツバキは返事をしない
「どうした、サクラ?」
寝間着姿ではあるが剣とかいろいろ点検していたシノンが寄って来た。
ゆったりとした服なので彼女の胸がよく分かる・・・それはともかく
「いや、ツバキが変なんだよ・・・まるで犯された後みたいな目で虚空を眺めててさ」
「はあ?・・・ツバキ?」
シノンがツバキの顔をきゅっと自分の方へ向ける。
そしたらツバキはいきなり目をカッと開いて大声で叫んだ。
「プルンプルン!!!」
「「・・・ツバキイィィィ!」」
「よし、皆大丈夫?」
「だめっぽい!」
「ぷるんぷるん!」
コウが声をかけてきたが、どう見たって無理そうだ・・・
除け者は寂しいのか一緒に仮眠室で寝ていたメルキセデクが近寄って来た。
「どしたの?」
「いや、ツバキがプルンプルン!としか言わなくなって・・・」
「ええ?大丈夫、ツバキちゃん?」
ツバキはメルキセデクの方を向く。
・・・しかしその顔は何故か残念そうだった。
「出直してください」
「おお、流石『壁』!ツバキを元に戻した!」
「よし、その喧嘩乗った」
ツバキはあれ?私は何をと辺りを見渡している。
それを見て俺は思わずメルキセデクに親指を立てた。
メルキセデクは嗤いながら天使の武器である『羽根』を大きく広げた。
・・・メルキセデクがどっちにキレたかは第3章で!




