第1章『王国』part2
「どちらにしても最悪の手段を取る場合のことも考えとかねえとな」
自分が強くなければ最低な手段を取ることさえできない。
それだけは確かだ。
強い者だからこそ皆はその意見に耳を傾ける。
「マスター、どちらにしても王都を一度見て回ったほうが良いかと」
「え?サニアが帰って来たってことは俺の情報も回ってるはずだろ?」
獄炎将軍達が俺やシノンのことを正確に伝えているはずだし、王都に行くのは致命的だ。
警戒心をただただ高めてしまう。
しかしツバキは首を振った。
「サニアさんが帰ってきたことで状況に変化が起きたはずです。それを探るためにも一度情報を集めるべきです。」
「むう、、、それもそうか?」
「ついでに言うとマスター達の変装が通用する程度の情報しか伝わってないのかといった細かい所も気になります。」
「王都に行くんだったら俺も行きたい店がある。」
「シノンさんの気分転換にもなるので一度休みとするためにもいかがでしょう?」
「・・・・・よし、王都に行くか」
魔法道具というのは良い道具に魔装加工を施すことによって造られる。
魔装加工というのは道具の内部に魔法文字を仕込むことで内部で完結する魔術システムを創り出すことであり、簡単に作れるものではない。
その分魔道具は非常に便利であり、都市一つを機能させるには必要不可欠である。
「いつ来てもデカい都市だな」
下水、上水システム
路面の舗装
高難度な建築を補助する魔道具
灯台などの夜間サービス
そういった公共インフレがきちんと提供できる都市は人が多く集まる。
魔道具によって大都市になる条件をそろえたお蔭か、この王都だけで人口がいくらあるのかを数えることが出来ないほどだ。
建物の雰囲気は中華に似たような様相ではあるが、建築物はどれもが高く、特に中心街は『眠らない街』になっている。
「・・・それに警察システムもしっかりしてる」
軍と警察を兼ねさせているのだろう。
中級冒険者の中でも上位かと思われる実力の警吏達が俺達パーティーの横を通り過ぎていった。
俺の後ろに隠れぎみに歩いていたシノンがほうっと息を吐いた。
「どうやら私たちの情報はあまり流れていないようだな」
「となるとサニアの出奔は誘拐といった形では処理されてないのか」
サニア救出のための情報集めだと連れてきたシノンが声をかけてきたのでそうなと答えた。
ツバキがしきりにウィンクをしてくるので、話を切り出す。
「折角だし魔道具見に行こうぜ。掘り出し物が見つかるかもしれねえし」
「魔道具?・・・街の露店では『常識外』より良いものはなかなかないぞ?」
「そうだけどさあ、、、まああるかもしんねえじゃん?」
シノンはあまり乗り気ではないのか眉をひそめる。
状況をさっさと確認して『獄炎』属性の訓練をしたいってありありと顔に書いてある。
トツカはそんな彼女をまあまあと言っておさめる。
「俺は『ずっと視てる』だけだったからそこまで疲れてないけど、君たちは獄炎さん達との戦い以来ずっと訓練し続けじゃないか。少し体を休ませておいた方がいい」
「・・・でも」
「そうですそうです。マスターと違ってシノンさんは人間なんですから休まないと死んでしまいます」
「おいコラ」
「そうだな、、、私はサクラと違って人間なんだから少し休んだ方がいいか」
「・・・・っ(涙目)」
シノンが首肯したのでなら王都見て回るかとする。
「どこ行きたい?魔道具は露店の方が掘り出し物多いんだろ?」
「ああ、掘り出し物かは俺の『鑑定』で判別するよ」
「本当に便利だな」
「露店はあっちですよ、行きましょう」
「ちょっ!」
ツバキがシノンを引っ張ってたったと駆けだしていく
状況が状況なだけにガッツリ楽しむわけにはいかないけど彼女達は仲のいい友人同士が買い物してるようにも見える。
トツカと二人で彼女達の後ろを歩くが、道行く男たちが彼女たちの美貌を見て感嘆の声を上げるのを見ると少し誇らしかった。
「トツカ、そういや行きたいところあんの?」
「ああ、一度は行ってみたかった所があってな」
「へえ、皆で行くか?」
「いやあ、それはどうかと」
「・・・エロ本屋ね」
「ちょっ、もっと小さな声で言ってよ!」
俺が土産として渡したエロ本により洗脳されたトツカさんは昼間っからエロ本を買いあさる残念な人になってしまった。
責任を以て俺も付き合わねばならない!
「で?どこにあるんだ?」
「結構遠いし近くについたら教えるよ」
「ありがてえなあ」
「かまわんよ」
二人でにやぁと笑い合っていると前を歩く二人が呼んできたので慌てて追いつく。
シノンたちは一つの露店の前で立ち止まっていた。
「マスター、これ凄いです!」
「サクラ、これ可愛い!」
スカイが持ってるのは鉄で所々覆われた黒色のブーツ
シノンが持っていたのは・・・ネコ科の魔物を可愛くデフォルメしたぬいぐるみ?
「へえ、、、異世界でもこういうぬいぐるみあんのな」
ぬいぐるみは手縫いでも作ることができるけどその屋台はシノンの以外にも同じようなのが何体もあったから機械製だろう。
おそらく魔道具で量産したんじゃないだろうか
見たところほつれといったものもないし、生産技術はほぼ現代と同等なのかもしれない。
俺がしげしげとシノンの持っているぬいぐるみをしげしげと眺めている間にトツカがツバキの持ってきたブーツを鑑定する。
「これ、、、かなり良い魔道具師が関わってるよ。飛翔に纏炎の術式が刻み込まれてる。どこかで溜魔石をつけてもらえば魔力を出せないツバキさんでも使えるよ」
「へえ、、、おっちゃん。両方とも買わせてもらうよ、いくら?」
「二つ合わせて王国金貨で四百だ。」
王国金貨と公国金貨はほぼ相互間だ。
若干公国金貨の方が価値が高いが、それは金の含有量の差だろう。
大体金貨五十枚程が一か月の生活費だと考えるととんでもない高額だ。
けども上級冒険者になってから一つクエストをこなすだけで百から百五十は安定して稼げるようになったのでそれ程高額というわけでもない。
「・・・まあ良いものみたいだし言い値で買わせてもらうか」
「!? 気前が良いな。もしかして上級冒険者さんかい?『商業7条より―窃盗防止解除』」
じゃらじゃらと渡した金貨がきちんとあることを確認すると店主は笑顔になった。
店主の腕から一瞬火花が散ると、シノンとツバキに物の所有権が移ったのか彼女達の手にある品物が一瞬青い光を灯した。
「おにいさん他にもいらないかい?」
「何かいいものがあるのか?」
「いや、ここには置いてないが俺が仕入れてる魔道具師の所に行けばもっと質の高いものが置いてあるから紹介しようと思ってね。そいつが作ったものは上級冒険者ひいては特級冒険者にも使用されてる」
「へえ、、、じゃあコイツに魔装加工できるぐらいの腕はあるか?」
俺はそれ程ならと腰の『葉擦れ』を手渡した。
店主はそれを受け取ると揺らめいてドシンと落とした。
「ちょ!」
「わ、わるい!?なんて重さだ、普通の剣じゃないだろ!?」
「まあ、ちょっと訳ありでね」
「俺じゃあ持てないから、刀身を見せてくれないか?」
ずっと持ってたせいで忘れてしまっていたが、この葉擦れは共鳴鋼に龍素材を兼ね備えたかなりの名剣
頑丈なのはもちろんのこと、剣の常識を越えた重さをもつ。
店主はじっくりと俺が抜いた剣を見ると、残念そうに首を振った
「かなりのシロモンだ・・・良い魔道具を作るのには良い魔道具師の力はもちろんだが、その素体の完成度も重要だ。その点この剣は完璧だ、、、しかし完璧すぎる。この剣に魔装加工をしようとするなら並の魔道具師にさせるにはあまりにも勿体なさ過ぎる。」
「・・・そっかあ」
手っ取り早く戦力を強化するなら武器をグレードアップさせるのが一番だと魔道具師を周ってみたがどこの魔道具師にも同じ理由で断られた。
トツカが褒めるぐらいの魔道具に久しぶりに会ったからもしやと思ったが今回もダメか・・・
「これに魔装加工できるのは『ミル』ぐらいだろうな」
「『ミル』か・・・」
『ミル』
それはエルフ一と認められた魔道具師に与えられる称号
実際俺の鞘の『常識外』も何代か前のミルが創ったものらしい。
その時のミルは剣工として有名だったとか
今のミルはその人の弟子だったらしいから剣への魔装加工は当然できるだろうが・・・
「まあ、王族との伝手が無いとまず無理だろうな」
「・・・そうなんだよなあ」
そう、ミルは王国の宮廷魔道具師になってしまっている。
よって依頼のしようがないのだ。
今日の今日まで何とかならないかと頑張ってみたがやはりどうしようもなかった。
同じ理由でシノンの『霜葉』にも魔装加工できていない。
「ま、どこかにミル並の技量の持ち主だっているさ。英雄連邦とかにさ」
「あそこはエルフだけの国だろ・・・」
「おっと、お客さんが来るようだ。冒険者さん、また来てくれよ」
「ああ」
・・・どうすっかな
手っ取り早いパワーアップは望めそうもない
良い魔道具があるだけで全然違うんだけどな・・・
『常識外』に『魔法玉』魔道具一つあるだけで戦況がどれだけ変化するか。
「綺麗な絵ですね」
「ああ、すごい絵だ」
「うん、良い絵師になるよ」
「あ、ありがとうございます・・・」
「?」
魔道具の露店が並ぶ街道を抜け、大広場に出た。
とても大きく観光資源になっているらしい噴水の近くに座っているとツバキが絵を描いていた少女に声をかけていた。
シノンとトツカも
ウサ耳の少女・・・獣人か?
獣人は王国では珍しいな。
「俺にも見せてくれるか?」
「はい」
歳は俺達と同じくらいなようだ。
彼女は木炭だけで絵を描いていたようだがその絵は微細にまで書きこまれた風景画だった。
「すげえ・・・魔法も使わずにここまで」
「風景をそっくりそのまま描くのは得意なので」
彼女は少し照れたように笑った。
「いやいや、すげえよ」
「はい、すごいです!」
「ああ、宮廷に召し抱えられてもおかしくない」
「良い絵師になる、、、そうだ!僕とコンビをくまないか!」
「トツカ?」
「ごめんなさい」
「あははは・・・・・」
トツカに自重しろという視線を送っているとウサギ耳の少女は困ったような笑みを浮かべた。
「名前はなんていうんですか?もしかして高名な芸術家さんですか?」
「名前は、、、ミミアンといいます。ミミって呼んで下さい。特に活動はしてません、趣味の範囲内です。」
「ミミさん、趣味でこれはすごいです!私はツバキです!」
「ツバキさんは絵に興味が?」
「今までは興味なかったんですけど今はすごく興味があります!」
「なら、、、一緒にどうですか?」
「ぜひ!」
意外なことにツバキは絵に興味があったようだ。
いつの間にやら二人で絵を描くことになっていた。
「サクラ。やるべきことがあるなら今のうちに行っておけ。私もしばらくここでゆっくりするから」
シノンはチラチラとウサ耳を見ている。
・・・そういやシノンは獣耳美少女萌えだったか。
彼女にとってもいい気分転換になるかもしれない
トツカが来い来いサインをしてるし、、、言葉に甘えるか。
「分かった、、、何か騒ぎが起こったりしたらモルトリオンドで落ち合おう」
「うん、あまり騒ぎを起こすなよ?」
「・・・はい」
シノンに逆に諭された俺はトツカと共に裏道へと入っていった。
裏通りとはいえ管理が行き届いているのか特に衛生状態や建築物の状態は良い。
子供たちや道行く人たちの服のグレードが少し落ちてるぐらいだ。
「裏通りにあんのか?」
「ああ秀逸な書物を『鑑定』したら、ここの近くにある店が出版元だって分かってな。一度行ってみたかったんだ」
「本当に便利だな、その能力」
「お前の能力ほどでもないよ、、、ここだ」
トツカが『鑑定』発動中につき紅くなってる眼を向けた先はただの壁だった。
「・・・何もなくね?」
「サクラ、ここに魔力をぶつけてくれないか?」
「・・・え?壁が粉砕するぞ?」
「いいんだよ、ほら早く」
「・・・そこまで言うなら」
魔力っていうことは魔術でもいいのかという質問に対してトツカが首肯したから久しぶりに自分の力で魔術を練ることにする。
疑似暴走魔力を爆発させ、曇を展開する。
『曇脈展開«クラウド・アクセス»』程の威力は出せないが俺自身も成長してる。
これぐらいの壁なら・・・
「『大きな大きな黒雲よ』『集まれ』『凝縮』『狙え』『放出』」
黒雲は周りの自然魔力を巻き込んで更に大きな威力となる。
貫け・・・貫け
城門の破城槌をイメージする強力な大槍
「『曇神宮の柱≪クラウド・ポール≫』!」
凶暴な魔力を内蔵した大槍が壁に突き刺さる。
しかし槍がぶつかったというのに衝撃音が無い。
寧ろ、吸い込まれているような・・・
「どうなってんだ?」
「大量の魔力によって開く次元門らしい。各地に同じような門が設置されてるようだけど・・・」
「ど?」
「魔力が足りないみたいだ」
「へ~え・・・そうなんだ~」
「・・・サクラ?」
そうかあ、、、魔力が足りないと・・・
魔力が足りないと・・・
主人公が自信満々でぶっ放した魔術が『足りない』と・・・
「・・・もしかして怒ってる?」
「ゼンゼンオコッテナイヨ」
たださあ、、、俺にはまだ魔力が有り余ってるからさあ
全部使いきってから足りないかどうか判断していただきたい!
トツカが『鑑定』で俺の使おうとしてる魔力の量を見て涙目で首を振っている
「多いから!そんなにいらないから!」
「いいや、足りないね!全魔力注ぎ込むね!」
「周りにも悪影響出るから!やめて!」
「いいや、やめないね!『巨大な巨大な黒雲よ』『更に集まれ』『更に凝縮』『更に狙え』『連続放出』!」
『壊れるまで叩きつけられる曇神の破城槌≪エンドレス・ハマー≫』
名前長すぎ、魔力消費激しすぎ、周りへの被害大きすぎ
ボゴゴゴゴゴと連続で叩きつけられる『曇神宮の柱≪クラウド・ポール≫』以上の巨大な槍
連続する巨大な爆発音
『自重しない』大技なだけはある。
周りの人間が何してんのとジト目で見て来るがそんなことはどうでもいい!
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
ボゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
魔力が充填されたのか徐々に徐々に壁が紅く発光し渦のような模様を描き出す。
「サクラ!多いって!多すぎるって!」
「まだ俺の全総量注ぎ込んでねえ!」
「やめないとそこから出てくる店主が・・・」
「え?」
「いらっしゃ、、、へぶぶぶぶぶぶぶうっ!?」
「「あ」」
「ひひょいへふよお!何でこんなにボッコボコにされなきゃいけないんですかぁ!」
「「本当にごめんなさい!」」
まるで図書館のようなその場所で俺とトツカはカエルっぽい見た目の人に謝っていた。
「もう、、、私が魔族じゃなかったら死んじゃってましたよぉ?」
どこから出ているのか非常に甲高い声でカエルな人は抗議してきた。
まったくその通りであるので謝るしかない。
彼(?)はようやく落ち着いたのかもういいですと言った。
「お客を選ぶために設定したのは私ですからね・・・こういうことも想定しなきゃいけませんよね」
「お客を選ぶため?」
「あなた方はそこまで思わないようですが、魔族に対しては皆恐怖の感情を持つ人が多いですから」
「・・・なるほど」
魔族・・・ステータス上の表記はメリオーダ。
元々は人だったようだが彼らの先祖はその体に魔物の魂を混ぜたらしい。
魔族は見た目は人に非常に近いが魔物の能力をさらに高いレベルで使用できるし、身体能力魔力総量共に人の何倍もある。
とはいえ魔物に非常に近い能力と外見
畏れられるのも仕方がない・・・実際彼らはインモラルや『最凶』を除くと魔国以外では姿を滅多に見れない
彼らは全ての種族に追放されて現在の魔国に追いやられたという歴史があるためだ。
つまり彼らは『迫害された』『強者たち』なのだ。
そんな歴史を気にすることなく彼は深々と頭を下げて来る。
「ここは『使用する』本屋。私当店『異次元蛙』の店主フロッガ・オウトランでございます。当店へはどのような目的で?」
「・・・こういう本を探して」
「ああ、エッチな目的で『使用する』本をお探しで?」
「「オブラートに包め!」」
「いやあ、すみません。普段は下界との交流を断ってますから・・・王国との交流もあなた方以外とは一人だけですし」
「へえ」
トツカは大体どこに欲しい本があるか分かるからと言って勝手に駆けだしていった。
フロッガさんと残った俺はお互いに微妙な空気を感じた。
「ちなみに欲しい本はありますか?」
「・・・じゃあ、『曇魔術』か『種の魔術』について書かれた本ありますか?」
「あ~そういう本は置いてないんですよね。大衆が望むニーズに合ってないし」
「大衆のニーズ・・・じゃあ王国の聖女についての本は?」
「ああ、そういう本ならこちらに」
彼が手渡してきた本は意外と薄かった。
題名は・・・『聖女の献身』?
「真実を知るために『使用する』本です。ついでに戦うために『使用する』本はいかがですか?」
「・・・(うさんくせえ)・・・いや、取り敢えずこの一冊だけで大丈夫です」
「ありがとうございます!王国金貨500枚になります。」
「ご、、、ごひゃく!?冗談でしょ!?」
「それだけ価値ある本なんですよ・・・お代はいただきましたし、よろしければあちらでお読みになっては?」
「はあ!?てかホントに無くなってる!?」
「私の能力です」
財布を確認してみればあれだけパンパンだった俺の財布はげっそりと痩せ細ってしまっていた。
「返品だ、返品!こんなうっすい本に金貨五百枚の価値あるもんか!」
「だめですぅ~返品は受け付けませぇ~ん!」
「てんめえ、あん時のこと根に持ってんな!金返せ!『曇靭紐≪クラウド・ワイヤー≫』!」
「『異次元に』・・・『カエル』!」
ぼったくり野郎を捕まえようと『曇靭紐≪クラウド・ワイヤー≫』を張り巡らせるが彼の能力なのか異次元空間に逃げ込んでしまった。
「たく、、、」
流石に異次元にまでは手を出せないので諦めるしかない。
しかしなんだこの負けた気分は・・・
トツカに口でも聞いてもらおうと彼を探すことにした。
・・・郷里のエリア?
トツカを探しに広い書店を進むと彼は椅子に座って一冊の本を読んでいた。
その顔はどこかを懐かしむような優しい笑顔だった。
「トツカ?」
「・・・っああ!サクラか!どうかしたか?」
「いや、何の本読んでんのかなって」
「龍人の歴史についての本だよ・・・すごいぜこれ、魔喰龍が攻めてきたところまでキチンと明記されてる」
「へえ」
「懐かしい、、、トーリ達に会いたいなあ・・・」
まだ一か月程度しかたってないトツカですら、龍人の郷を懐かしんでいる
やっぱり帰る場所って必要なんだろうなあ。
心を落ち着ける場所になるんだろう。
サニアやシノンにとっての帰る場所である王国も、、、やっぱり無くしちゃいけない場所なんだろう
彼女達のほっとできる場所を失わせちゃいけないんだ。
・・・ますますどうすればいいか分からなくなってきた。
溜息一つ落とすとトツカの隣に座る。
「その本は?」
「ああ、強引に買わされたんだ。」
「へえ・・・読んでもいいか?」
「どうぞ」
トツカに本を渡すと彼はぱらぱらとそれを捲り始めた。
することもなくぼうっとしていると、あのこ憎たらしい店主の声がした。
「いらっしゃいませ」
「やあ、久しぶり」
どうやら新しくお客が来たようで店主が異次元空間から出てきたらしい。
・・・今度こそ返品を認めさせてやる
「わりぃ、ちょっと行ってくるわ」
「・・・ん~」
トツカは本から顔を上げずに生か返事を返してきた。
まあいいかと俺は魔術を使用する
「『動く曇道≪オート・ステップ≫』」
雲が天井を伝っていく
そしてそのままあのクソ蛙店主の真上へと伸ばしていく
ふへへ・・・真上から飛び降りて驚かしてやる
どうやら蛙店主と話し込んでいるのは若い男性のようだ。
真上にいるので顔は良く見えないが剣を帯剣しているから騎士なんだろう。
・・・でも、あの非常に酷く形が丸々とした曲刀には見覚えがあるような?
まあいいか!
「このくそ蛙うっぅぅぅぅうぅ!」
「ひゃああああああっ!?」
全力で天井を蹴って体当たりをしかける。
「!?はああっ!」
「なにっ!?」
すると蛙と話してた騎士が奇襲をかけた俺にすぐさま反応し拳を合わせてきた。
良く練られた魔力が込められた拳で吹っ飛ばされる
これは・・・俺と同等の格闘能力!?
・・・そっか
俺の本気の魔術と同等の魔力を込めれる存在
『王国の』常連さん
非常に酷く形が丸々とした曲刀
フラグを見逃してた・・・
本棚に叩きつけられ、上から大量の本が積もってくる
視界が本の山につぶされる
そんな中声が聞こえる
「ふう、、、大丈夫か店主?」
「ありがとうございます、『ウルフォン』様。流石『聖十剣六位』ですね!」
・・・しまったああああぁ!?




