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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第三部:周り全て変わるとして、変わらないものがあるとしたら<曇の奇術師編>
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第5章過去の私を貴方は知らないpart2

「ただいま」


お母さんはまだ帰っていないようだ。

如峰月桜から強引に押し付けられたバッグを机に降ろす。

机の上には今日は遅くなるから適当に食べといてという手紙と一緒にお金が置いてあった。

毎日夜遅くまでご苦労様ですと思いながら有り難くお札を財布に入れた。

・・・たまには牛丼にしようか

近所に牛丼のチェーン店があるのでそこでよく大盛りつゆだくを買うことがある。

駅近くまで少し歩くけど、まあいい運動になるかな。


駅近くにまで行くと流石に人通りが多くなる。

時間が遅いからかカップルや友達同士など・・・いわゆるリア充達が歩いてる。

そんな人たちを見ると牛丼を持って一人歩いてる自分が妙に惨めになって来た。


綺麗な服のショーケース

小さな本屋の店頭に並ぶ女性ものの雑誌

コンビニの化粧品売り場

ジャージの私に死ねとでも言うつもりなのだろうか?


「はあ・・・」


家に帰ると本当に外出しなければよかったって後悔した。

いつの間にこんなに枯れてしまったんだろう?

年頃の女性がこれじゃあお母さんに申し訳ないなあと思いながらヤカンに火をかけ机に座る。

・・・机の上にポツンと置かれた鞄は夢じゃなかった。


「・・・・・・・・・」


鞄を開くと中にはラノベしか入っていなかった。

彼はどうやら本を貸したら学校をふける気だったようだ。

本当に生徒会役員なんだろうか?

サボったの初めてという割には罪悪感が少しも感じられなかった。

・・・次会った時は問いただしてみよう


「その前に2日後までに読み終わらないとな」


ぽつりと誰もいないのに呟いてみた。

服・・・ジャージはまずいよね?

二日の間にラノベだけじゃなくてティーンズ雑誌まで読むハメになった。



当日

慣れないヒールを履いて私は公園に来ていた。

本当に何を着て髪をどう整えれば良いのかも分からないから、、、私は初めてちゃんとした美容院と洋服屋に行って物を揃えた。


勧められたのをそうなんだと即決で買ったのはいいけど・・・ヒール痛い。

公園までは何とか歩けたけど、なんかずっと脚の腱が突っ張ってる感じがして我慢できない。


「もう、駄目・・・」


二人で座ったあのベンチまで進むことができず、少し離れた別のベンチに座った。

そして我慢できないとヒールを脱ぐ。

・・・ふう


時計を見ると後十分くらいか・・・

そんなことを考えながら約束のベンチを見た。

ん?


目をこすって

凝らして

二度見した


私より先に彼はもう来ていた。

それはいい


彼は、、、ジャージで来ていた。


駄目だ・・・近づけない

彼にとっては『ジャージ』で来れるような用事なのに、、、私はこんなに気合いの入った服で来てしまった。


こんなんで会いに行けば

なんて無様な奴だと笑われてしまうだろう

慣れないヒールを履いたせいで歩けなくなってる私を見て

どれだけ楽しみにしてたんだと呆れられてしまうだろう


私は動けなくなってしまった。

彼が時計を確認しても

彼が欠伸をし始めても

彼が約束のベンチで居眠りをし始めても

彼が夕飯もとらずに待っていても


貴方が待っているのは私です


そう言える勇気が私には無かった




「優、、、風邪?」

「・・・別に」


翌日、寒空の下で慣れない服を着ていたせいか風邪を引いてしまった私はマスクを付けて教室でぼうっと昨日のことを考えていた。

結局彼は私が裸足で帰宅しようとした時もまだそこに座っていた。

・・・悪いことしたなあ


「優のその髪型可愛いね!私も真似していい?」

「ごめん、頭痛いから話しかけないで・・・」


勝手に愛称で呼び始めた朝日奈楓を捌いてトイレに行くことにする。


「あ、私も・・」


彼女の言葉が続く前に扉を閉めた。

教室ではまた私の悪口が飛び交っていることだろう

・・・風邪気味の時ぐらい放っておいてほしい

そんなに私のことが嫌いなのか?


可愛いのに残念なことになってんのな


私に初めて可愛いと言ってくれた彼にむしょうに会いたくなってしまった・・・もう会えるわけないのに


「なあ、、、ずずっ、、、このクラスに眼鏡かけた長いお下げの可愛い女の子しらね?」


!?

声がした方を思わず見た。

如峰月桜が教室を覗きこんで私を探していた。

幸いにも私はマスクをしていたし、髪形を変えていたから私からしか彼を確認してないけど

もし私のクラスで確認されたらばれてしまうかもしれない・・・


そ れ は ま ず い !


彼に気づかれないように急いで教室に戻る。

皆が何事かと私を見てくるがそれを無視して自分のカバンから念の為にと用意しておいたすざざざと化粧用具をぶちまけた。


まずアイラインに、、、いや待て、、、チークからか?

いやいや、髪のセットもしておいた方が・・・

『別人』に見せなきゃいけないのに時間が無い!

ああ、もう!

時間がないいいいいいいいいいいい!


「優?どうしたの?」

「ちょうどいいところに!お願い、ヘアアイロンでカールかけて!すぐに!」

「え?」

「友達でも何でもなってあげるから早く!てか、お願いします!」

「は、はい!」


朝日奈楓が私の髪を手慣れた手つきでさっさっと巻いている間に私はメイクを施していく。

普段が普段だから嘘みたいに別人へと変わっていく。

教室の皆が何か妙に感心してるがそれどころじゃない!

美容院でメイクの仕方強引に習わされてよかった!

うざいとか思って本当にごめんなさい!


「あのー、このクラスに眼鏡掛けてて長「いない!!!」・・・まだ言い切ってないんだが・・・ずずっ」


眼鏡を外してるから彼がどんな顔をしてるか分からない

それでも彼の声は覚えてる

私を可愛いって言ってくれた彼の声は


彼の声を出しているぼやけた人型が私の教室に入ってきた瞬間、私は彼の前に立ちふさがった。

彼はすずっと鼻をすすると、まじかあと言った。


「このクラスで最後何だけどなあ・・・おおい、楓!」

「なにぃ?」


!?

こいつ・・・朝日奈楓の知り合い!?

まずい、まずい!!!

朝日奈楓は天然だから喋らせれば直ぐに私の事をばらす!

気付いた時には彼の肩をがっつり掴んでいた。


「・・・貴方は楓に会いに来たの?それとも女の子を探しに来たの?」

「美人さん、、、肩が痛いです」

「ゆ、、、優?」


朝日奈楓がドン引きしているがそれはどうでもいい・・・

今はコイツをどう追っ払うかが先だ!


「お、、、女の子探しに来ました、、、ずずっ」

「なら探しに行きなさい?」

「いや一応、、、楓とも話しときたいなあと・・・」

「なに?女の子探しに来たのに他の女の子に声かける気?どうなのそういうの?」

「私は気にしてないけど・・・・」

「うるさい!」

「「ええ・・・・・」」


ぼやけた視界では彼がどんな顔をしてるかはわからない。

ただ一つだけわかるのは、、、きっと公園のベンチで私に向けてくれたあの笑顔を向けてくれてはいないだろう。

彼はおぼろげな視界の中で髪をかきながらため息をつく。


「まあ、そうですね・・・出直しますわ、美人さん。・・・出来ればでいいんですが探してる女の子について何か知りません?」

「さあ、、、多分一生会えないんじゃない?」

「一生!?」


だって二度とコイツの前ではあんなズボラな格好で現れることは出来ないだろうし!

ジャージも髪もおさげも眼鏡も・・・あの時の私を彷彿とさせる要素を二度と出しちゃ駄目だ!

ここまでこじれたら絶対にバレてはいけない!

私は決意を新たに彼へつかみかかる勢いで口撃を強める。

いつもなら絶対しないし出来ない態度で


自信があるように背筋を伸ばし胸を張って

不安を悟られないように声を張り上げて

付け入れられないように視線は常に相手へ


「ほら!休み時間も少ないんだから帰って!」

「あ、せめて楓に伝言が・・・」

「そういうのは楓の親友である私を通してください!」

「お前はどこのマネージャーだ!」

「がるるるるるるるるっ!」

「ちょ!?」


半ば無理矢理彼を外に追いやった・・・やってしまった

扉から彼が自分の教室まで帰るのを確認してからようやく一息つけたが・・・

この教室の空気・・・これまで周りから敵意を向けられないように出来る限り薄く細く生きてたのに・・・あの馬鹿男ぉ!


「優?」

「・・・・・・はい」


朝日奈楓の声が私の背後にかかる。

死んだなと思いながら後ろを振り返ると・・・ふわっと抱きしめられた。


「嬉しいよ!嬉しいよ優!親友だなんて!」

「・・・(勢いなんですが)・・・」


気付けば周囲を女の子達が囲んでいた。

皆の眼にはその化粧の仕方を教えてほしいと書いてあった


「・・・いい美容院があるから教えてあげようか?」

「「「「「「「「ぜひ!」」」」」」」」


確かに彼の言う通り自分から優しくしたら自然と周りも優しくなった。

朝日奈楓がうざいぐらいべたべたしてくるようになった。

それでも、、、如峰月桜の言う通り、、、一緒にいるうちにいい影響を受けるようになった。


というか私から側にいたいと思えるようになった。

そしていつの間にか彼女の隣が心地よくなり

・・・そしてその心地よさをずっと得る為に努力するようになった。


綺麗になるために何でもしたし

同じ部活に入ったり、同じ髪型にしたり、食事制限したり

心は何度も折れそうになった

それでも如峰月桜のあの時言ってくれた、、、私を可愛いって言ってくれたあの言葉が私を諦めさせなかった。


でも・・・その言葉は彼に本当のことを打ち明ける勇気を与えてくれはしなかった。





「難問だ・・・・・・」


俺はクローゼットの前で立ち尽くしていた。

昔はジャージが寧ろカッコいいという中二病な考えでいたからどんな時でもジャージだった。

しかしそれは間違っていると幼女や人妻に言われてしまったため雑誌を参考にするようになった。

特にデートの時。


一度だけ中学の頃デートに誘った女の子に約束をすっぽかされたことがある。

あの時から、、、妙に、、、デートには特別な思いがある。

朝日奈楓の時然り、今回の白凪優子のことも然り

・・・絶対にデートは失敗したくないという思いがある。


そういえばだけど・・・同じ学校のはずなのに二度と会えなかったあの儚げな外見なのに生意気な女の子は元気だろうか?

ずっと探していたけれど、、、ガチで卒業まで会えないとは

転校とか中退とか・・・そういうのではなさそうだけど・・・もう一度会いたいなあ。


っと、、、現実逃避している場合じゃなかった。

俺は改めてクローゼットを確認した。

服は無いわけじゃない・・・しかしどの服も着回してたせいかくたびれている・・・

デートに着ていくにはどうだろうか・・・駄目だな


デートに一度失敗してるからこそ!

俺はデートでは手を抜かない!

しかし・・・・・・・・・白凪優子

鷺ノ宮高校でも屈指のオシャレ系女子。

彼女に釣り合う服装・・・・・・・・・・


「・・・・・難問だ」


今夜は眠れそうにない





「「・・・じゃーじ?」」


敢えて逆を行くかとヤケクソで着込んだジャージだったが、白凪までジャージ姿だった。


「おしゃれ番長に対抗しきるのは無理だろうから寧ろ自虐ネタになるだろうからとジャージにしたんだが・・・白凪も?」

「如峰月をおしゃれだと思ったことは一度もないわよ・・・まったく。」


白凪は頭痛がすると言って頭を抑えた


「なに?アンタの思考が全く読めない・・・何でジャージで来れるの?何で私はコイツはまたジャージで来ると確信が持ててたの?」

「・・・また?」

「っ!?」


白凪はしまったって顔で後ずさる。

・・・まあ確信持ってたっていうのは俺が可哀想な人って思ってるようなもんだからなあ

悪いとでも思ったのか?

てかいつも可哀想な人だと思ってんの!?


「てかどうするの?テーマパークこの格好で行くつもり?」

「あ~一応考えはあったんだけどさ・・・」

「何?」

「白凪に選んでもらおうかなって」

「・・・・はあ?」


白凪は何いってんのって目で見つめて来る。

・・・まあそうですよね

おかしいっすよね!


「服なんて全然分かんねえし・・・ジャージがカッコいいなんて思ってた時代すらあったぐらいだから・・・白凪に選んでもらったイケてる服で行こうかなって・・・」

「ジャージがカッコいい・・・ばかなやつ・・・」

「可哀想な目で俺を見ないでくれ・・・俺自身もなんか泣きたくなるから・・・」


白凪はばーかと一言いうと歩き出した。

す、、、捨てられる!?

慌てて彼女を追いかける。


「ちょ!?悪かったって!見捨てないでくれ!」

「はあ?」


彼女は何言ってんの?という顔で俺を見てきた。


「服、、、選びに行くんでしょ?このまま帰るのも馬鹿らしいし付き合うわよ」

「・・・白凪様ぁ!」

「ちょ!?こんなとこで土下座するな!」





買ったのはちょっと派手なロゴが入ったパーカーとジーンズ。

白凪は同じく黄色のパーカーと短パン。

勿論私の財布から出させていただきました。

金欠です、、、もうそろそろ保護者からの仕送り入るからいいけどさ


「白凪はヒールとか履くと思ってたわ、なんかイメージでだけど」

「ヒールは嫌いなの・・・なんか苦手」

「へえ・・・」


彼女と俺は同じブランドの服を着て同じブランドのスニーカーを履いている。

ただそれだけなのに・・・なんかすこしだけ釣り合えた気がする。

周りからみたら不釣合いだろうけどな


「なんかこうして並ぶと恋人っぽいな」

「死ぬ?」

「うわ、真顔で言われた・・・」


白凪の冷たい視線を出来る限り無視しながらやっとのことさでテーマパークに着いた。

特急列車のお蔭で一時間半ほどで着けたけれどそれでも既に時間は三時を越えていた。

今日ぐらいしか時間取れないからって強行で来ちゃったけど明日新人大会らしいし乗れて3か4個か。


「なに乗りたい?」

「・・・う~ん」


白凪はあんまり来たこと無いから分からないと首をかしげている。

テーマパークと言えばやっぱりライドとかの体験系だよな・・・

映像と体感的な熱や水や風を組み合わせた所謂4D

物語的な要素もあるし乗ってみて損はない。


「ジェットコースターとか大きい音が出たりとかはいける口か?」

「嫌いじゃないよ?」

「うし、、、そっち系で行ってみるか」


テーマパークのアトラクションは主に二種類にわけられてる。

有名な映画やアニメをパロったライド・・・こっちはテーマパークの目玉になるから大体内容はいつも同じだ。

その代り内容は手堅いしそのアトラクションの元ネタ話とか出来る。

そしてもう一つはリアル脱出ゲームなどの期間限定でやっているタイプの奴だ。

こっちの方は・・・やってみねえと分かんねえんだよなあ

前ゾンビを撃ちまくる系のリアルRPGをやってみたことあるけどなんか見落としてたみたいでいつの間にかアウトになっていた。

あの時のがっかり感は半端なかったからなあ・・・まああれはアレで面白かったけど


取り敢えず目玉になるヒーロー系のライド乗っとくか

白凪と二人でにぎやかな街を歩く。

休日だからか家族連れが多いのはもちろんだけど制服を着て歩く人たちも多い。

こういう雰囲気嫌いじゃないな。

白凪もどことなく楽しそうだ。


「何?」

「いいや、なんでも」


テーマパーク特有の非日常的な城や船や服装

景色や音楽を楽しみつつライドに乗ったり、シアターを見たりした。

意外と空いていたお蔭で予想より多く乗れたし、時間は飛ぶように過ぎていった。


「そろそろ帰るか・・・」

「そうね」


冬が近いのか、、、辺りはまだ五時くらいなのに随分暗い。

イルミネーションが点灯し始め、音楽も少し落ち着いたものに変わる。

人口も家族連れよりも恋人同士が増え始めている


「・・・あ」


少しいづらいなあ・・・と足早になりつつあったが白凪は何か見つけたのか足を止めた。

彼女の視線はテーマパークの雰囲気をどちらかというとぶち壊し気味な大きな観覧車だった。


いや、イルミネーションは綺麗だし恋人同士で乗るとかは分かるけど・・・テーマパークのファンシー感の中で観覧車は正直ない。


しかもキャンペーン中なのか観覧車の外張りは人気ラノベのキャラクターが貼ってあった。

雰囲気ぶち壊しだし、恋人同士で乗ると思ってんの?

運営バカなの?


「・・・(じいっ)・・・」

「白凪、、、もしかしてあのキャラクターしってんの?」

「そ、そんなわけないし!」


白凪さん、、、目線釘付けのまま言っても説得力ないっす。


「んじゃ、最後にあれ乗るか」

「べ、別にいいけど・・・」


どうやら映画化記念の記念だったらしい。

観覧車に乗る前に記念品としてプラスチックのカードをもらった。


ヒロインの顔に尻をつけながら、記念品を折角だしと開封してみた。

・・・あ

これ文化祭の時に白凪にあげたぬいぐるみのキャラクターだ。



そういえばこの『ラビラビ』ってラノベのマスコットキャラクターだったな

なんか原作知らないけど可愛いからって女子高生間で人気とか・・・ん?

てか、あの女の子に全巻上げてから読んでないシリーズのやつじゃん!

今まで忙しかったから全然チェックしてなかったけどアニメ二期どころか映画化してたの!?

ヒロインにつけていた尻をそっと退かした・・・


「白凪この作品知ってたんだな、、、ラノベ?それともアニメ?」

「・・・アニメ」

「へえ、アニメ見るのな」

「は、話が面白いから!」

「そういうのわかるわ・・・そいえば何だったカード?」

「敵役・・・二巻の」


ああ、ネタ系か・・・

ああいうのってマジ要らねえよな。

友達との話題のタネにはなるけど欲しいかどうかでいうと要らねえな。

てか人気のないキャラクターはいっそ入れないでほしい・・・いらない時はマジでいらないから


「よかったら交換するか?」

「・・・ラビラビ」


白凪はいるかどうかは返答していないが目が答えている。

俺が少し近づけた瞬間すぐに奪い去られた。

しかも白凪のカードは俺に回って来なかった・・・なんだよネタ系もありなのか

結構ガチのファンじゃないの?


「白凪・・・本当に意外だな・・・他にもアニメとか見るの?」

「これだけ」

「ふうん」


そういうのもいるのかねえ・・・俺は寧ろ他のラノベやアニメにも興味持ったタイプだからな。

興味のあるスポーツもファッションセンスも違う二人だけど少しぐらいは同じ話題があるかと思ったんだが・・・

せめて原作のラノベの方だけでも興味持ってくれたらありがたいんだけどなあ。


観覧車は期間限定のくせにえらくデカく作ってある。

一周20分らしいし、、、次第に話すことが無くなってしまった。

向かい合わせで座ったまま、目を合わせると話さなきゃいけなくなるので俺も白凪も外を向いたままだ。


「・・・むう」


チラッと彼女を見ると彼女はぼうっと外を眺めていた。

夜景の光が彼女の肌を白く照らして、いつもより綺麗に見える。

・・・本当に綺麗だ。


「・・・そういえばさ」

「うん?」


白凪が外を眺めながら口を開いた。

大方俺の視線に気づいて話題でも振ってくれる気になったのだろう。

気の利く奴だよ、全く・・・


「生徒会役員決まったの?」

「今その話題出すの?やだよ、帰りの電車気まずくなるの・・・」

「でも、いつか話すなら時間区切れる今じゃない?」

「・・・観覧車が終わるまでに結論つけようってか?」

「うん」


白凪・・・

まあ誘ったのは俺だし、、、デートで女の子の意思を優先するのは当たり前か。

一呼吸置くと体を完全に彼女に向けた。


「取り敢えずこっちの結論を述べさせてもらう。生徒会入る気ねえか?」

「生徒会・・・理由は?」


白凪は驚く様子もなく、かといって不思議とかそんな様子もなく・・・表情はどこまでも『気怠げ』

引っかかりを覚えたが取り敢えず話を進めて様子を見ることにする。


「確か白凪はこう言っていた。『俺と朝日奈楓』が仲良くなるのを見るのが許せないって・・・だけど俺個人の感情を除いても彼女も俺も生徒会には所属しないといけない・・・だから」

「監視役?」

「そうだ・・・初めてあった時みたいなあんな感じの奴だよ」

「はあ・・・・・・・」


白凪はため息をつく。

まるで何もわかってない俺を責めなじるように


「私程度で分けられるような仲なの?違うでしょ?」

「・・・そ・・・うか?」

「そうだよ・・・・私が例え生徒会に入ったとしても役割は『ただの惨めなギャーギャー言ってる人』にしかならないよ」

「そんなことになるわけねえだろ・・・」

「なるよ・・・如峰月も楓も・・・多分私なんかいてもいなくても一緒」


白凪がたてた爪が椅子のカバーに傷をつける。

ジジジジジと不快な音が・・・小さい音だけど俺の耳にはキチンと届く。


「いや、、、確かに幼馴染だけど、、、俺と朝日奈さんはそんな関係じゃ・・・」

「私は『昔のあなた』も『今のあなた』もずっと見てきた」

「!?」


そうだった・・・この娘は中学一緒だった・・・

初めて会ったあの時・・・『俺』はまだ『昔の俺』だった・・・

まだ、、、朝日奈楓の優しさで『幼馴染よりも友達よりも深くて、でも恋人じゃない』関係にいられた俺達を知ってるんだ

でも・・・


「今は違う・・・俺と朝日奈さんは今は『友達』だ」

「今は・・・ね」

「っ・・・・」


その言葉を否定できない・・・

俺は彼女に釣り合わないし、、、恋人になれないことは分かってる。

でも、、、彼女の重要NPCぐらいにはなりたいってのが俺の今の偽れない気持ちだし

生きてるかどうかはわかんないサクラと『彼女を笑顔に出来る関係』になるって約束した

それに何より・・・


白凪優子に嘘をつきたくない


「そうかもしんない・・・でも・・・俺は・・・」

「もういいよ」

「!?」

「生徒会も何でもかんでも・・・貴方の好きなようにして。」

「おい、、、しらなぎ?」

「デートもしたし、ヒントも出した。思い出してくれるかなってずっと怖いって気持ちと楽しみって気持ちが喧嘩しながらドキドキしてたけど・・・私だけだったんだね・・・・うん。これで私の罪滅ぼしは終わり」

「つみ、、、、ほろぼし?」


白凪は俺の言葉を無視して強引に話を薦めようとしている。

勝手に結論付けて俺にもその方針を強いようとしている

でも、、、なんかおかしくないか?


「生徒会入ってもいいよ・・・もうどうでもいい」

「自分で惨めになるって言ったじゃねえか・・・さっき」

「でもよかった・・・朝日奈楓と貴方が何しようと・・・もう『思い出す』ことはないだろうから」

「思い出す?なにを?」

「本当に良かった・・・もう私が何をしてもあなたたちは勝手に何とかなる」

「おい、白凪!」


肩を思わず掴んでこっちを向かせる。

強引にこっちを向かせているのに・・・彼女の眼は俺を見ていない。

顔は彫刻のように無表情で、、、全部疲れたとただ言ってるだけ。

彼女は俺と話してるようで俺と話してない。

そのまま話の流れでふと思い出したかのように外を見る。


「あ、、、もうそろそろ頂上か・・・まるで吸い込まれそう」


ああ、夜景は綺麗だな!

でもお前は何でそんな顔してんだよ!

なんで自分が我慢すればいい的な結論なんだよ!

なんで俺は君のことを何も知らないんだ!

君が何を考えてるか・・・俺の何を覚えているのか・・・俺と朝日奈楓の何を理解してるのか・・・

分かろうとしてるのに・・・なんで拒絶してくるんだ?

なんで話を終わったことにしてんだよ!


何で自分を犠牲にする結論しか出せないんだ!


「なあ、、、教えてくれよ・・・白凪のこと・・・」

「そういえばだけどさあ・・・私の生徒会のポジションどこ?書記が良いなあ・・・会議録作ってる間は黙ってても不自然に見えないだろうし」

「なあ、、、しらなぎ、、、白凪!」

「あ、、、でも二人がつき合ったら、、、一緒にいるのは辛いから、、、たまに休んでもいいかな?」

「お前のことを『全部』教えてくれ!」

「・・・『全部』?」

「『俺の知ってる』白凪から『知らない』白凪まで・・・『君だけが知っていて俺が知らない』白凪まで・・・『思い出さなきゃいけない』白凪まで・・・全部教えてくれ!じゃないと君を救えない・・・君が何で自分をそこまで『どうでもいい』と思えちまうのか・・・その理由が知りたいんだ。」

「・・・・・・・・いや」

「・・・は?」

「いや!離して!」

「ちょ!?」


いきなり白凪の眼に光が灯り俺を突き飛ばす。

・・・伊月とは違うけど

白凪も何かを俺に求めてる・・・

でも・・・・でも・・・


伊月は求めてるものを人に伝えることが出来

だからこそ自分の求めるものを俺に押し付けようとする

分かりあえた


白凪は・・・求めるものを人に強いることが出来ない・・・

自分を知られてくないと全てを自分の中に押し込めるから・・・

分かりあうことはできない


どうすればいい?

答えをくれる人はいない・・・何も言葉を出せない。

あの時伊月と分かりあえたのは・・・・・ただの偶然だったのか?

白凪を救うことは俺なんかじゃ・・・『主人公じゃない』俺じゃあ無理なのか?


「もう、、、消えてしまいたい」

「おい、、、、何するつもりだ・・・・」


彼女はふらあふらあと入口の方へと近づいていく。

運命のいたずらなのか・・・

彼女がすうっと力を込めると本来外側から鍵をかけているはずの扉が開いた。


「おい、、、やめろ・・・」

「疲れたあ・・・もうどうでもいいや・・・」

「やめろ!」


百メートル以上の高所であるためか風がびゅうびゅうと吹き込んで来る。

外を見ずとも分かる、、、ちょうど頂上付近だ・・・

こんなとこから落ちたら


死ぬ


「もう、、、疲れちゃった」


そうか・・・

分かんないけど

分かったことはあった


白凪がなんであんなに『物分かりがいい』のか・・・


自分はデートにジャージを着てこられるような女だと思ってるんだ

自分は朝日奈楓より劣った存在だと思ってるんだ

自分は楽しいデート中に生徒会とか無粋な話をされても仕方ない存在だと思われてるんだ

自分は人の為なら犠牲になってもいいと思ってるんだ


白凪優子は自分に一切『価値』があると考えてない


だから簡単に


自分の人生を終わらせようとすることが出来る

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