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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第三部:周り全て変わるとして、変わらないものがあるとしたら<曇の奇術師編>
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第4章聖女と騎士と勇者part2

シノンとサニアと・・・

これはたまに夢に出てこないと忘れてしまうほど遠い昔の話

まだ自分を私と呼んでいたころの話


その頃の自分には父と母と兄と友達・・・少ないが大切な人達がいた。

そんな小さな世界で生活していたから龍人が弱いだの龍の庇護とか何も知らなかった。

お腹が空けば好きなだけ食べ、好きな時に友達と遊んで、好きなだけ周りとおしゃべりした。


私には兄が一人いた。

子供のくせにいつも偉そうな言葉遣いをして、親に必死にねだって作ってもらったパイプを常に持ち歩いていた。


私と兄が龍に変わった理由は分からない。

その時の記憶はひどく曖昧で、気付いたときには体は龍で周りは血の海だった。

龍巫様から話を聞いたところによると当時私たち家族は幼い龍人に転生したことで幼龍になった聖龍を育てるため龍人の里鉱山支部へ行くことを決められたらしい。

そしてそこで何者かに襲われて、、、聖龍は殺され、支部も崩壊した。


龍になった瞬間、私の世界は兄・・・いや『義龍』だけになってしまった。

生き残った父と母から私たち兄妹の記憶がぽっかりと抜け落ちてしまっていたのだ。

人間体になって会いに行ってみたこともあった・・・どこのお子さん?と聞かれた。

義龍はそんなことを言われた私を黙って後ろから抱きしめてくれた。


友達は皆私のことをすっかり忘れてしまっていた。

優しかった隣のおばちゃんがどこかおびえた顔で私にお守りください飛龍様と土下座をしてきた。

心地よかったあの世界は全て変わってしまったんだ。


親しい人間すべてがリセット

自分も姿形強さがリセット

今までやって来たこと全てリセット

唯一龍人の頃の私を覚えている兄まで姿形は立派な・・・化け物だった。


それでも残っていたのは何だったんだろう?

兄は龍になってからそれまでただ持ち歩くだけだったパイプをふかすようになった。

でも、苦いのは苦手なのか、いつも甘いハーブを焚いてそれを吸っていただけだったが

何でと聞いたらこれが大人の証だからだと偉そうに義龍は答えた。


当時の私には義龍がやっていることの意味が全くもってわからなかった。

・・・でもいつも兄が側にいてくれたから私はそれでよかった。






「・・・ぺっ」


正座させられてだいぶ時間が経つ。

龍人の女の子たちがそんな俺を冷たい目で睨みつけていた。

・・・あれだね。

同年代の女の子達十人ぐらいに囲まれてしかもあんな目で見られるとすっげえクルね!


イシルディア姉妹と隔離された俺はとある一室で同年代の龍人の女の子達に囲まれていた。

どうやら俺が斬龍や龍巫様達と友好を育んでいたように彼女達もこの龍人の郷で新しい友達を増やしていたようだ・・・彼女たちは俺のことをどのように説明したのだろう?

ものすごく敵意丸出しで俺を見ている。


「あのう・・・」

「・・・(ギロッ!)・・・」


声をかけたら物凄いキツイ目つきで睨みつけられた。

思わず泣きそうになった俺にさらに追い打ちがかかる。


「ていうか、いつまで黙ってるつもり?まじキモイんですけど?」

「いや、喋ろうとしたら睨まれ・・・」

「何かキョどってるしぃ」

「きょ、キョどってなんか・・・」

「うわ、キモ」

「・・・(涙目)・・・」


誰か助けてくれ!

そんな俺の心の悲鳴が通じたのか、俺が囲まれている部屋にトチキさんが入って来た。


「ん?なんでお前たちここにいる?今から客人と話すんだから出ていきなさい。」


トチキさんがそう言うと彼女達はしぶしぶといった表情で部屋から出ていった。

そのついでとばかりに俺を蹴っ飛ばしていったり、睨みつけたりとしていった。

トチキさんはあきれ顔でその様子を見ていた。

二人きりになると、トチキさんは妙になれなれしく俺の肩に手を置いてきた。


「女二人を泣かせるとはなかなかやるではないかサクラ殿。」

「・・・どうも」

「いやあ、俺の娘たちがあそこまでキレるとは・・・二股か?」

「・・・無理矢理話し合う機会を設けようと追いかけて追いつめたまではいいんですけど泣かれちゃって」


うう、泣くこたあねえじゃねえかよ、あいつらも・・・

お陰で悪者扱いだぜ?

トチキさんはくつくつと面白そうに笑ってくる。


「女子は優しく扱わねばならんのだよ、サクラ殿。娘達が怒るのも無理ない」

「・・・(そういや娘ってどれがトチキさんの娘だったんだろう?)・・・じゃあ、どうすりゃよかったんすか?」

「そうだな・・・喧嘩中ならすべき事はそう変わらないはずである」

「?」


トチキさんはどうやら相当恋路について詳しいようだ。

さすがトーリ先生の親類縁者だ。


「まず、出会い頭に土下座でござる」

「土下座?」

「女子というのは自分が悪いなんて絶対に認めん生き物だから取り敢えず謝ってしまうのだ。」

「へえ、、、」

「そして相手が気を許したら、、、」

「許したら?」

「ラブ○だな」

「・・・は?」


トチキさんはうんうんと頷いてるが、、、あれ?

なんかとんでもない言葉が飛び出してきたぞ?

聞き間違いですよね?

デス(´∀)ヨ(∀`)ネー???


「しかし男というのは柱。そうすぐに女に主導権を握られてばかりではいかん。」

「・・・(聞き間違いだよな?)・・・あ、はい」

「だから常に床では下に敷く事で主導権は常に男側にあるということをだな・・・」

「あんた、ナニ言ってんだ!!!???」

「ナニって・・・二つに割れた桃を赤くなるまで叩く事で女子にどちらが上かを教え込むという話であるが?」

「んなことしたらちょん切られるわ!?」


やべえよ、、、このとっつあんマジで尻軽だった・・・

同年代の女の子が何人も俺を囲んでたが絶対に全員この人の娘達だ!

怒ってたのも女泣かせに対する私怨が絶対混ざってたよ!?


「おい、尻軽!あんたのせいでそちらの娘さんたちにめっちゃ心の傷おわされたんだが!!!」

「尻軽とは失敬な・・・折角男女がいろんな意味で上手くイク方法を教えたというのに」

「誰が手の出し方を教えてくれって言った!?」

「手を出すとは失敬な・・・快楽を与えてあげるからその代わりに許してくださいと行動で示してるだけだ。」


トチキさんは真顔でそういうが、その目はギトギトに腐っていた。

侍的な風貌に騙されてたがとんでもねえクズだった・・・


「はあ、、、時間無駄にした」

「無駄?酷いな!」

「憤慨してるようで悪いが本当に無駄だったよ・・・」


真面目に聞こうとした俺が馬鹿だった。

溜め息をついて部屋の外に出るとトーリが座っていた。


「よ、久しぶり!」

「・・・(むっすう)・・・」

「トーリ、、、お前もか」


なんでだろう?

何か女の子を怒らせる才能でもあるんですかね俺?

トチキさんが泣きそうになっている俺の肩をぽんと叩く。

そして囁く。


「さあ、俺のアドバイスを早速実践だ!」

「・・・」

「Hey,you!ヤっちゃいなよ!」


トチキさんの奥さん計8人に通報しますた。




そう言えば龍宮殿に呼び出されてから殆ど連絡もとらずに修行してたな・・・トーリが怒るのも無理はない

龍人の郷の甘味屋で山ほどオルナップル饅頭を奢る羽目になった。

甘味に目がない幼女でよかった・・・この子からアドバイスを貰えなかったらマジで積んでるさんである。


「まったく、、、今が大変な時だってのは分かりますけど連絡くらいくれてもいいじゃないですか!」

「・・・ごめんなさい」


幼女の機嫌を伺い、何度も頭を下げる俺を見てまわりの龍人達がざわざわしている。

龍人の郷は里一つ潰され水龍が倒されたというのに意外と混乱は少ない。

・・・奇態を見てざわざわするぐらいには余裕がある。


「どうしたんです、お兄さん?」

「ああ、意外と落ち着いてるなと思ってさ」


火山の里支部の皆と比べると臆病なイメージが強い龍人の郷の龍人達だったが、俺の勘違いだったか?


「それは外に出たことないから龍が倒されたって言われても実感がわかないだけですよ」

「、、、なるほどな。実感の湧かないことに怯えることは出来ないしな。」


外に出たことがないからこそ龍の強さを知り自分達の弱さを知りすぎた。

龍に絶大の信頼を置く一方で未知のものが自分を害するかもと恐怖する。

・・・あまり良くないかもしれない。

龍に媚びて媚びて生きる彼らのあり方は自分の可能性を自分から握りつぶしてる。


「それに龍が倒されたとしても龍最強の龍巫様がいらっしゃるみたいだしね。どんなお姿か見たことないけど」

「・・・そうだな」


龍巫様が今回の戦いに参加しないことは龍人たちには伝えられていない。

会談のつながりで龍巫様が人間と同じ姿であるということがばれると禁忌のことも芋蔓式にばれる恐れがある。

・・・それすら知らされてないぐらい信頼されてないのは龍人達がただ弱いからじゃない

ここの人たちの心が郷の外に出ている龍人達の心よりもあまりにも弱いからだ。

郷の外に出たトーリやトツカやドン・クラークは外に厳しさや理不尽さを知っている。

だから弱くても俺以上に『強い』。


「・・・なんとかなんないもんかね?」

「なにをです?」

「いや、なんでもない」


トーリが考えにふけってしまった俺に声をかけてきたのであわてて笑い返す。

彼女は俺の視線がこの龍神の郷を見ていたことに気づくとそういえばとぽんと手を打った。


「おにいさん、さっきパーティーメンバーの女の子を追い回して泣かせたらしいですけど何でそんなことになったんです?しかもアリアさん以外の女の子ですよね?アリアさんと別れたからって今度は別の女の子ですか?」

「俺をトチキさんを見るような目で見ないでくれない?」


トーリが虫を見るような目でこっちを見てくるので俺はあわててここニ、三ヶ月のシノンやサニアとの出会いから喧嘩に至るまでを説明する羽目になった。



俺の説明(ほぼ愚痴)を聞いたトーリがゆっくりとオルナップルの果実汁を飲み干してからやれやれと溜め息をつく。


「おにいさんが悪いです、首吊って反省の意を表しましょう」

「俺、そんなに悪いことしました先生!?」


トーリはさっき以上に虫けらを見る目で俺を見てくる。

幼女のくせに・・・なんて目で俺を見てきてんだ!

ゾクゾクしながら彼女の言葉を聞く。


「おにいさん、、、シノンさんもサニアさんもして欲しいこといってるじゃないですか!何でそれに答えてあげないんです!」

「いや、、、俺は桜ほど物事をよく考えないようにしてるから・・・ほら、主人公って心で動かなきゃ駄目だし?」

「首吊ります?」

「・・・怖いよトーリさん!」


ゾクゾクがビクビクに変わる・・・

トーリは『俺達』がそれぞれ何を考えているのか簡単に分かってしまうようでああもう!ともどかしげな様子だ。

・・・なんだかんだでトチキさんを反面教師に恋の先生になったんだろうなあ、この娘。


「女の子ってのは弱い部分を見せて欲しいものなのに何でそんなに強がるんですか、このバカおにいさん!」

「えぇ?弱い主人公ってどうよ?そもそも女の子が男に惹かれるのって優秀な面があるからだろ?」


優しさ、才能、強さ、眉目秀麗

何かに秀でているからこそ人はその人を好きになる。

自分にとっての『主人公』に足る存在だと認める。

だから俺は自分を良く見せたい。


「はあ・・・どっちも頑固みたいですね。トチキおじさんの方がまだましです。あの人は女の子をベッドに誘うためならそれこそダメ人間すら演じますから」

「・・・あのクズ野郎」


幼女にベッドとか簡単に言わせるほど悪影響を与えるとは許すまじ・・・後で粛清してやる。

俺が静かに決心を固めるとそれじゃあと言ってトーリが立ち上がった。


「それじゃあ行きますか」

「・・・どこに?」

「私が間に立てば少しは冷静に話し合えるでしょう?」

「・・・なるほど。幼女に見られてるとなれば冷静になって喧嘩にもならないか」

「だから幼女じゃないですって!」


小さな俺の恋の先生は真っ赤な顔して怒った。




「「「・・・・・・・・」」」


トーリの案内でトチキさんの娘たちの妨害に会うこともなく彼女達のいる部屋に辿り着いた。

ドアを叩き、自分の名を告げる。

数瞬が経過して、、、どうぞと声がかかる。

シノンとサニアは意外と簡単に会ってくれた。

でもその顔は俯いたままだ。


「はい!時間が無いのでさっさと片付けましょう!」


・・・え?

何をしゃべればいいのか分からないまま黙りくさっているとトーリがいきなり大声を上げて手を叩き始めた。

俺達がギョッとなると彼女は姉妹の方を見つめ大声を張り上げる。


「まず簡単そうなシノンさんの方から!・・・どっちがシノンさん!?」

「わ、、、私だが、、、」

「あなたはサクラおにいさんがソーラさんばっかに構っているのでムカムカしていたんです!後潜在的な欲求にサクラさんにべったり頼って欲しいっていう欲求があるんです!」

「はあ!?い、いきなり何を言うんだ!?ていうか君は誰!?」

「うるさい!どうせ口下手で上手く言えないんだからそうだと認めてしまいなさい!」


シノンが真っ赤になって違うと否定するのをトーリはうるさい黙れ、お前はそういう人間なんだと言いきってしまう。

・・・なんだこの乱暴なカウンセリングは

これで金取られたら現代日本なら訴訟モノだぞマジで・・・


「サクラおにいさんが自分の前で怒ってる顔や泣いてる顔を見せないのにソーラさんには怒ったりしてるのが少し悔しい」

「わー!わー!わー!」

「実はサクラおにいさんにちょっと触られるだけで・・・」

「やめて~~~~~~~っ!」


シノンが大声で叫ぶからトーリが何を言ってるのかほとんど聞き取れなかったが、、、取り敢えず構って欲しくて拗ねてんのか?


「ち、、、違うからな!」

「いいえ!ちょっと寂しくなって拗ねてただけです、サクラおにいさん!」

「ちょ!シノン離せ、苦しい!」


シノンが俺の胸元を掴みガンガン揺らす一方で、トーリが俺の耳元でガンガン喚く。

・・・新手の拷問ですか?

と、意識が遠くなりかけた時にトーリの声が響く


「あれ?サニアさんどこ行くんですか?」

「そうだな。どこに行くんだ、サニア」

「え?・・・トイレに行こうかなって・・・」


俺達がもめてる隙にサニアさんはなんと逃げようとしていたようだ・・・

トーリが手を振り上げ、、、振り降ろす


「捕まえろ」

「了解!」

「いやあ、離して!」


シノンがお前も道連れだと言わんばかりにサニアを引き摺って戻ってくる。

おいおい、、、必死すぎだよ二人とも・・・

このままではまた魔術を使って逃げかねないと一応サニアが詠唱できないように『曇の陶器≪クラフトワークス≫』で作ったギャングボールを咥えさせたがそれでもサニアはジタバタ逃げようともがく。

え?何でギャングボールかって?

・・・趣味だよ?


「ふふふ、、、どこから攻めようかな・・・」

「む~っ!む~っ!」

「すまないサニア・・・私の心の安静の為なんだ」


トーリがどことなく嬉しそうにサニアの頬を撫でる。

シノンが妹の冥福を祈りながら目を逸らす、、、その手はしっかりとサニアを羽交い絞めにしている。


「サニアさん・・・実は構って欲しいけど上手くできなくてつい八つ当たりしちゃってたんですよね?」

「むーっ!むーっ!ムーッ!?」

「サニア、、、すまない」

「しかも、、、ちょっと楽しくてワクワクしてましたね?」

「むーっ!むーっ!?」


サニアが必死で首を振るがトーリはそれを嘘だと言い切り耳元で更に囁く。


「おにいさんが心配だけど、ついはぐらかしちゃうんですよね?」

「むまーっ!なまーっ!?」

「特に回復魔法が効かなくなってからずっと心配してたんですよね?」

「むう!むう!むうううううっ!」

「アハハハハハハッ!・・・・サニア、、、、もうすぐ楽にしてやるから・・・」


シノンがサニアを羽交い絞めにしながら発狂して笑いだす。

・・・何だこれ。

なんか流石に可愛そうなのでギャングボールを取ってあげるとサニアは大声で叫んだ。


「べ、別におにいさんが怪我してないかいつも心配なんてしてないんだからね!私にずっと暴走魔力とか体のこと相談してくれなかったことをひがんでるわけじゃないんだから!」

「「「・・・(自爆しちゃったよこの娘)・・・」」」

「あ、、、、あ、、、、うわああああああああああああん!」


サニアがめっちゃ泣き出した。





私が慰めときますから二人は街を歩いて来て下さい!

・・・と部屋を追い出されたのでシノンと二人で街を歩くことになった。

シノンは可愛いと日頃から思っていたがまさか俺に拗ねていたとは・・・なんて愛いやつなんだッ!

彼女に笑顔を向けてみる。


「なあ、シノン・・・ぶほえるぇえ!?」

「こっち見るなっ!」


少し後ろをついてきているシノンさんは俺にグーパンチを叩きつけてきた。

・・・最終兵器トーリ先生を投入したせいでまた攻撃されずに喋れるようにはなったが、なんか初めて会った時と同じくらい警戒されてる気がするんだが。

・・・はあ


出来る限り後ろを振り向かないように街の中をぶらりと歩く。

その後ろを物陰に隠れながらシノンさんがスネークしている・・・なんだこれ。

既に夕方になりかけで、夕飯を作る良い匂いが辺り一面に漂う。

そう言えば『葉擦れ』を取りに行ってから飯に行く予定だったんだがすっかり忘れていた。


「な、なあ、折角だし二人でお茶でもしないか?」

「・・・何をする気だっ!」


シノンさん・・・俺を何だと思ってる・・・ああ、キチガイか。

適当な喫茶店に俺が入ってから後からシノンさんが超警戒きょろきょろしてから入ってくる。

別々に入ったんだから同じ机につくわけでもなく、、、俺とシノンさんは背中合わせで別の机に座ることになった。


「・・・シノンさん同じ机にしない?」

「絶対いやっ!」

「はあ・・・」


後ろから大声で否定される。

店員さんが若干引き気味で注文を取りに来たので取り敢えずガッツリ注文しておく

龍人の郷は周りが高山だから、高山魔物を使った料理が盛んだ。

寒さで引き絞った肉は非常に引き締まって味が濃いらしい。


俺はガッツリ食べたいので『枝分かれ角鹿のステーキ』、シノンは『拳骨猿カツのサンドイッチ』

外見はマジでキチってる化け物だが味だけは非常に美味い・・・

冒険者として狩れば狩るほど食欲は失せやすいが、、、それでも美味いから困る。


むぐむぐむぐ・・・ガツガツガツ!

かじっ・・・・もぐもぐ・・・


背中越しにシノンがサンドイッチを食べてる音が聞こえる。

よく考えたら、、、一緒に飯食うのも久しぶりだ。

自分の前で感情を見せてくれないのが寂しい、、、か


出来る限り無茶しないでくれ

私をもっと頼ってくれ

相棒になりたい


いろいろ言われた覚えがあるけど、、、まだ文句があんのか・・・

シノンは本当に口うるさい・・・

まさかソーラみたいに怒鳴り散らしてほしいのか?

いや、、、ソーラに対して嫉妬してるのは分かるけど・・・


・・・ん?

そう言えば、、、俺にちょっと触られると何とか言ってたな・・・

こっそり後ろを振り向くと、シノンは食事に集中してるのか黙々と肩が動いていた。

肩が動くたびにさらさらと微振動で髪が左右に揺れる。

頭ぐらいならいいだろ・・・手をシノンの小さな頭の上に置いてみた


「きゃっ!?」


びくっとシノンが跳ねて、コチンと固まる。

・・・なるほど、固まるのか。

抵抗しないのをいいことに彼女の頭を撫で続ける・・・

白い彼女の短い髪は一本一本がとても細くきめ細かい。


髪を少し掻き下ろすとグレープフルーツのような癖になる香りを少しかぐわせる。

サニアは手入れが行き届いてないってよく愚痴を言ってたけど十分綺麗な髪だ。

・・・癖になるな。

彼女の意外と小さな頭を撫でまわしてると彼女がぐいっと振り返った。

やべえ!?殴られるッ!?


「い、、、い、、、いい加減にやめてください、、、」

「・・・・・・・・あ、はい」


なんかセクハラ上司と部下みたいな感じになってる・・・

シノンは涙目で顔をこれでもかと真っ赤にしながらプルプル震えていた。

また泣かれても困るので取り敢えず手をどかすが彼女はずっと俺の方を向いたまま

でも目は合わせない


「「・・・・・・・」」


トーリさん、、、アンタ本当核爆弾だよっ!

俺が頼んだとはいえ幼女一人にここまでやり込められてる俺達って何なの!?

マジで何なの!?

ああああああああああああアアアアアアアッ、めんどくさい!

もう俺のペースでやっていいよね!これ以上振り回されるのはごめんだ!

まずは・・・


「ごめん!」

「・・・え?」


取り敢えず頭を下げた。

シノンはどこか上ずった声で驚いたような声を出す。

・・・そんなに俺が謝るのがおかしいか?

そうだな、、、おかしいか。


「シノンがなんで怒ったのか、、、やっと分かった。」

「サクラ・・・」

「でも譲れなかったんだ・・・」

「・・・どういう事だ?」


シノンが俺の顔を無理矢理あげさせながら聞いてくる。

・・・言いたくないって気持ちが舌を縛る。

でも、、、ここで言わないと彼女は俺から離れてく。


「自分の弱さをシノンやサニアやスカイに見せるのが・・・当り散らしたくなかった・・・俺の中でくすぶるものを・・・守るって誓った皆に・・・ぶちまけたくなかったんだ」

「・・・そんなの勝手じゃないか」


シノンが腹から喉から悔しげに声を振り絞る・・・

でも彼女の手は俺の肩から離れようとしないし、話すのを拒否しようとしない。


「そうだよ、、、我儘だよ。」

「私は、、、もっとお前に頼って欲しい・・・」

「仲間だからこそ・・・ずっと一緒にいたいから・・・俺は・・・抑えなきゃいけない部分だと思ってたんだ・・・」


シノンがこつんと俺の額に額をぶつけて来る。

たったそれだけなのに、、、凄くその箇所がジンジンしてきた。

俺にだけ聞こえる声でシノンは声を出す。


「もういい・・・お前はそういう奴なんだな・・・」

「ごめん・・・」

「一つだけ聞かせてくれ」

「なに?」

「・・・ソーラと私たちどっちが大事だ?」

「お前ら」

「ふふふ、、、即答か」


シノンはグッと俺を突き飛ばす。

ガラガラと椅子から崩れ落ちる俺を放りっぱなしでシノンは店員を呼んだ。

ずっと俺達の痴態を眺めていたのか顔を真っ赤にしたウェイトレスにシノンは笑顔で言った。


「すいません、席の移動はできますか?」






二人で久しぶりに食事をとった後、サニアのいる部屋へと一人で戻った。

サニアともサッサと仲直りして来いとシノンに急かされたからだ。

もう既に暗くなって来た。

ここの龍人の郷は光る鉱石を太陽代わりに使っているが、龍人たちの手によってその光の量を調節できる。

外の時間に合わせてほのかな明かりに調節された街をゆっくりと歩く。


「・・・・・・・・」


家の前でサニアが立っていた。

仄かな光に照らされている彼女はまるで世界に祝福されているようで、、、まるで、、、


「聖女だな・・・」

「!?・・・おにいさんか」


サニアは俺がいるのに気付いてなかったのか、凄く驚いた顔でこちらを見て俺だと気付くとほっと息をついた。

この一か月見た顔の中で一番柔らかい表情だった。


「どう?シノンと仲直りできた?」

「・・・ああ」

「そっか、、、えらいぞ」


サニアは爪先立ちになると俺の頭をよしよしと撫でた。

・・・小さくて細くて気持ちいい指が俺の頭を優しく撫でる。

ちょっと恥ずかしいな。


「なに?照れてんの?」

「・・・・・」


前言撤回だ。

サニアはにやあと笑うと俺の頭をなでるのを止めた。


「シノンと仲直りしたなら・・・私もおにいさんを許してあげないとね」

「許すって、、、まあいいけどさ」


どちらかというと勝手に怒られたって感じなんですが・・・・

なんだこの理不尽さ・・・

まあ、サニアは可愛いから許すけど・・・釈然としねえ


「はあ・・・サニアを一瞬でも聖女みたいだって思った俺の気持ちを返してくれ」

「・・・『みたい』じゃないよ」


サニアは笑顔だった。


「私は王国の希望であり象徴そして陛下の一人娘にして王女でもある。『聖女』サニア・エーメルティー・・・それが私の本名」

「・・・マジか?」

「・・・あ」


サニアはしまったという顔をした。

どうやらつい口走ってしまったみたいだ。

そして、、、まあいっかとまた笑顔になった。


「嘘はつかないよ、、、もう」


サニアから目を離せない・・・


「シノンが頑張って伝えようとしてたけど、、、私が先にしゃべっちゃったなあ。」


今サニアがしゃべってることは・・・軽く言おうとしてるけど・・・すごく大事なことだって分かった。


「シノンに謝らないとなあ・・・」

「・・・ちなみになんで王国から出てきたんだ?」


サニアは何事もないように言った


「勇者召喚の生贄にされるのが怖くて逃げたんだよ」

「・・・いけにえ・・・」


こんなに可愛い女の子を?

こんなに小さな女の子を?

こんなに大事な女の子を?


「んだよ、それ・・・王国ってそんなに非道なのか?」

「ちがうよ!」


サニアは大きな声で俺の言葉を否定する。


「悪いのは私なの!帝国から王国を守るために勇者を召喚しなきゃいけないのに、、、私は聖女として『不完全』だった!魔力コントロールがほとんどできないから、、、勇者を殺してしまう恐れがあった!」

「不完全って・・・だったら召喚させることねえだろ」

「帝国が戦の準備を始めてるって噂が立って・・・陛下が決断を・・・」


サニアが俺に背を向ける

・・・顔をみられたくないってか

今まで頑張って笑おうとしてたんだろう・・・それでも・・・限界だったんだ


「シノンは・・・このままじゃあ・・・無駄死にだって・・・私を・・・王国から逃がしてくれた・・・」

「もういいよ」

「だから、、、約束したの・・・聖女として完成するまで・・・王国から逃げるって・・・その間は二人で出来るだけやりたいことをしようって・・・!?」


自然とサニアを抱きしめたくなって、、、実行していた。

彼女は、、、確かに聖女だ。

あっという間にサクラ=レイディウスを信者にしちまった。


「・・・いいから」

「・・・うん」


サニアを後ろから抱きしめる・・・すぐに消えてしまいそうな・・・そんな儚くて脆い体だった。

体温が低いのか熱もあまり感じられない。

・・・気づいたら消えてしまいそうだ。

そんな気がして、、、無くなってしまわないように彼女が離してというまでずっと腕を解こうとは思わなかった。





『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『銀閃』『穿跡』『押し込み突き』『ぎ・・・・

足を踏み外してゴロゴロゴロっと地面を転がってしまった

・・・身体中を思いっきり打ってしまってすんごく痛い。


「ぶっはあ・・・・はあ・・・・はあ・・・・はあ・・・」


内在型身体強化が空ぶかしして思わずずっこけてしまった。

・・・誰かが近づいてきた。


「音がすると思ったら・・・サクラ殿か」

「斬龍・・・」


剣を感情のままに振っていると斬龍が入って来た。

彼は俺の隣にズカッと座り込む。


「聞いたでござるよ、中心街で暴れ回ったとか?龍巫様が恩赦を与えてくれなければ今頃追放でござるよ」

「はあ、、、、はあ、、、、、はああああああ・・・・」

「それどころじゃ無いようでござるな・・・拙者でよければ話してみるでござるよ・・・」


斬龍は俺をぐいっと立ち上がらせると自分も片刃大剣を構えた。

・・・かかって来いってか?

お互いに距離を取ってから、ウォーミングアップとばかりに緩い速度で剣を打ち合いはじめる。

師弟関係を始めてから、、、ずっと続けている日課みたいなものだ。

この打ち合いをしながら、、、会話をするのがいつもの流れだ。


「さあ、どうしたでござるか?」

「スカイ以外のパーティーメンバーと仲直りした」

「そうでござるか・・・なのになんでそんな顔をしてるでござるか?」


斬龍が斬りつけてきた剣を『葉擦れ』で軽く受け流しながら俺は答える


「自分が情けない・・・今まであいつらがどれだけ苦しんでたかを全く知らなかった・・・自分の弱さが憎い・・・すげえ憎い!」

「弱い?」


斬龍がググッと剣を押し込んで来る・・・『内在型身体強化』でそれを受ける。


「お主は気付いてないでござるか?」

「ぐぐぐ、、、ああ?」

「お主は既に上級冒険者と言っていいレベルでござる。龍と鍔迫り合いできる筋力と魔術のセンス、、、そしてそれを活かす曇の魔術に龍人の郷でも一二を争う最高峰の武器。」

「・・・」

「国でも数える程しかいない特級冒険者にすら届く器でござる」


斬龍が俺を褒めるなんて・・・初めてだ。

嬉しいけど・・・今はただ・・・嬉しいと思ってしまった俺自身が憎い


「違う!」

「!?」


斬龍の剣を魔力全快の身体強化で弾き飛ばす。

もう一度打ち合いに戻るが・・・剣速は徐々に徐々に増していく。


「今のままじゃあシノンもサニアもスカイも・・・俺の手から消えちまう!」


抱きしめたはずなのに、、、サニアの感触を全く思い出せない。

シノンとあんなに楽しく話した後だってのに、、、彼女の声を思い出せない。

スカイに至っては、、、どんな顔で笑ってたのかも思い出せない。


気付いた瞬間には目の前から消えてしまう気がして・・・本当にいるのか、わからなくなる


もし例え『魔喰龍』を倒しても・・・


『王国』が


『魔国』が


勇者召喚システムを滅ぼすと誓った『アリア』が


俺から彼女達を奪い去ろうとして来るはずだ・・・そして今のままじゃあ守り切れない。

『主人公』の資格・・・『嵐曇魔術≪スーパー・セル≫』を失った今の俺じゃあ彼女達を守り切れない。



「俺が弱いままじゃあ・・・駄目なんだ!」

「その心意気、、、良し!」


剣戟が剣の打ち合いの後に遅れて聞こえて来る。

腕を早く動かし過ぎて、、、血が先端に集まってくる。

苦しい、、、腕が重い、、、疲れが痛みに変わる。


「なら強くなるでござる!」

「分かってる!」


乱撃の中で見えた光を『葉擦れ』が気流で吹き流す。


「うおっ!?」

「ああああああああああああああああアアッ!」


剣を振り上げ、振り降ろし、袈裟懸けに。

自分でも頭が真っ白になってくるほどがむしゃらに振って、斬って、突いて。

視界が白から赤く、、、そして黒く。

今自分が見ている景色が何なのかもわからなくなる・・・それでも剣の手は止めない。


「「はあ、、、、はあ、、、、はあ、、、、」」


片刃大剣が半ば折れて、、、『葉擦れ』が斬龍の喉元に突きつけられていた。

その光景が見えた瞬間、視界が歪んだ・・・


「拙者が悪かったでござる・・・次からは本気の剣でお相手しよう」

「なら、、、頼むわ、、、今から、、、」


あの時の誓いを果たそう。

聖女だろうが騎士だろうが龍だろうが

『あの時』俺は誓った・・・何があっても彼女達を守るって・・・

幸せにするって


苦しい?

弱い?

だるい?


たとえ帝国からの侵略から自国を守るためだろうが・・・

たとえ自分の長年の悲願を果たすためだろうが・・・

たとえ崇高な目的があろうが・・・


俺からシノンやサニアを奪おうとする『王国』も

俺からスカイを奪おうとする『魔国』も

俺からサニアを奪おうとする『アリア』も


・・・俺から彼女達を奪おうとするなら


「容赦はしねえ!」


斬龍の『刀』と俺の『葉擦れ』がぶつかり合い、、、空気が震えた


次も早めに投稿するつもりなのでお楽しみに

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