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第1章『王国』part3

俺の左腕は一度魔喰龍に斬り落とされている。

俺の体には疑似暴走魔力が流れているから治癒魔術は効かない、よって俺の腕は二度とくっつくはずがなかった。


その時応急処置をしてくれたのがサニアだったのだが俺の腕を再びつける為に魔法陣級治癒魔術を使ってくれた。

その時に媒介として使われたのが斬龍の秘蔵刀『龍刀』

それが俺の腕と融合される形で今は肘から指先までを覆う銀色の篭手になっている。


「・・・あんまりしたくねえけど」


篭手に魔力を込めていく。

この篭手は魔力を込めることで二つの能力が使える。

一つ目は斬龍の技をなぞる刀術

二つ目はその体積内でなら自在に形を変えられる変形


金属の篭手が皮膚へと潜り込み腕から肩、、、そして顎と鼻と喉に集まっていく。

これやりすぎると皮膚伸びるんだよな・・・

顎と鼻が異常に伸びていく

声まで修羅場を越えた低い声に

鏡を見ればこのまま大型フェリーでじゃんけんしに行って来いといわれそうな顔になっていることだろう。


「・・・こんなもんか」


ウルフォンが剣の柄に手をかけながら近づいてくる。

害意が無いことを示すため頭上に積もった本たちを払いのけ手を上げながら立ち上がる。

彼はすぐにでも襲い掛かってくるかと思いきや、怪訝に顔をしかめるだけだった。


「なんだあんたは?」

「いやあ、騎士様を襲うつもりはなかったんですよ。そこの店主を驚かそうとしただけで」

「店主?」

「ええ、ちょっとありまして・・・てかお客さん、顔が

「ごほごほごほごほごほ!本一冊!ごほごほごほごほ!」

「なんでもありませんよ!」

「そうか?てか、本一冊って聞こえたような?」

「げごほほ、げごほ、げごほ、げごほ!本もう一冊!ごほごほごほごほ!」

「聞き間違いですよ、騎士様!さあ、旦那!こちらの本『も』いかがです?おっさんがただただ料理を喰う話なんですけどね?」

「・・・もらおうか」

「騎士様!言われた本はすぐに用意するんで近くの席で本を読んでていただけますか?」

「あ、ああ・・・」


ウルフォンが適当な本でも読もうと思っているのか書店の奥へと進んでいった。

蛙店主と二人でその様子を見おくって・・・安堵のため息をついた。


「「ふへええ・・・」」


ようやく切り抜けたと安堵していると蛙店主がどうぞと本を四冊差し出してきた。


「・・・(無言で押し返す)」

「お代もらっちゃってるんで♪」

「・・・(無言で財布を確認して)・・・てめえ!誰が四冊も買うつったよ!」

「ウルフォンさ~ん!黒雲を使う人に心当たり

「ぶごふぉほほほ本一冊追加!」

「あざま~す!」

「このやろう・・・」

「まあまあ、不良在庫はおっさんがひたすら料理を喰う話だけですから」


蛙店主が満面の笑みをもって渡してきた本をタイトルも見ずに放り込んだ。

くそ、、、クエストで稼いだ金がほぼ全額とられてる!

一文なしだっ・・・


「てかお客さん、どうしたんです?そんな顔になってまであの人に気付かれるとまずかったんですか?」

「まあ、いろいろあってな・・・」


サニアを奪われないように闘ってたあの時に、シノンをボこられて挙句の果てに彼女の剣を折られたからな。

結構好戦的な感じだったから俺だと気付かれれば戦闘になりかねない。

ばれちまっては動けなくなるし今は素性を隠さなきゃいけない


「てか凄く特徴的ですよねえ・・・似顔絵かきやすい顔だ」

「キャラ立ってるしな・・・今後これでいこうかな?」

「いや、、、まずいかと」

「だよなあ・・・じゃ、トツカ拾ったらさっさと帰るわ」

「ありがとうございました!」


蛙店主の75度お辞儀にため息をついてトツカを探しに行く。

どうせ郷里エリアだろ?

雲を使うとばれかねないから、歩いて再び戻る。

さっさとずらかろう・・・


「ほう、、、この本は・・・王国では禁書扱いだろ?」

「ああ、だがそれがいい!」


鼻血吹き出しながらバカとアホがエロ本を回し読みしていた。

トツカあぁぁ!?

何敵方とのんきにエロ本読んでる!?

俺が必死に『こっちに来い!』サインをウルフォンに見えないようにトツカに向けてるのに、トツカは俺に気付くと手を上げ


「お、サ

「ぶごっほおおおおおん!」

「・・・この人はどうしたんだ?」

「さあ?」


さあじゃねえよ!?

トツカはこの人いつも急に変なことするからほっとこうぜと言って、再び書物(18禁本)に目を戻した。

ウルフォンもそれならと言って書物(公にできない)に目を戻す。


「「ほお・・・」」

「・・・・・・・(何故こんなやつらに仕方のない奴と思われるのか)」


納得いかないが正体がばれてないなら無理矢理帰ろうとする方が不自然か?

トツカとウルフォンが座ってる机に俺も相席する。

彼らの前にはいくつか本が並んでいてそれを二人で読み漁ってるようだ。

俺が席に座るとウルフォンが俺の前に『聖女の献身』を差し出してきた


「なあ、君がこの本を買ったのか?」

「ん?そうだが?」

「そうか!この国では禁書扱いの本を持ってたからつい声をかけちまったが相当な見る目があるみたいだな!」

「いや、薦められただけでまだ読んでないんだ・・・」

「読んでない!?ならすぐに読んだ方がいいぞ、聖女の早死にについて有り得ないが面白い考察が書いてある!」

「有り得ないが・・・面白い考察?」

「ああ、もしこれが本当ならとんでもないぐらいの!」


ウルフォンがここまで本好きだとは知らなかった。

・・・いや、意外だったというべきか。

コイツとの初遭遇が酷過ぎたが故に。

まさか王国の禁書でも読みたがる程の読書好きなんて

彼が興味を持つ・・・少し興味がわいてきた


「トツカ、ちょっと内容教えてくれるか?」

「ええ?自分で読めよ?」

「いいから」

「・・・しゃあねえなあ」


――――――――――――――――


王国には聖女という尊敬すべき人がいる。

彼女は王国内の強者の中でも最も強い者にさらなる力を与える。

力を与えられた者、、、その者を勇者とする。

王国を守る勇者とそれを支える聖女

この二人が王国百年の歴史を支えてきた。


だが王国民は気付いているだろうか?

聖女が代々早死にしていることを

そしてその時期がちょうど勇者が選定される時期であるということを


そして私はここに二つの事実を記す


一代目勇者『光の勇者』と一代目聖女『王国祖』の時もそうだった。

二代目勇者『獄炎の勇者』と彼の妻であった聖女『氷巫女』の時もそうだった。


強い力は受け継がれる

聖女の力はどう受け継がれるかは解明されてないけれど、、、必ず王国民の誰かに受け継がれる。

そして今まで聖女の死によって王国の思想と歴史は守られてきた

けども聖女の献身を必要とするこの王国は変わるべきだ

さもなければ、、、王国民はこの事実を知り、、、国を恨む


――――――――――――――――



「・・・これが禁書?」


俺がサニアから聞いてる『聖女は勇者を生み出して死ぬ』・・・そのままの話のようだ

王国民でない俺が知ってるこの内容を禁書とする?

国民でない俺が知ってることなのにこれが禁書?


「面白い説だよなあ、聖女様が死ぬだなんて」

「・・・面白い?」

「一代目の巫女様も二代目の巫女様も流行り病でお亡くなりになられてることは常識だぜ?」


どうやら国の中枢にいるはずの聖十剣ですら『聖女が勇者を造る際に死ぬ』ことを知らないようだ


「・・・どうりで俺達のことが公にされてないはずだ」

「ん?今なんか言ったか?」

「いや、、、何でもない」


シノンがこのことを知らなかったのはある意味世間知らずだったからだろう。

ずっと聖女サニアの側付きとして育てられた彼女は王国民の一般的な常識には少し疎い。

だから皆このことを知ってるものとして行動してきた。

・・・でも知らないとしたら

・・・聖女が家出したこと、そしてその理由を知らないとしたら

俺のことを知ってるのはあの時の三人と国の中でもトップクラスの重鎮・・・下手したら陛下だけ?


・・・だとしたら王国民に『今まで知らなかった事の責任』を負わせるのか?

そんなことできない

やっていいはずがない・・・


「・・・トツカ、帰るぞ」

「え?ああ」

「おい、この本どうするんだ!」

「勝手にしてくれ」


トツカを引き摺って外に出た。


裏通りとはいえそこは王都

多くの人が『普通』に生活している

でも一人の犠牲によってこの平穏が成り立ってることを知ってるんだろうか?

知ったら、、、今まで通りに笑えるんだろうか?


「・・・ちっ」

「サクラ?」


今まで心のどこかで女の子一人に犠牲を課してるんだからお前らも責を負えって気持ちが強かった

だから最後の手段を考えることが出来た。

でも、、、俺はもうそれを取ることが出来ない・・・

何も知らない王国民にその責を負わせられるわけがない!

彼らから『勇者』という希望を、、、悪意から守る盾を強制的に奪っていいわけがない。


「くそ、、、八方ふさがりじゃねえか!」


王都の道行く人間が俺をなんだコイツっていう目で見て来る。

・・・どいつもこいつも俺と同じ境遇に立ったら同じこといえんのか!?

何も知ろうとしなかったお前たちが・・・そんな目をしてるのが許せねえ

トツカが制するように俺の肩を掴む


「おい、魔力が高まってきてる・・・こんなところで目立ったら全てが台無しだ!」

「・・・わりぃ」


魔力を深呼吸と共に落ち着ける。

・・・十五のガキが関わっていい問題じゃもうねえのかもな

感情で簡単に魔力が荒れちまうぐらい未熟なガキが関わっていい領域を越えてるかもしれねえな


王国の中枢部が何を考えて秘密にしたのか

あいつらが何を考えてこんな犠牲をサニアに課そうとしているのか

多くの知恵と時間をかけて選んだ選択肢であることは間違いない

『聖女の献身』にある通り王国民が許すはずないんだから


それでもそれを選んだ『大人』の考えを揺るがすのは・・・ただの『ガキ』の我儘じゃないんだろうか?


両手を思わず見てしまう

ガルブレイクだろうが天使だろうが龍だろうが

ブッ飛ばす力を持ってるはずのこの手

でも、、、その力の使い道は


「この力・・・誰かを不幸にする為にしか使い道ねえのかもな?」

「おい、、、急に何を言いだすんだ!?」

「メルキも俺と同じ考えに至ってんじゃないかな?力だけで解決できねえことを知ってるから・・・俺にあんなに回りくどいことを言ってくれたんじゃねえかな?」

「・・・そんなこというなよ。お前のお蔭でシノンもサニアも俺も救われたんだぞ?お前が龍人の郷を救ったんだぞ?」

「その代り、、、ドン・クラークを守れなかった、、、シノンとサニアを泣かせてしまった、、、龍人達の大半を攫われてしまった、、、」

「でも、お前がいなきゃもっと

「そして今度は王国民皆を傷付けてしまうかもしれない!」

「・・・・」

「サニアを救おうとして、、、結局それは、、、また誰かを傷付ける行為なんじゃないかって、、、そんなことが王国にいればいるほど、、、そんなことが頭をぐるぐるぐるぐるって・・・」

「・・・・」

「サニアに生きて欲しい、、、でもそれはただの自分勝手な我儘なんだって、、、そう思ってしまうと、、、迷いが出て、、、」


トツカは俺の話すことを黙って聞き終わると、はあ・・・とため息をついた

そしてめんどくさそうに言ってのけた。


「じゃあもう公国に帰ろうぜ?」

「・・・は?」

「いいか?王国の中枢部はサニアを殺そうとしてる・・・それは良いことか?」

「いや、、、許されねえことだ」

「じゃあ分かんだろうが!」

「ぐっ!?」


龍人は魔力が低いから拳が痛いはずがない、、、でも何故か俺は吹っ飛ばされた。

痛くはないが、、、殴られると頭のもやもやが一瞬消えた。

そして視界が少し広がった。


「悪いことして造られたモンに何の意味もねえんだよ!『聖女の献身』にも書いてあっただろうが!いずれ王国民が気づいたとき、、、彼らは王国を責めるって!」

「けども・・・」

「お前はそんなこと考えず!やりたいことだけ考えてりゃあいいんだよ!」

「!?」

「サニアちゃんを死なせてはいけない!それだけ考えてきたんだろ!?だったら他のこと考えてんじゃねえよ!」

「でも、、、」

「王国民が気になるならてめえが勇者の代わりに闘えや!」


トツカは本気で怒ってた

大事なことを迷ってしまった俺に対して本気で怒っていた

・・・・・・・・・・・・・・・・サニア

お前に昔似たような理由で殴られたっけ?

本当に大事なこと見失ってるって、、、違うでしょって







「そうだよな」






「サクラ?」

「体のつっかえが・・・取れた気がする」

「ああ、、、迷いがなくなったせいかどうかは知れないが、、、いきなり魔力量が跳ね上がった。」

「今、、、この瞬間に?ドンだけご都合展開なんだよ?」


トツカが信じられないという顔で『鑑定』をしている。

俺は両手を見る

魔力が細胞一つ一つに浸みこみはじめてるのか強い力を感じる

魔力は精神的なもんだっていうけど、、、こんな感覚初めてだ。


「・・・・・・・分からない、理由が分からない」

「トツカの『鑑定』でも分からないならまあいいさ」


多分、、、『頭に浮かんだ選択肢』を達成するために俺の魔力が力を貸してくれたのだろう

体の暴走魔力の量が増している。

・・・徐々に改造されていたのかもしれない。

勝手に改造すんじゃねえよ、、、、無断は駄目だって

テヘペロって黒コートがやってる気がする

あんにゃろ・・・でも今の俺は今まで以上に強い


「よし、、、宣戦布告だ」

「え?何すんの?」

「ああ、、、見てろ。ちょっと試したい気分なんだ」


両手を構えて魔力を練る


「そうだよ、、、責任は今まで隠してきた『上』の奴らにあるんだ・・・そいつらに責任を負ってもらおう」

「上?」

「この国にある『勇者聖女信仰』を作り上げた、、、勇者や聖女に頼り過ぎた今までを、、、そして聖女を犠牲にしやがったこの国の根底にあるもの、、、それ自体をぶっ壊さなきゃいけなかったんだ」

「い、意味が分かんねえよ?いったいどおする気だよ!?さっきから落ち込んでたと思ったら急に元気になりやがって・・・くそ、八波駆けたの失敗だったか!?」

「まあ、任せとけって、、、やることは一緒だ」

「はあ?」


黒雲を槍に

その数を一つ、二つ、三つ、十、百、千、五千、『万』


「最初に言っただろ?『王国』に喧嘩売るって」


『曇の一撃≪ショット≫』×メガ盛り






ピリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!

甲高い警笛の音が聞こえて来る

しかしおかしいのはそれが辺りから無数に聞こえて来るということだ

普通警笛とはどこに異常が起きたかを示すため一方向からしか聞こえないものである。

それが辺りから多数同時に聞こえて来るなんて、、、

警吏は辺りを見渡した

そして気づいた


王都にある『全ての国旗』が黒雲の槍によって撃ち抜かれていた。

城に揚げられてる国旗はもちろん

外壁に揚げられているものも

商店の記念品ペナントとしての国旗も

宿屋に飾りとして揚げられてる国旗すらも

全て全て全て


全ての国旗が撃ち抜かれていた

国民全てに同じ考えが

何かが起こる・・・そう感じさせた





「・・・・まじかよ」

「威力だけじゃなく繊細な操作も可能になってんな・・・やっぱ暴走魔力が増えると操作性が格段に増す」


恐らく『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』はもっと威力が上がっているだろう

これなら・・・できるかもしれない

本当に、、、夢物語でも、、、ただの無鉄砲な我儘でもなくなるかもしれない

いける・・・いける!


「トツカ、、、いける、、、いけるぞ!これならいける!」

「・・・何が?」


トツカが何をと聞いてくる・・・

それに嬉しさを噛みしめながら答えることにする


「それはだなあ!

「こら、お前か!王国の国旗を撃ち抜いたのは!そこにいる人を離せ!」

「・・・・・・え?」


いい気持ちで解説しようとし始めたら、警吏の人たちに見つかった。

しかもトツカを人質に取ってると勘違いされた・・・・解せぬ






「言い訳は?」

「・・・・・・・・」

「言い訳は?」

「・・・・・・・・・・・・」

「言い訳は?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「サクラアアアアアアアッ!」

「ごめんなさい!」


-指名手配-王国打倒を狙うテロリストについて情報求む

【補足:王国国旗をすべて撃ちぬいた不逞の輩がいる。王国打倒を目論む本物の危険思想の持ち主である。一刻も早く捕えなければ王国の平安は脅かされるであろう。一刻も早く有益な情報を求む。】

【外見的特徴:銀色の髪に銀色の篭手、何より強い特徴は鼻と顎が異常に長いこと。十五くらいの少年で背は175程度。武器は細い剣と雲を使った謎の魔術】

適正レベル:不明 報酬:王国金貨五千枚 依頼者:王国警吏部

有益な情報をもたらしたものには報酬を惜しまない

捕まえる、、、又は殺害したものにはボーナスを出す。


指名手配されちゃった♡

俺は髪を黒髪に戻し、顎と鼻を元に戻した。

じゃあなきゃ捕まるし・・・

だが王国民には分からなくとも俺を良く知ってるシノン達にばれないはずがなく俺はモルトリオンドで正座させられていた。


「お前は目立たずに情報収集することも出来ないのか?」

「俺は止めたのに」

「まあまあ、どうせレベルアップした嬉しさで自分の実力試したくなっただけでしょう?」

「「「ガキか!」」」

「すいません・・・」


トツカ、ツバキ、シノンが俺をガンガン責めて来る。

しかしそのとおりなので何とも反論しがたい。

メルキとコウはそんな俺たちの様子を見てため息をついた。


「ちょっと、さっきうちのギルドにも銀髪に銀の篭手の奴いただろって警吏たちが来たみたいだよ?」

「すんません、迷惑かけて・・・」


涙があふれる

皆いくらなんでも厳しすぎやしませんか!


「でも顔の形違うし、髪色元に戻したし!しばらくはばれないんじゃ・・・」

「雲使う奴が何人もいるわけないだろうがあああああっ!」

「ひふんあはい!」


シノンがぐいぐい俺の頬を引き千切らんばかりの力で引っ張って来た。

なんかシノンさん、俺を苛める時だけ元気じゃないですか!?

スカイ、桜!

助けて!


―いや、基本不干渉だから…-


真面目に答えんくていいわ!

わざわざバイパスを通じてまでそんなこと言わんでいい!

てか、スカイはともかくお前は実体化できるだろうが!

肉壁になれ!


―・・・・・-


無視すんじゃねえ!?


「もう、、、そこまでにしときな?」

「むううう・・・・たりない(ぼそっ)」

「たりない!?」


コウが強引にシノンを引きはがしてくれたが青髪の彼女の口からこぼれた一言は聞き間違いだと思いたいものだった。

メルキはそんな俺達を見て再びため息をつくとこれから・・・と話を切り出した。


「どうすんの?」

「・・・ん?」


散々あちこちを氷漬けにされた俺は歯をガチガチさせながら、メルキの方を向いた。


「私を動かせるだけの理由や手段は見つけた?」

「・・・いや」


俺の答えに彼女はため息をついた。


「じゃあどうしてあんなことしたの?余計聖女の周りの警戒が高まっちゃうよ?一週間しか時間がないのに」

「・・・寧ろそうするためっていったら信じてくれるか?」

「「「「信じない」」」」

「お前らアッ!」


少しは信じてくれてるって思ったのに!

本当に俺が派手なことしたいからあんなことしたって思ってるの!?

がっかりだよ!


「ちきしょお・・・」

「まあまあマスター、、、英雄なマスターのことですから目立ちたかったんですよね?生理的なものですよね?」

「ツバキィ!変な慰めすんじゃねえ!」

「たく、、、ならどういうわけだ?」


ようやくシノンが落ち着いてくれたようで椅子に座ってくれる。

皆も話を聞いてくれる意思をそれぞれ示してくれている。

俺は長時間正座されたせいで痺れる足を奮い立たせながら机に一枚の紙を広げる


「何も書いてないが?」

「今から書くんだよ、、、ペンある?」

「時間くれれば探してくるが?」

「じゃあ、雲使うか・・・『浸みこむ曇≪ソーク≫』」

「紙に・・・雲が染み込んでる?」

「驚くところはそこじゃねえぞー、、、よし」



紙に雲文字で描くのは五つのマーク

王国の国旗とその周りに人々、六人、魔道具、聖女、王冠とその周りに人々



「この六人が私たちか?」

「ああ、そうだ」


可愛くデフォルメした俺達を見てメルキが不満そうに言う


「私のは?」

「ややこしくなるから描かねえよ。描いてほしいなら変な条件付けずに俺に協力しろよ」

「むう・・・」

「頑固め・・・よし説明すっぞ」


こんなので釣れるとも思ってなかったから俺は説明を続けることにする


「まず『俺』の事を知ってるのは、、、『聖女を救おうとしている俺』のことを知っているのはこの王国の中でも限られた人間たちだけだ。」

「そうなのか?」

「そうなんだよ」


シノンがほんとに?って顔してるがお前は自分の国なんだからもうちょっと知っとけ!


「とまあ、、、シノンみたいに聖女と常に関わる国の中枢部しか知らねえことなんだ」


俺は雲を操って『王冠その周りの人々』と『俺』を一本線でつなげておく

そして『シノン』と『王冠とその周りの人々』も一本線でつなげておく


「で?それがどうしたの?」


メルキが聞いてくるので俺は話を進める。


「で、今回俺は王国の国旗を全て破壊したけど、、、王国の国民は果たして俺が『王国の国旗を狙った変質者』以外の情報を掴めるだろうか?」

「・・・それは」


コウとメルキがはっとした顔をする。


「だから、、、『魔道具』の絵が描いてあるのか?」

「なるほど・・・」

「おい、、、どういうことだ?」


シノン達はまだ気づかないようだ。

ならもう少し話を進めなきゃいけないか。


「『王国の中枢部』が知ってるのは『聖女を狙う』『黒髪の俺』・・・けどもそれを王国全域に伝えることは出来ない。だから『王国民』が知ってる俺は『王国国旗を狙う』『銀髪で鼻と顎が異常に長い顔をしてる俺』なんだよ。」

「・・・つまり今のその姿は一番自由に動けると?」

「そうだ」


王国と王冠の間にバツ印をつけ、更に王国民との俺との間にも×をつける。

誰も黒髪の俺が『聖女を狙って』動いてるとは知らない

中枢部以外は


「ですが、、、王国中枢部はマスターのことを知ってます。雲を使う術者がそういないことからもすぐにばれます。今まで以上にサニアさんの身の回りの警護は厚くなるかと」

「だからだよ・・・」


王国民は『銀髪の王国国旗を狙う男』を探す

王国中枢部は『聖女を狙う黒髪の男』を探す

それを示すために『王冠とその周りに人々』から聖女に大きな矢印

王国の国旗とその周りに人々は王国国旗に注目してることを示すため人々から国旗に向けて矢印を沢山描がいた。


「この状況で余ってるのはなんだ?」

「・・・『魔道具』・・・まさか?」

「そうだ、、、それは『ミル』を示してる」


全員の間に緊張が走る

俺は全員が俺がしようとしていることを理解しているのを察知してから説明を続ける。


「宮廷魔道具師ミルの屋敷には多くの魔道具が眠っている・・・それ一つで金貨千は価値のある代物が。だが普段は王国の兵士達によって警護されてとてもじゃないが近づけない」

「でも、今の状況なら王国は『聖女』と『王国国旗』に目を向けていてミルに割く余分な力がない」

「つまり、、、」

「取り放題ってことか?」

「ああ、トツカの『鑑定』を使えば大体の能力は分かるから使い方に困ることはねえだろうし、今まで以上の力を得ることが出来る」


口には出さないが、、、メルキが出した問題の一つ『足手まといがいること』も解消されるかもしれない


「でもそれ、、、盗みじゃ?」

「全て終わったらもちろん返す。今のままじゃもし警戒されてなかった時だとしてもサニア奪還は不可能だったからな。なら、実力の底上げを図った方がまだ可能性は見えて来る。」

「むむむ・・・」


シノンは真面目だからか少し逡巡しているようだが、、、サニアの為にいずれ納得するだろう。

他の皆もそれならと首肯している。

メルキは俺の話を最後まで聞くとつまり、、、と少し不機嫌そうな顔で言った。


「・・・つまり私の協力がいるかどうかはまだわからないってこと?」

「あんたは特級冒険者、しかも天使。注目の間隙を縫う作戦にアンタが絡むと悪目立ちして王国中枢部に俺達の狙いがばれちまう。だから動いてもらう時は一発ドカンと、ここぞという時に動いてもらおうと思ってる。第一アンタに動いてもらえる理由を俺はまだ見つけられない」

「なら、、、仕方ないか」

「話はまとまったな・・・」


後はシノンを説得するぐらいだがそう時間はかかりそうもない。


「王国中枢部が俺達の全戦力を知らないことが今回の作戦のキモだ・・・時間がないのは変わらないが、いずれはモルトリオンドと俺達の繋がりはバレる。王国が俺達の全戦力を知られちゃあ、魔道具で戦力増強しようとしてることも気付くはず、、、今晩にも、、、いや警戒が一番薄くなる明日の早朝に決行だ」


残り六日

時間はそう残ってない。

次回から第2章『激情』

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