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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第三部:周り全て変わるとして、変わらないものがあるとしたら<曇の奇術師編>
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第2章魔国の影part4

これで第二章終了です!

「いくぜ!!!」

「『飛龍の左腕』」

「ハ~ナ~シ~テ~!!!イ~や~!!!」

「「「「「「「・・・(なんだこいつ?)」」」」」」」


とりま目に付いた紫色の龍に飛びかかろうとしたらスカイの龍の鉤爪に首根っこをひょいと掴まれた。

ぱたぱたと何とかふりほどこうとしても、持ち上げられた状態で力が入るわけもない。


「スカイ!俺の英雄伝説の幕開けを邪魔するんじゃねえ!」

「訳のわからんことを申すな!そもそもどうやってこの龍宮に入ったんじゃ!」

「俺にもわからん!!」

「ならなんで来てすぐ圧龍に襲いかかったのじゃ!!」

「ノリ!!」

「このキチガイが!!」

「お前いってはならんことを!?」


お仕置きだべえと雲を出そうとしていたら、桃色の龍が俺のほんのすぐ側まで鼻先を近づけてきた。

ふんすと吹き付けられた鼻息が妙に甘ったるい。

多分、、、コイツはスカイと同類だ。


「飛龍のん、こいつ水龍じゃないね~何?」

「言ったじゃろ?キチガイじゃと。」

「仲間だろうが!」

「よりによって敵味方関係無く攻撃する圧龍を選びおって・・・戦闘があのまま始まれば龍宮が半分壊滅しとったところじゃ」

「ムラサキ的にはアリ」

「なしじゃこの戦闘狂!!!サクラも圧龍もいい加減にせい!!」


スカイがガヤガヤ喚いて怒っているうちに、龍達は急激に身長を俺と同じくらいにまで縮めた。

どうやら龍は自由に全長を変えられるらしい。

同じ身長となったことでようやく彼らの姿をじっくりと眺められた。


姿形は飛龍や魔喰龍と似た西洋風な龍であるが、鱗の色がそれぞれ違っていた。

圧龍と呼ばれた龍が紫色だったり、こんな時でもスヤスヤ寝ている幼龍クリムゾンが紅だったりだ。


「あら?召喚を無視するのがいたから懲罰コースで一匹呼び出したはずなんですけど?」


龍達が一斉に頭を垂れた先にいたのは、金髪のスカイだった。

いつの間にこの場にいたんだろう?てかどこから来たんだ?

てか、、、、スカイ!?

慌ててスカイと金スカイを見比べる。


スカイはスボラで髪は緑で所々はねているのに対し金スカイはきちんと梳かしているのか絹のような細く柔らかい金髪。

胸元が開けた開放的な武闘家スタイルのスカイに対して、金スカイは日本の巫女服を彷彿とさせる服をしっかりと着ている。

何より育ちの良さが出ているのか柔らかい笑みの金スカイに対して、スカイは歯を向きだして俺や紫色の龍を威嚇している。


「よし、今日からお前は劣化スカ・・・ぶばっ!?」

「人間の世はようわからんが、、、悪口じゃということは分かるわい。」


飛龍の腕で地面にゴリゴリと埋められた。

俺が首だけ外に出る格好にまで埋められるまで黙って見ていた黒い龍が憎々しげに呟く。

体を人間サイズにするために龍サイズの刀っぽい剣を地面に置いた銀色の龍も面倒なことになったと腕を組む。


「水龍殿がこやつでないのはこれで分かったが、なら水龍殿は何故ここにおらん?」

「これでは飛龍殿の掟破りの件は後回しでござるな。」

「ムラサキはそれで構わない」

「・・・お主実質何も分かってねえでござろう?」

「龍巫様、一度水龍殿の意識だけ呼び出しをかけては?」


金スカイは龍巫様というらしい。

彼女は黄色の一つ目龍の言葉にうーんと考えこんでから首を振る。


「水龍の生命力を全然感じ取れない。水の隠密術式で隠れてるのかと思って感じ取れる中で一際生命力が強いのを召喚したらこの子だったし…」


龍巫様がこっちに話を振ったため皆の視線がこちらに突き刺さる。

うーん、喋っていい場ではなさそうだしスカイにお任せしとこうか…

取り敢えず笑いかけた。

・・・怖がられた。

全身植物のツタや葉で形成された茶色の龍が表情は読み取れねえから声で判断するが不思議そうに聞く。


「龍人でもないのに、何故龍と識別したのですか?」

「いや、間違いなく龍の気を感じましたよ?」

「多分じゃがこやつの身体に転生体の魔力が混ざったからじゃろう」


スカイのその言葉で空気が変わる。

今まで俺が急に現れても反応が薄かった彼らの感情が初めて揺り動かされた。

一つ目の黄色の龍が首を傾げる。


「龍人から転生体が出たとして、何故私の目に映らなかったのでしょう?そのような未来が見えればすぐ分かるはずなのに…」

「里の外の龍人まではお主の「予知」でも視きれまい。ほら、オオラのとこのじゃじゃ馬娘の」

「「「「「「「「ああ、あそこの」」」」」」」」


・・・有名なのか?


「あやつの息子が転生しかけて失敗したようじゃ。」

「飛龍のん~そいつは~?」

「『狂竜化』を三段まで使いこなしたが『出してはならないところ』から魔力を引き出してたようでな・・・」

「義龍は今回もダメでしたか・・・」

「白龍もそうでござるが、爆龍以来一向に転生せんでござるな・・・」


皆がまた俺をじいっと見つめる。

正確にいうといつの間にか俺の頭をいい枕にしてやがる幼龍クリムゾンをだ。

てか、爆龍なのねコイツ。

黒い龍がそう言えばと聞いてくる


「転生体ということは、、、共鳴鋼の原料を持っておるのか?」

「サクラ、見せてやれ」

「人埋めといて無茶言うな、、、んしょっと」

「ああ、確かに龍応石とこの子には同じ性質の魔力が流れてる。石とまとめて召喚しちゃったんですね、私・・・ごめんなさい。」


俺が何とか抜き出した右手の上の石を龍巫様はじいっと近くで見つめるとなるほどとうなづき、俺に謝って来た。

スカイがため息をついて俺を地面から抜く、そしてそのまま、しっしと俺に手振りをする。


「ほれ、もういいじゃろう?あまりいて良い場所じゃないんだからさっさと出るのじゃ。今回の件は不問にしてくれるようじゃし」

「まあ、あたしのミスだし」

「あ、ああ・・・」


納得いかない事ばかりだが、これ以上ゴネたら爺さんに迷惑がかかってしまうだろう。

龍たちに会釈してデカいこの部屋から出ようとした。

出ようとした瞬間、龍巫が声を出したりなんてしなければ部屋から喜んで出ただろう。


「ねえ」


龍巫が声を放った。


「水龍じゃない『龍』から水龍の回線で通信がきてるんだけど?」

「・・・意識界で通信の場を設けた方がよいのでは?」

「そうだね、、、野良の龍かな?」

「いえ、『聖龍』か『義龍』が郷の外の龍人に転生したのかも」

「そんな感じじゃないなあ・・・知らないってわけじゃあないんだけど・・・」

「どちらにしてもこの場に召喚するのは待った方がよいでござろう?」

「ですね」


・・・まさかな

足を止めてしまった。

主人公の直感ってやつが働いたのかもしれない。


「じゃあ全ての龍の精神をつなぐね。」

「まて!サクラがここにま・・・」


・・・やっぱりな。

スカイが言葉を言い終わる次の瞬間、俺が立つ場所は廃墟の中だった。

またドン・クラークの石の性能に巻きこまれちまったらしい。


「この石、、、疫病神すぎるだろ」


さっきみたいに死にかける程脅威があるわけではないが何だここ?

今さっき滅ぼされたばかりなのか未だにプスプスと硝煙が上がっている。


「ここは、、、龍人の里湖支部・・・」

「何故廃墟に?ここは水龍が守っていたはずなのに・・・」


七匹の龍とスカイと龍巫様が不審げに辺りを見回す。

クリムゾンが怖気を感じてか俺の傍に寄ってくる。

探ってみるか・・・


「『曇の網≪ネット≫』・・・でねえ」

「やっぱりお主も引きずり込まれたか・・・ここは精神世界じゃからの、物理的干渉は一切できんぞ?」

「まじかよ、、、」


魔術が使えないという現状に一抹の不安を覚えていると、聞いたことのある声が響き渡った。

インモラルと、、、忌々しい黒い肌の龍。

こっちの黒い龍とは違いその目には一切の知性のかけらが無い。

それどころか、、、より獣性が高まってすらいるように感じる。


「皆さんお集まりいただきありがとうございます」

「何者だ!」

「!?インモラルに、、、『魔喰龍』か?随分気配が濃密になってやがる・・・」


インモラルが魔喰龍を引き連れ俺達の前にいつの間にか佇んでいた。

桃色の龍がスカイの耳元で囁く。


「飛龍のん、あの黒いの何?」

「報告しようとしとったんじゃがお主らが聞く耳持たんからのう・・・魔国がらみじゃ」


インモラルは龍に対してすらその余裕の笑みを変えることはない。

彼女はすっと指をさした。

自然と皆がその指の先を見る。


「「「「「「「「「「!??」」」」」」」」」」


龍人たちが多数の魔物たちに囲まれていた。

龍人たちは皆抵抗したのか身体中に傷を負っており、その目からは悔し涙を流していた。

精神世界だからか龍たちからの激情をその身にじかに感じる

黒い龍が吠える。


「貴様何のつもりだ!」

「あなた方が話を聞くようにと最低限の準備です。」

「・・・人質でござるか」

「交渉材料と言って下さるとありがたいですね」


魔物に囲まれた龍人とソーラ・・・

今は龍人の方が死の危険がある・・・口をはさむわけにはいかねえ・・・

桃色の龍が悲痛そうに叫ぶ。


「水龍のんは!?私たちの中でも一二を争う強さのはずなのに!何でこの場にいないの!?」

「ああ、、、それは後から出すつもりだったんですけど知りたいなら・・・」

「、、、す、、、ま、、、な、、、い、、、」

「なんだ、、、こりゃあ?」


魔喰龍に魔力枯渇まで吸い切られたのかガリッガリに痩せた青色の龍が倒れ伏せていた。


「水龍さんが『水龍の咆哮』を搾りカスになるまで打ち込んで下さったおかげで『魔喰龍』の機能が増えたんですよ。お蔭で水龍さんの回線を通じてですが、遂に皆さんと交渉の場を設けることが出来ました!」

「・・・何が狙いじゃ?」

「おや?何で優先度Dのなんちゃって龍さんとイレギュラーさんまでここに?」

「「・・・(ぜってえあの衣とメガネ剥ぎ取って泣かす)」」


俺とスカイの中に仄暗い感情が沸き起こる中、龍巫様が前に出る。


「そこの龍人たちは私たちの育ての親の子孫たち。怪我なく生きて返してください。」

「ふーん。やはり予想通りですか・・・じゃあ魔国に龍人の郷は迎合していただきたい」

「・・・やはりそうくるのですね。」


やっぱりと龍巫様がため息をつく。

龍の力は絶大。

一龍が一国に味方するだけで世界の均衡が崩れる程に大きい。

魔国がもし今いる全ての龍を手に入れたなら・・・世界は一気に戦争へ移るだろう。

だが・・・


「貴方世界中を敵に回しますよ?」


そんな最強兵器を持った国を放置できるはずがない。

全ての国が徒党を組んで魔国を攻めるであろう。

しかし龍すら彼女を怯えさせるには足りない、、、不足。

インモラルは首を横に振る。


「人など放っておいても滅びる運命。考慮の余地すらありません。」

「私たちを矢面に置いて自分たちはのうのうと・・・というわけですか?」

「いえ、むしろ来たるべき時まで死なないように鍛錬だけしていただきたいのです。」

「来たるべき時・・・?」

「ええ、、、あなた方の勢力をもってしても打ち勝てないほどの強大な敵です。」

「・・・なにをいってるんですか?」


傲慢ではない。

常識に則ってそんな敵は現れないと断言する龍たち。

世界を敵に回すより恐ろしい敵?龍全てに打ち勝つ敵?


「相手は神だとでも?」

「非常に近い存在です」

「・・・いつ現れる?」

「人間が滅ぼされる一日前・・・とだけ」

「龍巫様!コイツ話をぼかしてばかりです!どうせ我々を戦争の道具にするつもりです!」


インモラルは首を残念そうに振るとパンパンと手を叩いた。

皆が彼女に注目するのを確認すると彼女は口を再び開いた。


「あなた方龍は優先度A、そしてとある事情からあなた方の『命綱』の龍人も優先度Bに昇格しました。出来ればあなた方には自分から魔国に従っていただきたいのです。」

「『命綱』?・・・ハッ!?それを・・・何故それをお前が知っている!」

「龍人の郷の場所は流石に分かりませんが、皆さんのことはある程度分かるようになるもんですよ?『世界が変われば』ね?」

「めんどくさい言い回しが好きにやつなのじゃ・・・」

「そうです!私は面倒な言い回しが好きなのですよ!世界に役を与えられた私は誰よりも台詞に気をつけなければならないのだから!」


彼女はそれはそれは大袈裟に手振り身振りをつけて嬉しそうにスカイに応える。

こいつ、劇場型の人間か・・・

手振り身振り声の質で自分を魅せることにこだわり持ってる奴だ。

交渉を上手く活かせる方法を知ってる奴だ・・・

彼女はゆっくりと指を三本挙げる。


「人質を取られてるあなた方の選択肢は三つ。一つ、魔国に従う。二つ、徹底抗戦。三つ、魔国の力を知ってからもう一度考え直す。」


おそらく本当にコイツは自分から従って欲しいと考えてるんだ。

そうだとすれば人質を取られて身動きできない龍たちは二の選択肢を取れないし、一を選ぶ気もないだろうから・・・

俺の予想通り龍巫様は三つ目を選択したくなる・・・これは交渉じゃない・・・選択肢を既に強制されてるんだ。


「三つめってどういうことですか?」

「模擬戦争です」

「・・・模擬戦争?」

「ええ、龍人の郷にこの魔国製の『魔喰龍』が攻め込みます。それをあなた方龍たちが阻止できるかという話です。」

「阻止できなかったら?」

「あなた方はこの水龍さんと同じようになり、龍人さんは皆我々の管理下に・・・我々には逆らえないと思い知ればあなた方も下手に反発しないでしょう?」

「素直に龍人の郷の場所を教えるとでも?」

「教えなければここにいる方々は死にます。」

「・・・ぐっ」


龍たちが苦々しい表情を浮かべ、命のたずなを握られた龍人たちが恐怖の表情を浮かべる。


「もちろん一か月の猶予期間を置きます。その間に最低限の準備が必要でしょうし。」

「・・・一ついいでござるか?」

「ええ、どうぞ?」


銀の龍は首を傾けて、疑問の声を呈する。


「お主のその龍一匹で我ら全員を相手するつもりか?」

「ふふふ、、、無理に決まってますよ。」

「ならどうするのだ?」

「あなた方の戦力を分断します・・・ほら」


インモラルが指さすたびに状況が悪くなる・・・

彼女が指さす先が歪み、、、新たな光景を映し出す。


「it´s show time♪」

「・・・冗談キツイって」

「なんじゃこの軍勢は・・・」

「ほら、、、皆さんの龍人の郷って三つ支部があるじゃないですか?火山と湖と深林?その最後の一つに二万の魔物を侵攻させてるんですよ。」

「貴様ァ・・・」

「十分、、、いや五分でいいから私たちだけで話す機会をください・・・」

「十分差し上げます・・・時間は守って下さいね?」


弱弱しく応える龍巫様に優しく笑いかけるとインモラルと魔喰龍は姿を消した。

血の気の薄くなった龍巫様をスカイが慌てて支える。

他の龍たちも同じように完全に気を落としている。


「・・・圧龍、、、そして暗龍は今すぐ深林支部へ跳ばします。」

「待ってくれ!元々防衛を任されていた圧龍は分かるが俺まで飛んだら龍人の郷の防衛はどうなる!」

「飛龍と斬龍と私」

「いくらなんでも・・・飛龍も掟を破ってこの様ですよ?」

「大丈夫じゃ、もう覚悟は決めておる。」

「・・・その石を壊すつもりか?」

「覚悟は決めた・・・問題ないのじゃ。我儘を通すつもりはないけえ、安心してけろ。」

「・・・わかった」


龍巫様が手をかざすと紫色の龍と黒色の龍が掻き消えた。


「木龍は物資調達、視龍は侵攻される未来を出来る限り把握しておいて・・・」

「「分かりました」」


龍巫様が手をかざすと茶色肌の植物龍と黄色肌の一つ目龍が掻き消える。


「幼い君には大きすぎる責任だけど、、、湖支部の皆を水龍の代わりに守ってくれるかな?」

「ギャウッ!」

「そっか、ありがとう。生龍も治療に向かってあげて欲しい」

「いいよ。」

「君たちを跳ばすのは交渉次第ですどね・・・」


丁度その瞬間再び魔喰龍とインモラルが姿を現した。


「どうです、決まりました?随分数が減ってるみたいですけど?」

「はい、模擬戦争受けます・・・条件を飲んでくれるなら」

「そうですか、、、条件とは?」

「一つだけです。湖支部の解放・・・それだけ。」

「・・・それだけ飲めば龍人の郷の場所を教えると?」

「うん。」


インモラルは少し悩むとまあいいかと首を縦に振った。


「言っておきますが深林支部への侵攻は龍人の郷と同時ですよ?」

「うん、わかってる。」

「負けた時は素直に従っていただきます・・・その証拠を提示願いたい」


彼女は苦し紛れに提案する、、、いやせざるを得ない。


「私は全ての龍の代表者。私の言葉にはみな従う・・・だから今回の戦いには私は参加しない。」

「なるほど、、、ちなみに模擬戦争ですから龍人や外部の方が参加しても構いませんよ?」

「・・・冗談でしょ?」

「いえ、冗談ではないです。恐らくあなた方の戦力では魔喰龍には勝てませんから」


腹の探り合いでは魔国側が常に上に立っている。

彼女は指を折りながら龍巫様の表情の変化を確かめる。


「・・・へえ、そこまで内情分かってるんですか。」

「簡単な逆算ですよ。あなた方十二龍のうち義龍と聖龍は未だに転生ならず。視龍、木龍、生龍、爆龍は戦闘向きではない。深林支部への防衛も二万もの魔物への防衛と考えれば二匹は駆り出されるはず。となると水龍をほぼ喰らった魔喰龍が相手にするのは二匹の龍ですかね・・・合ってます?」

「もちろん私が参加出来れば話は変わるんですけどね・・・」

「あなた自身がそれを望んだんですよ?私は何も言ってないんですから」

「くっ、、、その通りです・・・」

「外部が関わって良いなら俺も出る。つまり魔喰龍vs俺+スカイ+銀色龍ってことか?」

「ふふふ、、、たったそれだけで魔喰龍に勝てるとでも?・・・今『誰が』しゃべりました?」

「私じゃないよ」

「私でもござらん」

「すまん、、、このキチガイじゃ・・・」


スカイが俺のすねを思いっきり蹴ってくるがそれを無視して俺は龍巫様の隣に立つ。

自分の思い描いた台本を邪魔されたインモラルが眉をひそめるその顔に指を突きつける。


「この俺がここにいる。」

「ちょっと!これは龍人の郷と魔国の問題ですよ!」

「そのとおりです、あなたはこの場で話していい『役』ではない。力が無いあなたはこの場で話すどころか本来はいること自体が許されないんだから。」


二人の『この場』の主役が俺の存在を否定する。

しかし俺はそれを逆に否定し返す。


「違うね。俺は主人公なんだから全てに口を出す義務がある」

「話になりません。龍巫様、こんな小さなイレギュラー放っておき・・・」

「かつて龍人の里火山支部を守る為に一万の魔物を屠り、幹部の『最凶』を剣一突きで倒した。」

「・・・それで?」

「湖が出来てたぐらいは知ってんじゃねえの?あれ?俺の仕業だって知らなかった?知らないこと多いみたいだな♪」


インモラルが初めてピクリと動揺を見せる。

かかったな・・・こういうタイプは自分の思い通りに行かないことをいつまでも覚えてるタイプだからな。

俺はニヤッと笑いながらくるりくるりと彼女の目の前で指を回す。


「そして出会ったアンタの実験を今まで潰してきたのもこの俺だ。そして今回も止めるのは俺だ」

「一回負けたあなたが?」

「知ってるか?主人公は負けたら更に強くなって帰ってくるんだぜ?」

「ねえ、私とこの人の争いのはずなんですけど・・・」

「「うるさい、だまってろ」」

「ええ・・・」


龍巫様を軽く跳ね除け俺達二人は睨みあう。

もしここがアニメやドラマなら激しい火花のエフェクトでも入るくらいに。

スカイがやれやれとため息をつく。

銀色の龍、桃色の龍、幼龍クリムゾン、龍巫様がええって目でこっちを見ている。


「実際アンタ。こういう空気になるのを想定してたか・・・してないよな?」

「・・・龍巫様?」

「はっ、はい!」

「場所は明日湖支部に使いを寄越して頂いてその方に教えて頂くという形に・・・よろしくて?」

「だ、大丈夫です」

「そうですか・・・ではごきげんよう」


ごきげんようという雰囲気を全く出すことなくインモラルは無理矢理作った笑顔で一礼した。

してやったりと笑う俺は優雅に一礼。

龍巫様は慌てて一礼、他の龍は場に流されることなく礼をしなかった。

インモラルたちが掻き消えて、再び最初の広間に場所が戻った。


「サクラ」

「スカイ・・・戻るや否や胸ぐら掴むのはどうかと思うよ?」


広間に戻るや否や俺は怒ったスカイに壁に押し付けられていた。


「お前、、、なんてことを・・・」

「いやいや、困ってる人達助けるためなら俺も頑張るよ?」

「あそこまで相手を怒らせたらまずお前が殺されるんじゃぞ!」


スカイが彼女にしては珍しく大声で怒鳴る。

・・・実際彼女がここまで感情を出したのを見たのは初めてだった。

いつもどこか厭世的で人らしい動作をしながらも『龍』であった彼女が初めて人らしい感情を見せていた。


「飛龍のん・・・」

「ギャウ・・・」


桃色の龍とクリムゾンが声を出したことで、スカイはハッと自分が大声を上げていたことに気付き俺から離れた。


「ゲホッ・・・ゲホッ・・・まあ任せとけって何とかするから」

「それは誰かが助けてくれるという事か?」

「面白いこというなあ、スカイは・・・コウ・レイペンバーにボロ負けしたくせに」

「ちょっと待って二人とも!」

「『黒曇衣≪コート≫』」

「『風纏≪フウテン≫』」


手甲と鞘が甲高い音をたててぶつかり合う。

二か月、、、いや三か月か?

それだけの期間毎日一緒にいればお互いのことがよく分かってくる。

だからこそ、、、争う。


「『弾け』」

「無駄じゃ『風弾』」

「至近距離はずるいぞ!『曇の支配権奪取≪ハッキング≫』」

「魔法に気を取られ過ぎじゃ」

「グアッ!」


魔法鞘で吹っ飛ばそうとした瞬間、腹に魔法風弾を

喰らわせようとスカイが動く

それを黒雲で衝突する前に分解しようとしたら、彼女は喰らわせようとして動いていた身体を沈め、脚に力を込める。

ブラフだったか、、、スカイの蹴りが顎に入った。

『内在型身体強化』じゃあ間に合わなかっただろうが『黒曇衣≪コート≫』だったお蔭で間に合った・・・

顎を覆うように広がった『黒曇衣≪コート≫』を元に戻しながら右手を構え直す。


「もう終わりかえ?」

「そっちこそ『曇の一撃≪ショット≫』×沢山」

「随分黒雲の操作が上手くなったのう」


スカイがすっすと踊るように移動するその瞬間、彼女がいた場所を雲の槍が通過する。

流石スカイだ・・・回避に関しては俺なんかじゃ及ばない。

『曇の一撃≪ショット≫』の数を更にマシマシ


「お主、阿呆か!」

「はは!何とでも言え!」


パチンコ店のスロットで延々とパチンコの玉を撃ち出すように一秒間○○発をやってのける。

これも疑似暴走魔力のお蔭である。

スカイは俺に近づくどころか止まった瞬間に何十発もの黒雲の槍に貫かれることになる。


「ほらほら足元がお留守だ!」

「このう、、、!?」


スカイが足を遂に止める、、、いや動かせなくなった。

超粘度の黒雲のプール、、、『曇の沼≪プール≫』が彼女の足を膝まで沈ませ、縛り付ける。

最低限の防御ぐらいは間に合うだろうが、立ち上がれないぐらいの威力は喰らう。

俺はそれを知ってるから手を止めない。

黒雲の槍が立ち止まる彼女に

殺到

殺到

殺到

殺到する。


「『大きな大きな黒雲よ』『集まれ』『凝縮』『狙え』『放出』」


『曇神宮の柱≪クラウド・ポール≫』

黒雲の大槍が黒雲の槍群に埋め尽くされた彼女を更に貫く。

密度があまりに濃いため、周囲に使いきれなかった黒雲が漂う


「気持ち悪いぐらい濃くて荒々しい邪悪な魔力・・・龍の魔力だけじゃないね、これ。」

「そうでござるな・・・人間の身で『出してはいけないところ』の魔力をつかえるでござるか」


銀龍と龍巫様が俺の黒雲から感じる魔力をそう評する。

それでも、、、これが俺の力だ。

黒雲で彼女の姿は見えないが声ぐらいは届くだろう。

大声を張り上げて彼女に呼びかける。


「どうだスカイ!これでも役たたずか!?今なら許してやるぞ!」


・・・返事がねえ

まさかやり過ぎたか?いや寧ろ・・・

漂う黒雲を槍から『曇の網≪ネット≫』へ


「・・・!?いねえ!?」

「お主はいつでも間違える」

「なっ!?」


急に後ろから強大な力がかかりそのまま壁へと叩きつけられる。

雲の魔術で対抗する前に首根っこを掴まれ空へと放り投げられる。


「『鎌鼬・十爪』」

「っ!?『弾け』!」


十の爪が振り挙げられ、風の刃が飛び出す

届く前に鞘で弾くがそれで体制が完全に崩れる。


「もういちどじゃ、『鎌鼬・十爪』」

「『動く曇道≪オート・ステップ≫』+『曇の壁≪ウォール≫』!」


雲の道が俺の足を絡めとり空で逆さに立ちながら、雲の壁で刃を弾く。


「ふん、それなりじゃが・・・『曇の魔術』が無いと何もできんのじゃな、お主は」

「・・・その俺に追い詰められて龍に戻ったんじゃないのか?」


俺は首を上げて、地面にたたずむ飛龍を見た。

飛龍の足元には砕けた緑の水晶の首飾り。

なんとなく彼女がスカイ・ドラゴナーに二度と戻れないんだろうなと悟った。


「お主はいつもそうじゃ。誰かを救おうとして無茶をして結局誰かに助けられる。虫の小僧の時は余が、氷のねばねばの時は牢獄の小僧が・・・という具合にな。」

「だから?」

「お主は人に迷惑をかけなきゃ何もできないというておるんじゃよ」

「俺に勝ってからいえよそういうことは!」

「余に勝てるのかえ?龍の肌に『曇神宮の柱≪クラウド・ポール≫』は通じんぞ?そうなるとお主は余にどうやって勝つつもりじゃ?『嵐曇の落水≪メテオ・ストーム・アクア≫』かえ?『嵐曇の超密大網≪オーバー・ストーム・ネット≫』かえ?それとも『嵐曇の極一撃≪オーガ・ストーム・マグナム≫』かえ?」

「・・・」

「無いのじゃよ、、、お主は龍に勝てん。『嵐曇魔術≪スーパーセル≫』のないお主では」


飛龍は左手をすいとひねって元に戻す。

・・・体が吸い寄せられる!?

飛龍の左腕に風の魔力が集まっていき、それが俺を強く引き寄せる。

龍巫様に召喚された時に魔力を使用し過ぎた・・・雲で足場を強化しても引き寄せに対抗しきれない・・・


「それどころか今回の戦いでは『曇の魔術』すら使えんのじゃぞ?」

「うるっせえ!」

「はあ、、、吸い寄せる魔力と」


飛龍が体は人間と同じ大きさのはずなのにプレッシャーだけで俺の肌をピリピリと刺激する。

彼女の右腕が一気に膨張する・・・違うそれだけの速さで近づいてきてるんだ!?


「龍の突き出す筋力」


視界が白く点滅し、腹に文字通り穴が開いた。


「かは、、、、」


急激に音が遠くなり目がぼんやりとしか見えなくなる。

飛龍がスカイの格好で傍に立っている・・・


今のお前では役に立たん


吐き捨てるかのように言われた。

何も言い返せなかった。






目が覚めた瞬間利き手の左手で腹を触った。


「・・・あれ?」


左腕・・・治ってる?

指すら動かせないぐらい重症だった左腕は傷一つついてなかった。

腹も同じ様子だ。

そんなに時間は経ってないのだろう。


服は腹が破れたままだし、さっきまで寝ていた場所に転がされてるし、クリムゾンがそんな俺にとびかかってくるし


「クリムゾン、、、そういやお前デカくなったな」

「ギャウ!」


体の大きさを変えれるようになったのだろうか?

バタバタし過ぎて全く気付かなかったがクリムゾンはこの数か月でトーリが抱きかかえられるぐらいの大きさから大人のゴールデンレトリーバーぐらいの大きさまで成長していた。

お土産を・・・と荷物を出そうとしてそういや荷物はトツカとトーリの部屋だと思いだした。


「サクラのん、気付いた?」

「・・・桃色龍と龍巫様?」

「生龍だよ~おぼえてね~」


クリムゾンとじゃれていると、扉が開き生龍と龍巫様が入って来た。

生龍は俺の左腕がきちんと動いているのを確認するとうんうんとうなづいた


「いやあ、上手く行って良かったよ~」

「ああ、どうやってやったんだ?俺の体は他人の魔力が通りにくいはずなのに」

「そうそう治癒魔術が効かないし、外科手術じゃ手遅れだしで本当に焦ったよ」

「最終手段として~私の能力の『細胞操作』で~傷で歪められた細胞を全て元の位置に戻したんだよ~」

「『細胞操作』?」

「サクラのんの魔力には龍の魔力があるから~私の『細胞操作』は龍の魔力が細胞をより強固にするよう操作する能力だから~いちかばちかでやったら細胞を元に戻すこと~うまくいったよ~」


左手をぐっぐと握ったり開いたりを繰り返す。

・・・確かに治ったっていうよりは無理矢理元の位置に戻したって感じ?

治すわけじゃないから何度もやってもらえるものでもなさそうだ。


「細胞単位で今は戻したばかりだから~一週間は細胞の為にも安静にね~」

「あ、本当にありがとうございます」


生龍はクリムゾンを抱え上げると掻き消えた。


「・・・スカイは?」

「飛龍は龍人の郷から外に出ました。魔力を限界まで溜めるって」

「そうっすか」

「「・・・・・」」


スカイそっくりの龍巫様を見ているとやはりスカイよりいい女だと思う。

御淑やかそうだし、髪は綺麗だし、大食いじゃないし

今だって俺を心配して側にいてくれている

でも

でも

でも

俺は今 スカイに会いたかった・・・


「龍巫様・・・お願いがあります」

「はい」

「俺を、、、鍛えてください」

「言うと思ってたからここに残ってたんです。龍人の郷の為に戦ってください、そして一週間は安静にが条件で引き受けます」

「分かってないっすね・・・」

「?」


龍巫様がえ?という顔をするので教えてあげることにする。


「男ってのは女の子の為ならいくらでも無茶するんすよ・・・銀龍さんは分かってくれてたみたいッすけど」

「え?」


龍巫様がやっとのことでそれに気付く。

俺が構えた鞘に銀龍の刀に非常に近い剣が叩きつけられる。

その力に逆らわずに吹き飛んで、そのまま床に着地する。


「斬龍!さっきまでサクラは死にかけてたんですよ!何をするんです!」

「笑止でござる。こやつに教えるべきことは一か月でも足りぬ・・・それにこやつも既にやる気でござろう?」

「・・・分かりました。基本はあなたに任せます。」


剣と鞘がぶつかり合う


龍巫様への返答は無かった。


次章第三章!

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