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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第三部:周り全て変わるとして、変わらないものがあるとしたら<曇の奇術師編>
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第6章曇脈展開«クラウド・アクセス»part2

私には嫌いな奴がいる


「妹龍・・・相手は人だよ?」

「にいさまがこやつと遊べといったのであろう?」

「・・・ひどいぞツンデレ」


黒衣の剣士カラスは私の下でぐげえと呻いた。

義龍が駄目だと言っても譲れないものは譲れない。


「どうせもうすぐこやつと外に行ってしまうのであろう?」

「ははは・・・言っただろう?もう妹龍も大人なんだから」


里守護の任が終わり龍人の郷に帰ってきた私はつい最近成龍として認められ大人たちの仲間入りを果たした。

これからは外敵の心配も少ないし兄とゆっくりしようかと思っていた矢先のことだった。

いきなり兄がカラスと一緒に旅に出るといい始めた。


もちろん兄は皆に止められた。

龍たちは防衛はどうすると

龍巫様は龍が人の中にいて元は龍人だとばれたらどうするのかと

私はただ行ってほしくないと


それからというもの兄はずっと反対してくる者達と話し合っていた。

ずっとずっとずっと

時がたち月が周期を一周して龍たちが折れた

季節が変わり龍巫様は龍の姿を解かないことを条件に許可した

季節が一巡し・・・・私もついに折られた


だって大人になったんだから自立しろといわれれば従わざるを得ない・・・ずっとずっと兄様は私の側にいてくれたのだから

大人になった私が今度は兄様がしたいことを応援しなきゃいけないんだから


でも嫌いなものは嫌いだ


「妹龍・・・カラスに最後のお別れをしておきなといったはずなんだけど?」

「だから、人生最期の別れの挨拶をしてやったのじゃ」

「くうっ・・・・でもツンデレさいこうだっ・・・・」

「ふんっ!」

「ぐえええ」

「君たち二人の仲はとことん駄目なようだな・・・」


龍の姿で義龍はため息をついた。

カラスを踏みにじりながら私は聞く


「にいさま・・・最期に一度だけ人間体に戻ってくれんかの?」

「・・・しょうがない」


義龍が懐かしいにいさまの姿に戻る・・・わたしも人の姿をとってその胸に飛び込んだ。

にいさまはわたしの頭を優しくなでてくれる。


「大きくなったなあ・・・もう同じくらいあるんじゃないか?」

「にいさまは変わらんの」

「成龍になった者は人間体の姿はそれほど大きく年をとらなくなるからな・・・妹龍もしばらくは成長せんだろうよ」

「気にはならんがのう・・・」

「男は気にするもんなのだよ・・・・・元気でな」


にいさまはゆっくりと義龍になると翼を広げた。

・・・そして私が腹いせにぼこぼこにしたカラスを背負い揚げた。


「どれぐらいかかるのじゃ?」

「そうだな・・・公国の勇者選定大会に参加して・・・カラスの妹分のシスターを取り戻しに行く・・・ま、龍の寿命は長いんだから会おうと思えばいつか必ず会える」

「にいさま?」

「う・・・できるだけ帰れるようにする」


義龍は目線をそらした。

そんな彼の背の上でぼこったはずのカラスがニコニコしながら手を振ってきていた。

・・・やっぱり最期まで気に食わない


「じゃあ、、、元気で」

「早く帰ってくるのじゃ・・・だからカラスは早く死んでくれたも」

「兄さんはできる限り早く返せるようにするから・・・・ごめんな、今の俺には義龍の力が必要なんだ」


カラスに吐き捨てた言葉に対してカラスが出した答えは謝罪の言葉だった

・・・謝ってくるくらいなら、にいさまを連れて行かないでほしい


「じゃ、、、目指すは公国だ!」

「妹龍、、、次に帰るときは渡したいものがある」

「今くれなのじゃ」

「・・・・・・・・楽しみは取っておくものだよ、可愛い可愛い妹龍。」



義龍が飛び上がる

上昇気流をつかみ空へと上がり・・・いつの間にか雲に入り見えなくなった

これが・・・・私とにいさまが最期に話した会話のすべてだ。

にいさまは二度と私の元には帰って来なかった。








「さあ、、、いこうか!」


桜ができる事は

魔力や雲を放出することができる実体を持った霊的存在としてどこでも出現できること

後は俺に自分の視界を移したり魔力を譲ってくれたりできる


桜がまずはとばかりに俺がこっそり渡しておいた『常識外』を構えたまま魔喰龍へと剣を振るう。

しかし魔喰龍は触れてはまずいと知っているから桜の鞘に触れることなく彼の体を一刀両断した。


「そしたら隙ができるか」


魔喰龍に俺はチャンスとばかりに近づき『葉擦れ』突き出す。

しかしその剣はもう届かない。

『鳥の眼』に映るのは俺を後ろから斬ろうとしている魔喰い龍


・・・を蹴ろうとしているメイドさん。


「失礼」

「!?」


女の脚とは思えない速さの蹴りが何発も叩きこまれ魔喰龍は再び空に打ち上げられる。

剣術では正直勝てそうもないが三人がかりなら戦えるぐらいは出来そうだ。

桜が再び俺の元に現れ、メイドさんもすたりと降り立つ。

取り敢えず戦いにはなりそうなので一安心だ。


「ふう」

「マスター、、、お体が?」

「・・・んなことあっかよ」


魔喰龍は既に起き上がろうとしている・・・一人分の攻撃力じゃ足りないな

確かに魔喰龍の体にダメージを与えるだけなら問題ないが決め手に欠ける。

流石に俺の体力もギリギリだし龍と持久力で張り合えるとは思えない。


「桜・・・連結押し込み突きで仕留める」

「となると私が抑え込む役割ですか?」

「そうだ、、、任せていいか?」


メイドさんは答えを言う前に既に行動している。

魔喰龍が動く寸前に顎を蹴り、腹に掌底を流れるように展開する。

そしてふらついた龍の腕を掴み上げ一声


「背負いますね」


背負いますねと軽く言った瞬間天地が逆転。

大したことないように彼女が体を返した瞬間魔喰龍に一本背負い。

龍が軽いはずがない魔喰龍が地に着いた瞬間地面が揺れに揺れ揺れていく。

地に入る地割れ

龍の体重も原因の一つだが間違いなく彼女が『力をこめて』叩きつけたからだ。


「行くぞ桜!」

「ああ!」


『内在型身体強化』を加えることで上空に飛んでいた俺は『葉擦れ』に魔力を込めながら、同じく魔力を込めている桜に声をかける。

下では既にメイドさんが待っている。

ここまでお膳立てされて・・・女の前で恥ずかしい真似は出来ないよな


「「『連結押し込み突き』!!」」


硬い感触を間違いなく貫く感触

『葉擦れ』が壊れるわけがない・・・遂に龍の鱗を貫いた。

飛び散る黒い黒い液体の塊

気を失いかけていた魔喰龍が初めて苦悶の声を上げる


「ぎらららっららっら!?」

「手伝います」


メイドさんがかかとを振り上げ、『葉擦れ』を押し込んでる『常識外』に振り降ろす

更に加わった剛力が『葉擦れ』をさらに押し込む。

耳障りな悲鳴がさらに増していく。


「決めてやれ、もう一発だ!」

「一発・・・・じゃあ三発行きましょう」

「俺の眼の前でそんな凶器みたいな足をぶんぶん振り回さないでくれ!」

「いいじゃねえか、デビューは派手じゃねえと!」


ドン!ドン!ドドドン!


遂に根元まで剣が貫通する

悲鳴が鼓膜を破るかと思うぐらい大きすぎてキーンと鳴る

でも、、、、最高だ


「マスター、後は・・・とコイツは化け物ですか?」

「「!?」」


メイドさんが俺と桜を抱え上げ急に移動した。

急に移動したせいで首が痛い・・・文句を言おうとしたがそれどころでもなさそうだ

魔喰龍は既に立ち上がり刀を構えてる

出血もいつの間にか止まっていた。


「・・・ダメージはあったんだよな?」

「ええ・・・でも体の血液が止まってるというよりは操作されてますね。」

「本当になんなのあいつ?キチガイすぎる・・・」

「おい今お前なんつった?」

「ナニモイッテナイヨ」

「M・Mは今、マスターとあの龍が同じ存在だと思っていたようです」

「裏切り者!」

「ほう、、、」


俺が笑顔で桜をNiceboat!しようとしていると遠くから俺達を怒る声が聞こえてきた。


「サクラ!いつまでくちゃくちゃ喋ってるんだ!『葉擦れ』を奪われてるんだぞ!」

「水龍の『流態操作』まであの龍は使いこなしています!これ以上成長させてはいけません!」


シノンも龍巫様も遊んでるような俺達の戦い方を怒ってる。

・・・まあ、確かにやり過ぎてっかな?

言われた通り魔喰い龍の腹に『葉擦れ』が食い込んでるせいで武器がない。

魔術が使えないのは変わらないからこのままでは俺がいらない子になってしまう。


「マスター、私が仕留めていいですか?」

「・・・・・まあ、いいよ」

「サクラ!?」


メイドさんはふっと掻き消えると魔喰龍の後ろにそのまま立つ。

乱撃、蹴撃、殴蹴、殴撃、頭突撃、掌底、踵撃、、、ありとあらゆる打撃が叩きこまれていく。

スカイやスーザ先生をどこか彷彿させる天才的な体の使い方

そして恵まれた身体能力とバネ


「・・・・無理でした」

「「えええ・・・」」


なのにすぐに戻って来た。

魔喰龍は傷が深くて動けないようだが、今のメイドさんの攻撃だけは効かなかったようだ。

メイドさんはなんかしょぼんとしている


「まあ、、、、俺よりは役に立ってるよ」

「M・M・・・ありがとうございます」

「桜、、、お前本当に良いやつな!」

「いい加減コントは止めないか!」


シノンがぶ千切れはじめた・・・・


「あ、マスター・・・私の名前決まりました?」

「あ~やっぱり秋の花かな?」

「桔梗さんいるし冬の花にしとけよ」

「あ~やっぱ・・・「サ~~~~~ク~~~~~ラ~~~~!!!」・・・後でいい?」


シノンがめっちゃこっちを睨んでいる。

てか肌がピリピリする・・・何?殺気?


「よし・・・・そろそろ真面目にやろうか」

「「う、うん・・・」」


似た者同士が揃うとなんか楽しくなってしまう。

たとえ戦闘中でも・・・・ていうか今まででは信じられないくらいの余裕の持ちようだな

今までの修行のせいかってのもあるけど・・・やっぱり三人で闘えるってのはデカい。

何が出来るか聞いたときは本当にビビったが・・・・







「え?雲が出せない?」

「はい。私とマスターは違う存在ですので、、、というか魔力も出せません」

「・・・・まじかよ。俺から出てきたっていうなら俺と全く同じ魔力を持ってるだろうし、『嵐曇魔術≪スーパーセル≫』も出来ると思ったのに」


斬龍とサニアを抱え上げ道を走る最中、メイドさんに何が出来るか聞いてみたところ予想外の答えが返って来た。


「そもそも私を作った人は頑固者でしたから」

「学生服・・・桜と同じで融通効かねえな・・・」

「っ!・・・悪かったよ」


メイドさんに担ぎ上げられた桜が拗ねた声を出す。


「でもM・Mはとてもいい人です。龍の魔力と暴走魔力を全て肉体に使ってくれたから私は多分龍よりも速く強く動けます」

「・・・そのスピードで動かないでね?(震え声)」

「暴走魔力を体に?・・・魔力との親和性が高いのか?」

「ええ、もしかしたら・・・・頑固者の彼のことですし元々M・Mに備わってた能力を私に魔改造してるかもしれません」

「・・・そうだな、、、もし出来るなら・・・・やる価値はあるか」




魔喰龍がついに立ち上がる。

刀を構えて牙を出す・・・

俺はメイドさんの背中に手を置いた。


「桜・・・三分・・・いや一分でいい。時間を稼いでくれ」

「無茶いうよ・・・やるけどな」

「拙者も手伝うでござるよ」

「斬龍!?アンタまだ動けたのか!?」

「倒すのは無理でござるが・・・・任せるでござる」


斬龍がいつの間にか俺とメイドさんを守る立ち位置についていた

腹部に乱暴に包帯が巻いてある・・・・息も荒い

それでもこの師匠は俺の成長を最後まで見届けたいのだろう


「私もいるぞ、、、相棒だからな」

「シノン・・・・・」


いつだって頼もしい短い髪の女の子は俺の横に立っていた。


「魔力は?」

「元々私は護衛が専門なんだ・・・一分ぐらい任せろ」

「ああ、、、頼る」

「ふふ・・・それでいいんだよ」


周りの皆が俺を見ている

何度も醜態を晒してるっていうのに・・・こんな俺に期待してる

龍巫様が俺に何か言ってる

『狂龍化』しかけで意識を保つのもやっとなはずの龍人たちが俺に手を伸ばす

サニアがヘロヘロの体を動かして『やっちゃえ』と言って笑う


「・・・・・ふひひひ!」

「『弾きとばせ』!」


魔喰龍が瞬き一つの間に俺達の警戒線を越えて来る。

でも、フェッシングである程度呼吸が読める桜ならギリギリ間に合う

突きと共に発せられる斥力が魔喰龍をつんのめらせる


「任せるでござる!」


斬龍がその間隙を狙って動く

取り敢えず見繕った新しい刀を腰だめに放つのは放った後で放たれたと分かる最速の剣技


「『zwilver&silver』」


魔喰い龍が流石に吹っ飛びその後に銀色の斬線がキラキラと

それでも魔喰い龍は手強い

悲鳴をあれだけ出す程のダメージを既に負っているというのに刀で体を守っていた。

くるりくるりと宙で体を立て直すと魔喰龍は空を駆けて来る

しかしその背には出現した桜が乗っている


「空はサクラ曰くスカイの領空らしいんでね・・・『弾き落とせ』」


背中に叩きつけられた斥力

魔喰龍はつんのめり・・・・・耐え抜く

一刀百線

魔喰龍が背中越しに放った斬線は桜を消し去る。


「なるほど・・・鱗事態が流動性を持ってるから衝撃や打撃を流すのか・・・」


魔力を慎重に練り込みながら『鳥の眼』で桜からの情報を皆に伝える

シノンがそれを聞いて眉をしかめる


「魔術も効かない、打撃もダメ、挙句の果てには剣術はこの場にいる誰よりも完成してるだと?何の冗談だ?」

「そう言うわりにはシノン、、、焦ってねえな?」

「それは・・・「悪い、行った!」・・・話してる場合じゃないか」


流石に手負いと身体強化できない桜では抑え込むのは難しい

魔喰龍は本能的に狙うべき相手を見据えたのか俺しか見ていない。


斬龍を蹴飛ばしながら

桜を斬りながら

その目は俺から離れない


「マスター、、、まだですか?」

「待て、、、コツが掴みにくいんだ・・・・いつもは自分で生み出した核を使ってたから・・・」

「一分は嘘だったのか?全く・・・」

「頼るぜリーダー!」


魔喰龍の前に立つシノンはどこか穏やかな顔で道を塞ぐ

それなのに魔喰龍は彼女を見ていなかった

残念なことをしてんなあ・・・・

今シノンは死ぬほど綺麗なのに


「『詠唱短縮:氷剣式三の型』」


彼女はそれだけ言うと剣を放った


「これは・・・・」


暇なときに剣に溜めてきた魔力を全て放出し、目の前の敵をオーバーコールドする。

剣に記載された全ての魔術が剣から自動(オート)詠唱(ロード)されていく。

そこはちいさなちいさな『氷』の『術式』の『森』


魔喰龍は

ある時は空を飛び

ある時は剣で受け

ある時は剣の腹で弾き

ある時は凍った鱗を流動させ凍りつかないようにし


氷の道を抜け切る

シノンは敢えてそれを妨害しなかった。

ずっと目をつむりメイドの背に手を付けたままの青年はそれを見てにやりと笑う。


「問題ないだろ?」

「ああ、、、さすが俺の相棒だ。」

「マスター、、、派手にお願いしますね?」

「分かってるよ・・・・そうだ、お前の名前決めたぞ?」

「え?」

「『椿』。異世界風にいうならツバキか。」

「マスター、、、、絶対にあなたを皆に肯定される主人公にしてみせます」

「期待してるさ・・・『曇よ』」


ツバキの体が四肢から崩れ去っていく

そしてそれが黒雲へと変わっていく

魔喰龍がそんな俺達を馬鹿めと嗤う・・・そしてその足は立ち止った。


「黒雲が・・・魔喰龍に吸収されない?」


龍巫様があり得ないと首を振る

龍の咆哮ですら吸い込まれたというのにあんな黒雲だけが吸い込まれないなんてありえない

そんな顔をしている


そのとおり

これが吸い込まれないのは訳がある


元々桜の本質能力は自分を核にして雲を作らせる力だったらしい

それを魔力供給バイパスやら鳥の眼やら実体化やらを詰め込んだせいで失われてしまったが。

ではもしその能力があったとして・・・何故学生服は勝てたといったのか


生じた黒雲は周りの魔力全部巻き込んで黒雲をさらに巨大化させていく


魔力は操作に力を取られるせいで本来の威力の三割以上出すことは出来ない

所謂『魔力三割原則』

これを克服するために生み出されたのが『連結魔術』

一人が魔力を出すことに専念し、もう一人は操作に専念

それによって魔術の質、威力、規模のどれもが爆発的に向上する


要するに

それとは違うやり方で『魔力三割原則』を克服するのだ。

人の手での操作が難しいのならコンピューターを搭載すればいいじゃない。

箸で豆を掴むより手で直接取った方が手っ取り早いぜと言う勢いなこのやり方

つまり黒雲自体を生物化してしまうといっても過言ではなかった。


―マスター、こちらは準備万端です―


頭の中に直接ツバキの声が響く

黒雲が俺に向けてピースサインを形作っていた

・・・なんていろいろしまらない能力だ。


「おっけ、限界まで魔力を吸い込んだら始めてくれ」


黒雲はグッとオッケーサインを形作るとさらに巨大さを増していく


ツバキは雲の中で生きている

だから彼女は自分のことのように

黒雲がどうなってるか

黒雲のどこが吸収を受けそうか

黒雲のどこの完成度が甘いかを感じ取れるし


ツバキは黒雲そのものだから

黒雲を吸収されるなんて甘い黒雲の形成はしていない

俺やアリアでも把握できないレベルの精密操作を片手でしてしまえる

出来る雲の操作量が増していく

彼女は『嵐曇魔術≪スーパーセル≫』を使う俺以上に雲を使いこなしていた。


『補助する鬼才≪サポート・ギーニアス≫』

サクラ=レイディウスが『誰かを救う』『主人公』でありたいという願いに応えるために生み出された存在

暴走魔力と龍の魔力をミックスしたことによる超筋力と超スピード

雲の親であるアリア以上の雲との同調による高精密な魔力操作


まさしくサクラ=レイディウスの『出来ないことを出来るようにする』存在

そして女性である理由は


・・・サクラが女性の前だとどれだけ苦しくても頑張れるから

・・・サクラが女性を守るためなら非情になれるから

・・・サクラが女性の心を理解できないから

・・・サクラが強がりを止めて、、、主人公であれるかと迷うこと無いように


常にサクラの側に女性がいるように



「・・・余計なおせっかいだ、『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』」

―了解、マスター。―


黒雲がサクラの周りに集中していく

魔喰龍は自分の存在意義が失われぼうっとしてしまっている

インモラルは今まで黙って様子を見ていたがようやく声を張り上げる。


「何をしてるのです、魔喰龍!早くそのイレギュラーを止めなさい!」

「!?・・・・・ぐるるるるるっ!」


笑いも余裕も失って、、、本能のまま魔喰龍は刀を振り降ろす。

しかし今までならともかく完全な黒雲は魔喰龍の刀技ですら切り裂けない。

何度も振り降ろしてるうちに刀の方が駄目になった。


「・・・・・・・ふひひ!」


魔喰龍はいきなりサクラから距離を取り始める。

龍たちだけが何をしようとしてるかに気付いた。


「「「今すぐ逃げろ!」」」


龍たちはそれぞれ怪我を負ってるにも関わらずそれぞれ近くの人間を抱え上げ遠くへと避難していく


「スカイ!何なんだ!」

「あやつ・・・水龍から奪った魔力を全て『魔喰龍の咆哮≪ドラゴン・ブレス≫』にして放つつもりじゃ!」

「そんな、、、、サクラが!」

「今は自分の命を心配せい!」


魔法陣級を重複させたことにより世界が割れるかと思われるほどの地割れが走る

魔喰龍は体を本来の大きさに戻し、顎を開く。

そこから生まれる全てを虚無に返す破壊の光。

黒雲を薙ぎ払う光の光線。


「・・・・・・・皆、私の後ろに!」


龍巫様が巨大な魔法障壁を展開した瞬間、その障壁が歪む

光が空間を埋め尽くし


国が一つなくなった


いわばそれは核爆発のようなもの

咆哮と言うよりは暴走


ただ魔力が蹂躙し暴れ回り残ったものすら残らない


「・・・・・・ふひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!!」


魔喰い龍がなにもないまっさらな土地の中心で笑い声を上げる


「ほう、、、、よほど面白いことがあったようだな・・・俺もまぜてくれるか?」

「!?」


黒雲がエネルギー全てを丸ごと吸収しきっていた。

そして爆発的に膨張していた


空間全てが黒雲で埋め尽くされていた

まるで世界が闇に包まれたかのように

黒雲が作り出す闇の世界


サクラの声が響き渡り初めて皆が気づいた

ああ、魔喰龍が出しかけただけで・・・イメージだけで皆一度死を体験したんだ


そして今も現実がどうかわからない


あれ以上の恐怖が私たちを縛っている


魔喰龍が牙をむく


知能を持ちつつある彼が目を向ける先に


水龍の魔力全てを吸い込んじまった有り得ないほど巨大な黒雲が

何かに集中し集まっていく

再び世界が光を取り戻し、、、そこにあるのは破壊される前の龍人の郷


「ぶはあっ・・・・体が熱い・・・熔けちまいそうだ」


静脈が黒く染まっている

圧縮し凝縮された黒雲が毛細血管を流れている。

あまりに濃いから吐き出す息にまで黒雲が混じる


ずどん


あまりの重量をたった一人の人間の体に押し込めたから


一歩踏み出しただけで


地面に大きな地割れが起きる



「・・・・・・・」

「ぶはああああああっ・・・・・どうした?俺の息から出る魔力ぐらいならお前でも吸収できるだろ?」


黒雲を吐き出しながら、身体中を黒い血管で埋め尽くした彼はまるで別人のように笑う。


「・・・すごい」


シノンがこれがサクラなのか・・・・とまるで憧れの騎士を見る姫のような目を向ける


「『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』・・・身体中に雲を流し込むことによって『内在型身体強化』よりも強い身体強化を施す。・・・確かに魔力よりも雲の方が操りやすいかもしれないけど・・・・体はもつのか?」


『鑑定』でサクラを見つめるトツカは純粋に彼の身を案じている


「・・・まるで悪役ですね」


龍巫様は流石キチガイだ・・・・キチガイっぽい格好になってるとドン引きしてる。


「や、、、、やはりイレギュラー?これが運命からの刺客?・・・じゃないと彼が決戦時にいなかった理由に説明がつかない。」


インモラルは余裕を失くした表情でただただじいっとサクラを見る。

そしてはっと気づくと魔喰龍に指示を出す。


「何をぼうっとしているのです!あなたには研究の全てが加わってるんですよ!『注ぎ込め』!」


インモラルの指輪が砕け濃密な魔力が魔喰龍へと注ぎ込む。

魔喰龍の眼にみるみる精気が取り戻され・・・・むしろ今までの中で最も強い空気を纏っていた。


―マスター、今まで与えた全ての傷の完治を確認。更に今まで以上の身体能力を持っていることを予測できます。歴史に名を遺す主人公になるには絶好の相手かと―


「ぶはああああああああああああっ、、、わかってんじゃ・・・」


魔喰龍がインモラルから更に放られた剣を手に取り俺と同じ背丈になる。

・・・油断は無いぞってか?

人間と同じ背丈にならないと速さで負けると理解したのだろう


「ねえか!」

「!?」


拳を振るう

拳の皮脂汗腺から漏れ出る残像のような黒雲を遺して拳がブンと振るわれる。


地が砕け

何かが空気を粉々にしながら

拳気が龍の鱗をバッキボキに砕き貫通する


「・・・・・・ぐる・・・・」


既に意識が飛びかけてるのか?


「させるか」

「・・・・・・・・べりゃああ!?」


『穿跡ver素手』

ドリルのように巻き起こった右拳の螺旋回転が魔喰龍の肌を掠る。

ただそれだけで脇腹がほぼ丸ごと削られる


「ぶはあ・・・・・・気持ちイイか?どうだ?」


サクラとは思えない残虐性

サクラとは思えない攻撃性


「おら」

「びぎぃっ」

「ぶはああ」

「へげえっ」

「ぼ~の」

「ひぎぎっ!?・・・・ふひひひひひ!」

「!?『曇の壁≪ウォール≫』×沢山!!!」


魔喰龍が俺の高速移動と遊びによって龍の鱗を少し少しと削られていく。

それでも流石なのは魔喰龍溜め込んだ魔力を全身から放出してきやがった。


「「・・・・・・・」」


慌てて形成した黒雲で周囲への被害はほぼ無しだが、、、これから何度も戦闘中に庇う事が出来るとは思えない

魔喰龍は遂に勝てない敵を倒すために周りを攻撃することで注意を逸らすことを覚えたようだ

つまり、、、これ以上余計な動きはせずに斬られろってか?


「ぶはあああああっ!いいぜ来いよ、、、無抵抗で受けてやる」

「・・・・・・・・・ふひひひひ!」

「ばかっ!」


シノンが俺に向けて怒鳴る声

それが聞こえるころには魔喰龍が俺の前に

剣術がある桜と違い俺はあくまで『曇の奇術師』

呼吸を読んで白羽どりとかカウンターなんて出来るわけがない

何かが肌に触れ

何かが崩れていく音がした


「・・・・・・・・・ふ、、、、ふ、、、、ふひっひひひひひひh!」


魔喰龍が壊れたかのように笑う

それもそのはず


「・・・んあ?なにかしたか?」


大陸を覆うほどの黒雲がたった一ミリの毛細血管の細さまで凝縮することで形成された彼の肌を・・・・龍人の郷一の剣技程度でキレるはずがなかった


「終いだ・・・・」


サクラが根元まで掴んだ『葉擦れ』を掴む


「お前には礼を言うよ・・・俺はもう負けない『曇震伝波≪ドンシン・クロッシング≫』」


高密度

高重量

高容量


人一人に納めるにはあまりにも大量の雲が一斉に上下左右に揺れる。

そしてその揺れを高精密の黒雲操作で毛細血管を通じて細胞を伝わり


心臓

手首

銀色の篭手

指先


剣先にまで極限に集中された震動が

魔喰龍の体の中で弾ける


「・・・・・・・ふ・・・・ひ・・・・・ひ?」

「ぶはああああああああああああああああああっ、、、、終わりだ」


もし大地に放てば人が立てなくなるほどの震動・・・剣先一つにまで凝縮したことでそれをはるかに超える振動をまともに伝導させたというのに剣筋すら歪まない

『葉擦れ』の性能にも感謝しつつ俺は剣を引き抜く

魔術が効かないなら・・・魔術が起こした震動ならどうだ?


たった一つの肉体の中で

国すら滅ぼす震動が解放され

細胞レベルで砕け散る

魔喰龍が黒い粉にまで砕け散り・・・・・俺の『葉擦れ』一振りが巻き起こした風でさっぱり消えてなくなった。


「ぶはあああああああああっ・・・終了!」

「お疲れ様、、、流石主人公だ」

―お疲れ様です、マスター。この戦いはあなたの名を世界に轟かせるでしょう―


たった一人の人間が世界を脅かしかねない存在を赤子の手をひねるように簡単に倒してしまった。


それはある者にとっては英雄誕生の瞬間であり

それはある者にとっては脅威であった

それは運命と闘うもの達にとっては絶望の知らせだった


シノンにとっては熱くて自分でも分からない気持ちに何か答えを見いだせた瞬間であったし

サニアにとっては彼ならばと期待する瞬間だった

スカイにとってはただ驚くべき時であった


斬龍は教えがいのない奴と呆れるような戦い方だったし

龍巫様は信じられないとほけえっとしてした

トツカはただただ世界の広さを実感した


様々な思惑が交差し、様々な過程がそれぞれ別の結論を出させた


「俺が主人公だああああああああああああああっ!」


でもその勝鬨の声を否定する者は一人もいなかった

ツバキ(椿)をよろしくお願いします!

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