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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第三部:周り全て変わるとして、変わらないものがあるとしたら<曇の奇術師編>
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第3章HURUHATA☆QUESTpart3

引き続き山梨家

「まだ小陽はこんのか・・・」

「「・・・・(がくがくぶるぶる)・・・」」


あの後土下座しながら不作法を謝罪して何とか許してもらった。

ついでにゴッツイ手で、手とり足とり茶道の基礎を教えてもらった・・・

いつか役立つ機会があるのだろうか?


抹茶を点てて新聞君に渡す。

新聞君がさらっと飲んだので今度は新聞君が作ったのを俺が飲む・・・新聞君のお腹たぷたぷ俺もたぷたぷ。

親父さんが少し嬉しそうなのでやめるにやめられないっ!

口周りに抹茶をこびりつかせた新聞君がついに切り出す。


「げふっ・・・こちらから伺うとかはどうですか?」

「こちらから・・・伺う?年頃の娘の部屋にか・・・です」


さっきまでニコヤカに嗤いながら俺達の耐久茶飲み合戦を見ていた親父さんの目がギラリと光る。

ひいっ・・・おおお落ち着け!

サクラなんて猛獣とかとニコヤカに嗤いながら殴りあってんだぞ!

俺だけヤ○○に怯えて逃げてたら笑われちまう!

怯えて黙ってしまった新聞君を鼓舞する意味でも俺は立ち上がりつつ熱弁を振るう。


「もしかしたら何かあったのかもしれないじゃないですか!」

「それでも・・・年頃の娘の部屋ですし・・・です。それとも、、、小陽とは特別な関係で?」

「・・・新聞君!君に任せた!」


うん・・・なんか俺が頑張るのは違う気がする。

ここはやっぱり新聞君が頑張んなきゃ駄目でしょう・・・

別に目を合わせ続けるのが怖いってわけじゃないんだから!


「ええ!?」

「あと一押しでいける!でもその一押しは心からの『小陽ちゃんが心配』って気持ちをぶつけなきゃいけないんだ!」

「心からそれをぶつけるのはなんか抵抗・・・」

「バカ野郎!これ以上抹茶飲んだら血液まで緑になるわ!」

「そうだね、これ以上は一滴たりとも抹茶はいらない!・・・親父さん!」

「何でごぜえましょうかです」

「小陽ちゃんの部屋に行くのはやましい気持ちからではありません。そこに小陽ちゃんがいるからです!ほら、、、思い浮かべてください!もうお父さん着替え中に入って来ないでよ!と頬を赤らめる小陽ちゃんを!すやすやお昼寝しているけどいい夢見てるのかちょっとにやけちゃってる小陽ちゃんの寝顔を!・・・くうぅっ!」


・・・そんな言葉が通るわけねえだろ。

やっぱこいつは駄目だ!

外的ストレスが多すぎる環境下で危険察知能力がぶっ壊れてやがる!

取り敢えず新聞君の命で許しを請うかと指を鳴らしていたら、親父さんがばっと顔を上げた。


「な、、、なるほどです」

「ええ・・・」


親父さんと新聞君の感性が理解できない・・・まあ二人とも外的ストレス多そうだけどさあ。






「お客人方・・・こちらでいです。」

「学校休んで部屋から出て来やしないとは感心しませんね。折角家まで来たというのに・・・小陽ちゃんめ。脇の下からうなじまで影からじっくり観察の刑だ」

「・・・・・・」


壁から彼女の部屋に繋がる障子を覗き見る親父さんと新聞君。

外的ストレスの多い環境にいすぎたせいで頭のねじが56、7本ほど外れたのだろうか?

小陽ちゃんに感ずかれないようにと隠れながらコソコソと扉を確認する二人を俺はどう扱えばいいか分からなかった。


「あれ?オヤジこんなところでなにしぶはあッ!?」

「ふう・・・声あげんじゃねえよ信藤。」

「す、、、すみませんオヤジ・・・」


少なくとも娘の部屋に入ろうとする時に気取られないようにと部下を沈める必要性があるのだろうか?


「・・・小陽ちゃんの匂いがする。奴はこの中にいるっ!」

「そうだなです・・・小陽の気配がするぜです。」


匂いや気配でいるかどうかを感じ取った彼らはそろりそろりと近づいていく。

・・・そんなに寝顔や着替えてる姿が見たいか?

ある意味必死で部屋を覗いていたらいつの間にか着物を着た綺麗な人がほうきを持って親父さんの背後に立っていた。

彼女は黒い笑みを浮かべながらゆっくりとほうきから仕込みスタンガンロッドを取り出すとそれを構えた。

親父さんはまだそれに気づいてない。


「何をしてるんです?」

「うるせえぞ信藤。小陽の着替えを覗きに来たんじゃ・・・信藤の声じゃない?」

「・・・あなた?」

「君たち!後は任せた!です!」

「うふふふふふふふふふふふふ」


どうやら小陽ちゃんのお母さんらしい。

彼女とよく似た笑顔を浮かべた小陽ちゃんのお母さんは全速力で逃げ出した親父さんを追いかけていった。

・・・遠くで生理的に受け付けないビリビリビリっとした音と野太い悲鳴が聞こえた。

小陽ちゃんの部屋を覗く気なんて起き無くなるぐらい生々しい音だった。

新聞君がトラウマを思い出したのか足をガクガクさせ、冷や汗・涙目・震え声だ。


「・・・さ、茶室に戻ろうか。」

「そ、そうだね。」


こうして一つの新聞君と小陽ちゃんのあったかもしれない未来図を垣間見た俺達はすごすごと茶室に戻ったのだった・・・

戻ったのだった・・・

戻ったのだった!


「ししし新聞君!」

「ななな何かなあ!如峰月君!」

「肩が物凄く痛いんだけど、ここ曰くありそうな屋敷だし幽霊にでも憑りつかれたかなあ!」

「ききき気のせいだよお!肩が痛いなんて気のせい・・・じゃないね!がっしり掴まれてるせいで一歩も進めないやあ!」


肩がぎりぎりと強く握られている。

逃がすまいという気持ちが込められた女の子の小さな手が俺と新聞君の肩に乗せられていた。

・・・うん。

俺達の今日会おうとしていた人ですね、この手の持ち主は。


「・・・謝れば許してくれないかなあ?」

「無理でしょ・・・でも今日はほっとしてるんだ。」

「へえ、なんでだい?」

「今日は君もボコられるから・・・どちらかが死ぬまで苦しみを分かち合える」

「はん・なっ・せ~~~~~!」


新聞君が全てを悟りきった笑顔を向けて来た。

女の子の小さな手だというのに邪悪な魔力がまとわりついてでもいるのか振りほどけない。

それどころか徐々に徐々に小陽ルームという名の処刑室へと引きづりこまれていく・・・

必死にもがくが体はもう既に半分以上魔窟に引きづりこまれていく・・・もう駄目だ。


ピシャンと出口が閉まった。




「・・・ハッ!」


いろいろされたような記憶があったが・・・おれはいったい?

小陽ちゃんの鉄拳が鼻先にめり込んだのまでは覚えてるんだが、、、痛ッ!

まるで思い出してはならないことを思い出したが精神がそれを拒絶したかのような鈍い痛みが走る。

・・・何があったのだろう?


ぼやける視界で辺りを見回す。

目の前にはベッドに腰掛ける小陽ちゃん、隣には俺と同じように絨毯の上で正座させられている。

小陽ちゃんは俺達が意識を取り戻したと分かると小首を傾げて聞いてきた。


「で?何しに来たんです?」

「休んでたわりには元気そうだな?」

「小陽ちゃんのお見舞いに来たんだ」

「・・・そうですか。」


休んでたわりには顔色は良さそうだ。

パジャマというよりは水色のふわふわとした部屋着を着た小陽ちゃんの顔色はいつもより寧ろつやつやしていた。


「気分が良くなくて・・・つい休んじゃいました。」

「そっか!・・・という事は僕の命を狙う準備ってわけじゃないんだね!」

「え?そこっすか?」

「ごめんなさい、新聞君・・・頭殴り過ぎちゃったかな?」


喜色満面の顔で喜ぶ新聞君・・・小陽ちゃんが心配でわざわざヤ印団体の家にまで潜り込んだってのに、何でここで自分の命系の話題に持ってってくんだよ!?

新聞君は何も自分の言葉に疑いを抱いていない。

小陽ちゃんも俺もドン引きである。


「なにさ!ただの『日常的な』話題を振って場を和まそうとしただけじゃない!」

「新聞君!もういいから!」

「う、、、うわあああああっ」

「新聞君をここまでしちゃったのって・・・やっぱり私のせいですか?」

「いまさら!?」


新聞君が床に頭を伏せ泣き喚く。

それをぼうっと見ていた小陽ちゃんがど天然なことを言いだす。

俺がないわあ・・・という視線で見つめると彼女はすっと目線を逸らした。


「心配しなくてももう二人を始末しようとか思ってないです。」

「「もう!?」」


やっぱ予想通りだった・・・山梨小陽は負けた腹いせに最初は始末するつもりだったんだ!?

小陽ちゃんは使用人さんが持ってきてくれたお茶うけをミニ机に並べながら俺達と同じように床に女の子座りで座った。


「うちは警備会社を営んでますから・・・銃の扱いも長けててですね、最初の内は銃を憂さ晴らしに撃ちまくってました。」

「警備会社は銃を使ったりしねえよ!?」

「アマチュアですね・・・普通使いますよ?」

「「・・・(大問題だよ?)・・・・」」


彼女はほらと小さなゴミ箱を指さした。

なぜか局部ばかりを撃ち抜かれた人間型の的が沢山ある。

よく鏡とかでみる顔が的に貼りつけられている。

悲しいことにこういう恐怖には慣れてしまったので、今では下がキュンってなるぐらいで済む。


「でも、、、苛立ちを一度スッキリさせたら・・・いろいろ考えちゃって」

「「?」」

「黄金比生・・・元生徒会長は凄く綺麗で賢い私の憧れの人でした。だからあの人の為に・・・出来ることは何だって出来た。」


それは・・・恋と同じものなのだろう。

かなわない恋でも、、、その人への好意が、、、どれだけ苦しい献身でもやり遂げられてしまう力になる。

そういう意味では俺と小陽ちゃんは似てるかもしれない。

でも彼女は俺より強いし現実を見てる。


「黄金比さんはそれを望んでないってことに・・・古畑さんが立候補した時に気付かされちゃって・・・私は・・・私は・・・あんまりにも自分勝手に動きすぎてた・・・」


心を許した新聞君が近くにいるからだろうか

彼女は弱音を吐いて顔をうつむかせる。

揃えた前髪が顔にかかるためどんな表情をしてるのか分からないが、少し泣きそうな表情を隠してるんだろうか。

小さなしゃくり声を上げながら小陽ちゃんは肩を震わせる。


「新聞君・・・今まで巻き込んでごめんなさい・・・もう迷惑かけないから・・・もう近づかないから・・・だから新聞君にもう殴りかかったりしないから・・・家にまで探りに来なくていいよ」

「・・・・・・小陽ちゃん」


新聞君が手を差し伸ばそうとしてその手を止める。

まあ、誰が好き好んで殴られたいって思うかだよな。

賢い人間なら誰だってここで手を差し伸べたら以前の関係に逆戻りになるのが分かる。

命の危険に怯えさせられ、痛い思いや恐怖にいつも心臓をビクつかせる。

新聞君はそのことが分かる賢い人間だ。


それでも彼は手を宙に浮かせ続ける。


そんな賢く正しい道ばかり選んでいたら

彼は鷺ノ宮高校なんて学校じゃなくもっと優良な進学校でも通っていただろう。

彼は俺やハマリュウや清廉君なんて地雷だらけの悪友と付き合いなんてしなかっただろう。

彼は朝日奈さんの無茶ぶりに付き合わず受け流していただろう。

彼は小陽ちゃんに深入りしようとしなかっただろう。

彼は小陽ちゃんを心配してわざわざ家まで訪ねたりしなかっただろう。

新聞君はとても優しい人間だ。


「・・・(駄目だ、選べない)・・・」


新聞君は手を宙に浮かせたまま唇を噛みしめる。

賢い自分がこれ以上深入りするなと叫び、優しい自分が彼女を慰めろと悟す。

どちらも彼の本心だから、、、彼はどちらも選べない。


選択の制限時間は徐々に迫る。

制限時間切れれば強制的に賢い方を選ぶことになる。

それなのに、、、彼は自分の意思で選択肢を選べない。


「・・・・(くそっ!くそう!)・・・・」

「・・・しゃあねえなあ」

「うわっ!?」

「きゃあ!」


俺は彼の腕を掴むと小陽ちゃんの方へとグッと引っ張った。

自分で選べるようになるまで選択肢の時間を『延長させた』のだった。

新聞君の優しい部分が残るか、、、負けるか

今決めるにはあまりにも惜しいと俺が思っちゃったんだから・・・



・・・だから小陽ちゃんそんな睨まないで

新聞君の手が小ぶりな君の胸に不時着したのはただの事故です。

その握り込んだ手を解いて・・・ね?

小陽ちゃんは新聞君に渾身の肘鉄を叩きこむと後ずさりながら涙目で胸を抱き寄せた。


「いいいいきなり何するんですかあ!」

「ぼぼぼ僕は如峰月君にやらされただけで・・・ぶほつ!?」

「いやあ、二人ともお互いを知らずに黄金比さんっていう繋がりがあっただけだろ?だからそれがなくなったら会わなくなるってことだろ?」

「そうですけど?」

「なんか違うと思ったからやった。」

「理由になってません!」


・・・新聞君は気付いてくれたようだけどね。

彼は俺にニッと笑いかけてきた


「如峰月君、、、ありがとう」

「それは・・・二人が共謀していたという事で捉えて結構ですね!?」

「「殴らないんじゃなかったの!?」」

「そそそ、それとは話が別です!」


新聞君のラッキースケベ(人為的)によって稼がれた僅かな選択肢を選ぶ時間の猶予

その代償に見合った答えが出せたのか・・・それはまた未来の話


「「ギャアああああアアッ!!」」


稼いだ時間の代償はあまりにも割に合わなかった・・・






「へえ、そんなことが・・・」

「ええ。だから俺はしばらく休んでいいと思うんです」

「ふうん」


翌日学校サボったせいで更に穂のちゃん先生に絞られた俺は何故か生徒会館に呼びつけられた。

相変わらずデカくて豪華な生徒には勿体ないその屋敷のような建物。

その二階の生徒会室。

今まで入ったことは無かったがやはり凄まじいもんだった。


液晶テレビにノートパソコン常備

大型冷蔵庫に休憩用のソファは外国製。

会議用テーブルは生徒会メンバー七人が座ってもまだ余裕がありそうだ。


この部屋に釣り合ってないのは俺とこの部屋の主で・・・俺を呼び出した彼女ぐらいじゃないだろうか?


「古畑さん、、、許してください、、、」

「ダメ♡」


古畑さんが会長用の大きな机に置かれた一枚の紙を笑顔でトントンと叩く。


-クエスト-生徒会役員を揃えて欲しい

【補足:新生生徒会を早めに結成したいのだがメンバーがなかなか集まらない。旧生徒会メンバーは黄金比以外の下では働かないとかいうし私の名を恐れてか希望数も思ったより伸びない。希望した人間も私が望むレベルに達してない・・・如峰月桜を生徒会に組み込むかとも思ったが最後のチャンスを与えることにした。生徒会に無理矢理組み込まれたくなかったら人員を私の代わりに集めて欲しい】

適正レベル:如峰月桜 報酬:如峰月情報の秘匿 私をハメたことを忘れてあげる 依頼者:古畑真琴

成功条件:古畑真琴が納得する陣営を揃える。埋めて欲しいポスト≪生徒会男子副会長、生徒会女子副会長、生徒会会計、生徒会書記、生徒会庶務2名 尚、生徒会男子副会長は頑張らなくてもいいよ?≫

失敗した場合:いろいろバラす 誰かさんが生徒会男子副会長になる 



何でクエストなのとか俺を生徒会に巻き込む気満々なのは何でだとかツッコみどころ満載なのだが俺に拒否権が無いこの理不尽なお願いこそが俺が呼ばれた理由だった。


「てか許してもらうためにはなんだってしますけど、生徒会役員探しはこれから仕事を一緒にする人達を決めるんだから自分でしましょうよ」

「新聞部の新人大会が近いから無理。せめて前々から根回しできれば良かったんだけどそんな時間もなかったし・・・誰かさんのせいで?」


彼女の指が『いろいろバラす』の七文字をねっとりと何度もなぞる

・・・七文字にここまで恐怖するとは

このままではやる気のない二人だけの生徒会とかいうわけのわからんもんが誕生する。

それどころか古畑さんが新聞部の掛け持ちをしている以上7人分の仕事を引き受ける羽目に・・・なる!?

それは過労死一直線じゃねえか・・・


「わっかりましたよ・・・古畑さんには謝ろうと思ってたとこですし世話にもなってます。生徒会男子副会長含む6名全員きちんと揃えますよ」

「生徒会男子副会長は最悪『無理矢理』決めるから生徒会男子副会長除く揃えるのは5名でいいよ」


古畑さんは内心と表情を別に出来るタイプの人間だ。

にっこにこしている彼女だがその内心は真っ黒な炎が巻き起こっている。


生徒会長の机の上にはクエスト表以外に置かれてる書類は沢山あったがある意味一緒だった。

俺が失敗した場合にばらまく書類の一部・・・


『覚えてないけど白凪優子の胸に自分から顔埋めてる写真』『伊月葵に貸したシャツ実は君のなんじゃ疑惑』『無駄に怪しい今回の英語の成績表と○研ゼミの問題一部抜粋』『朝日奈楓とのいちゃいちゃまとめ』『古畑さんハメたことへの謝罪文』『新聞君と小陽ちゃんについてまとめ』


ちなみに生徒会男子副会長が決まらない場合もばらまかれる書類である・・・最後の二つは特に問題ないが、ばらされた翌日には白凪優子に土下座した後伊月と顔合わせられないこっぱずかしい感じになりそのまま校内放送で停学を伝えられ放課後ぼっこぼこ~にされる。

・・・よし、がんばろう





新聞君と小陽ちゃんは巻き込むとして・・・のこり四人か

絶対に蚊帳の外でいたいから新聞君は絶対に必要だ。

古畑政権は基本古畑さんが怖いから人が寄り付かない

新聞君みたいな優しい人が入れば少しは和らぐだろう。

そして次の人材は・・・


「うっす。」

「・・・あんときのふざけた記者か」


体育副委員長・・・そして新体育委員長になるであろう候補者№1を訪ねた。

彼に事情を説明すると彼はざまあみろと笑った。


「あんなふざけた記事作った罰だ」

「それは今痛感してるますよ・・・で?お願い聞いていただけます?」

「やだね。」

「・・・理由だけは教えてくんないっすか?後、考えてた生徒会メンバー教えてもらえるとありがたいっす」

「お前、、、たかりに来やがったな?」


彼がまあいいがと口頭でメンバーを教えてくれる。

・・・駄目だ、既に古畑さんがボツにした人たちばかりだ。

真面目で、、、堅実な人たち。

俺がため息をつくと彼はくくくとおかしそうに笑った。


「得票率90%って聞いたとき実感したよ。生徒会長になるのに一番大事なのは流れっていうか・・・楽しさっていうか・・・そういうもんなんだろうってさ」

「人気っていうか・・・言いにくいもんっすよね」


ただ真面目で・・・皆のことを思うだけでは生徒会長には選ばれない。

皆の為の政策を作る意欲があってそれを実現できる能力があるだけではだめなんだろう。

俺がかつて思い知らされた事実・・・朝日奈楓に思い知らされたそのことを俺は再び実感させられた。


「ま、そんなわけだし・・・皆俺が生徒会に入ることは望まないんだよな。」

「俺はむしろ先輩にこそやってもらいたいと思ってるんですけどね?」

「バカ言え・・・俺が耐え切れねえよ」

「ツッコミ属性(笑)は大変ですね・・・」

「今まさに苦労してるよ・・・野球部も体育委員会もなんかふざけた奴らばっかだし」

「体育委員長(仮)さん!」

「え?俺体育委員会委員長させられるの!?」


彼が『ちょっと待て!体育委員会委員長とか引き受けるって言った覚えないんだけどォ!』とか後ろから聞こえてきたがそんな声は聞こえなかったことにして俺はその場を後にした。

体育委員長探しまでしてたまるか!





「まさかここまで難航するとは・・・」


疲れた体を休憩スペースの椅子に横たえた。

自動販売機でピッピと選んだフルーツ牛乳とイチゴジャムパンを齧って飲んだりしながら今までの苦労を思い返す。

殆どの使えそうな人材に声をかけて見たが大抵に断られたんだよなあ・・・

一番の問題は生徒会が大変そうってイメージが染みつきすぎてて誰もしたがらないんだよなあ

せめて黄金比さんみたいなすんげえ美人でもいればいくらでも人が入るんだがなあ

ほら?みんな単純だし?


「あれ?如峰月?」

「・・・伊月?」


伊月が制服姿で立っていた。

彼女は自販機でスポーツドリンクを買うと俺の真向いの席に座った。

伊月はそのまま一口口をつけると疲れた顔でため息をついた。

・・・どしたん?


「どしたん、そんな顔して」

「・・・ああ、部活がまだ決まってなくてな。まさかフェッシング部が無いとは・・・」

「別に伊月ならどんな部活でも大歓迎だと思うぞ?」


そういえば伊月の猶予期間はもう一か月切ってたっけ?

とはいえ伊月は背も高いし運動神経も動体視力もフェッシングのお蔭で全国レベルだ。

どんな運動部でも引っ張りだこだと思うがな。


「駄目だ。なんか違うんだよな、どの部も・・・しゅ、手芸部には興味がなくもないが」

「文化部か、、、いいんじゃね?」

「は、、、入ろうとしたら運動部は一号館の方だよって・・・」

「・・・まあ、あれだよ?もう一回行ってみろって」

「に、、、二回目はもしかして生徒会に入ったの?これ取りに来たの?って・・・」

「あ、渡しとくね・・・」


伊月が涙目で手芸部の予算編成表を差し出してきたのでそれを受け取った。

・・・てか、ドンだけ手芸部の皆さんは伊月は手芸向いてないと思ったんですかね?

伊月がふるふる震えてるので慰めてやりたいが、、、下手なこといえばフェッシング部作ろうとかいう変な流れになりそうだし・・・


「ういるるいるし新聞部はいるか?」

「と、、、友達に寄生してるみたいで嫌だ」

「めんどくせえな、おい・・・」


伊月葵・・・転校生だからまだ人望は低いけどいずれは皆に尊敬される人間だろう。

俺よりもよっぽど優れた人間で重要NPCになれる人材だ。

・・・将来性に賭けるか


「伊月、生徒会に入る気ねえ?一応部活扱いになるしさ」

「生徒会?転校したばかりの私でも入っていいのか?」

「古畑さんに気に入られてるし大丈夫だろ?」

「でも古畑さんとは喋ったことあんまりないし、、、知り合いが全くいないとこに入るのは抵抗があるな」


伊月メンドクセ・・・

友達がいるところは行きたくないし、かといって知り合いがいないところは無理とか・・・

どんだけ人見知り体質なんだコイツは!

新しい出会いを求めてかないと駄目だよ、本当に!

伊月はちらっちらっとこっちを見ながらもじもじし始める。


「でも・・・ほ、如峰月が入るなら、、、してもいいかな」

「・・・う~ん」

「べ、別にお前と一緒に何かしたいとかいうんじゃないんだからな!一人じゃ厳しいだけだからな!」

「へいへい、分かってますよ」


思わずうめき声を出したらめっちゃ叫ばれた。

休憩スペースにいる他の連中がこっちをジトメで見て来る。

・・・ごめんなさいね、うるさくて


でも、そうだな・・・

これ以上時間かけてると古畑クエスト失敗で生徒会男子副会長(厄介ごとをほぼ押し付けられるでオケ)にさせられるな。

今は一人でも生徒会に入ってくれる人材が欲しいし・・・しょうがない肉を断たせて骨を粉砕するだ。


「分かった、俺は生徒会庶務で入るから生徒会会計やってみね?」

「うん!それならいいぞ。」


伊月はうんうんと何度も頷いた。

よし、これで現状はと・・・


生徒会会長 古畑真琴

生徒会副会長 新聞佑 山梨小陽

生徒会会計 伊月葵

生徒会書記『』

生徒会庶務 如峰月桜 『』


ってとこか・・・

後二人どこで調達するかな・・・


「伊月、、、後二人人材が必要なんだけど誰か知らね?」

「とはいっても・・・まだ来て一か月でそんなに知らないんだけどな」

「なんか生徒会入ってそうな人挙げてくれりゃあいいから」


外から見てもらうと意外と確かな評価を下してくれることがある。

内部から見るとどうしても関わりを持ってしまうから感情で見てしまいズレが出来る。

もしかしたら俺達が見落としてる優良物件があるかもしれない。

伊月はう~んと悩むとああと手を叩いた。


「・・・なんか無駄にキラキラしてて、おっぱいおおきい人」

「黄金比さん!それ黄金比さん!元生徒会長!」

「ああ、そうなんだ。おっぱいおおきいから名前なんて飛んでいた・・・チッ」


伊月は忌々しげに舌打ちをする・・・いや伊月もそれなりにあるんだからキレることはないだろう。

流石に空母級(黄金比)や巡洋艦級(白凪)には敵わないかもしれないが、鍛えててスタイルが良いんだし寧ろ彼女はそれぐらいだからこそ美しい。

白銀比ってやつか・・・何、考えてんだ俺は

伊月が不思議そうにこっちを見て来るので俺はふいと目線を逸らした


「黄金比さんは三年だしな・・・他は?」

「・・・いつもかわいそうな眼鏡の委員長」

「あの子は入れてあるから・・・あと可哀想とかいうんじゃねえ!」

「そうはいっても、、、他は、、、」

「なんか可愛いとかカッコいいとかそんなんでいいぞ?もう古畑さんに新聞君いれば実務は完璧だし。てか寧ろサクラで入れて釣られてきた蛾で人数埋めよう・・・これ以上探すのめんどいし」

「如峰月・・・適当にしたら古畑さんマジ切れすると思うぞ?」

「ううっ・・・どないしろと?てかあの人がちょこっと脅迫(交渉)すればいいじゃん!何で俺がこんなに疲れなきゃいけねえんだよ!」

「私にそんなこというな・・・」


フルーツ牛乳をぐいっと飲んでパンをががっと詰め込む。

そしてうんしょと立ち上がる。


「伊月愚痴聞いてくれてありがとな。」

「え?」

「いや、ちょっと愚痴っちゃったなって思ってさ。こういう愚痴っぽいのって友達にはなかなか言えねえし家帰っても聞いてくれる人いねえからさ」

「・・・そうなのか?」

「ああ、気付かないうちに自然に愚痴っちゃってたわ・・・伊月だからかなあ?」

「そ、、そんなことを急に言うな、まいひーろー・・・(小声)」

「だからまいひーろーじゃねえっつの」

「!?」

「グハッ!」


スーザ先生が伊月になんか教え込んでいるようで伊月の正拳突きは物凄く痛かった。

・・・耳が想像以上に聞こえすぎてるんだからしょうがねえじゃん。

一応耳栓してんだぜ?これでも・・・


「はあ、、、はあ、、、はあ、、、」

「落ち着け・・・お前の拳は既に凶器に近いんだ」


伊月が前のヤンデレ伊月さんのような雰囲気になり始める。

・・・からかいすぎたな

すていすていとしばらく頭を撫でていたら少しだけおとなしくなった。

そして私は犬かとまた殴りかかって来た。


「(; ・`д・´)///ムカムカ」

「悪かったって、、、今度なんかおごるからさあ」

「・・・ラーメン」

「はいはい、、、んじゃ俺はもう少し回ってみるし先に家帰ってな」

「ああ・・・」

「まったな~」


後二人か・・・溜め息しか出ない。

正直もう当てがない。

古畑さんが俺に任せたのは出来る限り自分で来てくれるやる気のある人材が欲しいってのもあるんだろう。

でもそれと能力って意外と釣り合わないしなあ・・・

もう疲れたよ・・・


「如峰月!」

「・・・あん?」


伊月がいつもしないような苦しそうな・・・まるで迷ってる顔をしていた。

ほっとけない顔だった

・・・?


「ほ、如峰月のあの可愛い幼馴染は誘ってないのか?」

「可愛い・・・ああ、朝日奈さんね。誘っても無駄だろうさ」

「そっか、、、誘ってないのか」


何をほっとしてんだコイツは・・・まあ、あの娘が生徒会に入ったら確かに仕事ふえて生徒会全員過労死だろうけど。


でも、そもそも・・・


あの娘は部活を疎かにするだろうと断るだろうさ

サクラとして使いたいから名前だけ下さいとかいうのも真面目な彼女は断るだろうし

なにより、、、俺と彼女の間では生徒会はタブーだ。


でも、、、伊月は違う考えみたいだ


「何となくなんだが、、、生徒会の為にも、、、お前の為にも、、、彼女を誘った方がいい、、、と思う」

「伊月の勘?」

「ああ、多分朝日奈さんも断らないと思う・・・少なくとも私があの子だったら断らない」


伊月はためらいがちに目を伏せながらそう言った。

自分でも確信が無いけどってところか?

確証もなく本当に勘でそう思ってるから・・・いや別の理由もありそうだが・・・主な理由はそれってか?

でも・・・伊月の勘は信用できるな


デメリットは

朝日奈親衛隊とかの妨害&制裁

苦労したとして彼女に辿り着いても断られる確率高い


メリットは

朝日奈さんなら間違いなく古畑さんのお眼鏡に適う

古畑新生徒会は朝日奈派からも黄金比派からも支持を得られる

朝日奈楓に群がる蛾が沢山生徒会入りを希望してくる・・・人が増えれば有能な人材も多く手に入れられるチャンスが増えるし俺が生徒会入りしなくてもいいかもしれない

後は、、、伊月、小陽ちゃん、朝日奈楓と見目麗しい生徒会になる


ぶるッ


生徒会室から殺気がとんだ気がしたが気のせいだろう


・・・んまあやってみねえとわかんないしなあ


「分かったよ、、、朝日奈楓・・・だあめもとで誘ってみるかあ」


古畑クエストの成否をかけた大勝負が始まった。


次回で第三章終了!

なんか連続で分厚い章になっちゃいました、ごめんなさい!

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