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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第三部:周り全て変わるとして、変わらないものがあるとしたら<曇の奇術師編>
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第4章聖女と騎士と勇者part3

第四章は無事3パートで終わります!

飛龍となってから大きく変わったことといえば背が自由に変えられるから高いところにあるものを取りやすくなったことだった。


流石に龍人の前ではなれないが今まで通り龍人の姿もとれたし・・・それにその時の私はいわゆる幼龍だったから戦う必要はなかった。

冷静になって考えてみると私の一日の過ごし方はそれほど変わってない。

義龍がいつも側にいてくれたおかげで私はようやく現実を受け止め始められ日常を取り戻し始めてたんだ。


周りから人間の友達や親はいなくなったけど・・・生龍や圧龍など友達になってくれた龍がいた。

好きなときに甘いものを食べ、好きなときに遊べる。

龍巫様は優しいし、義龍も仕事がないときは遊んでくれた。


いわゆる幼龍扱いだった私は優しい龍達に守られていた。


ある日幼龍の成長を促すために幼龍と選ばれた龍人たちが外に出る日が近づいてきた。

外は正直まだ怖かったが、義龍が護衛についてくれるというので私は里行きに同意した。

外は時に寒く時にとんでもなく暑く時に獣が里に入ってきた。


龍人達は私より弱いはずなのに寒いときは一晩中火を焚き、暑いときは遠くの湖から水を汲んでプールを作り、獣が入れば龍より先に飛び出して里を守ろうとした。

少しだけ龍人に対して抱いていた見下した考えはいつの間にか消えていた。


「にいさま、、、龍人はすごいのう・・・」

「いきなりどうした妹龍よ?」


月を二匹でぼんやり眺めているときついそんなことをぼやいてしまった。

義龍は甘ったるい香りのするパイプをふかすとまあ、そうかもなと答えた。


「弱いくせに我以上に里を自分たちで守ろうとする気概がある・・・龍に頼らずとも知恵だけで問題を解決できる・・・龍巫様はこれを狙って幼龍を郷の外で龍人たちに育てさせているのかもな」

「・・・むずかしいのじゃ、にいさまのいってる事は」

「ぷはあ・・・それはまだお前が子供だってことだよ妹龍・・・取り敢えず子供はいつか大人になったら龍人たちを守ってあげなきゃいけないってことだけ覚えとけ」


パイプを手渡してきたのでそれを吸って吐いてみた。

甘い香りが舌いっぱいに広がる。

・・・子供とはいえ煙草が苦いものだってことは知っている。

今思うとわざと甘いハーブを使ってでも大人の振りをしたかったのだろう・・・


「にいさまだってこんな甘いものを使ってるのじゃ!大人の振りをしたがってる時点でこどもなのじゃ!」

「否定はしないが・・・これでも大人として郷を守ってるのだよ?」

「でも・・・」

「まずは幼龍扱いされないように成長してこい妹龍。」

「むぅ・・・」


頬を膨らませる私の頭を義龍は優しく撫でた。

そして何かに気づいたのか里に続く道を見た。


「黒尽くめの人間の剣士?なんか怪我してるな・・・」

「にいさま?」

「妹龍よ・・・とりあえず里に戻っていろ。」


義龍がそういって、道をよろよろと歩く黒衣の剣士に向かって飛んでいった。

私はその背中をみて、、、いつかぎゃふんと言わせてやると決心した。








一ヶ月ぶりに龍人の郷の外に出た。

魔喰龍がどこから飛んできてもすぐ発見できるようにと龍人の郷入り口から少し離れたここら近辺でも高めの場所を急場の工事で平坦に馴らした所で待った。

もう下のほうは秋から冬の中間ぐらいじゃないんだろうか?

高山にあるこの場所は既に雪が積もっていて、俺は『黒曇衣≪コート≫』を少し分厚くした。


「・・・さみぃ」

「修行が足りんでござるよ?」

「体の作り方からして違うだろ・・・」


零下に達するほどの冷たい風が俺を打ち据える。

そんな環境下だというのに斬龍は銀色の鞘に納まった刀以外何も身につけてなかった。

見習えるもんなら見習いたいところだ。


「だ、、、だめ、、、死んじゃう、、、」

「サニアァ!『内在型身体強化』しないと!体から熱出さないと!」

「わ、、、私の魔力コントロールじゃ、、、無理」

「サニアあああああああああっ!」


・・・サニアが早速ギブアップしそうだ。

『黒曇衣≪コート≫』をとりあえず巻きつけておくとサニアはがたがた震えながら


「ありがとう、おにいさん・・・」


と言ってきた。


二人と相談して三人とも今回の模擬戦争に参加することになった。

龍人の代表である龍巫女様もここにいるのは負けたと判断した時に速やかに龍人の郷全体に降伏命令を出すためだ。

そんなわけで今ここにいるのは俺にシノンにサニアに斬龍と龍巫様だ。


「・・・スカイはまだか?」

「まだ約束の刻限は来てませんし、最悪時間が過ぎそうなら召喚します。」


俺が心配になって聞いてみたが龍巫様は特に気にしてないようだ。

斬龍もふんふんと鼻歌を歌う余裕があるぐらいだ。

・・・流石龍だ、胆力が半端ない。


「あ、来たようですよ?」

「ほう、、、この一か月魔力をずっと溜めていたようでござるな」

「「「!?」」」


空気が重い、、、ある程度強くなったからこそスカイの強さがよく分かる・・・

一か月魔力を溜めてたってのはガチみたいだ。

スカイは巨大な龍の姿で地に降り立った。


「これが、スカイの龍形態・・・」

「お姉さんが龍だってのは知ってたけど・・・漂う魔力だけで気圧されちゃいそう」


スカイの龍形態を見たのは初めてな二人はただ茫然とスカイを見上げた。

スカイはそんな二人をチラッと見ると俺の方へ鎌首を向けてきた。


「現実を教えてやったはずじゃが・・・何故お主はここにおる?」

「・・・教えてもらったからこそここにいるんだよ」

「足手まといになっても助ける余裕はないぞえ?」

「・・・・・・分かってる」

「ふん」


飛龍は鼻を一度鳴らすと今度は斬龍の方を向く。


「龍刀か・・・お主もなかなか本気のようじゃな?」

「拙者はただ刃を振るだけでござるからな・・・鍛えるところは武器のグレードだけでござるよ。それに・・・」

「それに?」

「良い弟子のお蔭で鈍っていた勘は取り戻せたでござる」

「・・・そうかえ」


斬龍の刀の大きさは俺の『葉擦れ』より少し長いぐらいだ。

斬龍はつまり、魔喰龍と人間と同じ背で闘うつもりのようだ。

スカイが出来る限り体を大きくする方向で闘うのとは正反対だ。

・・・と、ここで龍巫様が何かに気付いたのか顔色を変えた。


「皆、、、水龍の回線から連絡が来てます」

「・・・精神世界に来いという事でござるか?近くまで来ているなら会いに来れば良いのに」

「取り敢えず精神世界で話し合うのじゃ」

「分かりました・・・繋ぎます」



龍の魔力が通ってるせいかまたもや俺まで呼び出された。

場所は・・・どこかの一室?

石で殆どの家具や家屋が作られてる・・・一体どこだ?

魔喰龍の姿はなく、いるのは椅子に足を組んで座っているインモラルだった。


「一か月ぶりですね」

「・・・ええ」


龍巫様が頷くとインモラルはぷっくらと下唇を指で軽くなぞりながら艶やかに笑う。


「模擬戦争なので開戦の前にご挨拶をと思いまして」

「それはどうも・・・」


インモラルがお座りになられてはと椅子を示すが皆断るので彼女はそうですかと残念そうにいう。

・・・相変わらず芝居がかってんな

癪に障る態度にイライラしてきた。


「さっさと始めようぜ」

「その前に確認しませんか?」

「確認・・・ですか?」


そうですとインモラルは大袈裟に頷いて、手をぱちんと鳴らす。

・・・龍の間をつなぐ精神世界なはずなのになんでコイツはこんなに使い慣れてんだ?

インモラルが指さした先には彼女の手によって召喚された一枚の羊皮紙が広がっていた。

えらく達筆で描かれてる。


模擬戦争条項

一、魔国側の戦力は魔喰龍一匹である

二、龍人の郷側の戦力は限らない、但し『龍巫』は参戦出来ない

三、魔喰龍は龍人の郷最高権力者『龍巫』が降参を認めるまで『龍人の郷』への攻撃の手を休めることはない

四、龍人の郷側が魔喰龍を倒せた場合、魔国は二度と龍人の郷に干渉しない

五、魔喰龍の龍人の郷への攻撃はこの条項が承認されてから五分後とする

六、今回の模擬戦争はあくまで『龍人の郷』に『魔国』の力を示すものである


「・・・偉く紳士的なんですね」

「ええ、魔国はあなた方から信頼していただかないといけませんから、、、その上で従属していただきたい」

「・・・分かりました」


不意打ちもしない、後から文句をつけない、伏兵もいない・・・それをワザワザ明文化してきた。

・・・反対することは何もない。

龍巫様がこの条項を受けるといった瞬間、インモラルは大袈裟に宣言する。


「では、、、模擬戦争を始めましょう」





精神世界から戻るや否や龍巫様が指示を飛ばす。


「後、五分で開戦です!皆さんお願いします!」

「「「「「ああ!」」」」」


それぞれ刀や剣や杖を抜き放ち、魔力を高ぶらせる。

飛龍が気合を入れるためか大きな振動を伴うぐらい強く尾を地面に打ち付ける。


「「「「「「・・・」」」」」」


空気が静まり返る・・・寒さもいつの間にかすっ飛んでしまった。

シノンがいつかインモラルにされた侮辱を思いだし、、、今度は好き勝手言わせないと気迫を高める。

魔術師であるサニアは杖を構えたまま静かに目をつぶっている。

スカイはかつての雪辱を思い出したのか牙をむき出し唸る。

斬龍は刀の波紋を眺めながら楽しみだと歯をむき出しにして笑う。

龍巫様が心配そうに俺達を見つめている。

俺達の体のことを心配してるんだろう・・・そういう人なんだ。


右手に構えた『常識外』そして左手に構えた『葉擦れ』

この二本で俺は自分の大事な物を護ってみせるし、、、立ちはだかるものは全部まとめてブッ飛ばす!

深呼吸を一度して、、、目を開けば後十数秒の時間しか残ってない。


10

「『内在型身体強化』」

9

「サクラ、、、いつの間にそんなに・・・」

8

「ふん、少しはマシになった様じゃな・・・」

7

「できれば最初からそれぐらい本気でかかって来てほしかったでござるよ」

6

「怪我だけはしないでくださいね・・・」

5

「大丈夫、、、『皆』私が治して見せる」

4

「私だって、、、『覚悟』はもう決まってる!」

3

「・・・そういやだが、フェデラで闘うのって久しぶりだな」

2

「「「・・・・・・・・・」」」

1

「ははっ、だんまりかよ・・・」

「時間です!」

「気を引き締めるでござるよ!」

「あいつはいつも不意打ちばかり・・・(小声)」

「シノンの気持ちちょっとわかったかも・・・(小声)」

「・・・」

0


「来いや、魔喰龍!!!」









「・・・・・・・・・・・・・どっから来るんだ?」

「「「「「さあ?」」」」」


大きく叫んだ俺の声が虚しく山々にこだまする。

これもう一回叫んどいたほうがいいか?


「来いや、魔喰龍!!!」


・・・待っても待っても魔喰龍のまの字も見えてこない。

空気が張りつめているだけになんか俺が悪いことしたみたいな感じに思えて来る。

なに?なんなの?

五分後って言ったじゃん!


「龍巫様!先方はどこにいらっしゃるか分かる!?」

「いえ、、、なにか妨害術式でもかかってるのか、、、どこにいるかはさっぱりです」

「たく、あっちが指定してきたんだから時間ぐらい守れよな!営業の世界なら絶対してはいけないミスだぞ!」

「「「「「・・・(営業?)・・・・・」」」」」

「だいたい主人公が叫んだら来るのが常識・・・・うおっ!?地震!?」


俺達のいる地面がガガガガガガとすさまじい勢いで揺れる。

あまりの揺れに身体強化が出来ないサニアがコロコロ転げ回るぐらいだ。

地震によってあちこちの高山から雪崩が起きる。

暫くして、、、収まった。


「すごい地震だったな・・・」

「こんなに転げ回ることになるなんて・・・ひ弱すぎるよ、私ぃ・・・」

「サニア、、、大丈夫か?」

「おかしいな・・・」

「おかしいですね」

「おかしいでござる」


龍たちがおかしな現象が起こったと判断した。


「え?なんで?」

「ここの山々の地盤は龍があちこち掘りまくっても崩れないほど強固な地盤で出来てます。」


龍巫様が訝しげな表情で説明してくる。

・・・たしかそんな説明聞いた覚えはあるけどそれがどうした?


「だからここ何百年にわたって地盤が崩れたことはなく、、、当然地震といった災害が起きたことは一度もないんです」

「・・・つまり?」

「何者かが地盤を滅茶苦茶にしている・・・はい、木龍ですか?はい、、、やはりそうですか・・・条項をよく読んでおけばっ!・・・了解です、他の龍は全て避難を優先させてください。」


テレパシー的な本質能力なのだろうか、、、龍巫様は突如入った連絡を聞くとすぐに行動を開始する。


「飛龍、斬龍、、、、今すぐ中心街に飛ばします」

「「分かった」」


龍巫様が手をかざした瞬間、龍二匹が掻き消える。

・・・あの時のワープゾーンでも通ってんのかな?

てか、、、中心街に飛ばしたってことは・・・


「皆さんの中で全員を出来るだけ速く運べる術式を持ってる方はいますか!」

「俺でいいなら・・・」

「私が案内します!すぐに中心街へ運んで下さい!」


雲の道にみんな飛び乗ったことを確認しすぐにフルスロットルで押し出してもらう。

龍巫様が示した方向にぐいぐい道を伸ばし加速していく。


「なあ、どういう事だ!」

「条項は一見紳士的に見えますが、実はだますための道具だったんですよ!」

「ああ!?」

「魔喰龍を龍として認識してなかった私たちの責任です・・・龍なら地面を掘って移動することも・・・中心街の場所を調べることも出来る・・・」

「まさか・・・」

「もう、魔喰龍は『龍人の郷』の『中心街』を襲ってます!」


トーリとトツカが、、、まだ街の中にいるんだぞ・・・・





魔喰龍が滅茶苦茶に掘り進んだのか、正規のルート地盤崩落で使えなくなってたりしていて予想以上に時間が掛かった。

そして辿り着いたころには・・・


「ひ、、、ひどい、、、」


シノンが思わず手で口を抑えてうずくまる。

サニアが思わずふらつきながら後ずさるのを支えながら・・・俺は眉をしかめた。


龍の咆哮が直撃したのかあちこちの建物が『消失』している

龍宮殿も何度もくらったのかあちこち穴だらけだ

復旧するよりも新しい土地を探した方がいいのではと思えるぐらい主要な建物は殆ど壊され、煙を上げていた。

龍巫様は怒りを必死で噛み殺しているのか何もしゃべらない。


「お~い、サクラ!」

「あれはトツカ?シノン、サニアを頼む」

「・・・ああ」

「『動く曇道≪オート・ステップ≫』!」


遠くから手を振っているトツカを見つけたので、雲の道を彼の方へと伸ばす。

空を駆け彼の元に降りたつ、トツカの顔は煤だらけだった。


「大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だけど・・・家が」

「・・・まじかよ」


トツカが立っていた場所は『元』彼の家だった。

魔喰龍の龍の咆哮をまともに受けたのか、家財道具も何もかも全て燃やされていた。


「トーリは?」

「たまたま外に出てたから平気だ。今は龍宮殿に避難させてる・・・でも家にいた親父とお袋は・・・」

「ごめん・・・出しゃばらずに中心街に残ってればこんなことにならなかったのに・・・俺が食い止められたかもしれないのに・・・」

「・・・いや、俺達龍人が弱かったのが悪かったんだ」


男はこういう時に涙を流すことが出来ない・・・目の前に男友達がいればなおさらだ。

トツカが煤だらけなのは、、、形見になりそうなものを全部燃えてしまう前に確保しときたいって思ったからだろう。

まだ咆哮の熱も引き起こされた炎も消えてないはずなのに、家を探ってたからか彼の手は酷いやけどを負っていた。


「サニアに治癒魔法をかけてもらおう」

「いや、、、それよりも早くあの龍を倒してくれ・・・仇を討ってくれ・・・」


トツカは首を振って俺を見つめた。

目に浮かぶのは炎・・・灼けるような炎・・・


憤怒や悲しみを

ごちゃまぜにして

燃やしてギラギラしている目だった


こんな目を見たら断れない


「分かった・・・魔喰龍はどっちに行った?」

「あっちだ」


トツカが指さしたのは中心街と外部をつなぐ迷路の一本だった。


「悪い・・・全部終わったら手伝いに来る」

「・・・・・頼む」


再び龍巫様達がいる場所まで雲の道を伝う。

空から見ればまだあまりに多くの龍人たちが慌ただしく行動していた。

逃げ遅れた龍人たちを救助していたり

避難している真っ最中だったり

もう、、、動かなかったり


「クソッ、、、インモラルめ・・・・」


唯一の救いはスカイと斬龍があの龍を出来る限り遠くへと戦場を遠ざけてくれてることか

この中心街『では』これ以上被害は拡大しないだろう。


救助よりもまず・・・・魔喰龍を一刻も早く止めねえと・・・

まだどこかで龍同士がぶつかり合っているのか地震があちこちで起こってる。

ほっとけば地盤が崩壊して中心街丸ごと潰される・・・


「龍巫様!あの洞穴から魔喰龍達は移動してったらしい!どこにいるかわかるか!」

「だめです!魔喰龍のジャミングがかかってるのか、飛龍達とも通信が効きません!」

「マジかよ・・・・」


全員で彼らが入ったとされる洞穴の前に立つ。


「どうする・・・ここに来るまででもかなり道に迷ってんだぞ?中は四方八方滅茶苦茶に掘り進められてるわ、あちこち崩落してるわでとてもじゃないが入った所で追いつくどころか迷子がオチだ!」

「・・・せめて現在の居場所が分かれば」


時間が惜しい・・・今この瞬間龍たちが戦ってるのだ。

相手は既に一匹龍を倒してる・・・二匹でも危ない・・・


「『曇感知≪サーチ≫』で探るか?」


一度は考えた方法だ。

道という道を雲で埋め尽くせば、魔喰龍が魔力を吸収するから大体の場所が分かる

ただ・・・どれぐらい魔力を消費すれば魔喰龍を見つけられるか分からない。

この龍人の郷全体の通路は分かってるだけでも二千近く・・・実際の数はそれ以上。

幾ら疑似暴走魔力で効率的な運用が出来るとはいえ、、、俺一人の魔力でも足りるかどうか・・・

桜からも魔力全てをもらえば出来ない事はないが・・・そしたら桜は意識を失うから戦闘中のサポートは無し。

魔力がほぼ枯渇に近いままで闘わなきゃ行けなくなる。

・・・でも、時は一刻を争う


「・・・迷ってる時間はないか」


手を伸ばす・・・黒雲を創り出すため核を創り出す。

そして魔力を充填しようとして、、、俺の手は細い指に包まれた。


「・・・シノン?」

「頼ってくれ、、、そうすれば私は何でもできる」


シノンが俺の眼をまっすぐ貫いてきた。

・・・頭の中を占める焦りがすうっと消えていった。

そうだな・・・困った時こそ相棒に相談するべきだよな。


「龍たちの居場所が大体分かればいい・・・何とかなるか?」

「ああ」


シノンは俺の問いに頷くと剣を抜き、洞穴の前に立った。

シノンは洞穴の前に立ったまま振り向くことなく声を出す。


「サニア、、、いいか?」

「うん」


サニアは後ろから近づき彼女の背中の紐を解く。

そしてシノンの胸の鎧を取り去る・・・・その瞬間シノンの魔力が爆発的に増え、魔力の質が攻撃的なものに変わる。

シノンが剣を構えて宣言する


「『詠唱短縮:氷剣式二の型』」


紅い剣が青く染まる。

剣を振る度に巻き起こる気流が氷の魔力で青く染まり、、、洞穴の中へと流れ込んでいく


「『氷剣・氷河』」


氷のオーラが洞窟の奥へと次から次へと流れ込む


「『氷剣・氷河』」


重複された術式がさらに多くのオーラを洞穴の中へと注ぎ込む。

道という道に冷気を伴うオーラが流れ込んでいく」

シノンがさらに術式を重ねオーラはさらに倍加して洞窟の奥へ奥へ


「『氷剣・氷河』」


氷のオーラがあまりにも多すぎて洞穴の入り口からオーラが溢れだす。

外に出ている俺達の吐息まで白く染まりだす。

それでも、、、シノンは更に剣を振り、世界を雪化粧に変えていく。


「『氷剣・氷河』『氷剣・氷河』『氷剣・氷河』、、、、っ!」


剣を振って、オーラを起こして、注ぎ込む。

・・・ここまでで既に詠唱級6連続

一般の魔術師なら詠唱級一発で干からびてしまうだろう。

シノンは顔を歪ませながら、、、それでも更に大量のオーラを洞穴に注ぎ込む。


やってることは簡単だ。

ひたすら冷気を伴う魔力を迷宮といっても過言ではない無数の道に送り続ける。

大量の魔力が伴った冷気は道の末端にまでいつかは辿り着く。

・・・するといずれ魔力を吸収する魔喰龍にぶつかり魔力は吸収される。

そうすると冷気をどれだけ流し込んでも冷えない空間が作られる。


俺の『曇の感知≪サーチ≫』ほど正確に魔力で感知することが出来なくても冷気が通ってるかどうかくらいならシノンの氷属性の魔術でも確認できる


「・・・・・・いた」

「シノン!」


冷気を流し込み続けるのに更に何度も術式を重ね、、、シノンは遂に見つける。

シノンは発見とつぶやくや否や倒れ伏した

慌てて駆け寄って抱き起すと彼女は笑顔のまま口を開いた。


「どうだ、、、出来ただろう?正しい道を氷漬けにした・・・それを辿れ」

「ああ、、、今まで舐めてたよ、相棒。」

「後は、、、お前の仕事だ」

「任せろ!龍巫様、シノンを頼む!『動く曇道≪オート・ステップ≫』!」

「私も行く!」


黒雲の道を作り上に乗る。

道が氷漬けにされた上を翔ける。

サニアが思わず俺の腰にしがみつくほど飛ばす。

・・・迷うことなく全速力を出せるのは本当にシノンのお陰だ。


ありがとう


蒼い氷に覆われたトンネルをひたすら駆けていく。

徐々に黒雲は形成しづらくなっていき

蒼い世界は徐々に現実を取り戻していく

戦う音が、龍の怒号が聞こえる


黒雲を形成するのを止め、サニアをお姫様抱っこして走り出す。

脚から伝わって来るのは戦の地響き

鼻に来るのは血の匂い

肌をピリピリさせるのは龍たちの殺気


「おにいさん!」

「ああ!」


サニアが指さした開けた空間に『内在型身体強化』全開の速さで飛び込む

、、、いやがった。


「『zword&sword』」


斬龍が銀色の刀を振り切った瞬間、空気が割れていき魔喰龍の片方だけになっていた翼が叩き斬られた。

魔喰龍は痛みで吼えるが、その顎は飛龍の蹴りで強引に閉じさせられた。

飛龍はそのまま爪を魔喰龍の眼に食い込ませると、身体を引き寄せもう片方の腕は強烈な風を起こしながら突き出す。


「龍の引き寄せる筋力と突き出す腕力!」


二つの力を掛け合わせた拳は魔喰龍を跳ね上げ、壁をへこませながら叩きつける。

あの巨体を浮かせて叩きつける・・・どれだけの魔力を『内在型身体強化』に回したんだろう?

土埃が立ち込める中、二匹の龍は予想を裏切って魔喰龍を圧倒していた。


「すごい!すごい!龍ってこんなに強かったんだ!」


土埃が晴れ、、、魔喰龍が地中に埋まっている姿が視える。

・・・すげえな。

サニアが思わず狂喜乱舞する。


龍の中でも格闘戦に特化した二体。

龍の強さを全て剣刀で極めた斬龍

空を駆け、風を操る、飛龍

『内在型身体強化』まで使いこなす彼らの格闘術は並の龍では触れる事すら敵わない。


いくら魔術を吸収するからといって、、、魔術なしこそ本領の二龍が揃ってるのだ。

見たところ『内在型身体強化』も使えず龍本来の身体能力だけで闘っている魔喰龍に勝ち目なんてないだろう

魔術も格闘能力も知恵もない龍が長年生きて経験を積んだ龍に勝てるはずがないのだ




・・・・・・・・・・?



なら、、、『どうやって魔喰龍は水龍を倒した』んだ?



「おにいさん?」

「インモラルは言ってた・・・水龍の『龍の咆哮』を全て吸収したって・・・なのに何で強くなってない?・・・何でこんなにあっけないんだ?」

「・・・気のせいじゃない?」

「いや、、、、気のせいじゃない。おい、スカイ!斬龍!気をッ・・・・!?」

「ツォ・・・・ツォ・・・」


魔喰龍が何かを呟きながら自分で牙をへし折った・・・

そしてそれを摘み上げて、俺達の前に構える

・・・咢が開く


「避けろ!」

「「「!?」」」


サニアを抱えて出来る限り全力で飛び出す。

飛龍と斬龍もそれぞれ左右に飛ぶ。


『魔喰龍の咆哮』


裂迫のプレッシャーが今までいた場所を通り過ぎ、、、次の瞬間死の炎線が通り過ぎる。

魔術が使えないだけじゃなく場所も狭いここで使うか!?

魔喰龍は俺達が避けているにもかかわらず、そのまま延々と炎を吐き続ける


「な、、、、気がふれたか?」

「・・・分からんでござる。各々気をつけよ!」


龍たちがそれぞれ警戒を強めながら、魔喰龍の様子をうかがう。

魔喰龍は・・・俺達を見ることもなく延々と炎を吐き続ける。

炎はまっすぐにまっすぐにまっすぐに前に何があろうと溶かして消しつくす。

まさか地盤を崩すつもりか!?


「サニア!離れてろ!」

「うん!」


『葉擦れ』を引き抜き、右手には『常識外』

サニアが離れていくのを見てから、身体に『内在型身体強化』を満たしていく。

炎をかいくぐり、一気に魔喰龍の目の前へ


「『弾き飛ばせ』!」


顎を無理矢理閉じとけ!

鞘から放たれる強烈な斥力が強引に魔喰龍の顎を閉じさせる

制御を離れた炎が暴れ回り、周囲が紅く染まる・・・!?


『鳥の眼』に移るのは背後から俺と同じくらいの大きさで刀を振り上げる魔喰龍


「ちょ!?」


常識外で強引に受ける

至近距離で睨みあう・・・どっから刀を持って来やがった?

そんなことを問おうとしたら魔喰い龍がふっと笑った。

目の前で笑う黒龍はぐいっと俺の鞘を少しだけ押して鍔迫り合いを一瞬だけ止めた


「『zうぃlヴぇらんdしlヴぇr』」

「!?」


その瞬間、、、強烈な一撃が鞘にかかり、思わず手放してしまう。

そして視界には遅れて銀の光が光る

・・・こいつ『内在型身体強化』を使いこなしてるのか!?

前に戦ったときからは考え付かないほどの剛力で腕が痺れる・・・


『葉擦れ』で剣技を何とか捌きながら

刀・・・あれは多分牙を咆哮の熱で溶かして成型したんだ。

それにも驚きだがゼロ距離からほんの数㎝の隙間で・・・構えて『技』を放ちやがった

・・・それにあの技・・・『見覚え』が・・・


「変わるでござる!」


斬龍が剣なら俺に任せろと俺とスイッチする。

斬龍が高速の剣技を繰り出していく、、、魔喰龍はなんとその動きについていっている。

しかも、、、力は魔喰龍の方が上なのかつば競り合いになった瞬間、斬龍は思わず膝をつく。


「こやつ、、、さっきとは動きが全然違うでござる・・・『sock&shock』!!」


鍔から迫が迸り魔喰龍を吹っ飛ばす。

魔喰龍はくるりくるりと宙を舞うといとも簡単にバランスを立て直す。

そしてその足で駆けて来る・・・体が小さいのかその分速い・・・


「なんだ、、、あいつ、、、いきなり動きが変わってる、、、」

「剣技は正直拙者と同等・・・まるで『鏡』でも見てるかのような・・・」

「力でねじ伏せるのじゃ!」


スカイが巨体を生かして拳骨を魔喰龍に叩きつける。

魔喰龍が拳に隠れる


「『そock&shょck』」

「何!?」

「あの技は!?」


スカイの拳を魔喰龍は刀の腹で受けていた。

剣の腹から迸る迫

スカイの全体重をもろともせずに弾きとばす。


・・・あれは斬龍の『sock&shock』

もしかして、、、斬龍の技や技量を見て覚えたのか!?


「そんなこと、、、有り得んでござる!『zword&sword』!」

「『zをーどあんどすぉrd』」


振り降ろしたお互いの刀から空気を割る斬撃が迸り空気が割れる。

お互いの剣技がぶつかり・・・霧消する。

同等かよ・・・


「有り得んでござる・・・」


斬龍の何百年という時間をかけた剣技が・・・たった数瞬で奪い去られた。

斬龍があまりの光景に一瞬呆ける

・・・それが命とりだった


「斬龍!」

「・・・しまった!?」


魔喰龍が剣を・・・突く為に持っている・・・おいおい冗談キツイって


『穿跡』


回天回転廻点

螺旋を描き突き出された刀が龍の筋力で突き入れられる


「グハアッ・・・」


斬龍の体に突き入れられた刀がさらに回転し、刀が突き入れられた以上の大きさの大穴を創り出す

あいつ、、、俺の技まで・・・

回転は止まることなく、、、更に斬龍を傷付ける


「これ以上はさせん・・・なっ!?」


飛龍が速さに対抗するため

身体を縮小し

そのまま魔喰龍につっこもうとしたら

既に魔喰龍はスカイに体をぶつけ。。。


『銀乙女』


「スカイ!」


銀の曲線が光り、、、飛龍が吹っ飛ぶ。

今度土埃を挙げたのはスカイの方だった。

『銀閃』は・・・見せたこと無いはずだ!?

しかも改良された『銀乙女』!?



気付いたころには俺の体は吹き飛ばされていた

・・・何をされたかも分かんねえけど

・・・・・魔喰龍が何なのかは分かった


魔喰い龍


魔力を喰い、、、更に強くなる

他人の技を見喰らい、、、技を覚える

こいつが『喰う』のは『魔力』だけじゃなかったんだ

『魔』はまでも『全て』を意味する『魔』だ・・・・・・・


強くなった魔喰い龍は

他人の技を見たこともない技すらも勝手に喰らい自分の物にし

模倣はオリジナルを超越する


斬龍の刀の扱いを模倣し

スカイの格闘センスを吸収し

俺の見せたはずない剣技を、、、勝手に喰らい超越しやがった




そうか


この龍は


知恵も技も必要なかったんだ


ここで全て『喰える』から


必要なら相手から何もかも『喰って』『吸収し』『自分の成長に変える』


魔喰龍は・・・・




『学習する』龍だ。



やべえ・・・・意識が・・・・飛ぶ

第4章終了です!

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