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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第二部:激昂する乙女は剣と舞い、狂う咎龍人は最愛を想う<曇の奇術師編>
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EPILOGUE-TWO遺された者達

あれから一日が経った。

限界まで魔力を振り絞った影響で、魔力は一向に回復しようとしない。

消し去られた肋骨などの外傷だけはサニアが治してくれたので歩くぐらいなら出来るが。


「ふう・・・流石に魔法で空を飛ぶのは骨が折れるの・・・」

「俺を担いで飛んでくれたから文句は言いたくないが、龍のままの方が飛びやすかったんじゃねえの?」

「やれやれ、、、風情がないのお。これだから人間は。」


俺が悪いような話になって来たので、話を切って先に進むことにする。

辺りは人気が全く無い。

それはそうだ。

ここは荒廃した土地、元ドン・クラーク領。

彼の居城の庭に降り立っているのだから。


復興関係でモルロンド伯爵直轄領は寧ろ大賑わいだ。

静けさはあの時のことを思い出させるから、うるさい方がいいとはいえそれはそれで腹立たしかったので外に出た。

シノンは何か用事があると外に出たままだし、サニアはサニアでまた魔力枯渇でぶっ倒れるし。

全員そろって外出できるのはいつになるやら・・・


「サクラ、龍の匂いがする!」

「ああ、高いとことか好きそうだもんな、あの人。」


というわけで彼の遺言通り彼の部屋を尋ねることにした。

この世界に来たお蔭で朝日奈楓から解き放たれたのか俺はどうという事はないが桜はそうはいかないようだ。

ソーラとやらに先に話を聞きたかったが大反対してくる。

今まで検証したことは無かったが『自分であり自分でない者≪アナザー・ミー≫』が桜依存の能力である以上あまり喧嘩になるのもめんどくさいので止めておこう。

まあ、ドン・クラークがソーラを恨むなって言わなかったらこんな気持ちにはならなかっただろうが。


あんなに行き場のない気持ちが胸を渦巻いていたのに、不思議と今はガスが抜けたかのように何も感じない。

なんだかんだでシノンもサニアもスカイも皆生きてることも大きいが。


「まだ気にしてるのか?」

「・・・ぶっちゃけるとな。」


スカイと塔を登ってる最中、スカイが心配そうに声をかけてくる。

彼女だってドラゴンの治癒力でほぼ全回とはいえ、病み上がりなのにそんなに心配させたくはない。

頬を一発ぶったくと気合を入れ直す。


「よし、もうすぐだ。」


部屋についてみると、あっけないぐらい簡単に目的の物がどこにあるか分かった。

部屋がめっちゃくちゃに荒らされている中で、開かれた様子のない隠し扉が壁から露出していた。

鬼が牢獄にいるまにとこじ開けようとした努力の後はあるが駄目だったようだ。

心臓から見つかった二つの龍応石の魔力派長に反応してか扉が発光し始める。


そっと近づけてみると、あっさりと扉は消えた。

消えた扉の奥は本当に小さな小箱があった。

箱を開けると誓文書と一枚の手紙。


誓文書の方には亡き妻の為に娘を守る最大限の努力をするという一文に始まり、そのために追われる身である自分の口から娘を聞きだし利用することが無いよう自分自身にまで魔法をかけ旧友に預ける旨が書いてあった。

娘がいたことも驚きだったが、娘の身を守る為に無意識的に行動する魔法をかけてあったらしく彼の望みが達成されていたことにひとまず安堵する。

それから手紙を読む。

手紙の方は読んでみれば大体のことが分かった。

手紙に書いてあったことは二つだけ。

ここのカギとして利用された龍応石は自分と当時赤子だった娘からくりぬいたものらしく実は共鳴鉱の原料になるからこれを報酬として娘を守って欲しいとのことだった。


そしてどちらかに似るだろうからとドンクラーク一家の写真が転写されており、その母親の顔は、、、ソーラそっくりだった。


こちらも朝日奈楓そっくりだった。




「そうか、、、ようやくつながったよ。」


監察官、、、いや、モルロンド伯爵がため息をついた。

宿に戻るとお呼びがかかったので屋敷へ向かった。

雇い主といえばいいか、、、見張り番的な役割まで果たしていた監察官改めモルロンド伯爵はクエストを受ける人材を見極めたかったのだと俺達に頭を下げてきた。

便利な魔道具ももらったんだし文句はないといったら、凄く感謝され屋敷で茶を振舞われている。

正確に言うと、スカイとモルロンド伯はピルチ茶で俺はピルチの搾り汁だが。


「クラークさんの行動ってたまに不思議なことがあってね。ソーラがあの人の娘なら納得かな。」

「よく思い出せば、あの娘からも龍人の匂いが微かに残っておったしの。」

「てことはソーラもドン・クラークみたいに『狂竜化』を?」

「龍応石くりぬかれたぐらいでなれるもんじゃないぞえ?あれはむしろ呪いに近いものじゃし。」

「そうか、、、龍人にしては体は健康だったんだがな。」

「その龍応石は龍とテレパシーをつなぐことに魔力を優先的に送る石だからの。むしろ邪魔じゃね?案も出とるぐらいじゃし。」

「アイデンティティ崩壊してんな・・・モルロンド伯爵、不思議なことってのは?」


彼はそうだねと言って思い出すように語り始める。

その顔はどことなく故人をしのんでいる顔だった。


「彼が優先的に行ったことはカレーメ元伯爵の討伐だったんだ。」

「その人が、、、ドンクラークの言ってたエリーさんの?」

「そう、叔父だった。その当時まだ山賊だったクラークさんは領地を捨てて逃げたカレーメ伯爵とその配下の者達の潜伏先に単身で突入し女子供区別なく討伐したそうだ。でも、なぜか一人の女の子だけは当時潜伏先だった領地の役人である私に預けてきたんだ。その女の子がソーラだった。」

「・・・なんで、カレーメ伯爵がソーラを養子に?」

「さあ、大方人質にしようとクラークさんの知人から誘拐したものの、老衰したのか良心の呵責にでも耐えかねたんでしょ?姪っ子を殺しておいてその娘まで殺すほど非道になりきれなかったんじゃないのかい?」


心底どうでもよさそうにカレーメ元伯爵について語ると、モルロンド伯はため息をついた。


「今考えると本当に親子だね。まさかクラークさんを殺そうとしてるなんて露程も感じ取れなかった。」

「実の父親を母の敵でもある養父のために討つ・・・とんでもない悲劇だ。」


何のために今まで頑張って来たのか。

真実を知ってようやく彼の遺言の意味が分かったが、、、その真相はただの悲劇でしかなかった。

どうすりゃいいんだか・・・はい、許そうな気分にはなれない。

娘だろうが、恋人だろうが命助けてくれた恩人を殺す人間に同情は出来ない。

本当に、、、やりきれない。


桜が伊月葵さんとやらとやりあったそうだが、あの子にはすがすがしいまっすぐさがあってそれに従った結果だった。

伊月葵みたいに一本筋を通さないソーラのやり方を俺は好きになれない。

正直俺に言わせれば朝日奈楓に外見だけ似ている、ただの人生舐めたくそ生意気な甘やかされ娘だ。


「で?伝えるんすか?」

「いや、、、私たちだけの胸中に秘めておこう。」

「それが懸命、、、かのお?人間の世はよう分からんがいつかは向かい合わねばならんのなら早すぎるとか遅すぎるとかは無いと思うがの。」

「勘弁してよ、、、僕だってまだ整理がついてないんだ・・・」


モルロンド伯爵はある方向をずっと見つめながら言った。

その方向にあるのは、ソーラが軟禁されている部屋だった。




屋敷を出るとだいぶいい時間で、夕暮れ時になっていた。

復興作業を行っていた街は様変わりし、食事の匂いが辺りに漂ってくる。

行き交う人々も帰り支度をする人や、食事・宿を探す人へと移り変わっていく

そういえばこの街に来てから、まともに出歩いたのがシノンと買い物に出ただけだったことに気付く。

食事系の屋台が並ぶ道を進んでいるとスカイがもじょもじょしながら服を引っ張って来た。


「サクラ、、、こんな時でも腹は、、、減るんじゃが、、、」

「ぷっ」

「な、なんじゃ笑うか!笑うのかえ!せっかく気を利かせた言うのに!」

「悪い、悪い・・・そうだよな、どんな時でも腹は減るよなあ!」

「お主、、、意地悪しておるな・・・確かに今回の戦いは役に立たんかったが次の戦いは絶対に役に立つ!だから飯が食いたい!」

「ぷははははっ!それでいいんだよ!飯ならいくらでも食わせてやるから、怪我だけは済んなよ?元気だからこそ、腹は空くんだから。」


そうだ、、、流石に元気いっぱいってわけにはいかないが守りたい人達の大半は守ることが出来たんだ。

ドン・クラークは守れなかったけど・・・彼に救ってもらったお蔭でお腹を今日も空かせられる。

いつまでも泣いてばかりも彼は本望じゃないはずだ。

俺はまだ心の底から笑う気にはなれないけど、、、スカイはドン・クラークが思わず感心するぐらいの笑顔見せてくれるだろうさ。


「甘い!とても旨い!」


どうでもいいけど、あまいとうまいって発音似てるね。

スカイの食いっぷりはすさまじく、ゴブリン盗賊団で稼いだ公国金貨が飛ぶように消費されていく。

スカイはぴょんぴょん跳ねては、あっちの肉が食べたい果実が食べたいと走っていく。

その後ろをぽつぽつ歩いてると後ろから声をかけられた。

コウがやあと歩いて来ていた。

両腕は既に腕のいい術師に治癒魔法を掛けてもらえたのか完治していた。


「うん?コウか?」

「やあ、、、寝なかったのかい?」

「ああ、あんたは今まで寝てたのか?」

「何があっても、寝て精神を充足させておく・・・上級冒険者は皆それぐらいはこころえてるさ。」

「へえ、アリアもそこはしっかりしてんのかねえ?」

「・・・」

「どしたん?」


コウはきまり悪そうに頬を掻いた。


「いや、、、師匠のこと気にならないのかと思ってね?」

「聞いても依頼人の秘密保持とか言って教えてくれないんだろ?」

「まあ、、、でも、、、少しなら、、、」

「ははは、、、アリアはもうすぐ会いに来てくれるっていってくれてたしな。それを信じるさ。」


そんな会話をしているとスカイがこっちに気付いたのか近づいてきた。

コウは気まづそうな顔をする中、スカイは笑顔だ。

スカイは笑顔のまま旨いぞと肉串を俺達に差し出してくる。


「どうだ?あんまりにも甘辛くて旨いから分けてやる!」

「あ、、、ああ。有難う・・・あの時は本当にごめんね?」

「気にするな、結局私たちを誰も殺さなかったじゃないかえ。お互い自分の理想の為に戦った結果じゃ・・・遺恨は無い。」

「そっか、、、そういってくれると助かるよ。」

「ん?サクラ、今度はあれが食いたい!」

「はいはい、行って来い。」


金を渡すとスカイはわき目もふらずに走っていく。

人間臭くないあいつが一番主人公らしいな・・・俺はまだまだだ。

ちょっと感心した。

死にかけるような目にあったのに、、、桜といいスカイといいお人よしもいいとこだ。

敵にどこまで甘いのやら・・・

生き抜くために作られたせいか、俺は敵となったものを許したり信頼するといった行為を簡単に出来ない。


それが原因で俺は桜と争うことになった。

変わることを認めなきゃ、、、いけないな。


「そういえばなんだが、、、もしよかったら僕の所属する私立ギルドに所属する気はないかい?」

「私立ギルド・・・ね。メリット次第かな?」

「面白いよ?かなり。公営ギルドみたいに圧力強くないし。」

「う~ん、もうひと押し。」

「強くなれるよ?僕よりも戦闘が出来る人間が修行ついてくれるし。」

「へえ、、、一番強い人ってクラスいくつなの?」

「特級をABC三つに分けた場合、、、特A級だよ。うちのギルドマスター。」

「・・・確かに面白そうだ。仲間と相談してみるよ。」

「そのほうがいい。なかなか会えないからね。特級冒険者には。」


コウは俺にギルドの場所を教えると、颯爽と去っていった。

特Aねえ・・・戦いたくはないが・・・どんなのかは見てみたいな。


スカイのお腹が化学反応を起こしてちょっとだけぷくっとしていることに、生命の神秘を感じながら宿屋についた。


「おばちゃん、これお土産。シノンとサニアどうしてる?」

「おや、ありがとうね。白い髪のお嬢ちゃん達ならあんたらが来たらフレイシアって店に来るようにって伝えてくれって言ってたよ。」

「フレイシア?どこだよ、そこ?」

「確か、、、食べ放題の店じゃあなかったかい?」

「食べ放題!?お菓子はあるかえ!」

「スカイ、、、公国金貨200枚分食って、まだ食うか?」

「・・・アンタらが来たらフレイシアは潰れてしまいそうだねえ。」


かなり失礼なおばちゃん宿に残して、フレイシアに向かう。

・・・屋台を少し回っておこう。

スカイを少しでもお腹いっぱいにしないと本当にフレイシアは潰れてしまうから。



フレイシアは見つけるのに意外と時間が掛かった。

だってフレイシアの店が上流階級の人間が御用達するエリアにあるんだから。


絶対今日で赤字になって潰れるな。


半ば予感しながら高級食材食べ放題店かもしれないフレイシアの門ををくぐる。


「お客様、、、ドレスコードがあるのですが、、、」


と思ったら、くぐれなかった。


「店員に私の名前を出せば、ドレスを貸し出してくれたのに。」

「先に言ってくれよな・・・お蔭でスカイのドレス自腹だぞ。」


俺は『黒雲衣Ver礼服』でいいが、スカイはそれでは可哀想だから近くの店で薄い黄緑色のドレスを買ってあげた。

着付けまでやってくれるところで良かった・・・

スカイは物珍しいのかチラチラ、ドレスを持ち上げてはしげしげと眺めていた。

心なしか嬉しそうだったので、いっか。


「飯はまだかえ?シノン。」

「・・・もうちょっと待ってくれ。君、金は糸目をつけないから量を多めにするよう料理人に伝えてくれ。」


シノンが財布に糸目をつけないとは珍しい。

しっかりしている彼女は財布のひもがパーティー内で一番きつい。

余程いいことがあったのか彼女の頬は歓喜で真っ赤に染まっている。


この状況で余程いいことか・・・何なんだろうな。

シノンは大胆に胸に切れ込みが入った白のドレス。

サニアは水色のチャイナを彷彿させる足に大きな切れ込みが入ったドレス。

ちなみにスカイのはミニスカドレスで金を出した俺の趣味が存分に含まれている。


恥ずかしがってくれるとなおのこといい。


主催者であるシノンは誰かを待っているのか、それまで料理は来ないと俺達に告げた。

でも、食前酒ぐらいはいいだろうと俺達にグラスを配らせた。


「ピルチで作らせたシャンパンだ。酒は飲めるか?」

「「「飲んだことない」」」

「ふふ、、、私もだよ。」


一つ一つの小ぶりのシャンパングラスに黄金色の液体が注がれる。


「ほう・・・」

「ふええ・・・」

「色はきれいだな・・・」

「甘いのかえ?」


俺達の感想を聞いたボーイが気を利かせたのか軽く教えてくれる。


「シャンパンは甘めに作られてありますから、他の種類のお酒のように独特の苦みはありません。皆さまお若いようですので、更に甘めでアルコール度数も低いものを選んでおりますから楽しく味わっていただけるかと。」

「どうも、ありがとうございます。」


シノンが礼を言うとボーイは一礼して立ち去った。

大衆食堂の兄ちゃんとは雰囲気から違うな・・・

店も落ち着いた感じだし、、、今更だが俺達以外の客もいない。


「シノン、もしかして貸切か?」

「ああ、、、遅いな。しょうがない先に乾杯だけしてしまおう。」

「そうだなあ、、、何に乾杯する?」


シノンは一瞬考える仕草をするといたずらを思いついた少女のようににっこりと笑った。


「ただ酒に」

「「「・・・乾杯。」」」


締まらない乾杯をして各自口に含む。

シャワシャワした独特の雰囲気を楽しみ口に含む。

なんだ意外と炭酸飲料じゃないか・・・少しドロっとしてる気がするが。


「旨いな・・・」

「ああ、、、流石ただ酒だ。」

「でも、少し熱くなるね。」

「ピルチもシャンパンにすると少しさっぱりするんじゃのう。」


皆、酒は弱いようだ。

龍のスカイはともかく俺もシノンもサニアも顔に熱を感じる。

小さいグラス一杯なのに、、、もう酔いかけだ。


「駄目だ、、、少し涼んで来る。」


シノンがベランダへとフラフラ歩いていく。

サニアが空のグラスを興味深そうにたゆらせている。

彼女にも本当に世話になったな・・・


「サニア、治癒魔法有難うな。何か礼をさせてほしい。」

「じゃ、戦闘中の攻撃魔法の制限解除して?」

「それ以外だ。」

「ええ・・・」


俺がきっぱり言いきると彼女はう~んと首を傾けた。

そしてああと何かを思いついたのか手を打った。


「私とシノンを選ばなきゃならなくなった時、シノンを選んで。」

「それは、、、恋愛的な意味か?」

「それじゃと余が仲間外れかえ?さびしいのう。」

「ふふふ、どうだろうねえ。」


酔って気分が大きくなっているのか、少しいつもより動作が柔らかい。


「おい、大丈夫か?」

「ほらさっそくだよ?私とお姉ちゃん。どっちを心配するべきかなあ?」

「ははは、そういうの嫌いじゃないわ。」


サニアが手を振ってくれる中、シノンが出ていったベランダへ行くことにする。

スカイは足りなかったのか、瓶ごと飲み始めている。

風情ってもんを知らねえのか、あいつは・・・

いつかは知るようになるのだろうか?



「うわっ、もう夜かよ。」

「・・・サクラか。」


既に夜の帳は降り、夜景は絶景と言っていいものになっていた。

これはいいな・・・流石高級レストランだ。

シノンに曇魔法で作りだした布を一枚掛けてやる。


「すまんな。」

「体冷やさないようにな。まだ体調戻ってねえだろうしさ。」

「ふふ、、、似合わないことを。」

「なにぃ?」


二人で肩が触れ合うぐらいの距離で夜景をぼおっと見る。

薄暗い光だからシノンの白いドレスはよく映える。

恐らくそれを見越して作ってんじゃないのかな?


「サクラ。」

「ん?」

「私たち、、、勝ったっていえるのかな?」

「どうだろうな。生きたままドン・クラークをモルロンド伯爵邸に連れてったからクエスト自体は成功だろうけど、コウもアイスド・スライムも倒しきれなかったしなあ。挙句の果てには雇い主の娘に護衛対象殺されるし。」

「散々だったな、、、思い出すだけでむかむかする結果だ。」

「・・・あんまりむかむかするようならトイレで吐いとけ?楽になるし。」


シノンが脇腹をつねってくる。

強くもなく、、、それといって痛みを感じるぐらいの強さだった。

彼女はいつものつっぱった雰囲気はなく、柔らかい感じだった。

唇をとがらせて拗ねる様子はかなり可愛い。


「たく、お前は・・・軽口ばかりじゃないか。こういう時ぐらい何か言えないのか、気の利いたことを?」

「そんなこといったってさあ・・・こんな結果じゃ何言っても負け惜しみじゃねえか。」

「でも、、、」

「わーった、わーった。なんか小説の最後っぽい良い纏め言えばいいんだろ?後で負け惜しみとか言うなよ?」

「ああ、言わない、言わない。」


彼女はうんうんと首を振ってイキイキした顔で俺の顔を見る。

本当に我儘な姉妹だよ、全く・・・

生き残れたとかそういうのはべただから、言ってもしょうがねえし・・・何か教訓とかは・・・


「ああ、そうだ。シノンに背中を任せられることを実感できたよ。」

「・・・へ?」

「いや普段から突っ走りがちな皆を押さえて、適切な指示をくれるからリーダーとしては信頼してたけど、戦闘能力は正直信用してなかった部分があった。なんか隠してんな、、、みたいなのあったし。」

「ああ・・・」

「でも、、、隠してた実力が分かった時よりも、寧ろ俺を死力を尽くして庇ってくれたあの瞬間、ああ俺の背中はシノンにしか預けられねえと思えたわ。」

「そ、そうか?実力は大事だろ?」

「いや、俺と同じで心に従って戦うんだろうなって。同じ人間だって分かったあの瞬間が一番嬉しかったさ。シノンなら心から信じられる唯一無二の俺の相棒になってくれるってさ。まあ、、、まさか死ぬのが確実な迷宮に飛び込んじまった時はそれどころじゃなかったしあんなの二度とごめんだけどな。」


シノンは目を閉じて俺の話を聞いていた。

頬が少しだけ上気してるのは照れだろうか?

彼女は俺の話を聞きながら手を胸にあて、何かを考えているようだった。

そして俺の話が終わると、ふうと心の中に溜まったものを吐息にした。

それでも胸の中で高ぶるものを出しきれなかったのか、目をつむったまま彼女は小声で愛を語るかのように音を奏でた。


「サクラ・・・どうすればいい?この気持ちは・・・」

「ああ?どんな気持ちだ?」

「・・・お前の耳の良さは不快だって話だ。」

「そうかい・・・」


どうやら聞いてほしくなかったようだ・・・

シノンが不機嫌になったのを宥めていると、サニアが呼びかけてきた。


「二人とも、待ち人が来たよ!」

「お、来たか。」

「誰が?」

「来れば、分かるさ。」

「ちょ!?」


シノンに手を引かれて再びフレイシアの中へ戻る。

中にあるのはサニアとスカイと沢山の料理と・・・モルロンド伯の秘書のメリッサさん。

メリッサさんは店に負けないぐらい上品に一礼をする。


「主人はこのような場にはふさわしくない人間だと参加を辞退しましたので私が代理で来ました。」

「もしかして貸切にしてくれたのは?」

「はい、わが主人。モルロンド伯爵です。今日は全てモルロンド伯の私財から出しますので好きなだけ飲み食いをいたして下さい。」

「「「「おお!」」」」


貸切だけでなくおごりとか、、、男前すぎる。

でもよ、、、


「なんのパーティー?」

「「「「はあ?」」」」

「いやいやいや・・・祝うようなことあったか?」


寧ろ泣けるようなことばかりだ。

四人はそんな俺を情けないものを見るような目で見て来る。


「たく、、、だから常識が足りないとバカにされ、キチガイとまで呼ばれてしまうんだ。」

「本当にこのチームのエースなんですか?頭ノータリンの鉄砲玉じゃなくて?」

「おにいさんキチガイだね!」

「余でもこれぐらいは分かっておったぞ?」


酷い言われようだ・・・でも分からないことは分からんのだからしょうがないだろ?

シノンがため息をついてギルドカードをぴらぴらさせる。


「クエストの成功を報告したんだから当然だろう?お前は何しにこの街へ来たんだ?」

「あ!」

「たく、、、皆、一回は確認してるっていうのに・・・」


‐ギルドカード‐

サクラ=レイディウス

15歳 ホモ・サピエンス

中級冒険者

パーティー所属:フェデラ

パーティー内役割:サブリーダー


「おお、、、いろいろ増えてる。」


ステータスはよく見てたけど、こっちは変わり映えしないから真面目に確認してなかったんだよなあ・・・

てか、このフェデラって?


「ああ、私の独断で正式なパーティー名は決めさせてもらったぞ?」

「・・・正式な・・・パーティー?」

「あ、、、もしかして合格後は解散するつもりだったか?」


シノンが悲しげな表情を魅せたので、慌てて首を振る。


「んなわけねえって!そのつもり、そのつもり!いや、パーティー誘われるの初めてでちょっと呆けちゃっただけだから!」

「そうか、、、お前の初めてはアリアではない!このシノンだ!」

「おう、その通りだ・・・」

「そうか、、、こっぱ恥ずかしくなってきたな・・・」


シノンと俺をサニアが後ろから腕を組んで引っ張る。


「さあ、もう一度乾杯しよ!」

「そ、そうだな」


サニアとスカイがシャンパンを取りに行く間、シノンに聞いておきたいことを聞いとく。


「なあ、フェデラって何?」

「ん?公国の第四代目勇者のパーティー名だよ。」

「私は初代のパシレスタの方がいいといったんですけど、、、語呂もいいし。」

「勇者ねえ・・・」


アリアがぶ千切れそうだな・・・

シノンは満足そうな顔してるので、まあいい理由があるんだろうが。


「このパーティーは誰一人として戦闘で死ぬこと無く全員が老衰大往生したそうだ。しかもお互い仲が良かったそうだ。」

「縁起いいな、、、うちのパーティーにピッタリだ。」

「パーティーメンバーも女性の聖騎士を中心に大食いの龍に神官に黒衣の剣士の四人だったそうだ。」

「へえ、、、考えてんのな。いいな。」

「そうだろう!そうだろう!も一つ由来があってな!」

「なに?」

「それは・・・・・黒衣の剣士は悪戯好きでいつも人をからかって遊んでいたそうだ・・・」

「なんだろう、、、急に黒衣の剣士に親近感わいてきたわー」

「はあ、実はパーティー間で恋仲ができ・・・・」

「さあ、新パーティー結成を祝って乾杯しようか!」


なんだよ、恋仲がどうしたって・・・まさか手を出そうとしたら破局したとかいう事か?

ちょっと縁起が俺としては悪いな・・・

ちょいエロっぐらいは物語的にも欲しいし。


「グラスは皆持ったな・・・じゃあ、中級冒険者合格を祝して」

「じゃあ、私は新パーティー:フェデラ結成を祝して」

「あ、パーティーリーダーを差し置いてそれを言うなんてずるいぞ、サニア!」

「早いもんがちだよ~ほら、三人も早く。」


シノンがむうっとサニアを小突き、サニアがやだっと逃げ出し俺の後ろに隠れる。

いや、、、俺がかばったわけじゃねえから・・・

シノンの恨めし気な視線を得ながら、メリッサさんを見ると彼女は察してくれたのか苦笑する。


「では、、、私は敢えて亡くなった方たちの冥福と心に傷を負った人たちの傷が言えるように祈りを」

「そうじゃな、、、じゃあ余は街に笑顔が取り戻されるように。」

「俺が締め?ズルいぞ・・・そうだなあ。」


シノンに会って誰かの命を守る事の難しさとその大切さを学んだ。

サニアに出会わなかったら守られる側の一方的に守られることの悔しさを知ることは無かった。

スカイがいなければ、俺はいつまでも悲しみに暮れていた。


断言できるそれでも彼女たちを守りたい。


例え拒否されたとしても

どんなに困難でも

どれだけ絶望していたとしても


彼女達を守るためなら俺は再びあの魔力に手を出すことも厭わない


グラスを挙げる。


「じゃあ、俺は皆を守ることを誓う。」


シノンがいつの間にか俺の隣に立っていて俺の脇腹をつねってくる。

・・・今度は本気のつねりだった。


「じゃあ私はサクラの隣で戦い続けることを誓うよ。君の背中は私が守るさ。君は放っておくと自分の命を疎かにするから・・・」

「シノン、、、二週目まで行ったらきりがないよ・・・」

「サクラが変なこというから・・・」

「いや悪くはなかったと思うけどなあ。男らしくていいと思うけど。」

「人の世は分からんが、余としても悪いものとは思えんな。」

「いいんじゃないでしょうか?伯爵『達』もおよろこびになるかと」


シノンはグラスを掲げため息をつく。


「まあ、グダグダなのも私たちらしいか・・・乾杯。」

「「「「乾杯」」」」


二杯目のシャンパンは一杯目よりも「」「」「」だった。

種族:ホモ・サピエンス

年齢:15

職業:曇の奇術師

冒険者クラス:中級冒険者

パーティー所属:フェデラ

本属性:曇(黒) 補助属性:

本質能力:『自分であり自分でない者≪アナザー・ミー≫』


スキル:【発動級】『曇の壁≪ウォール≫』『曇の階段≪ラダー≫』『黒曇衣≪コート≫』『曇の雨雨≪スコール≫』『曇の網≪ネット≫』『曇の沼≪プール≫』『曇の一撃≪ショット≫』『曇の増成≪パンプアップ≫』

【詠唱級】『曇神の審判≪クラウド・ジャッジ≫』

【連結魔術】『嵐曇魔術≪スーパーセル≫』

new【発動級】『黒雲の蓑≪ミノムシ≫』『曇の支配権奪取≪ハッキング≫』

   【詠唱級】『曇神宮の柱≪クラウド・ポール≫』

称号:なんちゃって異世界人  甘ちゃん 災害指定生物 破門された人 ロリコン疑惑 変態 キチガイ 薄っぺらい奴 自分探し中

new パーティー結成おめ 「よかったね」

    失い人 「君はこの教訓を生かせるかなあ?」

    エロい人 「パーティーメンバーを性的な目で見てるなんて・・・変態さんですね」

    自己犠牲の塊 「別に頼んでもない」

    疑心暗鬼 「信じてた者と争った結果、あなたは一つ信じられるものを失ったのでした」           

兵装:未鑑定のレイピア-効果不明。魔装加工はされているようだ。

new『七番鞘・常識外』-魔力・物質限らず、触れたものを斤き飛ばす。威力は込めた魔力依存

   『魔法玉ポーチ』-魔力を込めずに使えるだけでなく、内部で魔力が完結する魔道具であるため、魔力を分解する特殊な土地でも使用できる。色は発炎の赤、発水の青、発光の白、身体に影響を与える黒など。開発工場とテレポートでつながっている為製造が止まない限りは補給の心配がない。煉獄山の中でもこれを持つのは三人しかいないほど貴重なポーチだったりする。

装備:旅人の服

普段は『黒曇衣≪コート≫』で体を覆うので防御力は心配いらない。

外見だけなら鎧の隙間だけを埋めるなんて使い方もできるが黒雲の方が堅いので守備力は最悪三分の一まで低下するおそれ有。

特記:『暴走魔力』使用の後遺症で魔術の使用が暫く困難

『嵐曇魔術≪スーパーセル≫』使用時のみの使用可能スキル

『嵐曇の落水≪メテオ・ストーム・アクア≫』

『嵐曇の超密大網≪オーバー・ストーム・ネット≫』

『嵐曇の極一撃≪オーガ・ストーム・マグナム≫』


楽しんでいただけましたでしょうか?

閑話挟んだ後、次部です。

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