第2章NPCでも主人公でいられる場所part3
「君らとは闘う動機の「格」が違うんだ!」
教室に入ろうとしたら机が全部廊下にたたき出されていた為、中々入ることができなくてイライラしていると教室から超イケメンボイスが聞こえてきた。
「ハッタリぬかすなよーッ!金持ちのアマちゃん!」
そうだそうだ!と大声で叫ぶ群衆と、んだとこの野郎!と抗う集団。
教室の中に入らずとも分かる。
朝日奈派と生徒会長派の争いが一夜越えしても未だ熱が冷めきらず遂に決戦という形に持ち越されたようだ。
穂のちゃん先生が野次馬を掻き分けて中に入るのに俺も続く。
予想通り、二つの集団に分かれていた。
ずらっと先頭に並ぶ朝日奈の逆ハー要員。そして、彼らに付き従う朝日奈楓に妄執する人間ども。
金持ちさん、頭いいさん、義弟くんに、王子君。うちのクラスになぜ先輩や後輩がいるんだとか、先陣を率いているのが生徒副会長だったりとかツッコミどころ満載なのは逆にコメディ小説っぽい。
後、カリスマ性の高い、無駄にキラキラしたハイスペックさんが集まっているので腹が立つ。
対するは生徒会長派。
生徒会の大体のメンバーがそっちについており、裏切り者をギラギラと・・・ギラギラとした目で見つめている。
他にも発言力の高い風紀委員長や体育委員長などのカリスマ性の高い人間が多く覇気が立っている。
後、腹が立つ。
俺が捕まった時が、結構早朝だったため(裏目に出てしまった。正確にいうと、懲罰が長引いた。)、まだ一時限が始まってはいないが、このままだと放課後になっても戦争は終わりそうもない。
「こ…怖い…の…は、痛みじゃあ…ないぜ…。ヘ…ヘヘヘヘ…。び、美少女に嫌悪の表情でみられることだっ!」
既に、戦で全力を使い果たし、倒れ伏そうとする朝日奈派の戦士の一人が最後に語った。
彼は今日の授業を受けることを全然考えてない。サボる気なのだろうか?
「生徒会長に対して礼儀を知らん者は生きる価値なしだな…」
黄金比生徒会長のことを年増と読んだ人間に対して本気のグーパンチを浴びせた黄金比派の騎士が独白した。
傷害罪とかいう言葉知ってる?
「うわあああ・・・」
NPC的にこの教室にはあまり長くいたくない。
NPCでなくてもこんな異次元教室に入って行って、同じ人間だと思われたくない。
後ずさりしていく中で、新聞君を見つけた。
入るときは、教室の中の確認を優先していた為に気付かなかった。
影うっすいな~。
「せっかく曲を朝日奈さんがあっさり決めてくれたから、今日から練習入れると思ったのに・・・(ブツブツ)」
新聞学級長が教室に入れないで、扉の前で三角座りしている件について
よく見れば、EXAカットを覆い隠すためなのか、頭にダンサーっぽい派手なバンダナを巻いたハマリュウが遠くから涙目でこっちを睨んでいる。
・・・つまり、朝日奈派と生徒会長派のどちらにも属してない人やノリの悪い、所謂NPCは殆ど追い出されたって感じか。
そんな中、新聞君が何かを決意したかのように立ち上がった。
「き…切れた。ぼくの体の中で何かが切れた…決定的な何かが…」
新聞君はおそらく、学級長としてこの流れを学級長として止めようとして教室に乗り込んだのだろう。
何故なら、教室からうるせえ!とかいう怒鳴り声がして、新聞君が泣きながら飛び出してきたからだ。
誰かが言った。
ーもうそろそろ、あのお方がやって来る。あいつは前座にすぎん。-
その言葉が契機になったのかは知らんが、教室に入れず廊下で群れていた我がクラスメートたちが一気に二つに割れた。
そして、アクティブ系逆ハー主人公の黄金比生徒会長。
ふわっとした髪をさらっとかき揚げ、彼女はこちらに向かって微笑んだ。
・・・いや、気がした。単純にその笑顔に俺が見とれてしまっただけだろう。
そして彼女は、このバカ騒ぎを終わらせに教室へ入って行った。
「私ってどうしてこう…変な男ばかり寄ってくるのでしょう…」
なんとなく彼女の歩みををクラスメイトと一緒に目で追ってしまっていると、彼女は生徒会長派の先頭にバーン!と立った。
そして、彼女はキッと眉をしかめると、大声で叫んだ。
「今すぐこの騒ぎをやめなさい!」
全く関係ない俺らNPCですら、ぞくっとした・・・
それは、生徒会長派なら、なおさらだろう。
「きたきたきたきたきたきたきたきたきたーっ」
「黄金比様が!おおおおお、黄金比様がアアアーッ!!戦闘態勢にはいったーッ!!」
逆に、仕えるべき君主が未だに来ていない朝日奈派は逆ハー要員は澄ました顔をしているが、その後ろの一般兵は怨嗟の声を上げる。
「「「「「「「黄金比ぃ!てめーの根性はッ!畑にすてられ カビがはえて ハエもたからねーカボチャみてえにくさりきってやがるぜーーッ!!」 」」」」」」」」
絶望がつつむ中(生徒副会長もこっそり後ろの方に隠れていった)、義弟君は大きな声でその負け空気に抗う。
「このまま戦えと、僕の中の義姉さんが命じるんだっ!」
「それでも朝日奈派ですか!軟弱者ッツ!」
彼らが彼らであるために彼らが大いなる戦いを始めようとする中、遂に彼女が現れる。
ーおい、あれって・・・-
そんな声がどこからか聞こえ、クラスメートがまた二つに分かれる。
そこを歩く彼女の髪はいつもと違ってどことなく乱れていて、服装はユニフォーム。
何か考え込んでいるのか視点はずっと下を向いている。
・・・あれ?
彼女はなんとなくいつもと違うけど大丈夫?と偶々近くにいた友人に尋ねられ、それに対してNPCの俺でもわかるぐらい無理した笑みを浮かべ大丈夫といった。
そして、俺と目が合うなり俺のようなNPCでもわかるぐらい露骨に目を逸らしつつ、慌ててそれをごまかすためにきょろきょろあたりを見渡した。
「どうして、うちのクラスみんな外に出てるの?」
「え?あ、ああ、なんか、文化祭の方針を決める派閥二つが言い争ってて入れないらしいよ?」
そして、彼女は周りを見渡して、近くの友達から今の状況を把握した。
周りの注目を浴びつつ、彼女がとった次の行動は・・・
「そっかあ」
彼女は、その友達の近くに座って、ぼうっとし始めた
「「「「「「「「「「「なにやってんの!?」」」」」」」」」」」
取り敢えず、朝日奈派が瓦解してしまいました。
その後彼女は、一日中おかしくて、周りもそれに合わせて何となくずれていった。
一番やる気を出している彼女がぼうっとしているので合唱コンクールの練習はそつなく順調に終わるし、授業は全然口出さないから落ち着いた空気だし、何より元気ない彼女に遠慮してか逆ハー要員達が教室に乗り込んでこない。
あれ?いいことづくめだ?
そして、文化祭実行委員会すらも効率重視ですっすと進むものだから、面白いぐらい早い帰宅時間になった。
・・・てか、本来ならこの時にちょっとでも彼女に気をつかってあげればよかったのかもしれないが、その時の俺は新しいおもちゃでも与えられたかのようにもっと興味があることが出来ていたので彼女のことを後回しにしてしまった。
それにしても、ラッキーだったな、俺はそんなことを想っていた。
文化祭実行委員会がちょうどいい時間に終わったので、昨日とほぼ同じ時間にこの裏門へとたどり着けた。
そう、俺は再び、例の裏門の前に立っていた。
「前と同じ時間・・・そして、前と同じ門の様子。」
どうやらちょっと遅めのこの時間帯になると、この門は霊界の門のような、仰々しいもんに変わるらしい。
・・・条件はほぼ一緒。
間違いなく、門をくぐればあの『異世界』に辿り着くだろう。
痛みは返って来るし、帰って来た時は散々な感じになったし・・・
たった短いあの時間で、かなり体も心もボロボロになってしまった
でも、この世界よりは面白い。だったら、、、
「面白い方がいいに決まってる」
NPCは主人公になっても許される世界へと旅立った。




