閑話:とある日の裏側で
「抵抗しないでください新聞君!」
「取り敢えず落ち着こうか小陽ちゃん!」
目がイってしまっている小陽ちゃんが僕のズボンをずらそうと凄まじい力で僕のベルトを掴んでいる
僕は脱がされないように必死で踏ん張ったが、ズボンがびりびりと小さな破れてるっぽい音がする
小陽ちゃんは一度覚悟を決めると、とことん突き進んでしまう。
例えここが僕の部屋のベットの上で、ドアの隙間からあらあら♡と新聞家のご両親が覗いていようとも、彼女は脇目も振らず僕のズボンを脱がせようとするだろう。
「いっそのこと切れ目を入れて破って・・・」
「小陽ちゃん、銀色に光るモノを持ちながらしがみつかないでくれないかな!?」
銀閃が光った
「実は二枚かと思われたテーマパークのチケットは五枚あったのだ!」
「な、なんだってー(棒読み)」
僕こと新聞佑は如峰月君が白凪さんとデートをしてるはずのテーマパークへと古畑さんと来ていた。
古畑さんに今から一時間以内に来なければ君の姉に伝えねばならなくなる事があると電話された為だ。
新聞家の安寧の為に来はしたものの気乗りしない。
「趣味悪いですよ古畑さん、人のデートを覗き見しようだなんて」
「そうだね!でもチケットは有効活用しないと!」
「古畑さん、、、新人大会で忙しいとか言っときながらえらく時間があるじゃありませんか・・・」
「き~こ~え~ん~♪」
・・・今頃紅さんは休日出勤で泣きながら大会に提出する作品を作っていることだろう。
「・・・で?如峰月君はどこですか?今日は何か熱っぽいし早めに帰りたいんですけど」
「桜君?さあ?どっかにいるんじゃない?何か服買ってから来るとか言ってたし」
「今日来た意味って・・・・ごほっ」
「大丈夫?」
「・・・たぶん大丈夫です」
特急までのってここにきてるのに何しに来たの?
しかもわざわざお洒落してこいとかまさか古畑さんとデートですか?
余計頭が痛くなってきた・・・体も妙に寒気がする・・・色んな意味で
「はい、プラン考えといたし参考にしてね」
「プラン?」
古畑さんがニコニコしながら紙を手渡してくる。
デートプラン自分で作ってきたの?
どんだけ楽しみにしてたの・・・と若干引きながら手渡された紙を一瞥する。
ー小陽ちゃんと行く楽しいデーt
くっしゃくしゃに丸めてゴミ箱に叩きつけた
古畑さんが大声をあげて笑う
頭を抱えて蹲りたいがそれこそ彼女の思うつぼだ
その代わりと言ってはなんだが僕は大きくため息をついた
「こんなことだと思ったよ・・・」
如峰月君に古畑クエストなるものをさせて罰としたように僕には死と隣り合わせのデートをさせるのだろう・・・なぜ逃げないかって?
逃げたって無駄だと分かってるからさ♪
僕こと新聞佑は朝日奈派と黄金比派の争いに巻き込まれた文化祭実行委員会の初日にある女の子と出会った。
そしてその娘は僕が巨乳派でなければ死んでもらうと本気で言ってきた。
ちなみに小陽ちゃんは小山であり黄金比さんのような高山に憧れてるんだって・・・どうでもいいけど
彼女に関わると絶対この先ろくなことが起こらない
それは今まで悪友達と関わって来た経験からすぐに分かった
何度も実際酷い目に合った
それでも僕は・・・彼女を完全に突き放すことが出来なかった。
桜君が強引に作り出した今だけど、何故あの時迷ったのかかが今でも分からない。
今日結局逃げなかったのも、逃げた結果彼女を傷つけたくなかったって思いも少しある。
「新聞君」
「や、やあ・・・小陽ちゃん?」
「・・・何故疑問形なんです?それに体調悪そうだし」
「そうだよね・・・何でだろうねえ・・・」
気の持ちようのせいだろう
もう気配もなく彼女が後ろに立っていることにも慣れてしまった。
今では脂汗で眼鏡が曇るぐらいで済んでいる。
僕も成長したなあ・・・望まない方向に
後ろをくるっと振り返るとやはり小陽ちゃんがいた。
少し気温が低いからかゆったりとしたセーターにピンクの革ズボンを履いてる。
本当ならもっと服装を眺めたいところだけどもっと重要な部分を見なきゃいけない。
眼だ
小陽ちゃんの眼は彼女がキレればキレる程瞳孔が開いていく。
そしてキレればキレる程僕を攻撃してくる。
とはいっても最近は銀の一物よりも拳なのでそこまで真剣に視ることも減ったが・・・今日はデート。
どんな危険なメンタルか確認しとかないとね!
「・・・・・・・うん普通そうだね!良かった良かった!」
「普通そう?」
小陽ちゃんが首を傾げているが何でだろう?
いつの間にか古畑さんが物陰に隠れてそれはないわあと僕にだけわかるように首を振ってるけども意味が分からない。
まず最初にすべきは精神チェックでしょう?
それによっては今日はデートどころじゃないんだから
今日はデッドになっちゃうんだから
「トイレとか今のうちに行っておいたら?」
「そうですね・・・じゃあ行ってきます」
小陽ちゃんが近くのトイレに入った瞬間、古畑メモを捨てたゴミ箱へダッシュしガサゴソ漁ることにする。
周りの人たちがなんかざわざわしてるがそれどころではない
周りの評価より明日の命だ
「確かこの辺に・・・あった!」
何とかくっしゃくしゃになった紙を丁寧に引き延ばして書いてあることを粗方暗記する。
そして小陽ちゃんが出てくる瞬間再びそれをポイした。
トイレからこっちに戻ってきた彼女は・・・うう、不審な目で見てる
小陽ちゃんはまるで尋問するかのように僕の眼をじいっと見つめてきた
「何でゴミ箱の前にいるんです?」
「何でって・・・何でだろうね?」
「その臭い・・・もしかしてゴミ箱漁ってました?」
「ぼぼぼ僕もお手洗いに行っておこうかな!」
緊急離脱!
君子危うくに近づかんば逃げるべし!
トイレにスライディング気味に入った僕は冷静になるという意味を込めて顔を丁寧に洗った。
そしてこんなこともあろうかと持ち込んでいた制汗剤で自分の香りをごまかしておく。
鏡ですっきりとした顔の自分に自問自答することで今のうちに状況を整理しておこう。
「今日の小陽ちゃんは何であんなに冷静なんだ?」
「紙によると小陽ちゃんは今日のことを取材だと聞いているらしい」
「なるほど・・・企画名は?」
「恋人たちにおすすめテーマパークの周り方」
「何でそんな小陽ちゃんのギリギリを越えそうな所を・・・・」
僕は思わずガクッと膝をついてしまう。
最近小陽ちゃんは僕と彼女が恋人っぽいとかそんな雰囲気になってると気付いた瞬間照れ隠し気味に拳を振るうような女の子になっているのだ。
別に刃物を使わなくなったわけでもないから命の危険まである。
そうじゃなくても照れ隠しの度に拳を振るわれてはキドニーが崩壊してしまう。
トイレから出た僕は小陽ちゃんと一緒にメインストリートを歩いていた。
お土産屋が多く並ぶその道を一つ一つの店をのんびりと周りっていた。
この後どこを周るかを相談する時間をもうけるためでもある。
テーマパーク特有の妙に高いバスタオルを買うかで悩んでいるといつの間にかテーマパークのマスコットキャラの帽子を被った小陽ちゃんが僕の袖を引いていた
「折角だしアトラクションに乗りましょう。新聞君、何か乗りたいものありますか?」
「・・・非常口の多いアトラクション?」
「非常口?」
ジェットコースターや体験ライド=小陽ちゃんがキレたら逃げ場がない→×
観覧車=小陽ちゃんがキレたら逃げ場がない→×
ゴーカート=小陽ちゃんがキレたら逃げ場がない→×
ジャングルクルーズなどのボート=小陽ちゃんがキレたら逃げ場がない→×
映画館=小陽ちゃんがキレたら逃げ場がない→×
お化け屋敷=僕にこれ以上恐怖を与えるのか?→×
どこに行けと?
僕としては基本的に逃げ道が無くなるアトラクション系はやりたくない
むしろ隠れ穴場を探す的な方がいい
そこで少し休もう・・・体も今日はなんか疲れやすいし
「取り敢えず企画のこともあるし穴場スポット探さない?アトラクションとかなしでいこう!」
「(むすっ)」
「・・・(瞳孔が少し開いたッ!?)・・・そ、そうだ!取り敢えず昼ごはんでも食べよう!休憩ついでに!」
「そうですね」
二人で近くのフードショップに入る。
小陽ちゃんが小さなおくちでウィンナーを処理してる間も僕の頭は古畑さんの計画を現実とすり合わせだ。
全くプランをたててなかったので古畑さんの計画表だけが命綱だ
とはいえ・・・時間はかからなかった。
何この甘々で実現性のないプランは!?
―思い出せる限りで抜粋
会ったらまず頬にキス♡お返しにとまだぎこちない動作で頬にキスを返す
二人でお化け屋敷、きゃーこわいと彼氏役に抱き付く
ちょおっと照れながらも彼氏役が守ってあげると囁く
その後人気のアトラクションに並ぶ。
二時間以上の行列だけど彼氏役のウィットに富んだ面白い話のお蔭で全く苦にならない
そして二人はお互いの距離を自然に近づけていき手をつなぐ
そしてそのまま観覧車に
夜景がきれいな景色の中、既に肩が触れ合うほど近かった二人の距離は更に近づいて・・・きゃー!
桜君が古畑さんの弱点は恋愛話だと言ってる意味がようやく分かった。
プランがまるで少女漫画の読者の妄想と同レベルだ・・・
会ったらまず頬にキスってセクハラでしょ!?
ウィットに富んだ面白い話って何!?
『更に近づいて・・・きゃー!』とか正直気持ち悪いです・・・
ちなみに実行したらどうなるかを想像してみたが簡単に想像がつく
―想像図
会ったらまず頬にキス♡お返しにとぎこちない動作で頬骨を叩き割られる
二人でお化け屋敷、きゃーこわいと彼氏役は首を絞められる
ちょおっとあの世とこの世との境をさまよいながらも彼氏役がタスケテクダサィと呻く
その後人気のアトラクションに並ぶ。
二時間以上の行列だけど彼氏役がサンドバックになるのでストレスフリー♪
古畑さんの命令で手をつなごうとした手首脱臼
そしてそのまま観覧車に引き摺られる
夜景がきれいな景色の中、既に手首が砕ける程近かった二人の距離は更に近づいて・・・その後は語ってはならない
・・・・・・ふう
なんかもう何をしてもブッ飛ばされる未来しか見えない
小陽ちゃんの行きたいところにいけばいいやもう・・・
「小陽ちゃんどこか行きたいところある?」
「むぐむぐ・・・何でどうやっても詰んだみたいな顔してるんです?」
「いや、、、最後の晩餐と海鮮パスタの関係性について考察してたんだよ」
「それは・・・唐突ですね」
「うん、もし今日が最後の日だったらどう過ごせば悔いが残らないかだよ・・・てなわけでデザートにティラミスとカプチーノを頼もう。お金は僕持ちでいいし小陽ちゃんもどう?」
「・・・・そうですね、いただきます」
どうせ今日死ぬのなら、、、開き直って初めてのデートとやらを楽しむことにしよう。
機嫌が悪くなればどちらにしてもプッツンするのだし
そしてその後あばだけだぶらびびびるだかtんゆおいhのl・・・・
「でも新聞君、デザートを頼む前に海鮮パスタは食べきらないと」
「え?・・・そだね」
自分でも気付かなかったが、お腹一杯なはずなのに海鮮パスタはほとんど減ってなかった。
女子の小陽ちゃんですら完食してるのに・・・
なんで・・・・あれ?眩暈が
「新聞君!?」
目の前が真っ暗になった
最初に気づいたのは部屋の明かりの眩しさだった
そして起き上がろうとして鋭い頭痛と背中のだるみが同時に襲いかかって来たので慌てて体を元に戻した。
後頭部とぶつかった氷がほぼ溶けかけた氷枕がじゃぶじゃぶと音を立てる
その音を聞きながらぼうっとした思考のまま辺りを見渡す。
どうやらここは僕の部屋みたいだ
「そうか、倒れたんだ」
「そうかじゃないです」
「・・・・・・・何故にいるし!?」
バッと飛び起きると部屋の隅で小陽ちゃんが三角座りをしていた
彼女の顔は・・・すんげえむすっとしている。
目すら合わない
「小陽ちゃん・・・ごめんね。迷惑かけちゃった?」
「『偶然』『たまたま』『会った』古畑さんとその下僕さん達が新聞君をここまで運んでくれましたから迷惑ではなかったです」
「うわあ・・・」
脳裏に古畑さんの下僕たちに担ぎ上げられたまま特急に乗せられる自分の絵が浮かぶ
とてつもなく目立っていただろう・・・
最悪だ
なんか体重いし・・・精神的にもどどどと疲れた・・・
「今何時、、、ってもう五時・・・」
窓から外を見るともう真っ暗だ・・・冬とはいえ女の子が出歩くには少し暗すぎる
少し痛む頭を抑えながらゆっくりと起き上がる
「熱は38度ほどだったので取り敢えず今日は連れて帰って来ました。明日まで熱が下がらないなら医者に行きましょう」
「小陽ちゃん・・・そんなこといいから今日はもう帰りなよ」
「帰ってもいいですけど食事とか着替えとかどうするんです?」
「親にして貰うよ」
「いなかったからわたしがいるんです」
「・・・・・・・・え?」
慌ててスマホを開くと親からは急な仕事で帰れないと連絡が入っていた。
姉さんは如峰月君がしでかしたアレ以来本気で僕との接触を断っているし・・・
「ま、まあ・・・薬飲んで寝ておくさ・・・」
「食事摂らずに薬飲むと胃が荒れますよ」
「マジ?」
ただでさえストレスで荒れているというのにこれ以上痛めたら本当に穴が開くかもしれない
とはいえ起き上がるだけで体が既に重い
カップラーメン作るだけで息が切れるかもしれない・・・
「というわけで胃に入れるもの作って来ますから寝ててください」
「はい・・・」
小陽ちゃんはむすっとした顔のままさっさと部屋を出ていった。
まるで自分の家かのように迷わず台所へと行ってしまう
僕の選挙活動期間中毎日来てたもんなあの娘・・・
階下で料理をする音がする・・・なんかさっきまでぐっすり寝てたせいか眠くならない
「・・・メッセージ?」
熱でぼうっとする思考の中スマホの着信音に反応して枕元のスマホを取る。
<古畑>―大丈夫?
ええ、熱はそれ程高くはないみたいです。ご心配をおかけしました。―<新聞>
<古畑>―いや、そっちじゃなくて笑
?―<新聞>
どういうことです?―<新聞>
<古畑>―いや二人だけとか危険だなって思って
・・・風邪の身で女の子襲う元気なんてありませんよ―<新聞>
<古畑>―?
?の意味が分からないです―<新聞>
<古畑>―小陽ちゃんに襲われないか大丈夫って意味なんだけど・・・
大丈夫なんじゃないんですか―<新聞>
<古畑>―投げやり(;゜Д゜)!?
熱で字を見るのが辛いんですよ・・・第一看病してくれようとしてくれてるのに何で襲おうとするんですか―<新聞>
<古畑>―だって心配だし一緒に家にいようかって言ったら小陽ちゃんがbヴぃfヴぐんk
・・・古畑さん?―<新聞>
古畑さーん?―<新聞>
ちょ、まじ怖いんですけど!―<新聞>
<古畑>―今日は寝ます
え?まだ五時なのに?―<新聞>
<古畑>―タケステ
巻き込まれたくないのでおやすみなさい―<新聞>
スマホを閉じた
・・・おかしいな?
寒くもないのに震えが止まらない
風邪だからだろう
布団をかぶって十分ほどしばらくガタガタしていると扉から声が聞こえてきた
「新聞君」
「はい!」
「手が塞がっているのでドアを開けてもらえますか?」
「う、うん!」
ベッドから飛び起きてドアを開けると鍋を持っている小陽ちゃんが立っていた
鍋からはいい匂いが漂っている
「味噌出汁の鍋ですけど大丈夫ですか?」
「うん、そこの机に置いてもらっていい?」
「取り皿とか箸もってくるんで食べるのはもう少し待ってください」
「あ、ありがと・・・」
意外と家庭的なんだな・・・
少し感心していると彼女はそういえばと部屋を出る前に立ち止まった
「寝れないからってスマホの画面ずっと見てると熱さがりませんよ」
「・・・ソウデスネ」
彼女の姿が消えた瞬間枕元にダッシュしてスマホを取る。
そして電話帳から古畑さんへ安否の確認のための電話をかける。
・・・なんでだろう?
コール音が僕の部屋から聞こえて来る・・・
「あら?電話が・・・もしもし」
「もしもし・・・・・・・それ古畑さんのスマホじゃ」
「熱でぼうっとし過ぎですよ?これは私のスマホです」
「いや、、、確かに古畑さんに掛けたはず、、、」
「これは私のスマホです」
「そっか」
小陽ちゃんが取り箸やら取り皿を持ちながら、器用にスマホを顎で挟んで耳を当てていた
これ以上ツッコむと僕の心臓が持たないから古畑さんは『電波の通じないところ』にいるということにしておこう
小陽ちゃんが二人分の食事の用意をして手慣れた手つきで取り分けてくれる
食べよう・・・そして忘れてしまおう!
「さ、どうぞ」
「・・・・じゃあいただきます」
鍋は美味しかったです
「ご馳走様。小陽ちゃんのお蔭で助かったよ・・・普段から料理はするの?」
「母に手伝わされますから」
「うちの姉はそういうのまったく駄目だから見習ってほしいよ」
「そうですか」
「・・・・・・本当にありがとう」
「熱で少しぼうっとしてます?」
「それもあるかもだけど・・・小陽ちゃんのお蔭で随分楽になった。これ以上一緒にいると風邪うつしちゃうかもだしもう今日は帰った方がいい。もう大丈夫だから・・・ね?」
「そう簡単にうつりませんよ」
「でも、、、女の子をあまり遅くまで帰らせないのもどうかと思うし」
「迎えの車を待機させてますしご心配なく」
「ソデスカ・・・」
窓から外を見るとヤクザっぽい服装でヤクザみたいな男たちがまるでヤクザみたいな高級外車の中から僕に向けて手を振っていた。
・・・見たことある山梨組の方々ですね
「下にいますから何かあったら言ってください」
「う、、、うん」
「スマホは駄目ですよ?」
「はい・・・おやすみなさい」
小陽ちゃんは行動力があり過ぎて・・・しょうじきこわいです
30分ほどだろうか・・・スマホを見たら実際は40分ほどだった。
それぐらい熟睡していた僕はむっくりと起き上がった。
寝癖がつくほどそれはそれはぐっすりと寝れた僕はさっきよりはさっぱりした頭で起き上がった。
薬のお蔭か随分と体が楽になった。
関節も痛くないし頭のどんより感もほとんどない。
喉が渇いたと階下に降りることにした。
「くぅー・・・くぅー・・・」
よっぽど疲れたのだろうか・・・無防備な顔で寝ていた。
ふくーふくーと寝ているその様子はとても可愛い。
小陽ちゃんで心安らぐことがあるなんて・・・今日はとことん変な日だ。
僕の気配に気が付いたのか小陽ちゃんはむくっと起き上った。
まだ少し眠いのか目はいつもより細い
「どうしたんですか?」
「あ、ああ、、、喉が渇いて」
「ああ・・・ちょっとまってください」
「スポーツドリンク・・・うちにあったっけ?」
小陽ちゃんはああというと冷蔵庫からスポーツドリンクを取ってきてくれた。
うちはこういうの買い置きしてなかったと思うんだけどと思ったら小陽ちゃんが説明してくれた
「鍋の材料にないものがあってついでにと一緒に買いに行ってきたんですよ。」
「ごめんね・・・」
「いえ、、、ついでに収穫もありましたから」
・・・そういって彼女は『古畑さんと同じ型らしい』スマホをチラッと見た
そっか、、、買い物中に古畑さんとっ捕まえたんだね・・・
そして企みに気付いてしばいたと・・・
「そういえば新聞君、、、今日のことなんですが・・・」
「本当にごめんなさい!」
「何で恐怖にまみれた顔なんですか。寧ろその謝罪の仕方の方が失礼です・・・」
むすっとしている・・・とても不機嫌そうな顔をしている
それでも彼女・・・小陽ちゃんの眼はいつも通りだった
だから
「ごめんね」
「・・・・・・・いいですよ、もう」
僕は真面目に謝った
彼女は僕が何に対して謝ったのか聞かなかった
騙してテーマパークに連れてったこと
彼女を怖がってしまったこと
風邪気味とはいえ勝手にギブアップしてしまったこと
結論を急ぎ過ぎたこと
そしてそれに付き合わせてしまったこと
「まだ僕たちには早かったね」
「そうですよ・・・正直バタバタもがいてる気がずっとしてましたから」
主語も目的語もないのに小陽ちゃんは僕の話に首を縦に振る
結論を出すにはまだ早いから・・・心の中だけで僕たちは確認するんだ
そう
まだ、、、僕たちには恐らくデートは早すぎる
例えば如峰月君が朝日奈さんや伊月さんや白凪さんとデートしてる様子ならこんな感じかなとか想像がつく。
でも
まだ
僕と彼女がどんなデートをしてるのかとかを想像することが全然できない
そもそもまだ恋人云々かんぬんの前に小陽ちゃんのことを全然分かんないんだから
小陽ちゃんについて今分かってるのは
ちょっとキレると暴力振るって来たり
家がちょっとおっかなかったり
料理とか上手くて気が利いてて
とても可愛い
たった『それだけ』なのだ
怖がる前に
恋する前に
結論づける前に
僕は山梨小陽という女の子をもっと知らなきゃいけない
「眠くならないならテレビでも見ませんか?」
「そうだね・・・」
二人でお互いソファの隅と隅に座る。
他人よりも近くて友達より遠くて恋人より遥かに遠い距離
そんな距離間で僕たちは座っている。
言葉が浮かんでこない
小陽ちゃんがぶ千切れてるときは自分の保身の為にといくらでも言葉が浮かぶのに
彼女がどんな話題が興味あるのかさえ分かんないから話す言葉が見つからない
やっぱり出会い方を間違えちゃったんだろうか・・・
普通に出会って
黄金比なんて一切絡まないで
普通に仲良くなって
普通に恋に落ちれば
普通に話せるようになれたのかな?
テレビを熱が上がって来た頭でぼうっと見る
「新聞君、、、あれ・・・」
「ほぉ、如峰月君と白凪さん!?」
テレビのニュースでカップルが観覧車から落ちかけるという生中継が流れていた。
全国放送で落ちないようにとアクロバティックな姿勢で白凪さんを抱きしめてる姿だった。
!?
僕の眼は眼鏡をかけるといい方だ
見る人によっては確証を持てないかもしれないが僕はそれを見てしまった
如峰月君と白凪さんの唇が・・・触れ合った気がする・・・
一瞬のことだったしカメラが遠かったから確信は持てないけど・・・
テレビの前で唖然としているうちに観覧車からメイドさんみたいな恰好した女の子が二人を救助してしまいあっという間に中継は終了した。
・・・本当にキスしたんだろうか?
恥ずかしながら恋人が今までいなかったのでそういう経験はない
どんな感じだったんだろう?
つい隣の少女を見てしまった
眼が完全にキレた少女を・・・・・逃げなきゃ
「新聞君」
「・・・・・・・はい?」
「汗で体が気持ち悪くないですか?」
「ダイジョウブダヨ」
小陽ちゃんがググッと瞳孔が開いた眼で迫り寄ってくる
「遠慮しなくていいんですよ・・・冷水浴びて煩悩退散させておきましょうよ」
「いや、、、、風邪ひいてるしそういうのいいよ」
「じゃあ、女装して男性としての汚らわしい欲望を一回消し去りましょう」
「・・・・やっぱり君もあの二人のキスを見てたんだね!」
「ナニモミテナイデス」
「見たな、やっぱり!」
部屋へと逃げるがそれを逃がさないのが小陽クオリティ
彼女はどっかから持ってきたのか姉さんの服にしか見えない洋服を持ってこっちににじり寄ってくる
「さあ、、、新聞君にはできれば性欲なんて汚らわしいんのに負けない綺麗な男性でいて欲しいです!」
「その前に心が折れるよう!」
「さあ!一回女性になれば性欲に勝てるようになれますから!」
「断る!」
にじり寄られた先にはもうベッドしかない
じりじりと逃げて行くともう逃げ道が無かった・・・
小陽ちゃんはキレッキレの眼でうふふふと笑うと女性とは思えない力で僕の服を脱がそうとする
「ほらほら脱いでください!身も心も綺麗にしましょう!」
「今日一日は寧ろ熱上がるから汚いままで過ごして、明日シャワーでも浴びて一気に綺麗にするつもりだから!」
「不潔です!ほら抵抗しないで!」
「いやっ!離して!」
「抵抗しないでください新聞君!」
「取り敢えず落ち着こうか小陽ちゃん!」
目がイってしまっている小陽ちゃんが僕のズボンをずらそうと凄まじい力で僕のベルトを掴んでいる
僕は脱がされないように必死で踏ん張ったが、ズボンがびりびりと小さな破れてるっぽい音がする
小陽ちゃんは一度覚悟を決めると、とことん突き進んでしまう。
例えここが僕の部屋のベットの上で、ドアの隙間からあらあら♡と新聞家のご両親が覗いていようとも、彼女は脇目も振らず僕のズボンを脱がせようとするだろう。
「いっそのこと切れ目を入れて破って・・・」
「小陽ちゃん、銀色に光るモノを持ちながらしがみつかないでくれないかな!?」
銀閃が光った
「し、新聞君の、、、、意外と可愛いんですね」
「きゃああああああああああっ!」
小陽ちゃんは意外と冷静だった
いつの間にか帰ってきていた家族の方が寧ろ阿鼻叫喚していた
いつの間にか冷静になっていたのだろう・・・この世で最も汚らわしいものを小陽ちゃんにまじまじと見られながら着替えさせられた
本当に最低な日だった
しかもその日の終わりに小陽ちゃんと一緒にいつの間にか生徒会役員にされてることを伝えられた。
・・・最後まで本当に最低な日だった
これがいちゃラブしていた如峰月君の裏側でドタバタしていた僕の一日である。
第四章のスタートは期末試験の終わる二月の中旬を目途としております。楽しみにしているであろう皆さんには本当に申し訳ないと思っておりますがご容赦ください。




