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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第二部:激昂する乙女は剣と舞い、狂う咎龍人は最愛を想う<曇の奇術師編>
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第6章如峰月桜と恋し乞い願う少女part1

ラスト章、ラストスパート!

現実に戻り次第、すぐに朝日奈楓の家に向かい彼女に話を聞いた。

結論を言おう。

朝比奈楓にそれとなくソーラやドン・クラークについて知ってるか聞いてみても反応は無かった。

どうやらたまたま瓜二つだっただけらしい。

それについてはただただ、良かったという思いが強い


彼女が俺みたいにこっちとあの世界を行き来してると知ったら俺は絶対に止めていただろうから。


今回の戦いでどれだけあの場所が危険かという事を嫌というほど味あわされた。

肋骨を消滅されかけた時の得体のしれない感触。

魔力枯渇と何もできなかった自分の無力さ。

触れてはいけない場所から引き出された魔力が身体中を喰い荒らした時の痛み。


「ドン・クラークがいなかったら俺とサクラは・・・どうなってたんだ?」


いつもよりさらにひどい『思いだし痛』が全身を駆け巡り、顔をしかめてしまう。

朝日奈楓の家に駆けこんで安否の確認が済み、彼女の家を出たときのことだった。


別に痛いのはいつものことだしいいさ。

俺の理想を別の世界で実現してるだけなんだから、リスクは受け入れる。

でも、朝日奈楓にはあの世界はあまりにも危険だからいて欲しくない。

彼女にこの痛みはあまりにも重すぎる。


「ただいま・・・」


家に入ると誰もいなかった。

朝顔さんはこの夏で中学陸上は終わりらしいからな。

全国大会に向けて毎日毎日、遅くまで練習しているようだ。

ご飯どうすんだろ?

家で食べるにしろ、外で食べるにしろ、マジで作る気が起きない・・・


「伊月、出前頼んどいて、、、ってあいつはまだ帰って来てなかったか。」


うちの居候も未だに帰って来ないし、今日はもう寝ちまおうかな・・・

リビングのソファに倒れこむ。

徐々に引いていく痛みが精神的な疲れに変わっていく。


「隙あり」

「!?」


気を抜き切ったまさにその瞬間、誰かの攻撃の予備動作の為の呼吸音が聞こえたので飛び退く。

そこにコンバットナイフがとんできて、ソファに深く沈みこんだ。

あれ?現実だよね?ここ・・・

今まで隠れてやがったようで、いきなり笑い声が上がる。


「おお!それが避けられるとは意外だったな!」

「せ、、、先生。」


笑い声と共にテレビがぶっ壊され、中から外国人女性がガタンと飛び出てきた。

金髪蒼眼の美女が大型カメラを肩に担ぎながら、ドヤ顔してそこに立っていた。

彼女の名はスーザ・エクストリーム。

国籍自体は日本だが、両親はイギリス人であり彼女も所謂白人だ。

そんな感じなんで、日本語は普通に話せるし英語も普通に出来る。


彼女は現役の戦場カメラマンであり、その一方でフェッシングの名手でもある俺の元師匠だ。

フェッシングを止めた今、俺と彼女の縁は切れたはずなのだが、それでも彼女が我が家に来る理由は俺達兄妹の叔母の友達であり、、、


「そ、それよりさあ・・・朝顔ちゃんいるかな?お土産買って来たんだけど?」

「・・・あいかわらずっすね。」


朝顔さんがお気に入りだからである(性的な意味で)。

もじもじしながら、お土産(アメリカ軍女兵士から剥ぎ取った軍服)を抱える彼女はあまりにも見てられないので再びソファに座る。

そして多分俺へのお土産なんだろうコンバットナイフを恐る恐る抜き、テ-ブルの上に置き直す。

もじもじしている犯罪者予備軍を前のソファに座らせて話を切り出す。


「はあ、、、来るならいってくださいよ。何の用です?はい、ウエルカムドリンク。」

「あ、悪いね。てか、しばらく厄介になっていい?しばらく良い戦場が起きなさそうだからさあ。」

「叔母さんも先生なら文句ないでしょ。てか、いつまで戦場カメラマンやってんすか・・・危ないだけじゃないですか。」


俺がとりまで冷蔵庫から出した緑茶を啜りながら先生はそれもそうだと笑う。

彼女は護身用として始めたフェッシングでオリンピックに出たこともある。

講師やコーチをする道だってあったはずだ。

何でまた・・・と彼女が戦場カメラマンをするといい始めた時は皆が止めたものだ。

なんなら就職先(伊月の学校)紹介しようか?


「いやあ、、、戦場自体肌が合うみたいでさ。金回りもいいし。」

「まあ言っちまえば危ないだけですしね・・・」


彼女はかなり有名な戦場カメラマンらしく、外国では彼女の写真集がバカ売れらしい。

他にも複数の戦争を非難するNGOからは常に写真を注文されてるとか。

このとおりお金は稼げてるのであまり強く言えないのだ。


「てか、桜も結構危ないことしてんじゃないの?」

「・・・は?」


思わず異世界のことがばれたのかとドギマギしていると、彼女はそれそれとテーブルに置いたコンバットナイフを指さしてきた。


「君が全盛期の時でもそこまで感覚が鋭敏じゃなかったよね?前の君ならこのナイフは避けられなかった。一応、君が完全に気を抜いた瞬間を狙ったのに。」

「・・・」


サクラの世界に行くようになってから、数えきれないほどの戦闘を経験してる。

楽しいことも多いけど、その分、人の攻撃意思を感じる能力は必須の世界だった。

サクラが死にかけてその痛みを俺も感じる事なんて数え切れない。

でも、『思い出し痛』ぐらいしか今まで影響はないものだと思ってたのに・・・


確かに耳をすませば隣の家の朝日奈さんの声まで聞こえてくるし、窓越しに目を凝らせば彼女の姿が視える。

鼻を動かせば外国の香水を使っているのか、先生の本来は微かなはずの臭いがとても気になる。

口に含んだ緑茶もいつもより苦く感じるし、肌に空気が当たる度に気になってしまう。


「まあ、敏感になるぐらいなら問題はないんじゃ・・・」

「ありまくりだよ」


彼女は真剣な表情で、懐からカメラを取り出し、、、フラッシュを焚いた。


「!!?」


思わず目を抑えて、うめき声をあげてしまう。

改造フラッシュか?

閃光弾並の光量じゃねえか・・・そんなことを考えていると前から彼女が声をかけてきた。


「ただの市販のカメラのフラッシュだよ。」

「っかあああ、、、え?」

「手、震えはじめてる。戦場でたまにいるんだよね。戦場のストレスにさらされすぎた結果、感覚が異常に敏感になるのが。生き残るために感覚が鋭敏化していく結果、銃弾まで見えるようになった奴もいたらしいよ?その一か月後にはストレス性の心臓麻痺で死んじゃったけど」

「は、、、はは。そこまで感覚の精度が上がれば、早死にしますね・・・」

「取り敢えず精神科に行きな。日本では普通は有り得ない症状なんだけどね。普通に平和だから。もしかして毎日刃物・拳銃何でもありな喧嘩したりしてる?」

「日本はいつから世紀末な世界観になったんすか?大丈夫っすよ、だって俺怪我してないでしょ?」


取り敢えず自分が危険な状況になりかけてるってことは分かった。

・・・俺もそろそろ潮時かもしれない。

自分の身を守るため・・・もあるけど、このまま異世界との行き来を繰り返してると俺だけじゃなく朝日奈さんの身まで危険に合わせてしまいそうな・・・そんな気がする。


取り敢えず朝日奈さんと似ているソーラが気にかかるから、彼女の安全が確認できるまでは潜り続けるつもりだが・・・その後はどうするかはサクラと相談だな。

先生に気付かされたことは俺の主人公になりたいという思いをを揺るがせるには十分な威力があった。



腹が減ったとうるさかったので二人で近くのラーメン屋に行くことにした。

本当は家庭的な日本の味を食べさせてあげたかったが、疲れる要素があまりにも多すぎた。

金髪蒼眼の彼女をチラチラ見られながら、二人でカウンター席に座る。


「あ、ここって学生だとサービス効くんだ。ズル。」

「高校やら、大学が近いからな。こういうサービス多くて助かる。」

「ここだと、、、ラーメン大盛り、トッピング一品追加、ライス無料の内二つって、、、ほぼ三百円はサービス効くのか・・・学生め。」

「先生も元は学生でしょうが。」


あんまりにもうるさいので、トッピングのチャーシューを彼女に譲ることにして二人ともチャーシュー麺を注文した。

待ってる間暇だったので、二人とも雑誌を読むことにする。


「おお、ここ結構昔の号まで置いてあるね。結構読み逃してるのがあるから、助かるよ。」

「ほんとだ。あんま来たこと無いから知らなかったけど、種類も巻数も相当だな。・・・仏教関係の雑誌もあるし。」


先生が適当に取り出したミリタリー雑誌をパラパラ捲り出したので、俺も何を読もうかぼうっと棚を眺める。

ん?

バックナンバーは申し付けていただければ持って来ます・・・ね。


何となく店員に声をかけてしまっていた。


「おお、現地ではレーションばっかだったから、余計においしく感じるよ!」

「そんなにレーションってまずいんすか?」

「いや、種類が少ないからすぐ飽きる」

「へえ・・・」

「てか、食べながら何読んでる・・・って、フェッシング雑誌じゃん。」


フェッシングを止めたことに関しては既に和解は済んでいる。

てか、この人自体も止めて戦場カメラマンをやっているので文句を言われる覚えはない。

彼女は身を乗り出して俺が読んでる記事を覗く。


「なになに、、、お、『銀閃』特集か・・・あ、これ決勝戦で坊主頭にして出た時のやつ?」

「ああ、先生のせいで散々だったあんときのです。」

「いや、中学生なんだからそれっぽいことしないとさあ・・・」

「本音は?」

「なんか師匠の私を差し置いてちやほやされるのがムカついたから。坊主頭になれば私の心も晴れると思って」

「バリカンもって近づいたときは何事かと思いましたよ・・・うぇ、『銀閃時に二つ閃光が走った、一つは剣の乱反射。もう一つは頭頂部の乱反射』とか書かれてる。」

「ぶはっ、なにこの記事!書き方がほぼ桜のディスリじゃん!」

「決勝戦でいきなり髪型変えるなんて、敵の動揺を狙う姑息な手とでも思われたんじゃないですか?・・・はあ、思い出すだけで嫌になる。」


先生が俺から雑誌を奪い、パラりパラりと捲っていく。

その間も俺は別の雑誌をどんどん見ていく。

駄目だ、、、目的の物は見つからなかった。

そんな間にも、先生はラーメンの替え玉を頼んだりとかしてるがそれでも見つからなかった。


「ぷっはあ、食った食った!・・・まだ食べてなかったのか?駄目だぞ、飯は早食い・しっかりを心掛けなきゃ。戦場ではいつ食えるか分からないんだし。」

「戦場ねえ・・・てか、そっちの雑誌に『伊月』って名字の対戦相手っていました?」

「『伊月』?ああ、名門のあの家ね・・・いや書いてないけど?」

「じゃあ、公式戦で対戦したわけじゃないのか・・・」

「どしたん?前に高校時代の友達に、最近伊月んとこのお嬢さんが物凄く強くなってるって話は聞いたけど・・・男の話は聞かないよ?」

「だよなあ、、、おかしいな。伊月の名前なら俺でも聞いたことあるし、戦えば記憶に残るはずだよなあ。」


パラパラ雑誌を捲っていると、例のトラウマ戦が出てきた。


「不動の天才を打ち破った神速の突き、まさにそれは『銀閃』だった・・・か。こん時っすよね?禿げ頭で戦った決勝戦。相手の名前は、、、藤堂勝海か。」

「そういえば、友達からはその名前は聞かなかったなあ。」


藤堂勝海ねえ・・・あっちもまさかこんなバカそうな頭の奴に負けるとは思ってなかっただろうなあ。

そんなことを思いながらバンと張り出された写真を眺める。

そしたら、いきなり隣でスーザ先生が大声を張り上げた。


「これ!禿げってる!光ってる!・・・ハハハハ!傑作だわあ!」

「・・・一応、トラウマなんすけど?」


文句を言いながら禿げ頭を眺めていると、その近くに見知った顔があるのを発見した。


「あれ?伊月葵が・・・何でこんなところに」

「葵、、、葵、、、、あ。藤堂葵・・・いたね、藤堂兄妹。結構有名だったはず。そういや、離婚して名字変わったって言ってたね。」


藤堂勝海、、、そして藤堂葵、、、どうやらようやく伊月葵と俺の因縁がはっきりしてきたんじゃないだろうか。




意外と近い場所にあるらしく、俺は昼休みにそこへ来ていた。

文化祭準備も残りはクラスの準備だけ。

穂のちゃん先生も機嫌が良くなりようやく忙しさが無くなってきたのか、しばらくは大丈夫と言ってきた。


「残すは追い出し会兼慰労会だな。それが終わりゃあいよいよ文化祭か。皆暇になった途端、俺を放置しやがって・・・準備も古畑さんとういるるだけでやってるらしいし。」


穂のちゃん先生が上機嫌なのは、20禁なものを良い肉をつまみにガブガブ飲める日が近づいてるのもあるだろう。

お蔭で時間が取れた。

伊月の家はあまりにも遠い場所にあるので行けないが、藤堂勝海のアパートが近くにあるそうなので先生の伝手で教えてもらったその場所に行ってみることにした。

鋭くなった感覚が伊月葵を放っておくべきじゃないと訴えかけてくる。


何か嫌な予感がする。


かつて、『不動の天才』とまで呼ばれた藤堂勝海が住んでいるにしてはいささかボロッちいアパートの前に俺はきていた。


「206、206、、、あった。」


隅にはホコリや死んだ虫が情けない程度に纏められている階段を気味悪く思いながら上る。

電光灯が替えられてないのかパチパチと点滅する。

殆どの部屋の新聞受けは何日分もの新聞が溜まっている。


「206も、、、か。」


広告がぶっこまれているのは206号室も変わらなかった。

違う点が一つあるとすれば、ドア中に人間の手垢がこびりついていた。

ホラー?・・・こんなとこに人が住めるのか?

取り敢えずインターホンを押してみる。


ガタッガタガタ。


音から判断すると、扉に近づいて覗き穴から覗いているのだろう

それから何かガチャガチャして扉が開・・・かなかった


「いや、いるの分かってんだよ!」

ガタッ、ガタタタ!


何かバレバレの反応は返ってきてるので、取り敢えずドアドンしまくることにする。


「おい、藤堂勝海さんよお!居留守してんじゃねえよお!いるのはわかってんだぞ、ゴラアッ!さっさと開けんと内灘の海にしずめっぞお!」


ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ドンドン!ガタガタ!、ガタガタ!ドンドン!


なにこれ、面白い。

そんなことを繰り返していると音を上げたのか、ドアが少しだけ開いた。

チェーン分だけ。


「なんでちょっとだけなんだよおおっ!」

ガタッ、ガタガタガタ・・・


「しょうがねえ、、、チェーンぶっ壊すか・・・」

ガタッ、モゾモゾ・・・


お?どうした?

なんかし始めたので、チェーンを壊すのを待っていると一枚の紙が投げ捨てられた。

なになに、、、


『うちにテレビはありません。法律的には放送受信料を払う必要はないはずです。警察に連絡をする前に早急にお引き取り願います。』


「俺はN○Kじゃねえよっ!?如峰月桜だよ!覚えてますかあ!?」


ドアを限界まで引いたり押したりして、チェーンを更にぎりぎりギシギシやってると階下から見知った声がした。

あれ、伊月?

大家とでも話してるのか軽い世間話をしている。

階段を登ってきている。


「伊月が来てる・・・二人でチェーン壊すか。」

「!!?」


必死でドアを閉めようとする藤堂勝海と俺が頭の悪い力比べをしてる間も彼女はとん、、、とん、、、と昇ってきている。


「はっはあ、二人で一気にひっぱりゃあこんなぼろいドア・・・・って、ええ!?」


ガチャガチャしてるといきなり、ドアが押し開いて人の手が飛び出してくる。

引きこもりにしてはものすごい力で部屋に引きずり込まれた。

あれ?と思ってる間に投げ飛ばされ、二転三転と転がる。


「いってえ・・・部屋の中か?」


殺風景な和室の1LDK。

パソコン、冷蔵庫、電子レンジ、寝袋。

そんな少ない家具のせいかはわからないが、部屋は意外にも清潔そうに見える。

引きこもりの部屋には見えなかった。

玄関にはぼっさぼさの髪でジャージの男が覗き穴にへばりついていた。


「てか、お兄様は・・・なにしてんすか?」

「うるさい!」

「す、すいません」


血走った目で怒鳴りつけられてしまった。

静かにしてろってか・・・しょうがないな。

早めに帰んないと怒られるんだが・・・

取り敢えず『部屋に閉じ込められたので教室帰れません』と証拠写真をつけて清廉君にメールを送る。


「ちょ、いきなりなに写真撮ってんの!?(小声)」

「しゃあないだろ、、、昼休み抜けてきてんだから。どうせ妹帰るまで俺も帰れないんだろ?」

「そだけど・・・(小声)」

「この家ではウエルカムドリンクは出ないのか?」

「れ、冷蔵庫勝手に開けてくれ(小声)」


藤堂先輩は部屋のドアを抑えたまま、そこから離れられないようだ。


「兄様、、、今日も開けて下さらないんですか?」

「ふーっ、ふーっ」

「・・・なんだこれ。」


返信メールに『いいよ(^.^#)』と来ていた。

これは、、、少し急いだ方がいいかな?めっちゃ怒ってない?これ?

帰りたくない。超教室戻りたくない。

よし、ここでだらだらしておこう。


「あ~、教室もどりたくね~」

「兄様?どうしたんですか?いつもより少しにぎやかな気が?」

「し、静かにしろお!(小声)」

「え~、どうすりゃいいんだよ」

「冷蔵庫!(小声)」

「へいへい」


冷蔵庫を開いてみると作り置きの料理を詰め込んだパックとドクターペッパーしか入ってない。

牛乳とか緑茶は無いんでしょうか・・・

しょうがないので適当に出して食うことにする。


「ちょっ、何勝手に食い物まで出してんの!?」

「兄様?そんな大声出して何してるんですか?なんかイカ臭いし。」

「しょうがねえだろ、昼休み抜けてきてんだから。このイカ飯固いな~、、、食うけど。」

「食うな!」

「く、来るな?兄様、それはどういう事ですか!」

「お前のせいでややこしいことになっただろうがっ!(小声)」


・・・おもしろいなあ、この兄妹。

あ、煮込みハンバーグがあった。

しかも、煮物もある。


「これもいいか?てか、白米もある?」

「じ、自分で探せ・・・てか静かにしてくれ(小声)」

「兄様!兄様!今日はいったいどうしたんですか!開けてください!」

「ひうっ、来やがった!」


ガンッ、ガンッと扉をぶっ叩く音がする。

そのたびに扉が少し歪んでいる・・・ああ、このせいでチェーンが壊れそうになってたのか。


「扉が、、、壊れる、、、(小声)」


どんな馬鹿力だよ・・・

うおおおおおおとか言いながら扉をおさえる兄と近所迷惑も考えずに扉を壊そうとする妹。

判官びいきな俺はガツガツ食いながら、兄貴を応援する。


「ひゃんばれ、ほうぼうひぇんふぁい。」

「ほ・お・づ・きいぃ・・・てつだえぇ・・・(小声)」

「いや、今は昼飯済ませることが最優先事項だから。」

「他人事だと思ってえ…」


その後、伊月葵は俺の食事が終わるころまでずっとドアを叩き続けたのであった。

兄は妹のストーカー的な行動には慣れてしまっているのか、新しいドアの注文をネットでし始めていた。

ドアを押さえながら、パソコンをカタカタしている姿は哀愁を誘う。


「ふう、食った食った・・・ゲフ。なにやってんすか?注文にしては長くないすか?」

「おい、お前冷蔵庫の肉類全部食ったな?俺の生命線なんだぞ?」

「・・・?旨かったすよ?」

「だろうな!とってたんだもん!お前なんかなれなれしいぞ、さっきから!」

「いやあ、先輩からみやすいから・・・で、これは?」

「たく、、、アフィリエイトだよ。これでも生活費は自分で稼いでるんだ。」

「そりゃあ、すごいな・・・」


アフィリエイトって、、、確かホームページに企業広告を載せて、売れた分だけ広告料を貰えるやつか。

生活費なんて下手したら十数万だろ?

それ稼ぐなんて、相当有能なんだろうな・・・

フェッシング止めて引きこもってるって聞いたときは大丈夫かって思ったが・・・思ったよりもしっかりやっているようだ。


「なんだい?じろじろ見て。」


服装はジャージだし、髪はぼっさぼさ。

でも顔は兄妹だからか、かなりの美形だ。

そういや『不動の天才』以外にも『フェッシング王子』なんてあだ名もあったぐらいだし。


「じっ、じろじろ見るな!」

「ああ、そだな・・・」


ようやくドアを叩く音が小さくなって来たので、兄貴はパソコンを持ちながらリビングへと戻って行った。

めんどくさい兄妹だ・・・とか思いながら、玄関前に座り込む。


「兄様、、、今日はもう帰ります」

「・・・?」

「ちょっ・・・ドアは開けるなよ。」


なんとなく変だと思って、ドアの覗き穴を覗いてしまった。

伊月葵は練習終わりなのだろうか、ジャージを着ていた。

それはいい、それはいいんだ。


彼女の顔は間違いなく沈んでいた。


感覚が鋭くなってる俺にはなおさらそれが分かった。

今まで見たこと無い顔で、、、とても切なくなった。

気付いたら体が勝手に動いて、ドアを開いてた。


「「え!?」」


兄妹が素っ頓狂な声を上げる中、閉じられた扉は簡単にこじ開かれる。


「え・・・ほおづき?」

「ちょ、何してくれてんだ、おいいぃぃぃ!?」

「やっぱり清潔にされてるとはいえ、外の空気は旨い・・・な?伊月。」


彼女は唖然とした表情でおれを見た。

それから口をパクパクして、キョロキョロして・・・

自分の格好を確認して・・・


「いやああああああああああああああっ!」

「ガッ!?」


ドアを無理矢理閉めやがった。

鼻を強打しマジで悶えていると、彼女は走って去っていった。

ホントに何しに来たんだあいつ・・・


「あんにゃろ・・・ん?」


兄貴は兄貴で妹に自分の姿を見せないようにと、寝袋の中にこもりガタガタ震えていた。

・・・このバカ兄妹が。

妙にいらだってきたので、寝袋に手をかける。


「さっさと出てこいこのバカ兄貴が!」

「ええ!?さっきまで散々迷惑かけられといて、最後はバカ呼ばわり!?てかなんて力だ、葵並じゃないか!」


あ、寝袋が裂けた。

てか、どんだけ薄いんだよ・・・夏物か?

まあどうでもいいけど。


裂けた寝袋から出てきた顔をがっと掴んで引き寄せる。


「さあ、なんでこんなザマになってるのか説明してもらおうか?」

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