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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第三部:周り全て変わるとして、変わらないものがあるとしたら<曇の奇術師編>
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EPILOGUE-THREE.HALF 約束覚えてるよね?

ラストエピソード!

次回の部のプロット構成の為しばらく完結扱いにさせていただきます!

今度出会うまでには一か月か二か月ほど猶予を頂けると嬉しいです!

「待たせたな」

「スカイとは上手くお別れできたのか?」

「ああ」


シノンとサニアは馬車の御者席でぼうっと座っていた。

だが俺に気付くと二人とも笑顔になって笑いかけてくれた。

でも少しだけ気遣ってくれるような空気があるのは俺が寂しがってると思っての思いやりだろう。

心配かけたくないので少しだけ空元気で大声を張り上げる。


「取り敢えずモルロンド伯爵の依頼もあらかた達成したし、、、そろそろ行くか!」

「ああ、それでいいと思う」

「おにいさん、その包みは?」

「ん?」


サニアは目ざとく俺が背にしょってる包みを指さした。

本当ならサニアがいない時に渡したかったが・・・ま、いつ渡しても一緒か


「ほら、シノン・・・大陸でも有数の鍛冶師がシノンの為に打ってくれた剣だ」

「・・・え?」


シノンにほうらと包みを手渡す。

サニアがむうっとした顔で俺をなじってくる。


「おにいさん、シノンにだけプレゼント?」

「ばーか、スカイがいないんだから今は少しでも戦力を増強しなきゃだろ?」

「・・・・・・」


シノンは黙ったまま包みから剣を取り出す。

俺の『葉擦れ』を作ったせいで作れるものといったら女性用の両刃剣ぐらいだった。

だったらとシノンの背丈や腕の長さそして特異な戦法を伝えシノン用に剣を打ってもらったのだ。


氷属性のシノンに合わせて龍人の郷の水龍素材とドン・クラークの共鳴鋼を組み合わせた水色の光を放つ輝く澄んだ水晶のような少し短めの片手剣。

シノンはぼうっとその剣の美しさに惹かれている。


「ま、まあ、、、サニアにも用意するからさ機嫌直せよ?」

「しょうがないなあ・・・まあ?あの時シノンを優先してって約束したけどさあ?」

「ははは・・・(まったくもって忘れてた)・・・」


どっちも大事な護るべき存在なのは当たり前だし今までそのつもりで動いてきた。

そしてこれからもそうして動くだろう。

サニアに色んな意味で申し訳なく思ってるとシノンがいきなり俺に剣を突っ返してきた。


「こ、こんな良い剣もらえない!それに私には『紅剣・桃紅』があるし!」

「んまあ、そうなんだけどさ・・・一応作っちまったもんはしょうが無いし貰ってくんね?」

「でも・・・」

「あ~、あの時の慰謝料的なもんだと考えてくれりゃいいからさ。女性に贈るものじゃあねえかもしれねえけど」

「そんなことない!とても・・・とても嬉しい。サクラからもらえるものなら何でも嬉しい!」


シノンはぶんぶん首を振ってがっしりと剣をホールドした。

まあ、喜んでくれてるならいいけど・・・


「その剣は『葉擦れ』と双をなす剣だし相棒のシノンにこそふさわしいと思う」

「そうか、、、そうか!」

「銘は特に聞いてないし俺がつけちまうか・・・じゃあ葉っぱ繋がりで『霜葉』」

「『霜葉』・・・相棒用の対をなす剣・・・ふふふ」


・・・なんか風呂の中まで持っていきそうな雰囲気だな

戦闘では一切使わなさそうな雰囲気?

一応少しは使ってね?


「あれ?ツバキは?」


そういえばと辺りを見回すとツバキがどこにもいなかった。

桜と違い常時実体型のツバキは大体は俺の傍にいる。

でも今はどっかに行ってるようだった。


「サニア知ってるか?」

「ツバキおねえさんならさっきトツカおにいさんに会いに行くとか言ってたけど?」

「トツカに?そういや旅立つ前に話があるとか言ってたけど・・・お?」


丁度遠くから大荷物を担いだトツカとツバキがこっちに向かって歩いて来ていた。


「トツカにツバキ・・・なんだその大荷物は?」

「はあ・・・はあ・・・何って『葉擦れ』や『霜葉』の手入れ用の道具だよ」

「・・・・え?これ全部!?」


うちの馬車は五、六人が余裕で生活できるぐらい大きな馬車だがこれを詰め込むとなると大幅に狭くなる

それに・・・


「・・・この道具の山々を使ってどうやって手入れするんだ?」

「「さあ?」」


包みから出された道具の数々を見て脳筋パーティーフェデラの三人は首を傾げた。

トツカは一つ一つ道具を改めて確認しながらこともなげに言った。


「心配しなくてもいい。俺がついていくから」

「「「ええ!?」」」


三人そろって仰天しているとツバキが説明に入ってくれた。


「トツカ様の本質能力は鑑定。しかも本属性は土で補助属性は火と鍛冶師寄りです。更にオオラさんが唯一奥様以外で工房に出入りするのを認めていたとか・・・僭越ながら旅について来ていただけるようお願いしていたのです」

「外の世界をもっと知りたかったからな。サクラと一緒なら楽しいことが沢山ありそうだ」


トツカは道具を乗っけてくれとてきぱき指示をし始める

その顔に一切の迷いは見えない・・・でもよ?


「トツカ・・・お前トーリを残してくつもりか?」

「まあ、、、お別れは済ましたしな。あいつも納得してくれた」

「ちがうだろ!妹一人残して旅に出るつもりかって聞いてんだ!」


自分が外を見たいからって妹一人郷に残すような奴は幾ら必要だからって旅の仲間にはできない。

俺が声を荒げるとトツカはでもなあと頭を掻く


「親父とお袋もいるし寂しくはねえと思うぞ?だから一人ではねえと思うがなあ?」

「・・・は?」

「魔喰龍の咆哮で足を怪我したみたいだったけど治癒魔法のお蔭で今では二人とも健康だぜ?」

「おい、ちょっと待て・・・お前俺に仇を取ってくれって・・・焼かれた家の中を必死になって・・・手を火傷してでも形見探してたんじゃ・・・」


トツカはそれを聞くと悲しげに目を伏せた


「ああ、、、俺は大事な『家族』を魔喰龍に奪われたんだ・・・」

「・・・・・・・まさか」

「ああ、、、、お前がくれたあの『十八禁本』が魔喰龍の咆哮で・・・ううっ」

「・・・・なんだそのオチは!?」

「焼き焦げた家の柱から唯一これだけは見つけられた・・・ぐすっ」


トツカは胸のポケットから焦げ目のついた一ページを取り出しおいおいと泣きだす。

肌色が多いそれを女の子の前で見せびらかすんじゃない!

シノンやサニアの目がキッツいから!

さっきまでの甘々空間が台無しだ!


「はあ、、、ま、乗れよ」

「ああ!二人で世界中の神秘を集めに行こう!」

「・・・てめえはやっぱり置いていく」

「ええ!?」


こうしてフェデラからスカイが抜けた代わりにツバキとトツカが入った。



そして雪空の中

山を越え

雲の道は突き進む

懐かしきモルロンド伯爵直轄領へと


「・・・・なんじゃこりゃ?」


内蔵された暖炉のお蔭で暖かい馬車の窓から異変に気付いた。

既に季節は冬でどこの地域も雪が降り積もり始めてる

そのはずなのに


まるで熱が籠ってるかのようにモルロンド伯爵直轄領はその周りだけは雪が溶けきっていた。


「・・・シノン!」

「ああ、、、間違いない父様だ!サクラ、引き返せ!」

「?・・・分かった・・・う、動かねえ!?」

「・・・馬車の周りを『獄炎魔術』で拘束されてる!」

「はあ!?まだモルロンド伯爵直轄領までどれだけ離れてると思ってるんだ!?」


トツカが鑑定で確認してるから間違いないのだろう

馬車を縛り付けてる鎖はモルロンド伯爵直轄領からまっすぐ伸びている

馬車の外壁が段々溶けて蒸発させられてる・・・雲で守ってなきゃもう崩壊しちまうほどに


「超遠距離広範囲魔術は俺の専売特許なのに・・・なんて力だっ!」

「マスター!『曇脈展開≪クラウドアクセス≫』を!」

「分かってるけど、、、今は無理だ!」


少しでも気を抜いた瞬間地面へと鎖に叩きつけられる!

とてもじゃないがツバキに雲を纏わせてる余裕なんてねえ・・・


「・・・くあああああ」

「仕方ないね・・・・全魔力をかけなきゃいけないけど」


サニアが窓から体を乗り出して詠唱を始める


「『乱れに乱れよ』!『壊せ貫け』!『指し示られた自分の道は』!『自分の意思で貫き通す』!『光線斉射≪ガトリング・オーバーレイ≫』!!!」


魔喰龍戦で大きく成長したサニアは魔力の操作が格段に上手くなってる

超高威力の圧縮した高熱線が巻き付いた鎖に直撃する

しかし・・・鎖は完全には壊しきれない


「やっぱり相性が悪い・・・」

「十分だ!『曇の支配権奪取≪ハッキング≫』!」


雲が魔力を遮断させ鎖を解かせる。

しかしその瞬間新たな鎖が直轄領から向かってくる


「しょうがねえ!急降下で地面に降りる!」

「「「「ちょ!?」」」」


ふわっとした下半身にかかる浮遊感

そして体が本当に浮くほどの急降下

鎖をかわすにはこれしかないとはいえ・・・・ヤバいよこれは!?


「「「「「うわああああああああああああっ!?」」」」」

「ぐぐぐっ・・・・『曇の沼≪プール≫』!!!」


雲の沼に強引に着水させる。

衝撃に備えていた皆が頭を抱えてかがみこんでいた目を開ける。

・・・どうやら皆生きてるようだ


「サニアとトツカは中にいろ!シノン、ツバキ行くぞ!」

「了解、マスター」

「・・・・・」

「シノン!」

「あ、ああ!」


何か怯えた表情のシノンの両頬をパンと強めに叩いて気を取り戻させる。

彼女はブンブンと頭を振ると『紅剣・桃紅』を引き抜いた。

よしと、三人で外に出た瞬間またもや巨大な高熱を伴った鎖が迫ってくる。


「マスター!」

「分かってる!!『曇脈展開≪クラウドアクセス≫』!」


そして雲の世界が鎖を飲み込んだ。

圧倒的な万能感・・・そして裏打ちされた力

シノンがそれを見て口をポカンとする


「・・・父様の鎖を」

「ぶはあああああっ・・・何驚いた顔してんだ」

「いや、、、同じ『種』の魔術師同士とはいえここまで差が出るものなのか?」

「まだまだやっこさんも本気じゃねえだろうがな?」

―マスター、高速で移動する熱源を確認―


目を凝らすと鎖で引っ張られながら空を飛んでくる三人の男が確認できた。

一人はシノンの親父として・・・後の二人は?


「聖十剣・・・しかもゼノン兄様まで?」

「ゼノン?」

「最悪だ・・・・父様だけならまだしもゼノン兄様まで?」

「しっかりしろ!そのゼノンも父様とやらも俺が引き受けるから後の一人は任せるぞ!」

「・・・・・・・・むりだ」

「はあ!?」

「いくらサクラでも、、、あの二人には勝てない」

「ちっ・・・・お前も馬車の中にいろ!!!!『動く曇道≪オート・ステップ≫』!・・・桜頼む!」

「ああ・・・でもいいのか?」

「あいつだって戦士だ!戦えない時に下がる賢さぐらいはあるはずだ・・・来るぞ!」


シノンを馬車に入れ込んだ瞬間、地面に三人の男が地面に降り立つ。

シノンと同じ白い髪のまだ二十代かと思われるほどの若い男

そしてその後ろに立つ二人の青年


「よう、、、娘を追って他国までとは大そう立派な親父さんじゃないか!ぶはあああああっ!」

「・・・・何だ貴様は?」


ゾッとするほどの無表情に冷たい声

まあ・・・シノンがおびえるのも無理ないな

だが、、、今の俺なら何となく何とかなりそうな気がする


「おそらくフェデラの副リーダーのサクラ=レイディウスかと」

「へえ・・・シノンをたぶらかした『種』の魔術師君か?」


メガネをかけた温室育ちっぽい青年がシノンの父親に俺の正体を告げ

まるで正反対の狼っぽい外見の青年はまるで俺を値踏みするかのように舌なめずりをした。

・・・二人とも上級冒険者以上の強さはありそうだ。

そしてシノンの父親も雰囲気だけなら魔喰龍より上そうだ・・・


「名乗れよ・・・俺だけ名乗ってそっちは名乗らないのはずりいだろ?」

「よかろう・・・元王国大将軍ガルブレイク・エルリングス」

「僕はゼノン。名字は無いよ」

「俺は・・・・ひひっ!」


最後の一人が飛び出してきた。

名乗る気はねえってか?

上等だ


「桜!」

「ああ!」


『常識外』と酷く形が丸々とした曲刀がぶつかり合う

桜の魔力量の方が強いのか狼然とした青年を弾き飛ばす。


「ぎゃす!?」

「あれが?」

「ええ・・・まさかウルフォンを弾き飛ばすほどの力を持ってるとは驚きでしたが」

「随分と余裕じゃんかよ・・・『曇の一撃』×メガ盛り!!」

「「!?」」


今度はこっちの番だ。

速いだけでなく数も多い・・・ほとんどが躱されることなく命中した。


「十剣長!将軍!」

「人のことを心配してる場合か!『弾き飛ばせ』!」

「くっ・・・・」


ウルフォンが先程までとは打って変わって苦しげな表情に変わる。

何かにあせっているのか怖がっているのか


「へへへ・・・奇襲ってのは相手に気付かれちゃ意味ねえんだよ!」

「そうか・・・」

「!?」


刺さったはずだ・・・何百本もの黒雲の槍が

でも全てを喰らっているのに・・・その男は『無傷だった』


「ならこれも覚えておくんだな。奇襲は相手をその一撃で殺すつもりでなくては意味がない」

「流石将軍だ」


いつの間にか紅く赤色化した鎖を鎧のように身にまとったガルブレイクはふんと鼻息を鳴らした。


「ぶはあああああっ・・・化け物か?」

「貴様に言われたくない・・・なんだ今の魔術はそしてその禍々しい魔力は」

「僕に言わせれば二人とも化け物ですよ・・・『刃を呼び出せ』」


ゼノンが鞘から赤色の刀身の刀を引き抜く。

そしてガルブレイクを覆う巨大な紅い鎖の鎧の発光が増していく。

・・・出し惜しみしてる場合じゃねえか?


「『詠唱短縮炎剣式:四の型』!」

「炎なら・・・『曇の雨雨≪スコール≫』!」


炎を纏った刀を持ったゼノンがこっちに向けて駆けて来る。

詠唱短縮する剣技の厄介さは分かってる・・・その前に潰す!

最高レベルにまで高め挙げられた雲の操作力が一瞬で巨大な水球を作りだしゼノンに向け放出する。


「すごいね・・・『刃を呼び出せ』」


ゼノンはそれを見ると、刀身を一度鞘に納め再び引き抜く

その刀身は・・・青い?


「『詠唱短縮水剣式:四の型』」


ゼノンは剣で作り上げた水流に飛び乗り一気に水を纏った刀で自身の何十倍もの質量を持った水球を真っ二つに切り裂きやがった


「よそ見か?『貫熱』」

「ぐっ!?」


熱い!

こっちは魔喰龍すら赤子のようにあしらえるほどの身体強化を施しているのにそれとまともに張り合ってきやがる・・・

ガルブレイクの鎖拳と俺の右腕が激しく震え・・・そしてお互い吹っ飛んだ


「・・・あっちいい」

―マスター、、、ゼノン殿の鞘は『常識外』と同じくミルの作品。おそらくその効果はどこかに保存してある属性持ちの刀身を入れ替える能力かと―


・・・ガルブレイクの獄炎とは『鎖一つ一つの楔』を核に魔力を纏わせ熱を発生させる術式か

そして熱は体を強化するから俺と同等の身体強化を施せるってわけね

ツバキの説明と組み合わせて敵を観察しきる。


「サニア様を解放してもらおうか」

「やなこった・・・無駄死にさせるつもりで連れて帰るような奴らにサニアを渡せるか・・・ぶはああああっ」

「ふん、、、もう無駄死にとは言えんだろう?」

「・・・はあ?」

「ずっと王宮を出てから二人を監視してきたのだよ・・・旅の中でサニア様が聖女として完成するのを待っていたのだ。」

「!?・・・なら・・・二人がどれほど苦しんで・・・どれだけ命の危機に会ってたかも知ってるってことか?」

「もちろんだ」

「てめえ!」

「ぶはっ!?」


ガルブレイクを渾身の力で殴りつけた。

そして『葉擦れ』を引き抜きゼノンと打ち合う。


「どうしたんだい?いきなりそんなに本気を出して?」

「うるっせえ!」

「ぐっ!?」


ゼノンはそれほど身体強化が上手くないようだほんの一押しで簡単によろける


「お前らが追って来てるかもしれないと!必死で隠れて!見つからないようにと自分の命の危機にあってすら!自分の枷を取ろうとしなかったあの二人を見て!お前らは何も思わなかったのかぁ!」

「思わんな」

「!?」

「今度はこっちの番だ」

「ぶふっ!?」


鎖拳が顎に叩きこまれ空を飛ぶ

・・・・拳自体は効かないが・・・・熱が奥にまで浸透してきて・・・・痛みが走る

―マスター!熱が体の中の雲を攻撃してきてます!」


ツバキが危険だと警戒を促す

・・・そうかもな

出し惜しみしてる場合じゃなさそうだ


「これからお前らを・・・殺すつもりで動く」

「ほう・・・二対一でよくそこまで吠えれるな」

「殺すつもりでも倒せなさそうなんでな?」

「勝つぐらいは可能だと?・・・面白いことを」


ゼノンとガルブレイクは興味深そうに俺を値踏みしている。

・・・腹が立つが一応ブッ飛ばす前に聞いておきたい


「ブッ飛ばす前に聞いておくぞ?・・・本当に何も感じなかったのか?」

「・・・・・何も」

「次にあった時容赦はしないと言っておいたからね」

「・・・・・ツバキ」

―主人公なら怒り狂って当然ですね・・・マスター、私も同じ気持ちです―


「ぶっ飛べ・・・『曇震伝波≪ドンシン・クロッシング≫!!!」


体の中で湧き上がる振動を全て拳から空気中に撃ち出す。

不可視の衝撃を予想できなかったのだろう

二人そろってブッ飛ばした

・・・・・・こんどこそ通ったはずだ

今のうちにウルフォンをブッ飛ばして三人がかりであの二人を仕留める!


「後はウルフォ・・・

「動くな」

「っ!?」


馬車の方を見るとシノンがウルフォンの下で転がされ吐血していた。

そしてウルフォンの曲刀が首筋に添えられていた

桜もボロボロにされ倒れ伏していた


「ぐあ・・・・・」

「ふん!」

「ああ・・・・」


ウルフォンがシノンが取ろうとしていた『紅剣・桃紅』を曲刀が叩き折る。

シノンは悔しげに涙を流す


「シノン!馬車から出んなつったろ!」

「サクラ・・・俺だけじゃ止められなかったから・・・彼女は手助けしてくれたんだ・・・」

「ぐっ・・・・」


桜一人でなんとかなると考えていた俺の責任だ

・・・ツバキを取り込まずに桜とあたらせるべきだった。

折角稼いだ時間も既に使い果たした

吹っ飛ばした先からよろよろとゼノンとガルブレイクが立ち上がるのが見える。


「シノンの首を跳ね飛ばされたくなけりゃ剣を捨てろ」

「・・・・・・・そしたらサニアはどうなる」

「王国に来ていただく」

「ちっ!」


剣を捨てればサニアが死ぬ・・・剣を捨てなければシノンが死ぬ


「ぶはああああああっ・・・・なんでこうなる。胸鎧を取ったシノンはそう簡単にやられないはずだぞ?」

「聖剣五位とはいえ『聖剣五位に選ばれた属性』が使えないなら敵じゃないよ」

「くそう・・・・くそう・・・ぐっ!?」


ウルフォンは楽しげにシノンを踏みにじる


「元から気に入らなかったんだよ・・・獄炎将軍の娘だからって使えもしない属性を期待されて俺より一つ上のくらいの聖剣五位を授けられるわ、聖女のお付きに任命されるわ・・・」

「てめえ・・・・」


自分でも今冷静でいられてるか分からない。

戦闘に最も適した脳に雲のお蔭でなってるんだから冷静なんだろう

・・・でも心が焼け付くように・・・脳味噌が焼け付きそうなほど熱い

このウルフォンとかいう奴を一つ魔術を使えば殺せる・・・殺せるッ!

でもそれをすればシノンが・・・・・


「もういいよ」

「「「!?」」」


馬車からサニアが出てきた。

トツカが止めようとするのをサニアは振り払ってウルフォンの前に立つ。


「シノンを離して」

「一応国賊なんですよ?」

「離して」

「・・・はいはい」


ウルフォンがシノンから足をどかす。

そしてこっちに向け放って来た。


「なんてことを!」


慌ててシノンを受け止める。

・・・怪我はそれ程じゃない

でも・・・


「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

「シノン・・・」


シノンはずっと誰かに謝り続けていた

裏切ってしまった王国にか

怖い怖い父親にか

足手まといになった事に対してへの俺への謝罪か


それとも


守ると約束して守れなかったサニアに対してか


「サニア様・・・聖女として成長なされたようで」


ボロボロになりながらも大きなけがは見られないゼノンがサニアの元で跪く。

ガルブレイクも多少切り傷を負ってるようだが怪我はそれほど多くない。

二人に習って跪くウルフォンは驚きの声を上げる


「十剣長どころかガルブレイク将軍まで怪我を・・・いったいあの魔術師は・・・」


俺に言わせりゃ魔喰龍を細胞レベルにまで分解するほどの威力を持ってるはずの『曇震伝波≪ドンシン・クロッシング≫をうけて怪我程度で済んでるコイツらの方がまさかだがな。

―マスター、、、今なら攻撃が―

そうだな


「動くな、、、シノンの首を見てみろ」

「っ!?」


解放されたかと思っていたがシノンの首には赤熱化した鎖が巻き付いていた。

そして鎖の持ち主は当然ガルブレイク

こいつ、、、実の娘でも殺すつもりか・・・


「おにいさん」

「!?」

「約束覚えてるよね?」

「サクラ、、、、駄目だ、、、私は死んでもいい、、、だけどサニアだけは、、、ああっ!?」


シノンが駄目だと俺の服の裾を掴んで泣きじゃくりながら首を振る。

その瞬間鎖が発光しシノンは苦しみもがき始めた。

これじゃあ鎖を解く前にシノンが殺される・・・


「・・・分かった」


『葉擦れ』を放り投げ、『曇脈展開≪クラウドアクセス≫』を解く

不思議と三大欲の捕らわれることは無かった

そんな余裕もないぐらい心がざわついてた


「サニア・・・・」

「おにいさん、、、ありがとう」


俺の戦闘する気が無いことを確認したのかシノンの鎖が解かれる。

サニアはそんな俺を本当に感謝を込めた笑みで見つめてきていた。


「行きましょう」


ゼノンがサニアを抱え上げ身体強化全開の走りで駆けだす

・・・何も言えなかった

あの笑みに何も返してあげられなかった


俺は彼女との約束を守るためと言い訳して・・・実際は彼女の気迫に気圧されたんだ

二人とも守るべきだったあの状況で・・・逃げたんだ


「無様だな」

「・・・・・消えろ!」

「言われなくてもな・・・それとシノン・・・次に俺の前に顔を見せたら・・・一片が無くなるまで殺す」

「ひいっ・・・・」


シノンが俺に抱き付いてガクガク震える

それだけ、、、お前にとっては恐怖の対象なのか?

あいつは?


「軟弱め・・・精々そこの男とよろしくやるんだな」


そんなシノンを見ても同情すらしないのかこの父親は!

俺が殺気を込めて睨みつけると今度こそガルブレイクは鎖を飛ばしそしてその鎖に引っ張られるようにどこかへ飛んでいった。


「マスター・・・主人公なら分かってますよね?」

「ああ、、、約束は守るさ」


そう約束は

俺はサニアと『サニアよりシノンを優先すると約束した』

それはきちんと果たした

だから彼女が王国に戻るのを邪魔はしない


その結果完全に俺の心はおられたし

シノンも再起不能まで追いつめられた


だからどうした?


俺の首にはもう一つ想い想いが籠った約束がかかってる

『自分を信じる』って約束が

『俺は自分の信じた道を貫き通す』・・・それが俺だ


例え今は負けたとしても・・・心がおられたとしても・・・俺は『主人公』なんだ

ヒロインがたとえ望まずとも・・・ヒロインを救うのが主人公だ

スカイが保証してくれたように・・・俺は何度負けても最後には立ち上がる。


「シノン、、、今は泣いとけ・・・それでいいんだ」

「・・・え?」

「桜!ツバキ!トツカ!」

「「「おう!」」」


三人が俺の後ろで覚悟を決めた顔で吠える

頼もしい仲間を持ったもんだ

俺の意図を既に組んでくれてる・・・嬉しいねえ


シノンの頭をポンポンと叩くと俺は三人の方を向く


「今はあいつらを見逃す」

「「「異議なし!」」」

「だが、、、仲間を見捨てるのはどう思う?」

「「「異議あり!」」」


シノンがようやく理解したようで・・・震える足を氷漬けにして無理やり立ち上がったことにする

ツバキに肩を支えられながら・・・涙と恐怖で顔をぐちゃぐちゃにしながら・・・それでも立ち上がった『ふり』をした。

それが出来りゃ俺より上等だ・・・俺はスカイとの約束が無けりゃここまで強がれねえってのに


サニアもシノンも守る


それが主人公だなんて言いきれない


「王国・・・ほろぼしてもいいと思うんだが・・・どう思う?」

「「「「異議なし!」」」」

「・・・上等だ」


王国さんよお・・・俺を完全に敵に回したことを後悔してもらうぜ?

『主人公』を敵に回して滅びなかった国なんて・・・どんな物語を探してもないんだから


「サニアを救うぞ!」

「「「「おう!」」」」


こうしてたった五人から始まる女の子一人の命を巡った国一つを巻き込む大騒動が幕を切った。


種族:ホモ・サピエンス

年齢:15

職業:曇の奇術師

冒険者クラス:中級冒険者

パーティー所属:フェデラ

本属性:曇(黒) 補助属性:

本質能力:『補助する鬼才≪サポート・ギーニアス≫』


スキル:【発動級】『曇の壁≪ウォール≫』『黒曇衣≪コート≫』『曇の雨雨≪スコール≫』『曇の沼≪プール≫』『曇の一撃≪ショット≫』『曇の増成≪パンプアップ≫』『黒雲の蓑≪ミノムシ≫』『曇の支配権奪取≪ハッキング≫』

【詠唱級】『曇神の審判≪クラウド・ジャッジ≫』『曇神宮の柱≪クラウド・ポール≫』

new【発動級】『内在型身体強化』『動く曇道≪オート・ステップ≫』『曇の陶器≪クラフトワークス≫』『曇の小雨≪ウォーター≫』『曇感知≪サーチ≫』『曇靭紐≪クラウド・ワイヤー≫』『曇震伝波≪ドンシン・クロッシング≫』

称号:なんちゃって異世界人  甘ちゃん 災害指定生物 破門された人 ロリコン疑惑 変態 キチガイ 薄っぺらい奴 自分探し中  パーティー結成おめ 失い人 エロい人 

自己犠牲の塊 疑心暗鬼 

new 世界からあいらぶゆー!「これからも拝見させていただきます」

    疑似暴走魔力適合者 「邪道よ!邪道!」

    強姦未遂 「サクラさんを白い目で見つめる会」

    外見悪役 「『曇脈展開』・・・マジで見た目悪役・・・いえキチガイ・・・」

兵装:『七番鞘・常識外』『魔法玉ポーチ』

new『葉擦れ』-オオラ作の共鳴鋼を使った世界中の細剣の中でもトップクラスの名剣。持ち主の魔力に反応する性質ゆえか曇魔術用の杖としても使用可能。魔装加工はされていない。   

装備:軽剣士用の軽めの衣服

特記:『自分であり自分でないもの≪アナザー・ミー≫』は如峰月桜の物と判明

   更に暴走魔力の後遺症で『嵐曇魔術』も使用不可に。

   その代りサクラの『補助する鬼才≪サポート・ギーニアス≫』ツバキにより単体でも龍と闘えるほどの身体能力を持った仲間が出来た。更にツバキの力を借りて『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』使用可能

特記二:『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』について

ツバキ自体を核にしツバキを雲に変えさせる。ツバキに雲を操作させることにより120%の完全操作を実現。曇の魔術の威力規模は『嵐曇魔術』に劣るが、より難易度の高い魔術が使えるようになったため攻撃力は『嵐曇魔術』をはるかに上回る。



ここで一度完結扱いとしますが閑話は早めに投稿するつもりです。

第四部からもよろしくお願いします!


浅き夢見む氏

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