第1章私立鷺ノ宮高校の文化祭part2
朝日奈楓と文化祭を回ることになった
やっほい
・・・とはいえ彼女は黄金比生徒会長と並ぶ学園のマドンナ。
デートみたいな感じで回れば俺の命が危うい
((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
というわけで俺はシンプルではあるが完璧な作戦を立てた
「写真係だけなら文化祭Tシャツで良かったんじゃない?」
「いやいや、一応仕事兼ねてるからね・・・ヒイッ!・・・ガッ!・・・グアッグあグアッツ!?・・・仕事装ってでもこの有様か・・・(周りをチラチラ見ながら自分は仕事で彼女の隣を歩いてるんだとアピールするが朝日奈親衛隊の女子に夜道がいつも安全だと思うなよと耳打ちされ怯える。その後どっかの誰かが後で体育館裏に来いと言いながら腹パン喰らわしてきて悶絶。とどめとばかりに何人もの生徒に肩をぶつけられる)」
折角なので広報用の写真の素材で彼女を撮影することにしたのだが、それが羨ましかったのだろうか?
俺は上はスタッフTシャツ、右袖には広報ワッペン首にはカメラというTHE☆STAFFという格好で朝日奈さんの隣を歩いていた。
ちなみに嫉妬にまみれた馬鹿共が引き裂いた俺のスタッフTシャツは、清廉君の手によって新品同様になっていた。
文化祭Tシャツは伊月に貸したままだったし、そんなん着て朝日奈さんの隣をあるくなんてとんでもない!
あくまでも仕事で彼女の隣を歩いていると周りに主張することにしたのだった
効果は全くと言っていい程薄いがね。
・・・まあ、彼女の逆ハー要員たちならこんな小細工しなくても彼女の隣を堂々と歩けるんだろうけどさ。
彼女の重要NPCを目指す身としては、今はこれで充分だ。
「次は何を奢ってもらおうかな?」
朝日奈さんはチョコバナナを齧りながら、いたずらっぽい笑みで聞いてきた。
くそう、、、本当に撮りがいがある!
撮った写真のデータをマイスマホに送信しながら、俺は写真映りがいい彼女を連れていて本当に良かったと思った。
気分は目にいれても痛くないほどかわいい娘の写真を撮りまくる眼鏡のお父さんだ。
意外と朝日奈さんは容赦なく、野口さんが三人お亡くなりになりつつあるが、、、後悔なし!
彼女が写った写真ならピンぼけしてても売れるから元はとれるのだ!・・・内緒だぞ?
そんな感じで俺は彼女の後ろからパッシャパッシャとそれはもうストーカー予備軍のように撮りまくっていたが、もうそろそろ屋台で食事以外の写真が欲しいな。
「そうだね・・・外の屋台は大体見回ったしいろいろ見て、お腹すいたらまた奢るってのはどうかな?」
「ふふっ、それってどこでもいいってこと?」
「まあ、そうかな?」
朝日奈楓は俺の言い方が少し面白かったのか少しだけ笑うと、じゃあと行きたい場所を口にする。
「うちのクラスのオブジェをしっかり見ときたいなあ」
あ〜、それもそうだな…
朝日奈さんも俺も何だかんだで忙しくて最後の仕上げを確認してない。
今日も最初に見ておきたかったのだが、公開はまだやとオブジェ作成にあまり関わってなかった俺達は寧ろ作業の邪魔だと清廉君に追い出されたのだった。
時間もいい頃だし、行ってみるか・・・
「じゃあ、行ってみよっか」
「うん!」
教室に行ってみると段ボールで『WELCOM TO 1-B!』と書かれたボードが張りだれていたり、廊下から中がネタバレしないようにと工夫がされていたりとか、なんだかガッツリ飾り付けがされていて朝入ろうとした時とは外観が一変していた。
「本当に最後の最後まで作業してたんだな・・・」
「すっごいねえ、、、他のクラスでもここまで気合入れてなかったよ?」
二人で教室に入る前から感嘆していると呼び込みをしていた相生さんが近づいてきた。
同じクラスの彼女は明るい性格で会議とかでは女子全体のまとめ役をしてくれるありがたいお方だ。
だからなのかこういう客寄せとかの時にはすんごい頼りになる。
彼女は獲物を捕らえたかのごとく、こっちに向かってきた。
「朝日奈さんに如峰月君じゃん!何?写真撮りに来たの!?」
「あ、ああ。はいチーズ。」
「ニッ!」
「うん、よく撮れてる、撮れてる」
「よし、じゃあ中見てってよ!」
彼女は祭りでテンションが上がっているのか朝日奈さんとツーショットを決めると、中に入れ入れと促してきた。
ぐいぐい引っ張られて中に二人で押し込まれた。
いるよなあ、、、こういううざい客引き・・・まさかうちのクラスがそれをするとは思ってもみなかったけど。
「く、、、暗いな・・・」
「ふえぇぇ・・・本格的すぎるよお・・・」
扉に押し込まれた瞬間、目の前が真っ暗になった。
朝日奈さんも余程不安なのか俺のTシャツの裾をぐいっと掴んでる。
目が段々慣れて来る・・・
どうやら教室に入る前にいったん真っ黒なカーテンでし切った空間にいれるらしい。
床を見れば地味に蛍光色の矢印がついてる。
こっちに進めってことね。
「朝日奈さん下の矢印見える?」
「え?分かんないよ。」
どうやら感覚が鋭くなってる俺ぐらいじゃないと、この矢印にはなかなか気付かないようだ。
もしかしたら目が慣れるまできゃあきゃあ言わせるのが目的なのかもしれない。
・・・清廉君、こだわり過ぎだ。
彼の芸術魂には申し訳ないが朝日奈さんが怖がるので進ませてもらおう。
「ふえっ!?突然動かないでよっ!」
「あ、ごめん・・・」
怖がる彼女が後ろから腰に抱き付いてくる。
・・・そこまで怖いか?
なんかあんまりにも怖がってるのでエロい気持ちが全くわかない・・・
彼女の様子に気を配りながら一歩一歩前に進む。
シルエットだけならケンタウロスである。
黒幕で覆われた道は意外にも短く、一条の光が入る出口が見えた。
・・・オブジェを展示する場所のはずなんだが、なんでこんな黒い道を作ってんだ?
「朝日奈さん、出口だ。」
「で、でぐち?」
ちょっと怯えた声が少し可愛く感じ始めた・・・何か腰にずっと柔らかいモノがあたってるし。
絶壁の彼女のいったい何があたってたんでしょう?
朝日奈さんは俺の腰から離れるとよろよろと出口へ近づきばっと出口の幕を開いた。
眩しい・・・暗い中にいたってのもあるが、強烈なライトでこっちの目をくらましてる・・・
「ん?・・・きゃあああっ!?」
「あ、朝日奈さん!?」
目が痛い、、、急に入った光のせいでまったく何も見えない。
鋭すぎる視覚が仇になったのか、脳に頭痛が走る程だ・・・
先に視力が回復したのか、何かを見た朝日奈さんはずざざと尻餅をつく。
「やっと見えて…きた…」
視界がやっとのことで回復し始める。
・・・?
目の前に大きい物がある?
これに驚いたのか・・・
徐々に焦点が合い始めた視界に映るのは
巨大な龍の口が俺に向かって開かれている光景だった
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!?」
朝日奈さん同様尻餅をついてしまい、大人げなく叫んでしまう。
それ程までに衝撃的な出会いだった。
「はっはっはっはっは!二人ともそこまで驚かんくてもええやろ!」
ライトの照明がゆっくりと弱められていき、ようやく全体が見えてきた。
どうやらあのくらい道から出た瞬間に段ボールで作成した骨だけ龍が出てくるようにされているようだ。
本来ならここまで驚くことは無かったかもしれないが、暗い道で暗闇に十分慣れさせてからの強烈なライトで目くらまししてからとか段ボールとはいえ地味にパーツ一枚一枚を着色しているのでぼやけた視界では本物の龍が目の前にいるかのように見えてしまう。
「小細工を・・・」
「悔しそうな顔やねえ・・・やったかいがあるもんや!はーっはっはっはっは!」
恨めし気に睨みつけると、清廉君はパシパシ自慢の一作を優しく叩きながらまた高笑いし始めた。
彼はそやそやと本来の役割にうつる。
「一応本来は説明してくんやけどどないする?」
「うーん、とはいってもな・・・作り方とか材料何使ってるかの説明だろ?」
一応鷺ノ宮一年生のクラスは皆、このオブジェ作成が義務付けられている。
しかもそのオブジェに使うのは必ず『捨てられてしまうもの』をメインに使うこととされている。
最近エコだエコだと騒がれてるからだろうが・・・高校生はそういうのを意識した方がいいらしい。
いかに環境に配慮してるかの説明をするんだが、そういうのも意外と評価に関わってたりするんだ。
多分清廉君のことだから文庫本一冊は用意してそうだし、内容ある程度知ってることだから遠慮しよう。
ちなみにうちで使ってるのは段ボールだったんだけどすんげえ大変だった。
教室をまるまる埋めるぐらいの大きさにするために電気屋の冷蔵庫用のとかもらいに行かなきゃいけなかったし、高校の文化祭で使うんです~とか言っても嫌な顔されるの多いし、スーパーで無料でもらえるのをとりすぎると近所のおばちゃんに殴られるし・・・あれ?何で殴られたんだ?
俺達は邪魔だと参加させてもらえなかったが、他にもあんまりにもデカくて教室に入らないからと当日ギリギリで組み立てることになったり、自重に耐えられなくて崩壊しそうになって慌てて上からワイヤーで吊るしたりと最後まで大変だったらしい。
「じゃあこっちが出口で、こっちが救護班用やで。いやあネタバレせんようにしといて大正解やったね!皆ぎゃあぎゃあ驚き張るわ!」
「救護・・・班用?どういうこと?」
折角なのでと写真を一枚撮っていると、清廉君が二つの入り口を指さしてきた。
出口は分かるけど・・・救護班用って何?
「いやあ、あんまりにも驚いたせいで腰を抜かした人が多くて・・・」
「はあ!?」
やっぱりやり過ぎだ。
あんまりにも酷いなら文化祭実行委員会として見過ごせない・・・
「ごめん如峰月君・・・私も」
「・・・っ!・・・っ!(ツッコみたいけど朝日奈さんにツッコむのはなんか違うからと堪えている)やっぱり生徒会に報告するしかないなこれは」
「ちなみに朝日奈さんやったらVIP救護コースでええで?」
「なら仕方ないな。」
「何が!?」
腰を抜かした朝日奈さんに肩を貸して、救護コースへと向かう。
「てかなんだよ、VIP救護コースって・・・」
「ごめんね如峰月君・・・少し休めば大丈夫だと思うから」
救護の幕を開くと金色のカーテンと灰色のカーテンに分かれていた。
迷いなく金色のカーテンをくぐる。
「ようこそ・・・」
「って、黄金比生徒会長・・・」
さすがVIPだ・・・患者からすでにVIPだ。
黄金比生徒会長がエアマットの上に寝転がされていた。
うちのクラスの人間が付きっきりになっている。
「どうしたんすか、生徒会長・・・取り巻きの人も付けずに」
「ゆ、、、油断してたわ・・・気合入ってるのがあるって聞いてきたんだけど、、、ここまでとは」
「うっわ、悔しそうな顔・・・」
朝日奈さんをうちのクラスの女子に任せてしまうと俺は暇になった。
そういやあんまりにも酷いと生徒会や教師たちから指導が入るな・・・
患者が多くないといいが・・・
辺りを見回すと患者はVIPだからか少なかった。
「ふぉふぉふぉ・・・腰が・・・」 七十過ぎのうちの学校の理事長が腰をさすってもらっている
「ふん、学生にしてはよくやったんじゃないでしょうか?・・・でも悔しい、腰が抜けちゃう。」 40過ぎの小太りの校長が悔し涙を飲みながらエアマットに寝ている。
「ふう・・・全く近頃の若者は・・・あ、湿布もう少し左に」 ニヒルな笑みを浮かべたナイスガイな教頭までもエアマット。
・・・・・・・・・・・・・・この学園での権力トップスリーが運び込まれてる
「清廉君、スリーアウトオォォォッ!!!???」
「なに、いきなり騒ぎ出して・・・これだから童○は」
なんかとんでもない言葉が黄金比生徒会長から飛び出したがそれどころじゃない。
いや、放っておけない言葉が飛び出していたがそれどころじゃない。
「それどころじゃないっすよ!学園でもトップスリーに怪我負わせたんすよ!?大問題じゃないっすか!」
「まあ、普通の学校なら即閉鎖かもね・・・でも腰抜かすぐらいなら自己責任になるんじゃない?ちょうどいいから聞いてみなさいよ、そこに学園の最終決定権を持つ三人が揃ってるんだし。」
「え?どう考えても御咎めなしにはならんでしょ、聞いてみますけど・・・どうっすか?」
「「「いいよ!」」」
「あ、いいんだ・・・」
めっちゃ良い笑顔でオッケー出してもらった。
・・・まあ、いいならいいけどさ
「君は真面目ね。」
「そうっすかね?普通の感性だと思いますけど・・・」
黄金比生徒会長は腰を抜かしているというのにそんなことを感じさせない優雅さだ。
彼女は猫のようにぐいいっと体を伸ばすとふにゃあと体から完全に力を抜いた。
黄金比と言われるだけはあるな・・・胸だけでなく尻もすさまじく形が良い・・・
「そういえばさ・・・聞きたいことが二つあるんだよね?」
「なっ!?な、なんでございまよようか!?」
視姦が罪になるかどうかという話でしたらおとなしく自首するつもりである・・・が彼女の聞きたかったことは別の話だった。
「どう?今年の生徒会は?」
「そっすね、文化祭って感じですね。」
「ふむ、、、そっかあ。末端でも文化祭って感じるかあ・・・」
少しだけ嬉しそうに彼女は笑う。
彼女が死力を尽くした結果である今年の文化祭。
宣伝効果も去年より高かったらしく随分客入りもいいそうだ。
確かに去年受験する学校だからと見に来た時は、なんか私立の文化祭か?ってぐらいシケてたもんなあ。
よくもまああんなに癖のある新聞部とか朝日奈楓とかをまとめ上げたもんだ。
「ここまで上手く行くとは思わなかったなあ。私が取り巻き連れて遊びに出るのも憚られるぐらい忙しいけど・・・」
「あ、やっぱ忙しいのに仕事サボっちゃったんだ・・・」
「ま、取り巻きたちはビジネスクラスに放りこまれたみたいだしゆっくりさせてもらおっかな~」
「・・・なんか外から『会長はどこだあ』とか『会長がいないと仕事が回んないです、いい加減戻ってきてください』とか叫び声が聞こえるんすが?」
「なにそれ聞こえな~い♪」
「・・・ひっでえ生徒会長だ。」
彼女はお付きの救護員の女の子に膝枕してもらいながら、パラりと雑誌を捲り始める。
ここまで堂々とサボれるのは彼女だけだろう・・・
「大丈夫、大丈夫。いざとなったら私の可愛い女子生徒副会長ちゃんが頑張ってくれるから」
「・・・そすか」
廊下から『なにお姉さま探すにかこつけてサボっとんじゃあ!』とか鬼のような怒声と共に肉を打つ音が響いた
・・・忘れよう
「二つ目だけどさあ、、、視姦って罪になると思う?」
「申し訳ありませんでしたああああっ!!!警察だけは、、、警察だけはあ!」
土下座してると、彼女は女神のような笑みを浮かべていった。
「頼みを一つ聞いてくれるなら」
頼み・・・?
暫く時間を潰していたが朝日奈さんが一向に回復しないので一度外に出ることにした。
・・・というのも
「ごめん、如峰月君。腰に力が入らないから満足するまで奉仕するとかはまた今度の機会にしてくれるかな?折角の学際だし他の場所回ってきて・・・ね?」
「そうよ、折角だから私とお話しましょ?楓ちゃん?」
「きゃっ!いきなり何するんですかあ!」
「フフフ・・・あれだけ苦労させられた楓ちゃんが今は私の手の上・・・」
「怖い、怖いです!生徒会長さんの目が怖いです!」
「じゃあ、お言葉に甘えて失礼しますね・・・」
「いやっ、やっぱちょっと待って!あ、、、ああんっ!」
「うふふ、いいわあ。これなら後継者としても十分使えそう・・・」
・・・・な感じで居づらくなったのだ。
VIPルームから出ると、ちょうど交代の時間だったのか伊月が救護ビジネスクラスの幕を開いて出てくる所だった。
興味があったので少しだけ覗くことにする
すぐにカーテンを閉めた
中の設備はVIPとそう変わりはないようだが、医務員らしき人が一人しかいなかったり何十人もの人間が地面に雑魚寝させられてたり・・・ここはどこの国の野戦病院だ?
取り敢えずもう少し医務の人手を増やすよう清廉君に言っておこう。
目の前の光景を忘れる為に頭を振っていると、伊月が声をかけてきた。
「ひどい光景だろ・・・」
「ああ、なんて酷いんだ・・・」
「何も生み出さないんだよ・・・戦争なんて」
「俺は、、、戦争が憎い!!!」
「この光景を忘れるな・・・私たちはこの光景を世界からなくすために戦ってるんだ!」
「ああ、、、でさあ、これ何のパロ?」
「さあ?清廉君がやってくれっていうカンペを出してるから」
指さされた方を見れば清廉君がカンペを出しながらそこで抱き合えとカンペだしてた。
ぶっころ
カメラのデータを取りあえず消してカンペを引き裂いた。
「ああ、、、新人大会用の作品の映画に使えると思ったのにぃ・・・何してくれとんや!」
「うるっせえよ!ちょっとスゲえとか思ってたのに、まさかこの野戦病院みたいな見た目作るためにワザワザこんな大袈裟な仕掛け作りやがったのかあ!」
「そやけど?」
「・・・もういいよ」
あまりにも何当たり前のこと聞いてんだって顔してたので質問することを止めた。
・・・ん?
伊月が少しぶかぶかのTシャツの裾をおさえてもじもじしていた。
「伊月?なにもじもじしてんの?」
「いや、、、今から抱きしめられるんだろう?少し恥ずかしくて・・・」
「そうだ!がばっとやってしまえ!ほら!」
「・・・」
取り敢えず清廉君が隠し持っていたカメラを叩き折って伊月を諭すことにした。
「こら、伊月、、、天然はいい加減にしろ」
「え?ここまでしておいて?」
「やめろ!朝日奈さんや朝顔さんがきいてたらどうするつもりだ!」
彼女はええって顔で俺を見て来る。
いやいや、、、流されすぎだからな?
本当に伊月は放っておけないほど危うい。
「二人とも仕事ないんやったら休憩入ったらどうや?」
「休憩って、俺まだ仕事してないぞ?」
「言葉の綾やで、外見て来いや」
そんなことを言っていると伊月がまた野戦病院に戻ろうとしていた。
「おい、伊月?何で中に戻るんだよ?」
「え?休憩だろ?場所もないから中で休んでようかと思って」
「休むって…折角の文化祭なんだから外出ようぜ?」
俺がそういうと彼女はうーんと気乗りしない感じだ
普通の学生ならいやっほいと他のクラスのオブジェ見たり、外の屋台見に行ったりするだろうに・・・
「伊月さん、他の子よりシフト入ってくれて助かるけども、三回しかないんやから楽しまんと!」
「ううむ、、、でもそれ程行きたい場所もないし、、、それだったら私が外に出たい子とシフトを変わってあげた方が有意義だし、、、」
「もうそろそろ演劇が始まるし皆そっちに行きはじめるから人手いらんくなるんや。だから遊びに行くなら今やで~。ほら、桜君!エスコートしたりや~」
「「ちょっ!?」」
二人纏めて教室から追い出されてしまった。
仕方ないな・・・と思い、髪をかく。
俺は屋台は全部回り切ったし、後見回るとしたら他のクラスのオブジェや二年のミニ演劇か。
「伊月、屋台以外にどっかいったか?俺奢らされてばっかだったから屋台関係しか回り切れてねえんだ。」
「そうか。私も屋台以外は回ってないな。休憩で外に出るの初めてだし」
「え?もう昼回ってんのに一回も外に出てねえの?」
「ああ、何か問題あるか?」
問題ありまくりだ・・・
こいつは休憩抜いた時間ずっとあんなくらい教室でずっと籠ってたって言ってるんだ・・・
何考えてんだよ、まったく・・・
「折角の文化祭なんだからえんじょいしよーぜ!?」
「いやエンジョイと言われても、ここに来たのもつい先日で何にも手伝ってないから・・・」
「あ~そういやそうだな・・・」
夏休みの間で俺と彼女はずいぶん仲良くなれたんで思いつかなかったが、よく考えたら彼女はついこの間学校に来たばかりなのだ。
皆にとっては待ち望んだ学祭であっても彼女にとっては転校した時期にたまたまイベントがぶつかったって感じなのだろう。
まだ一緒に回る友達もいないだろうし、文化祭準備に関わったわけでもないから皆程心から楽しめるわけでもないだろう。
道理で文化祭があるってのに忘れて完徹ゲームするはずだ。
まあ仕方ないとはいえ、楽しめるように出来る限り協力してやりたいな・・・
「よし、この如峰月桜が貴様に文化祭の楽しみ方を教えてやるッ!!!」
「何で偉そうなんだ?」
「うるさい、ほら行くぞ!!!」
ここでしゃべっていてもいいわけばっかだろうしなあ・・・
伊月の手を引いて強引に連れ出すことにした。
流石に皆、三年の演劇を見に行ってるのか随分と空いてきた。
二年のミニ演劇ですら三年の演劇を見る為にどのクラスも開催してないぐらいだもんな。
真新しい校舎を伊月を引き連れながら、目的地へとまっすぐ進む。
だらだら回るのも面白いかもしれないが、文化祭の楽しみっていやあさあ・・・
「如峰月君!?葵っち!?」
随分仲良くなったのか伊月のことをういるるは葵っちと呼ぶらしい。
へえ・・・お姉さまや銀乙女とかと比べると随分親しみやすい名前だ。
俺は迷うことなく伊月を引き連れ紅ういるるがいる1-Fにやってきていた。
個人的に文化祭で面白いと思えることって、知り合いがやってる所に遊びに行くことだと思うんだよな。
だから伊月が唯一この学校に入る前から友達である紅ういるるの教室まで連れてきたのだった。
「よお、ういるる。1-Fは・・・キャップかあ。」
流石に清廉君が陣頭指揮を執って最後の最後までやり切ったクラスってのはなかなかないらしく、一枚の写真をキャップだけで拡大した大きな絵を一枚飾ってあるだけだった。
で、他のクラス同様文化祭を巡ることを中心に考えているのか最低限の人間しか置いてないようだ。
今だって三年の演劇にでも行っているのかういるるともう一人の女の子がいるだけだった。
そのもう一人の女の子もういるるが担当すると見た瞬間さっきまで読んでた文庫本をまた開いた。
「あう、、、くるなら言って欲しかったよ・・・」
「ああ、それはそうだな・・・ういるるがいそうな時間が今だろうなって何となく分かってたから」
「ふえ?」
「いや、皆が外に出たいとき皆を思いやって一番人気が無いシフトに入るだろうなって思ってさ。」
「如峰月君・・・」
ういるるが俺の言葉にちょっと照れていると伊月がじいっと鑑賞していた絵から顔を上げた。
「ういるる、これ何個キャップ使ってるんだ?」
「あ!?そうだね、説明しないと!」
来た人への説明があるためにどのクラスも最低一人は説明係を置いている。
さっきいたうちのクラスだったら今もまだ清廉君がやってくれてるだろうしこのクラスだったらういるるなようだ。
彼女はよいしょといいながらiPadを取り出し始め・・・
ちょっと待て
「ういるる、、、口で説明しろよ・・・」
「無理です」
「「無理なのか・・・・」」
ういるるが妙にキリッとした顔で反論してくるので、仕方ないと納得しておくことにする。
ういるるも伊月のお蔭で新聞部や伊月に対してはしゃべれるようになったが、まだまだ他の人には自発的に話せるようにはなれないようだ。
まあ、それでもさ・・・iPadを使ってでも積極的に話そうとしてるのは評価してもいいんじゃないだろうか・・・
伊月が前に言っていた通り・・・ゆっくりゆっくりういるるのペースでやれればいいさ。
-『シン』が消えてから、2年の月日が流れた。ではこの地に満ちる生命総ての者どもよ、1-Fが作り出した世界を知る旅に出ようか-
「・・・・・・・・・・(プルプル)」
「桜、落ち着け・・・」
初っ端から厨二病満載のテキストに既に我慢が効かなくなりそうだが伊月が耳元で必死に静止してくる
・・・ういるるもなんとなく分かっているのか、小さな体を必死でiPadで隠そうとしている。
まあ、ここに来た全ての人にこんな感じのテキストで説明していたんだろう・・・
これでしか説明する手段がないなら俺が我慢すべきなんだろうなあ。
急に来ちまった俺が悪いし、しょうがない・・・
「・・・・・・・・じゃあ、続けてくれ」
「・・・・(コクコク!)」
ういるるは必死でブンブン首を振るとiPadを指で滑らせてスライドを一枚めくった。
-これから1-Fの紅ういるる───即ち『生きる〈イヴ〉』のクリムゾンシークレットコード・UIRURUがオブジェ説明に入る。感歎に震えているがよい。今回我ら『生きる〈イヴ〉』は低俗な言い方になるがキャップを使って巨大化絵を作った。巨大化した元の光画がこちらだ-
不思議だ・・・地味に何が言いたいか分かる。
さすが新聞部の文章作成係、、、一味違う中二病だ。
「・・・とでもいうと思ったかあ!!!」
「ひいうっ!???」
「落ち着け、如峰月!!!」
iPadを没収しようとする俺を伊月が羽交い絞めにする。
ういるるがひうっと涙目で逃げ回る。
「離せ、伊月!やっぱりあいつは俺のペースで社会復帰させる!」
「約束しただろう、ういるるのペースでやっていくと!」
「そだけど、、、これはあんまりだろ・・・」
ういるるは極端な引っ込み思案でスマホなどを使わないとコミュニケーションが取れない。
それだけならいいんだけど舐められないようにと中二病の文体を使うもんだから・・・
俺が羽交い絞めされるほど暴れる羽目になる。
「「「はあ、、、、はあ、、、はあ、、、」」」
「く、紅さん?せっかく友達来てくれてるんだし、外で出てきたら?」
三人で追いかけっこをした結果、結局疲れるだけだった。
なんで俺はあそこで冷静になれなかったんだろう?
主人公だったらもうちょい冷静に聞けたか?
いや、ムリだな。
「じゃ、、、じゃあ、、、お願いしてもいいですか?」
ういるるも少し成長したのかクラスメートの人に頭を下げると、よろよろと伊月の手を引いて外に出ていった。
ういるるも成長したなあ・・・俺のお蔭で。
自分のやり方は間違ってなかったんだなとうんうん頷いていると、ういるるのクラスメートがあのうと声をかけてきた。
「あのう、、、おいてかれてますよ?」
「え?・・・まじで!?」
慌てて外に出るとういるると伊月は既に外にいなかった。
スパルタは確かに人を大きく成長させるかもしれない
実際ういるるは大きな成長を迎えた
俺は間違ってなかったんだ・・・
そんなことを考えながら一人で三年生の演劇をみて文化祭初日は終了した。
結論:誰かの為にってやったとしても、その人の心が離れていったら本末転倒だね☆
べ、別に一人で文化祭回ったからって寂しくなんてなかったんだから!
伊月パートが地味に短くなってしまった・・・次回はスーパーヒロイン人がメインです!




