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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第三部:周り全て変わるとして、変わらないものがあるとしたら<曇の奇術師編>
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第2章魔国の影part1

PROLOGUE-THREEだけでは載せきれなかったので第2章まで行っちゃいます!バランス悪くならないか心配だぎゃあ・・・

これはサクラが出ていった直後の話



サクラが立ち去った後、私たちの中には気まずい空気が走った。

普段は笑顔のサニアも食べてばかりのスカイも苦虫を噛みしめたような顔をしている。

私も同じような顔をしているだろう。

ソーラさんも同じような顔をしている・・・どうすればいいんだろうか?

私たちはサクラほど彼女に対して怒りがあるわけではないが、話しかける程気を許せる相手でもない。

とはいえこの空気は流石に・・・


「お待たせしました、、、やっぱりこうなりましたか」


気まずい空気が流れる。

そんな中メリッサさんはいつも通りのきちっとした服を着て食堂に入って来た。

彼女は食事をトレーに乗せて持って来るなりため息をついた。

メリッサさんはグチグチ文句を言いながら私たちの前に食事を持っていく。


「もう、、、旦那様からソーラ様とサクラ様の和解を勧めろって言われてこの場を設けたのに僅か数分で喧嘩別れとか・・・子供じゃあるまいし」

「別に和解しなくても問題ないわ。」

「旦那様の気持ちも考えてくださいな、ソーラ様」


やはり普段から一緒にいる相手というのは気を許しやすいのか、ソーラさんは少しだけ表情を崩すと拗ねたようにメリッサさんと話し始めた。


「第一、こういう機会を設けるなら少しぐらいいっておいてくれてもいいじゃない」

「子供みたいな言い方しないでほしいですね。もうあなたは成人なされてるんですから。モルロンド家の一人娘と言う自覚があれば和やかな会談ぐらい出来るはずでしょう?」

「家の名前を出すのはずるいわ・・・譲れないものは譲れないんですから」


ソーラさんがそれっきり何も言わなくなったのでメリッサさんは今度はこっちに話を振って来た。

このギスギスした空気の中で話を振られるのは少しきついが、、、飯の味が分からないぐらい重苦しい今よりはマシになるかといつもより笑顔を意識して返答することにする。


「シノンさん、サクラ様やスカイ様の体調も随分良くなったようですが何か中級依頼をこなされましたか?」

「そうですね、、、一件だけ討伐依頼を受けました。」

「一件ですか・・・前サクラさんが一日に何件も受けていらっしゃったという話を聞きましたがそれに比べると随分と少なくなりましたね。」

「まあ・・・そうですね。」


体調の回復等も理由であるが、皆それぞれが今は上級冒険者になるためのポイント稼ぎよりそれぞれの実力の底上げをしたいと言いだしたため暫く個人で修行をしているのだ。

サクラの場合は『内在型身体強化』の訓練、私なら『治癒の粉雪』など指揮官用補助的魔術の開発と言った感じにだ。

スカイもサニアも少しずつ自分の魔術を掘り下げていってるらしいが、二人とも成果は中々出ないらしい。

そのことを話すとメリッサさんはそうですかと感心したように言った


「若い人は上を目指すことばかり考えているのに大したものですね・・・あ、別に私が年増だなんて自虐したわけじゃありませんよ!」

「ハハハ・・・まあ、いろいろありましたからね」


前回の戦闘で皆がそれぞれ至らない点があることを自覚した。

ドン・クラークさんがいなかったら、それこそ皆全滅していたかもしれない・・・

特にドン・クラークさんと仲が良かったサクラはよりそれを感じているのだろう。

怪我が完治してからというもの、魔力が尽きるまで魔物の住処で訓練し倒れるまで戦うを繰り返している。

本人は余程図太いのか余裕そうな表情をしているが凄く心配だ・・・

人間はどこかで休まないとどれだけ丈夫でも倒れてしまうのだから


「いろいろ・・・ですか」

「なにか?」


私たちの話を興味なさそうに聞いていたソーラさんだったが、私たちの会話に急に割り込んできた。


「あの男ほど私に怒りの感情をぶつけてこないとは思ってましたけど意外と厭らしい方なんですね?『いろいろあった』なんて言い方するなんて」

「そんな!そんなつもりで言ったわけじゃ・・・」

「うるさい!どうせあなたたちも私を憎んでるんでしょう!ドン・クラークを殺した人間だからって憎んでるんでしょう!」

「お嬢様!」


メリッサさんが静止しようとするがソーラさんはその手を薙ぎ払う。

彼女は少し冷静になれてないのか、大声を張り上げてヒステリックだ。

逆に見ているこちらが冷静になれてしまう。


「言いたいことがあるなら言えばいいじゃない!私が憎いって!私が嫌いだって!あの男のように!ほらそんな顔しないで言えばいいじゃない!でもね!言っておくけど、私は何も間違ってないんだから!」

「お嬢様・・・お座りになって下さい」

「ハア、、、ハア、、、ハア、、、」


言いきってスッキリしたのかソーラさんは少しだけ落ち着いたようで、メリッサさんの手で座らされた。


「別に怒ってないわけじゃないよ?ソーラおねえさん。」


重い沈黙が続いているとサニアが口を開いた。

皆が少し顔を俯いたまま話し始めたサニアを見つめる。


「大事な人たちが『みんな』あの戦いで死にかけた・・・サクラおにいさんもスカイおねえさんもシノンも。重い傷を負って、大きな代償を払って戦ったんだよ。ソーラおねえさんはそんな私たちが命をかけた意味を否定したんだ、怒らないわけないじゃん」

「じゃあ言えばいいじゃない!・・・っ!?」


ソーラさんが立ち上がり声を張り上げるが、サニアは目でそれを制す。

見たこと無い目をしていた。

分かり切ったことを言わせるなって、、、そんな目だ。


「私たちより怒ってる人達が、、、みんなソーラおねえさんを傷つけないように動いてるのに、、、何でそれに気づけないの?」

「・・・どういうこと?」

「殺されたドン・クラークさんがあなたを許してやってくれって言ったからモルロンドおじさんもサクラおにいさんもあなたを責めない・・・一番怒ってる人達があなたを責めないのに何で私たちがあなたを責めることが出来るの?」

「・・・・・・っ」


サニアはそれだけ言いきると席を立って、疲れちゃったと言って部屋に戻って行った。

スカイもなんか食欲がわかないのじゃと自分の席の食べ物を抱え込むと席を立って、部屋に戻ってしまった。

三人だけのテーブルはこれ以上重くないだろうと思ていた空気をさらに重くする。

・・・三人とも本当に勝手だ。


「あなたはどうなの?」

「へ?」

「あなたも私を憎いと思ってるの?」


彼女はどこか疲れた表情で私に話しかけてきた。

怒っているかか・・・どうなんだろう?

それなりに怒りを感じているのかもしれないが・・・多分私が感じているこの思いは・・・ドン・クラークさんを殺されたことに対してではなく・・・


「羨ましいと思ってます」

「・・・うらやましい?」


ソーラさんが少し聞いてくれそうだったので、話すようなことでは無いけど話してみることにする


「サクラがあそこまで感情をぶつける姿を見るのは私たちは初めてなんです」

「あんな怒りをバリバリぶつけて来るのに?まるで野獣のようよ?」

「ええ。私たちをエロい目で見てきたり、キチガイですが・・・今まであんなに怒った姿を見たことは無かったんです。サニアはあんなこと言ってたけど、たぶんサクラがあんなに怒ってる姿を見たのが初めてだったから、あなたに対して怒る前に彼があんなに怒ったことへの驚きや当惑が先に出ちゃって・・・怒るに怒れなくなっちゃっただけなんじゃないかなって思うんです。」

「じゃあ羨ましいっていうのはお嬢様が滅多に見れない彼の顔を引きだしたから・・・ですか?」

「はい。まだそれほど長く過ごしたわけじゃあありませんが・・・仲間内でも見たこと無い顔を簡単に引きだしたソーラさんが羨ましいです、私は」

「「・・・・・・」」


メリッサさんは納得した表情でソーラさんは眉をひそめたままで私の言葉を聞いていた。

・・・もういいかな?

そう思って私も席を立つことにした。


「じゃあ、そろそろ・・・」

「結局ふしだらな関係なんでしょ?」

「は?」

「ソーラ様!言い過ぎです!」


思わずぎょっとして振り返ると、ソーラさんが怒りの表情でこっちを睨みながら立ち上がった。

怒りよりも先にいきなり何言ってんのこの人?という思いが強かった。


「話を聞いてたけど結局あなたたちの話は全てあの男を庇う事ばかりじゃない」

「それでどうしてふしだらなんて言葉が出るんです?」

「だってエロい目で見られてもキチガイであってもあなたたちはあの男を庇うんでしょ?そんなの全員があの男に恋でもしなきゃ有り得ないわよ。どうせパーティーっていうよりあの男の性的な関係の人間が寄せ集まっただけなんじゃない?」

「訂正してください・・・」

「はあ?何を訂正するところがあるの?おかしいと思ったのよ、男一人で残り女なんて!ねえ、あなたはどうやって誘われたの?ベッドの上で?それとも酒場でかしら?」

「お嬢様!失礼ですよ!」

「うるさい!あの男いかにもそれっぽいじゃない!ねえ、どうやって誘われたの?もう既に女いるけどそれでもいいか?かしら、、、それとも俺のハーレムに入れかしら?」


気付いたら彼女の頬を張っていた。

私を救ってくれた彼を、、、私たち姉妹を、、、『誰も助けてくれなかった』あの時、、、唯一手を差し伸べてくれた彼を、、、馬鹿にされるのだけは許せなかった。

あの救ってくれた瞬間を、、、パーティーを組んでくれた一瞬を、、、色恋なんて言葉で貶められることだけは、、、我慢できなかった。


「・・・何すんのよ!」

「うるさい!甘やかされた世間知らずが!下手に出てれば好きかって言って!挙句の果てには私たちをふしだらとか下品だとか!・・・いい加減にしろ!」

「誰が甘やかされてるですって!見て分かることを言っただけじゃない!」

「何が見て分かるんだ・・・」

「そんなのあなたたちがふしだらな理由でパーティーを組んだふしだらなパーティだってことに決まってるじゃない!」


そう言い切ると怒り切ったお嬢様は水差しを持ち上げ私にぶっかけてきた。

・・・もう我慢できない


「もっと痛い目にあわなきゃ分かんないようだな、世間知らずのお嬢様・・・」

「貴族の魔術を思い知るがいいわ、、、冒険者風情が」

「お、お待ちください二人とも!・・・らちが明かない、スカイ様かサニア様を呼ばなきゃ!」


私が剣を抜くと、彼女も同じ気持ちだったのか魔力を放出し始める


「『氷小刀』」

「本質能力『淑女の品格』」


ぐっ!?

体が全身鎧をつけたかのように重い・・・

ソーラの魔力が体に当たったと感じた瞬間、全身の魔力の通りまで鈍くなった。

氷小刀も術が完成する前に投げてしまったので容易に弾き飛ばされる。

ソーラはふふと笑う。


「私の本質能力は生物全ての行動を鈍くさせる・・・委縮した小動物のようにね」

「なら、身体を強化して戦うだけだ!」


体の内側に魔力を流し無理矢理体に活を入れる。

そのまま体を動かし剣を振り降ろす。

彼女もそうすることを予期していたのか、懐からドン・クラークに一太刀浴びせた『回想刀』を引き抜き受け止める。


「随分軽い剣ね・・・」

「この・・・」


貴族にしては重い剣だが冒険者からしてみれば軽い剣・・・それなのに互角のせめぎ合いになっていた。

彼女の技量が意外と高かったというのもあるが、この本質能力は忌々しすぎる・・・

魔力の流れが阻害されてるせいで、『内在型身体強化』の出力がいまいち低い


「ほらほら剣だけじゃないんだから気をつけないと・・・」

「!?」


魔力を込めた蹴りが腹部にあてられそうになり慌てて膝で受ける。


「偉く野蛮な戦い方じゃないか、お嬢様・・・」

「あら?お気に召さなかったかしら?あなたの専門だと思ったけど?」


勝ち誇った笑みを浮かべられて思わず青筋が浮かぶ。

だが・・・


「なら思いっきりやらせてもらうとしよう」

「へ?」

「『氷飛礫』」

「きゃあ!?」


いきなり剣からあられが飛び出し顔を撃つ。

痛みに顔をしかめた瞬間、足払いをかけ転ばせ組み敷いた。


「目つぶしなんて、、、卑怯な。」

「冒険者らしい戦いをお望みだったようだからな・・・なんだ?」


組み敷いてお互い睨みあっているとえらく外が騒がしい気がした。

再び襲ってこられても困ると彼女の手足を軽く凍らせてから、窓に近づこうとする。


「駄目じゃシノン!今すぐ窓から離れるんじゃ!」

「『聖壁』!」


スカイの言葉に従い窓から離れた

その瞬間物凄い音がして壁が崩壊した。

・・・なんだ?

気付いたときにはサニアが相変わらずの魔力操作の下手さで巨大な光の壁を打ち立てていた。

何メートルもの分厚くて長くデカい壁だ。

それが一瞬でぶち抜かれた。


「・・・お主何者じゃ?知らんのう」


サニアが魔力枯渇で倒れ伏すのを慌てて受け止める。

メリッサさんを抱きかかえたスカイが大丈夫かと聞いてきたのでぼんやりとした思考のままうんと頷く

良しと言ってスカイは前を向く。

そのまま怪訝そうに目の前の存在に問いかける


「失礼しました、魔力の高ぶりが見えたので保護対象が傷つけられぬようにと手を出したのですが・・・やり過ぎたようですね」


やり過ぎた?

辺りを見渡す、、、屋敷はこの部屋をのぞいて二階部分が全壊していた。

サニアが全魔力を注いでなかったら私たちまでああなっていた・・・

この攻撃、、、一度見たことある・・・

余波が屋敷だけでなく街にまで及んでいるのか火災のベルがあちこちで鳴らされる。


「『龍の咆哮』を街中で使うなど、、、野良の龍か?」

「その言い方、、、龍人さんではなさそうですね?もしや、、、物好きな龍さんでしたか?」

「おい、小娘お主には聞いとらん・・・いい加減にせんと本気になるぞ?」

「おやおや怖い・・・」


そう言って4メートル近くの大きさの『黒い鱗の龍』から一人の女性が飛び降りた。

女性・・・と言ってもいいのだろうか?

だって彼女の頭からは大きな角が二本飛び出し、その背中には立派な黒い羽根が生えているのだから。


「お主、魔族か?なぜ龍に乗っている?龍や龍人が魔国と組したなんて話は聞いとらんが」

「当たり前ですよ、、、この子は龍人の郷生まれじゃないんですから」

「龍人の郷生まれじゃない?いったいどこから生まれたというのじゃ?」

「さあ?生まれた場所は分かりません」


眼鏡をかけているのに、胸元は大きく開いたドレスを着たその女性はスカイの質問をぬらりくらりと簡単にかわす。

笑顔の魔族に対し、スカイは不機嫌な顔を見せる。


「・・・『飛龍の左腕』」


話し合いでは何もわからないと判断したのだろう。

スカイの腕が巨大になり、エメラルドのように輝く鱗を纏った龍の腕となる。

ドン・クラークの『狂竜化』により触発されたらしい彼女は龍の力を人間のままで使う方法を研究していた。

今は左腕、、、しかも長時間は使えないらしいがその左腕から溢れる力はただただ恐ろしい。


「ほう、、、龍応石で力を抑えて人化しているのですか?力を抑えるそのペンダントを壊さずによくもそこまで・・・」

「御託はいい・・・行くぞ」


スカイが体を震わせ、掻き消える。

その龍のかぎづめが魔族の女性を引き裂こうと迫る

誰もが終わりかと思ったその瞬間、魔族の女性は呟いた


「でもそれ・・・魔術ですよね?」

「ぐるるるっ」

「なに!?・・・グアッ!?」


飛龍の腕から魔力がいきなり抜きとられるや否や、黒龍の尾がスカイを打ち据える。


「スカイ!?・・・『柔かく細かい』『積りに積もる』『衝吸雪』!」


柔かい大量の雪が瞬時に召喚され、地面に叩きつけられそうだった彼女をギリギリのところで救う。

よかった、外傷は無いようで立ち上がろうとしている。

いけない!?人の心配をしている場合じゃ・・・?

追撃が来るかと剣を構えるが魔族は黒龍を制しており、その傍らで一生懸命手帳を捲っていた。


「あれ?どっかでフラグ間違えてたかな?いや、でもアンナ様が言ってたのはここに今日この場所に『狂竜化』した龍人の娘がいるってことしか・・・飛龍に聖女に挙句の果てには氷属性の剣士・・・知ってたなら絶対に教えるはずよね?・・・やっぱり運命の抵抗としか考えられない」


聞き捨てならないことを・・・


「何故サニアが聖女だと知っている!」


魔族はきょとんとした表情を浮かべる


「そりゃあ聖属性の魔術を見るのは初めてですけど、話には聞いてましたから」

「話に聞いてた?・・・王国の中でも限られた人間しか知らないはずだぞ?」

「まあ、、、何で知ってるかと聞かれても答えようがないんですよねえ・・・」


どうする?

王国の回し者ではないようだが、サニアの正体を知られたからには最悪斬り捨てなきゃならない・・・

でも、既に詠唱級魔術を一度使ってしまっている。

これ以上戦うのであれば、拘束具を取らなきゃいけない・・・しかし私がこの胸鎧を外せば自分の正体を明かすことになる・・・

もし外してる時に魔力トレースでもされたら王国側に居場所もばれる。


「・・・ねえ、『狂竜化』した龍人の娘って誰のこと?」

「!?」


いつの間にか拘束が解けてしまったのか、ソーラがフラフラと前に出てきた。

自分達のことで精一杯だったせいで止める暇もなかった。


「待て!待つのじゃ!」


スカイが妙に血相を変えて止めようとするが先に魔族が言葉を発した


「あなたのことでしょう?」


なんだって・・・?

だからサクラやドン・クラークが怒るに怒らないわけだ・・・

思わず唖然としていると凍りつくような悲鳴が


「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ・・・嘘だああッ!うわああああああああああッ!」


あれだけ私に対して暴言を吐いていたとしても崩れなかった彼女の美貌が激しく歪む。

私は今まで彼女がどれだけ暴言を吐いていたとしても、、、どれだけ許せない言葉を吐いてきたとしても、、、剣と剣を交えている時でさえも彼女のことを『可憐で儚げな美少女だ』という考えが頭にあった。

彼女に傷を作るのを思わずためらって、、、あんなに許せなかったのに組み敷くだけで終わらせてしまった。

・・・何となく味方してしまうような、、、そんな魅力があった


「ううううう・・・・・」


だからなのか・・・彼女が苦しむその表情を見て・・・自分まで悲しくなった。

涙が両方の目から溢れだす。

止めてくれ・・・泣かないでくれ・・・苦しまないでくれ・・・

剣すらぬいた相手なのに、、、私は彼女の為に涙を流していた。


「ねえ・・・嘘でしょ?嘘だと言って・・・」


ソーラが魔族の服に縋り付く・・・魔族の女性も彼女の表情に当てられたのか涙をこぼしながら語る


「申し訳・・・ぐずっ・・・ないですが・・・ぐずっ・・・あなたの左肩に・・・龍応石をくりぬいた跡があるはずです・・・それが何よりの証拠かと・・・」

「嘘・・・あ・・・」


ソーラが耐え切れなくなったのか、気を失って倒れ伏す・・・その瞬間、悲しい、、、苦しいと感じていた心が嘘のように軽くなった・・・


「な、なんだ?」

「まさかこの娘の力?」

「龍ですら涙を流させるとは・・・こやつ一対・・・」

「『曇神宮の柱≪クラウド・ポール≫』!!!!」


!?

黒雲の大槍が床を貫き私たちの間を一時的に隔てる。

涙を流していた三人が思わず謎の力を持った少女を眺めていると、床から黒雲が飛び出した。

床に空いた大穴からそれを足場にして一人の少年が飛び上ってくる。



「やっぱりか・・・朝日奈楓・・・いや、ソーラが泣いたのか・・・」


サクラは目元を流れる涙を拭うと、目の前の魔族を睨みつけた。


「あんたサキュバスか?魔術がすさまじくて男の精気を食料にしてる。」

「おや?上級魔族でも私の種族を知ってる人間はいないのに・・・もしやあなたがイレギュラーですか?」

「イレギュラー?ま、『種』の固有属性を持ってりゃ皆イレギュラーだろうよ・・・『曇の一撃≪ショット≫』×沢山」


いつの間にか黒龍と魔族の周りを覆っていた黒雲から一斉に槍が飛び出す。


「ぐるるるっ」


そして一瞬で消え去った


「・・・・・・・は?」

「言っておいたじゃろうが・・・この黒龍は魔力を吸い取るから魔術は効かんと・・・」


サクラがポカンとしているとサクラが開けた大穴を伝ってスカイが入って来た。

スカイはやれやれと言いながら首を振る。


「余の『飛龍の左腕』を維持していた魔力も吸い取られたようで、一瞬で維持できなくなってしもうた」

「・・・煉獄山みたいなもんか」


外部に出した魔力を自然魔力に分解する特殊な環境煉獄山。


「それだけならまだええがの」


黒雲が徐々に徐々に黒龍の中へと吸い込まれ、、、黒龍の気迫が大きく増した。

魔力が有り余ってる二人はともかく、残り少ない私は思わず膝をついてしまった。

それだけの気迫が私たちに降り注いでる・・・正直アイスド・スライムなんて目じゃない・・・


「こやつ他人の魔力を無効化するだけじゃなく、吸い取って自分の力に変えとる・・・」

「だったらテンプレ的に限界まで魔力すわせて爆発させるか?」


サクラがぶわっと黒雲を右手に巻きつけるが・・・


「ぐるるるるっ」

「「「・・・・・・・・」」」


一瞬で吸収された


「やめておけ・・・龍は人間と作りから違う。魔法陣級の威力の『龍の咆哮』を何発撃っても倒れないほどの魔力を持っとるんじゃぞ。相手を強化してしまいじゃ」

「イグザクトリィ・・・流石魔に生きる物の中でも最高位の存在・・・その高い観察能力は素晴らしいの一言です。」


サキュバスの魔族はスカイの冷静な観察を聞くと手を叩きながら余裕の笑顔を向ける。


ぷっちん


「謝るなら今だぞ?サキュバスのお姉さんよお・・・こっちはいつでもノクターンに行く準備は出来てんだぜえ?『内在型身体強化』!!!」

「眼鏡かければ賢くみえると思っとるのかえ?違うのう、、、むかつくだけじゃあ!眼鏡へし折ってやるわあ!!『風巡れ』!」


サクラは意味は分からないがおそらく今まで出した言葉の中で最も最低な言葉を吐きながら体の内側で大きな魔力を動かす。

スカイもなぜか眼鏡にいらだちをぶつけながら風の魔力を体の内側で循環させる。


「ちなみにいつまでもサキュバスサキュバス言われるのは不快ですね・・・私は魔国第一師団特殊研究室室長のインモラルと申します・・・って聞いてなさそうですね。」


彼女を攻撃しようと振り降ろされた拳がいつの間にかできた黒い壁が防ぐ

大きいくせに素早い黒龍の右腕が壁になっていた


「硬ぇ・・・」

「油断するな!」


サクラが顔をしかめる中、黒龍が左腕を振り降ろす

スカイは避けれたが、サクラは急な動きが出来ないのかもろにそれを喰らってしまう

何とか左腕で受けたようだが、、、潰されかけている


「サクラ!」

「こんのおお・・・『弾け飛べ』!」


起動言語と共に空いた手で振り上げられる『七番鞘・常識外』

魔術が使えないこの状況下で使える唯一の手段魔道具

魔力が外に漏れず、中で完結するこの道具が込められた大量の魔力を斥力に変換する


「『魔喰龍』が押し負けた!?龍と同等の筋力があるんですよ!?」


はじめてインモラルが驚愕の表情を見せるがサクラは勝ち誇る表情見せずにバランスを崩した黒龍の腹部へと瞬時に飛び上る。


「はあああああああああああああっ!」


サクラの何十人分もの強大な魔力が身体強化へと回されていく。

同じように『七番鞘・常識外』も光に光る。

体から漏れ出しはしてないが、感じ取れる力だけでも身震いが起こる。


「この人間とは思えない魔力・・・やはりゴブリン盗賊団を滅ぼしたイレギュラーは彼でしたか・・・」

「今なんて・・・」

「『弾き貫け』!『穿跡』!」


弾丸のように螺旋を描き、まるで魔法陣級の爆発魔術が起こったかのような音が都市中に鳴り響く。



「う~ん、もうちょっと訓練しないと龍の肌は貫けませんよ?」

「ぐるるるるる、CAAAAAAAAAAAAAAA!!!」


それでも足りなかった。

確かに『七番鞘・常識外』は龍の皮膚を弾き飛ばした。

サクラの技は龍の皮膚をねじった

でも、、、力が足りずに、、、ねじりを戻しながら押した分だけ『跳ね返った』


「ウアアアアアアアッ!」

「「サクラ!?」」


自分が掛けた回転と反対方向の回転を受けながら、彼は高速で空中へと弾き飛ばされ床にたたきつけられる。

龍の止むことのないプレッシャーに対抗するのに『衝吸雪』を張る暇がなかった・・・

何のための今までの訓練だったんだ・・・こういう時の為の補助魔術開発だったのに・・・


「こ、、、、このう、、、」

「サクラ、、、腕が、、、」


サクラの腕は衝撃の反射をまともに受けたせいでねじれ曲がっていた。

『内在型身体強化』で痛みは押さえているだろうが、、、治癒魔術が効かない彼の腕はしばらく使い物にならないだろう・・・


「それもう一発」

「グアッ!?」

「スカイ!?」


インモラルの指示で振り下ろされた右腕がスカイを押し潰す。


「殺す必要はないです。『脅威にすらなりえない』」

「ふるるるッ」


鼻息と共に挙げられた右腕の下では、スカイがボロボロの状態で気絶していた。


「よくも・・・」

「よくも、、、ですか。あなたぐらいの『個』ではこの場で発言するのもおこがましい。立ち上がることも出来ないくせに」

「・・・っ!?」


インモラルが発する殺気一つで呼吸が止まる・・・駄目だ、、、完全に動けない

これじゃあ指一つ動かせないから『封印』も解けない・・・

そんなフェデラの惨状を見てインモラルがした最初の行動は・・・溜め息だった。


「人間に実験程度に組み込んだゴブリンを操るゴブリンキングの遺伝子実験・・・それが潰された時と同じくスライムキングの遺伝子を魔物使いに埋め込んだ遺伝子実験の失敗。アイスドスライムと化した失敗作はドン・クラークが『狂竜化』して倒したのは知ってましたが・・・ゴブリン盗賊団の失敗原因があなた方にあるとは思いませんでしたよ。」

「あんたが、、、黒幕だったのか?」


唯一この場でしゃべることを許された『個』であるサクラが痛みに震えながら震える口を開く。


「ええ、『いずれ来るべき時』に備えて戦力を蓄えないといけませんからね。まあ、二つとも成功すればいいなぐらいでしたから優先度はDですけどね」

「成功すれば・・・いいな?どれだけの被害が出たと思ってんだ?」

「さあ、、、人間にいくら被害が出ようと『最終的な戦局』には影響しませんし」

「お前、、、お前と同じ意思ある個体が消されてるんだぞ・・・可哀想とか思わないのか?」

「ふーんとしか」


サクラの顔つきが変わる。

隣にもう一人のサクラが現れ、ソーラの元に駆ける。


「あ、それは優先度Bなので」

「・・・ちっ」


龍の尾が空気を切り裂き、もう一人のサクラを掻き消した。


「あなたの本質能力・・・面白いですね。魔力体と思ってたんですけどそうじゃない・・・一体なにで出来てるんです?」

「さあな・・・俺任意の能力じゃないんでね」


サクラが冷や汗をかきながら憎まれ口を叩く。

もう一人の彼が消された時物凄く焦った顔していたくせに、口だけは達者だ

またサクラの隣にサクラが現れる・・・しかしもう一人のサクラは何かを消耗してるのか膝をついて息を荒げていた。


「どうです?人間でも育つ芽は大歓迎です、魔国に来ませんか?」

「そうだな、、、ソーラを解放するなら」

「ナンセンス、、、実力の分からないあなたの優先度はD・・・交渉決裂です。」

「サクラ・・・コウ・レイペンバーの時みたいに消しにくい強い黒雲を出せば『曇の魔術』使えるんじゃ・・・」


もう一人のサクラは息を荒げながら苦しそうに提案する

しかしサクラは首を振る


「いやあ、、、無理でしょ。一瞬で吸い取られたもん。どれだけ丁寧に作っても今の俺のレベルじゃ一瞬で吸い取られちまうよ」

「・・・じゃあ『嵐曇魔術≪スーパーセル≫』なら?」


希望を込めた表情で私たちが知らない言葉をもう一人のサクラは提案するがサクラは無理だという


「分かってんだろ?俺の体の中には今、自分の魔力だけじゃなく暴走魔力とそれから俺を守るドン・クラークの魔力が混ざってる・・・桜との共鳴率は40パーセント。魔力バイパス程度なら問題ないけど切り札はもう切れないんだ・・・」

「・・・くそっ!せめてその鞘を貸してくれ!サクラよりも上手く『穿跡』を喰らわせてやる!」

「アホ・・・いくら俺より剣術が上手くても『曇』出すぐらいしかできないだろお前・・・第一俺の腕がこのざまな理由分かってんだろ?」


失敗したのは技術のせいでも道具のせいでもない

『内在型身体強化』が不十分だったから

『黒曇衣≪コート≫』すら出せないらしいもう一人のサクラでは『魔喰龍』に辿り着くことすらいけないらしい。


「くそっ!!!」

「・・・その通りだ」


もう一人のサクラが床を強く叩き、顔を伏せる。

そしてそのまま消えてしまった。


「もう終わりですか?」

「そうだよ・・・インモラルさん」


サクラが忌々しげに吐き捨てる。

彼女はうーんと手帳をまた開く。


「これ以上邪魔しないようならとどめを刺す必要はないですね・・・あなたは育ちそうですしね。それに優先度Bを手に入れた今、次の実験に一刻も早く進みたいところです・・・」


彼女は気を失ったままのソーラを軽々と抱きかかえるや否やひょいと『魔喰龍』に飛び乗った。

サクラの口や指から血がこぼれ出る・・・

平気そうな顔してるけど、、、平気じゃないんだ・・・


「あなたが優先度Bになったら迎えに来ますよ」

「・・・ごめんだね」

「そうですか・・・まあ人質の価値次第ですかね?飛龍を狙ったときのように人質から先に手に入れて懐柔しますか・・・例えばそこの短髪の女の子とか」





ビュン




ドガン




ぱたん




サクラが『魔喰龍』に体一つで突っ込みあっという間に潰された。


「まあ、こんなにキレやすいんじゃ大した戦士にはなりそうにないですね・・・時間の無駄です、行きましょう」


サクラの様子を見てインモラルはもう興味をなくしたのか、飛び立つように指示する

黒龍はフンスと鼻息一つつくとあっという間に空へと飛びあがり、そして消えた。

・・・ガクッとプレッシャーが消え床に崩れ落ちる

い、生かされた・・・のか?


「くっそ~、、、最悪の負け方だ・・・」


サクラがぼそりと呟くのが聞こえる。

動かない体に何とか魔力を通し、口を動かす


「サクラ、、、大丈夫か?」

「あ?そうだなあ、、、あんまり大丈夫じゃないかも」


首すら動かせないので彼の表情は分からない

でも、、、強がってるのだけは何となく分かった。


「そうか、、、もっと強くならないとな」

「ああ、、、もっと強くなんねえと」


彼に伝えられる言葉はそれが限界だった。

私自身が情けなかった・・・

大事な時に本気を出すのをまたためらってしまった・・・


「シノン?気絶したのか?」

「・・・・・」


せめて彼に重荷にならないように・・・しゃくり声だけは聞こえないようにした

私たちの前で絶対に怒りや悲しみの感情を出そうとしない彼の前で・・・

ソーラの前でしか出さなかった彼の前で・・・

涙を出すのは癪だった。


なあサクラ?


私たちが仲間だというのなら


何で本当の感情を隠そうとするんだ?


泣き叫べばいいじゃないか!

怒鳴り散らせばいいじゃないか!

苦しんでる姿を皆で慰めさせてもくれないのか!


なんで?


何で?


私たち以上に付き合いが短いはずのソーラの前でだけ感情をあれだけ解放するんだ?


仲間の私たちより


相棒のはずの私より


彼女の方が自分らしくいられるってことか?


感じたことのない思いが心を占める・・・今まで感じたこともない思いが・・・


チリチリチリチリする思いを、、、私は涙にすることしかできなかった

プロローグの流れ引き摺っちゃってごめんなさい・・・シリアス嫌いだようこのクソ作者!と盛大に罵っていただいても結構です・・・寧ろ本望デフ☆ 浅きMみ氏


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