第5章サクラと一つの終着点part3
「お嬢ちゃんその鎧、、、魔力の最大量だけじゃなくて放出限界量まで抑え込む鎧なのか?・・・しかも、魔力の性質まで別の物にする。そんな高度な魔道具作成技術は王国の王宮しか・・・」
「詠唱短縮:氷剣式一の型」
詠唱級魔術は本来詠唱で魔術操作を代替してもらわなければ発動すらできない超コスト魔術。
一度発動できるだけでも、一人前の魔術師といわれるほど。
魔力量の消費に対する威力は絶大。
術によっては家屋を一軒消滅させる。
『氷剣・氷河』
紅い剣が青いオーラを辺り中に撒き散らす
青いオーラにちょっとでもふれたスライムは簡単に全身を氷結させてしまう。
私は剣を一定の型に沿って振り回しながら次の型へと
『氷剣・氷塊』
青いオーラは徐々に剣へと集中し、、、剣を氷結させていく。
凍らせ
氷に
剣は巨大な氷塊へ
凍った敵を砕きながら、氷塊はさらにさらに巨大な鈍器へと成長していく
「詠唱短縮:氷剣式?・・・詠唱級を短縮して発動させる?それってまさか・・・」
ドン・クラークは気づいてしまったのだろうか・・・
でも、仕方がないのだ。
サクラに返せなかった恩を返すために、、、私は自分の秘密を一つ明かす。
内在型身体強化でもふらついてしまう質量を持つ全長8メートルの氷塊。
敵が凍りついて動けない状況であるから使い物になる威力のみを重視した私の『今の』切り札『氷剣・氷塊』。
そして、私の切り札を最大に生かす拘束魔術『氷剣・氷河』
そして
この流れを悟らせないための私の、、、元所属していた『聖十剣』の象徴『詠唱短縮:氷剣式』
「聞いたことがある・・・王国を守護する二万の騎士の中から選ばれた聖女を守る十人の騎士『聖十剣』。一人一人の魔術も素晴らしいが、『聖十剣』は詠唱しないで詠唱式が連続して使える魔道具を持ってるって、、、」
「シノン?嘘だよねえ!?僕を斬ったりしないよねぇ!?」
『聖十剣・第五位』シノン・エルリングス
王国最強と名高い、聖女を守る騎士の一人。
そして、私の紅き剣は王宮筆頭剣工ミルの作品、『紅剣・桃紅』。
『聖十剣』を象徴する技を可能にする王宮秘蔵の十剣の一つ。
詠唱級魔術の無詠唱、さらに連続使用を可能にする世界で十本しかない、これだけで城が建つトンデモ品だ。
「王国から離れるはずがない聖十剣が、、、何で、、、こんな公国の一伯爵領にいるんだ?・・・俺が牢獄にいた二年で、、、世界にいったい何が起こっているんだ!?」
ドン・クラークが世界の激変を感づいて、動揺し始める。
そうだな、、、いろいろあったよ。
王国だけでも、沢山のことが起こった。
帝国の執拗な軍備強化、そして軍事示威行動。
公国との領土問題。
王国からの人間同盟の独立によっての弱体化。
・・・本来国の象徴である聖女を、軍備強化のための犠牲にしようとするほど、、、世界は混乱に満ちている。
世界は、、、あなたがいなかった、たった二年で取り返しのつかないことになっている。
もう個人の力ではどうしようもない。
だって、たった一人の命ですら取り返しがつかないんだから・・・
氷塊を一凪するだけで、あっさりスライムたちは粉砕していく。
液体でほぼ構成されてるスライムはどうやら氷結の周りが早かったらしい。
本当に私を狙うつもりなら、、、氷属性のスライムをもっと連れてくるべきだった。
その程度の存在に、、、サクラをバカにされたのか、、、
『氷剣・氷停』
氷の氷塊を振り下ろしながら、切り離す。
空気をぶっちぎるように飛んでいく巨大な氷塊をスライム使いはどべっつぃた動作で避ける。
てか、しりもちをついたおかげでたまたま当たらなかったようだ。
「ひいィィィィっ!?あ、、、頭がぁ!?」
掠ったのかセットしていたのか不気味に逆立っていた髪形は風圧でぺしゃんとしてしまった。
スライム使いまで開けた道を、魔術によって青く光るようになった剣を持って走り出す。
近くに近づくほど、そのスライム使いの情けなさが目につく。
仮にも冒険者だというのに、全身に脂を纏ったその姿は醜い。
私が近づくのを見るや否や、ノロノロと体を庇おうと動き出す。
普段から訓練を少しも積んでないのか・・・
「こんなのが、、、サクラが死んだ要因の一つ・・・」
「し、、、シノンは、、、僕を斬ったり、、、し、、しないよねえ!?」
脂ぎった顔をくっしゃくしゃに歪めながら、泣きじゃくる彼をうっとおしく感じる。
お前が出しゃばらなければ・・・サクラを手助けに行けたかもしれないのに・・・
お前さえいなければ・・・・
「安心しろ、今すぐ殺しはしない。」
「シノン・・・」
青く光る剣がスライム使いを一閃する。
傷が凍りつき、血は出ない。
「ぎゃっ!?・・・痛く・・・ない?・・・シノン?」
ダラダラと汗を流す肉の塊に言っておく。
「重要な臓器を全て真っ二つに切り裂き、、、凍らせた。」
「・・・え?」
「お前は私の手で殺す価値もない、死の瞬間を見届ける価値がない。氷が溶けるまで、死の瞬間を只々恐怖で震えながら待っていろ・・」
それだけ告げて、立ち去ろうとする。
「シッ、、、シノン!僕を見て!ひとりにしないでッ!怖いよおっ!」
「・・・ッ、触るな!」
抱きしめようと駆け寄って来た両腕、両足を切り裂く。
そして凍らせる。
「あ・・・・ああ・・・・シノンぅ・・・」
痛みは感じないようにしているのに、、、スライム使いはガクガクと貧乏ゆすりをしながら倒れこんでいる。
・・・精神が壊れたのか。
敵とはいえ、、、やり過ぎたか。
「・・・すまんな。私の大事な者をバカにされて、、、ムキになっていた。戦士同士の礼儀を、、、果たすべきだよな?」
魔術の効果が切れたので、、、剣は紅い剣に戻っているが・・・
一瞬で楽にして上げられる。
命を弄ぶ真似をしてすまない・・・そういおうと剣を振り上げ・・・
ドゴンといきなり真横の壁が崩壊した。
「オラオラ!土蜘蛛の本数が8本から何本になったぁ!ひい、ふう、みい、、、四本かあ!」
「君も黒いコートがだいぶ薄まって来たんじゃないのかい!もしや、もうギリギリなんじゃないのかい!」
一番聞きたかった声がした。
嘘だと思いつつ、首を動かした。
殆ど黒のコートはなくなっているし、、、脇腹からどくどくと流れる出血でボロボロだけど
サクラ
間違いない、サクラだ。
「サクラ!」
「「「ちょ、ええ!?」」」
思わず飛び込んで抱きしめてしまう。
戦闘中だけど・・・仕方のないことなのだ、うん。
いきなり知らない魔力を纏った女の子が胸元に飛び込んできて、俺の脇腹をギユッと抱きしめてくる。
てか今、肋骨バッキボキなんで・・・
「イダダダダダだッ!?・・・って、シノン?無事だったのか。」
「サクラ!良かった!良かった!」
気付かなかったけど壁一枚隔てた先でシノンも戦ってたのか・・・
凍りついたスライムたちが砕け散っているのが見える。
・・・そっか、スライムを殺すのは火や光じゃないと厳しいけど、氷で固めちまえば物理攻撃も効くか。
よく考えたもんだ。
「シノン、、、流石だ。」
「サクラぁ!もうどこにもいかないでくれぇ!」
「・・・話聞いてねえな、こりゃ。」
彼女が顔をくっつけている俺のシャツが湿ってきている。
泣いてる・・・なんで?
ギリギリ力強く締め付けられてるが、痛い離せとは言えなかった・・・
「い、生きてたのか!?サクラ!?」
何故かスライムたちが切り開かれたのようにどかされた道をドン・クラークが走ってくる。
・・・よくよく見ると、かなりすごい規模の魔法を使ったみたいだ。
魔力を温存しときたいから『曇の網≪ネット≫』は使わないけど、、、数百はいるだろうスライムが全て凍りついている。
シノンもこの戦いで成長したのか?
いや、、、詠唱級二回、三回でここまでの状況にはならない。
最低でも、、、六・七回、、、彼女が限界を超えて魔術を使ったのは間違いない。
彼女はいったいどんな犠牲を払ったのだろうか?
「良かった、、、本当に。お嬢ちゃんが心配してたんだぞ?」
駆け寄って来たドン・クラークは『黒曇衣≪コート≫』を着てなかった・・・
ど、、、ドン・クラーク・・・
「あんた、脱いだな!俺がどれだけの時間をかけてそのコートをデザしたと思ってんだ!二枚も維持すんの大変なんだからな!てか、アンタの命を守るんだから脱ぐなよおっ!?デザイン気に入らないから着ないって、アンタはスティーブ・ジョブズかよッ!どんだけ破天荒なんだよっ!?」
「そこまで破天荒じゃねえよッ!?寧ろ、お前の制御が切れて無くなっちゃったんですけど!?俺ら寧ろ超心配してたんだけどォ!?」
「え!?・・・本当だ、街中も随分黒雲が消えかかってる。」
気付かないうちに最優先の黒雲まで戦闘に回していたなんて・・・頭に血が上り過ぎていた。
そういえば、、、ドン・クラークの『黒曇衣≪コート≫』が消えたら俺が死んだと思って行動しろって言ったな・・・
今も泣きじゃくる彼女には本当に悪いことをした・・・
彼女を危険な目に合わせたくないとして、、、彼女に逆に心労を背負わせちまったみたいだ・・・
「ごめん・・・」
「サクラ、、、全部終わったら、、、私たちの話を、、、聞いてくれるか、、、秘密にしたせいで、、、サクラがまた危険な目にあったら、、、私はもう、、、もう、、、」
「シノン・・・」
二度と彼女が強いからと無理なことを言わないようにしよう。
いくら魔力で身体強化できても、、、彼女の体は簡単に壊れてしまいそうなぐらい華奢で儚い見た目であることには変わりがないのだから。
「・・・あ~、もういいか。ここまですれば依頼は達成だし。」
「え?」
シノンが俺に抱き付いてから、スイッチが切れたかのように固まっていたコウ・レイペンバーはようやく動き始めたと思ったら、『土蜘蛛』を解いて、その場に座り込む。
やる気ないわあという感じで、戦闘時のピリッとしたあの感じはどこに行ったのか?
そのまま彼は魔力を回復させたいのか、ぐでえんとその場に転がる。
・・・すがすがしいぐらいの脱力具合だ。
「ぐう、、、ぐう、、」
「おいちょっと待て、レイペンバー!いきなり何終わったことにしてんの!?別にちょっと中断しただけじゃない!・・・シノンさん、そろそろ離れていただけませんか?」
「・・・(無言で腕の力を強め、ついでに足も踏む)」
「痛い、痛い、痛い!「忘れてたっ!」・・・なんですか?」
コウ・レイペンバーはいきなりこっちに駆け寄って来た。
あまりに突然目を覚まし、駆け寄って来たので何の手も打てない。
せめてと、シノンを後ろに隠す。
コウ・レイペンバーは懐に手を入れ・・・
一枚の手紙を差し出してきた。
「君の師匠からだよ。」
「・・・へ?・・・アリアから?」
「君の師匠とは昔パーティーを組んでてね。その関係で、君の今の実力を把握してほしいって言われてね。」
「あの、クソ師匠め・・・なにも、中級冒険者試験の合間に試さんでも・・・あ、どうも。って、うわあ!?」
手紙を押し開くともくもくもくと白い見知った白雲が空へと上がり、一人の人間の形を取っていく。
ほぼ白雲なので、本人とは少し異なるが間違いない・・・アリアだ。
「すごいじゃないですか、コウは私よりも弱いですが「なにほざいてんだ、この野郎」・・・後ろがうるさいですが、まあいいです。そんなにもたないから簡潔に要件を述べますね。」
すごい・・・
多分だけど、雲の核に疑似的な人格を仕込んでるんじゃねえのか?
受け答えまで雲にさせてるとか・・・
音はどうやりゃだせる?雲の形の維持は遠隔操作?どの距離から?
「ああ、多分今のあなたでは無理な術式ですからね?ある程度は見てましたけど、、、あなたの術式はえらく脳筋じゃないですか・・・」
「いや、、、不器用なアンタに言われたくない・・・」
「みんな嫌いです!」
白い雲の少女はえらく高性能なのか魔法とは思えない程受け答えはスムーズだ。
雲アリアは涙目で座り込む。
リアルに作りこんだせいか、、、余程遠くから魔力供給しているからか体は徐々に小さくなっていく。
雲アリアから、、、雲アリアちゃんへと。
「ぐずっ、、、ぐずっ、、、取り敢えじゅ目的は達成ちましたし、これ以上消費できる魔力もじかんもそんなにないでちゅ。最後に、、、にゃにかきいておきたいことはありましゅか?」
「そだな・・・取り敢えず幼児言葉になるのは何でだ?」
「にゃんでそのことなんでちゅか!それじゃないでちょう!」
彼女がぷんぷんと起こった様子で地団太を踏んでいる幼女・・・可愛い・・・痛っ!?
シノンに足を踏まれていた。
仏頂面の彼女はえらく不機嫌そうにギリギリと俺の足をにじりつぶしていた。
「デレデレするな・・・装備のこととかあるだろう?」
「あ、そっか!アリア!曇属性の武器の作り方ってどうすればいい?」
「・・・種を粉々にして混ぜ込めばいいだけでちゅ。ちょはいえ、今は公国から遠く離れた場所にわたちはいりゅので無理でちゅねえ。」
「てか、今どこにいんだよ?」
「それは・・・「ゆ~る~せ~な~い~~~~~~~!!!」・・・それどころじゃなさそうでちゅね。」
小太りの男が目を充血させて、ガチギレで叫んでいた。
それはそれは大絶叫していた。
雲アリアちゃんに構ってる場合じゃなさそうだ。
「シノ~~んっ!どういう事っ!?何で僕以外の男の前でそんな顔をッ!・・・そんな顔をしているんだアッ!」
「なにあれ怖い・・・シノンさん、お知り合いですか?」
「いや、、、私も今日初めて会った感じだ。あいつは随分私に詳しいがな・・・」
「シノンうぅぅぅぅ、、、ウアアアアアアアアアッツ!」
小太りの男は青いスライムを懐から取り出すと、それをこちらに見せつけてきた。
「これはぁ!シノンが他の男に唆されすぎてぇ!僕の誘いにどうしてもうんと言わなかった場合の最終手段だぁ!・・・!『シノンに近づくは能わず≪ノー・シノン・アタッカー≫』ッ!!!シノンに男は近づけない!僕が全員ぶち殺すッ!・・・・ゴぶりッ」
スライムを・・・飲み込んだ!?
コウ・レイペンバーがシュタッと立ち上がるや否や、さっきまでのやる気なさげな様子はどこへ行ったのか・・・
彼は立ち上がるや否や、すぐに逃げ始めた。
「って、早ッ!?レイペンバー!?」
「何してるんだっ!魔物使いの最終手段、『魔物落ち』だっ!早く逃げろっ!」
「え?え?・・・とりま、シノン、ドン・クラークっ、行くぞっ!」
「あ、、、ああ!」
スライム使いの眼、鼻、口から青のスライムがゴボゴボと湧き立って来る。
「ぶぼおっ、ぶぼごおっ!ば、、、ばびぼれッ、、、こんなのおばびい、、、びいべない、、、ぶぼわっ!!!」
「おい、何なんだよ!何が起こってんだ!?」
「一刻も彼から離れろ!さもなきゃ『迷宮』に飲み込まれるぞっ!?くそ、、、あいつの師匠は何を教え込んだんだッ!」
「『迷宮』?何それ・・・」
「チっ、始まった!?」
後ろを見る余裕なんて無いので、『鳥の眼』で後ろを確認する。
コウ・レイペンバーが超必死で逃げる後ろを、俺がシノンの手を引いて逃げている。
その後ろを少し遅れて、ドン・クラーク。
そして、、、大きな大きな青いスライムが広場を丸々埋め尽くすほどに成長しきっていた。
「シノオオオオオン!シノオオオオオン!」
青く発光する巨大なスライムは、人面の形を成しこちらに向けてスライムとは思えない速さで迫ってくる。
速い・・・このままじゃ追いつかれる。
魔力残量が心配だが、全員に『黒曇衣≪コート≫』を纏わせるしかねえか?
でも、、、もう桜から魔力全部もらいきってるんだが、、、持つか?
「ドン・クラーク!?」
「先に行け・・・」
「んなことできるかッ!・・・なんとかなるか?『黒曇衣≪コート≫』×全員分!」
「君ッ!?僕にまで身体強化をかけなくていい!僕との戦闘で既に魔力切れだろっ!」
「あんたこそあんな無茶な能力を腕八本も維持してたんだっ!これ以上身体強化に回す分なんてねえはずだっ!」
「ぐっ、、、その通りだが、、、!?、、、来るぞ!それぞれ避けろッ!」
青い人面スライムは氷の氷柱を撃ち出してきた。
シノンが矢面に立とうと立ち止まろうとするが、それを阻止する。
「ッツ、何をするんだサクラ!私は防御の専門家だぞ!?」
「シノンの防御術式は大抵立ち止まって詠唱だろッ!あの、スライム使いは追って来てんだぞ!俺なら術式を使いながら移動できるっ!久しぶりの使用だが、、、『曇の壁≪ウォール≫』!」
黒雲の壁を作りだし、氷の柱を防ぐ。
ガッキンと鈍い音をたて、、、一応は止め切った。
「今のうちに!」
大きな壁は一時的に、人面スライムの進路を防ぐ。
その間にと皆はまた走り出す。
雲アリアが俺の肩に乗って小言を漏らす。
「でも、貫かれてまちゅね・・・防御術式の練り方があまちゅぎです。普段から使いにゃれてませんね?まったく、、、内在強化もしゃぼりしゅぎです。」
「うるさいな・・・じゃあ、二枚がさ、、、がっ!?」
「サクラ!?」
眩暈がして足が一瞬ふらつく。
魔力枯渇・・・なんで、今・・・
シノンが俺の元まで戻ってくる。
「だから私に任せろって言ったんだ!」
「だって、、、もうシノンは魔力ないだろ?」
「・・・・・・・・嘘をついていたんだっ!サクラにッ!」
・・・嘘?
実力を隠してたってことか?
でも、、、なんで?
シノンが震える手で俺の袖を握りしめる。
・・・なんて声を掛けてやれば?
その時、『曇の壁≪ウォール≫』が粉々に砕かれた。
氷の刃が壁を貫き、粉々に砕く。
シノンは何かを言いかけ、、、そしてやめた。
「私は、、、「しいぃぃぃぃいぃんおおおおん!」!?・・・ハアッ!」
「!?、、、シノン!」
シノンは俺の腕を掴んで、そのまま投げ飛ばす
「シノン!!!」
「しいのんっ!君は、ぼっくの物おおおおおッツ!」
人面から青い光のドームが出てきて、、、それが広がっていく。
「サクラ、、、生きてくれ。」
シノンを青いドームが飲み込んだ。
・・・っ!?
彼女を覆わせた『黒曇衣≪コート≫』が強制的にキャンセルされた!?
何故だ、、、魔力が中に届かない・・・
ドームの中に俺も、、、
「やめろ!迷宮化が始まってるんだ!あの青いドームの中に入ったら、中のボスを倒すまでもう出られないぞッ!」
「倒すさっ!」
「落ち着け!」
青いドームの広がりはシノンを飲み込んで満足したのか、進行はゆっくりになっていた。
慌てて駆け寄ろうとした俺を皆がしがみついて止める。
・・・くそ、シノンがこのままじゃ
「やめなさい!」
「うるさい!アリアだって俺があの絶望的な状況で一万の軍勢を退けたの知ってるだろッ!」
「それでも、、、」
「うるせえよ!これ以上目の前で女の子が傷つくのは見たくねえんだよ!」
アリアが目の前で血を吹き、倒れていく瞬間
冷たくなっていく身体
青白く染まる肌
「どけよおおおおおおおおおおッ!」
「・・・サクラ。」
手を伸ばせば届く距離で、、、シノンは、、、笑っていた。
「サニアを頼む。」
「ふざけるなあっ!シノンを見捨てていけってかあッ!」
シノンは俺に触れようとしてか手を伸ばし、、、壁にぶつかり顔をしかめる。
彼女は仕方ないだろ・・・といってまた笑う。
「私が入ったことで暫くはドームは暫くは広がらないだろうが、、、もしまた広がり始めたら、、、魔力枯渇で動けないサニアは誰が守るんだ?」
「!?・・・それがシノンの理想だったか、そういや。」
「私が時間を稼ぐから、、、サニアを、、、この都市から外に、、、」
「でも、、、」
「私の理想の邪魔は、、、しないんだったよな?」
俺は、、、『主人公になりたい』って理想の為に動いてるから・・・
彼女の理想の邪魔は・・・絶対に出来ない。
俺は、、、この手を、、、彼女に届かせられない。
「シノン、、、分かった。」
「もし、、、もしだ。もし、私が生きてたら、、、話したいことがある。」
俺の言葉にうなずく彼女を、俺は引きづられながら見ていることしかできなかった。
「で?逃げてきたの?」
「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」
誰もが疲れ切った顔で、座り込んでいる。
スカイは未だに眠ったままだ。
そんな中、サニアが泣きそうな顔で俺に掴みかかってくる。
俺は・・・されるがままになる。
場所は、、、都市の外。
シノンがいるであろう青いドームはあれからぴたりと広がりを止めたままだ。
外から見ると、、、あれだけ綺麗な色なのに。
あそこでシノンは今でも戦っている。
そこへ近づこうとすれば、、、彼女の笑みが頭をよぎり、、、俺は動けない。
「シノンが、、、サニアを守ってくれって、、、俺もそれを、、、応援するからって、、、言った、、、だから、、、シノンを止めることが出来ない、、、それがシノンの願いだから、、、」
「なんで、シノンを一人にしたの!・・・なんで・・・なんで・・・」
「分かってる!わかってるさっ!サニアを守らないと・・・」
そうだよ・・・俺が命を懸けて・・・守る・・・
「ち・が・う・で・しょおおおおおおおっ!」
「ぶごはっ!?」
サニアが魔杖ゲルーニカで俺の頬をぶっ叩く。
「わ、私より腰の使い方が上手いでちゅ・・・」
「雲アリアちゃん・・・随分とのんきだな。それより、サニア?違うって何が?」
サニアは俺の言葉を聞くなり、杖を振りかぶり、、、静かに下ろした。
俺の肩にコツンと軽く当たり、そして落ちる。
地面に涙をポツリポツリと落としながら、、、サニアは言葉を紡ぐ。
「そうやって、、、一人で背負い込もうとするから、、、こうなったんでしょ?二人とも、、、バカだよ・・・」
「は、、、話しが、、、通じてない?何が違うんだよ」
「バカっ!」
サニアが泣く。
それを見ても俺の足は、、、動かない。
動かない足に何度も何度も魔力を込める。
でも、、、何でだろう?
シノンがどう思うかを考えると、、、俺は立ち上がれなくなる。
「じゃあ、シノンは、、、結局何をして欲しかったんだ?死にたかったのか?生きたかったはずだろ?なんであの時、、、俺に来るなって言ったんだ?」
「・・・頼って欲しかったんじゃないの?・・・無茶してほしくなかったんじゃないの?・・・皆で生き残りたかったんじゃないの?」
「・・・全部正しいけど・・・シノンは本当にそう思ってんのか?・・・だって、俺にずっと嘘ついてたんだろ?おれはさ、、、シノンの言葉に何一つ嘘があったなんて思えねえんだ。なのに彼女は嘘だって、、、俺は、、、シノンが、、、どうしてほしいか、、、分からない、、、」
目をつむり、頭を抱える。
サニアを守る
シノンを救う
二つに一つ、シノンがどちらを望むのか。
それが分からないから、俺は動けない。
目の前で傷ついてほしくないと努力した結果、、、一人の女の子を今、失おうとしている。
助けようと伸ばした手は、、、拒否された。
彼女の理想は妹を守ることだと信じ行動したが、、、その妹に拒絶されている。
主人公になりたかったのに、、、俺は一人で、、、人を救う力が、、、無い。
「俺は、、、どうすればいい?彼女の言葉のどれが嘘なのか、、、彼女が何を秘密にしたかったのか、、、何もわからない。」
「会って聞けばいいじゃない!」
「・・・そこで、、、シノンから秘密を聞いたとして、、俺は、、、シノンに今まで通り接してあげられるんかな?」
「・・・前に言ったよな?人が望むことなんて、、、その人に聞かなきゃ分かんねえんだよ。」
俺達の話をただ黙って聞いていたドン・クラークが口を開く。
サニアも俺もにらみ合うのを止めて、、、彼を見る。
ドン・クラークはタバコを咥えながら遠くを見ていた。
「今日は本当に厄日だ・・・二年前の俺ってこんなになよなよしてたのか。」
「・・・あ。」
死んでしまった彼女が望むであろうと考える行動をし続けた結果、一生を後悔することになったドン・クラーク。
彼の言葉は・・・今の俺には、あまりにも重すぎる。
「会話もなしに行ったら、、、どんなにその人を思いやった行動でも、、、その人のためになりはしないんだ。俺は、、、彼女の本当の意思を聞く機会は永遠に失っちまったけど、、、お前は違うじゃねえか。」
「でも、、、シノンに、、、サニアを守れって、、、」
「もっと話し合え、、、お互い納得しても、、、もっと話し合え」
「・・・折り合いがつかなかったら?」
「そんときゃ、あれだ。自分がしたいことをしろ。」
「・・・本末転倒じゃね?それって結局、相手が望まないことを無理矢理することにならねえ?」
「でも、、、後悔はしねえ。」
滅茶苦茶だが・・・主人公らしい良い態度だ。
「SHINOOOOOOOOOOOOOOOOOOON」
理性は既になくなっているようだ。
人面スライムが飛ばしてくる氷柱を、魔法の盾で受け流していく。
迷宮という割には、私がいるのはたった一つの半円状のドーム。
この中はとても寒い。
嫌な魔力の流れがある、、、まるで冥界の瘴気が存在するかのように。
目の前の人面スライムから漂う冷気によって、紅き剣にまで霜が降りていた。
・・・もしかして、アイスド・スライムなんじゃないだろうか?
上級ランクのモンスターであり、氷属性の術式ほぼ全てに耐性を持つ。
そのせいで、切り札の『詠唱短縮:氷剣式』は全ての効果が意味をなさない。
それどころかさっきから撃ってくる氷柱は妙な魔力が込められてでもいるのか同じ氷属性の盾をあっさり貫く。
「ハハハ、やっぱり残ってもらうべきだったかな?・・・監察官の笑いがうつちゃったか?」
独りごとを呟きながらでもないとやってられない。
久しぶりに魔力の量を悩まないで済んだというのに・・・氷属性魔術無効化っていったい何の嫌がらせだ?
間違いなく通用する奥の手は・・・使えないから意味がないしな。
「SHINOOOOOOOOOOOOOOOOOOON」
・・・段々、状況が悪化してきたな。
魔物になってから魔術の出力が上がってるみたいだ。
そして、魔物であることに慣れてきているのか徐々に単純だった術式が複雑化してきてる。
ただの氷弾かと思えば散弾だったり、強烈な冷気を浴びせて動きを一時的に鈍らせてきたり
「私よりも氷の使い方が上手いなんて・・・これが魔に生きる物の本能ってやつか?」
もう駄目かもしれないな・・・
飛んでくる氷柱を払いのける為に常時の何倍も魔力を注いで身体強化をかける。
篭手が耐えれるか心配だが・・・
足をひねって、身体を限界まで捻る。
全身を上手く使えば・・・なんとかなるか?
「SHINOOOOOOOOOOOOOOOOOOON」
「ッツ!?氷柱が雪崩に!?」
魔法の盾だけでは防ぎきれる量ではないので、飛び上って避ける。
本当に段々小技の量が増えてきてる・・・
核を砕ければいいんだが、、、余程中心部にあるのか、、、私の剣では届かない。
「それでも、最後まで・・・ッ!?」
降り立ち、次の攻撃に備えようと動き出そうとして視界がぶれる。
足元が、、、魔法の氷で埋め尽くされてる!?
『アイシクルドーム』同様、『滑る』概念を付加されているのか、あっけなくしりもちをついてしまう。
・・・しまった。
魔力が乱れて、身体強化が解けてしまった。
魔力を練り直す暇がない!
ろくな手も打てないまま、ドンドン滑っていく。
滑っていく先は、、、しつらえたかのように、、、氷の杭。
「SHINOOOOOOOOOOOOOOOOOOON」
何故かゆっくりと氷の杭が迫ってくる。
一番最初に考えたのはサニアのこと。
私がいなくなっても、、、きちんと生きてくれるだろうか?
私が好きでいてくれなくても、自分を好きでいてくれるだろうか?
次に考えたのはサクラのこと。
私があの時、、、仲間を失ったかと思って、、、辛かったあの思いを、、、サクラにあじあわせてしまうことへの申し訳なさだった。
あの、、、細く頼りない体つきなのに、、、信じられないほど強い、、、あの人を悲しませてしまうことへの、、、悔しさだった。
お父様や兄様、そして母様のことを考えるのはあの世でになりそうだな・・・
感情の整理がつかないまま、私は目をつむった。
暖かい感触が額に感じられた。
・・・そうか、死ぬときは暖かいのか?
「い、、、いてえ、、、肋骨バッキボキなのに、右手まで怪我しちゃったよ・・・」
!?
目を開けると真っ暗だった。
一瞬あの世かと思ってしまった。
だっているはずない人が私の前にいるんだから。
手を優しくどけてくれたことでようやく手の持ち主を見ることが出来る。
「ちょっとギリギリだったが、、、間に合ったかな?・・・シノンさん?」
優しい手の平は、、、真っ赤に染まっていた。
とっさに庇ったせいで、、、私のせいで、、、杭に右手を割り込ませて、、、また怪我を、、、
「何故だ!何故そんなに・・・自分を大切に出来ないんだっ!」
「・・・アリアにも言われたなあ」
右手をフラフラさせてるくせに呑気に笑う彼を見て、、、思わず殴りかかりそうになる手を、、、押し留める。
もし、、、彼の立場なら、、、私も同じことをしただろうし、、、、
彼と同じように彼を庇おうとして、、、私は今ここにいるんだから。
でも、、、納得いかない。
「サクラ、、、バカ、、、バカ野郎、、、」
「うん、、、お互い納得しあってねえと思うけど、、、お互い自分の為に、、、自分の命を勝手に賭けて、、、二人とも失敗した。」
「私は口が下手だから、、、どうしたいか、、、どうしてほしいかが、、、、私には分からないんだ・・・なにが正しいかかも・・・」
「シノン、、、俺もだよ、、、あんたがどうしてほしいかが全然分かんねえ。」
彼が私を持ち上げ・・・これお姫様だっこじゃないか!?
「は、、、離してくれッ!!!」
「いいからいいから」
サクラが私を抱き上げ、走り出す。
・・・何故普通に走れるんだ!?と足元を見てみれば黒雲が足元に広がっていた。
いつの間にか雲の道がアイスド・スライムまで続いていた。
「シノン!邪魔な攻撃は任せるぞ!」
「こ、、、こんな姿勢じゃあろくな術式も練られないぞ!?」
「一撃入れられりゃあ上等!」
「もう!!『篭手よ輝け』!・・・おまけだ!『氷の守りを付加せよ』!」
サクラが私を恥ずかしい格好から解放してくれないので、剣も握れない。
仕方ないので腕の篭手から魔法の盾を出し、氷属性の術式でそれを強化する。
盾で防ぎきれない氷柱はサクラが避け、サクラが躱し切れない氷飛礫の大群は私の盾で防ぐ。
「シノン、、、こういう事なんだよ。」
サクラが私の耳元で言った。
こんな恥ずかしい格好で、、、耳元に囁かれると、、、耐えられない。
サクラに気付かれたくない・・・顔が熱い・・・
「お互いを守るために、、、力を出し合えばいいんだよ。」
「・・・へ?」
「足りない魔力は世界から補う!『曇の増成≪パンプアップ≫』!空気中の魔力を搾り取れッ!」
彼が飛ばした一欠けらの黒雲がドーム中を覆う黒雲へと成長する。
それによって、アイスド・スライムが出現してからずっと感じていた嫌な寒さが消えていく。
・・・そっか、アイスド・スライムが垂れ流している冷気を伴うほどの濃い氷の魔力を吸収してるんだ。
成長した黒雲を彼は体に纏わせながらアイスド・スライムへと駆ける。
「足りない力は自分から引き出す!桜!最後の『嵐曇魔術≪スーパーセル≫』だ!」
青白い光が満ちて、遠くにサクラがもう一人現れる。
今だに原理が分からないが、、、あれが出ると、、、サクラの魔術は何十段階も規模が上がることを知ってる。
その後疲労で倒れてしまい、最悪動けなくなることも・・・知っている。
「バカ!今のサクラの魔力じゃあれはできない!第一もし発動できたとしてもあれは殺しきれないし、動けなくなるぞ!」
「主人公らしいじゃないか・・・」
「サクラ!?」
やっぱりお前は、、、また一人で、、、無茶を・・・
なんで自分をもっと大事に出来ないんだ・・・
サクラは、、、笑いを深めながら叫ぶ。
「足りない手は、、、他の人に手伝ってもらうさ!」
「・・・え?」
今、なんて言った?
「「『嵐曇の極一撃≪オーガ・ストーム・マグナム≫』」」
黒雲の巨大な奔流があっという間に人面スライムの頬をちぎり飛ばす。
・・・核を捉えきれなかったようで、まだ生きている。
「WOOOOOOOOOOOOOOOOO!?」
「やはり殺しきれなかったじゃないか!」
「そりゃそうだよ・・・元手もなしに魔術が出せるかって。」
詠唱級『曇神宮の柱≪クラウド・ポール≫』ぐらいの威力しか出せなかったんじゃねえの?
そういって笑う彼は雲の道から飛び出して、アイスド・スライムの真下へ飛び降りる。
そして、私をようやく下ろしたところで、、、力尽きたのか膝をつく。
「後は頼むよ?」
「ああ」
「!?・・・いつの間に!?」
いつの間にか背中に四本の土の腕を生やしたコウ・レイペンバーが立っていた。
彼は四本の土の腕を真上に挙げ、それを伸ばしていく。
てか、一度入ったら出られないのを知ってて、何故ここにいるんだ!?
「何であなたまでいるんだ!?」
「仕事じゃない戦闘はあまりしたくないけど、、、今回は僕の信念に関わるからね。」
「信念?」
「僕はこんな『魔術の終着点』は認めない・・・理想を叶える為に・・・自分の力ではなく・・・魔に落ち、魔物になることを選ぶなんて・・・認めない!『消滅を象徴する両腕』!!」
土の腕がググッと伸びていき、まるで生き物のようにアイスド・スライムに巻き付いていく。
そして、、、徐々に徐々にと溶かしていく。
「さっ、、、流石に魔力密度が濃いから、、、手間だ、、、」
下あごから徐々に徐々に消えていき、遂に不気味な声を上げることはなくなったがその分暴れ回る事で苦しみを露わにしている。
ごろごろ転がり、辺りの建物を破壊しながら、コウ・レイペンバーの拘束を解こうと動き回る。
「ちい、、、限界。魔力枯渇だ。」
コウ・レイペンバーまでも膝をつき、座り込んでしまう。
二人があれほど死力を尽くしても、、、まだ倒せない。
鼻から上だけになってしまったというのに、、、アイスド・スライムは立ち上がり魔術を練り始める。
「シノン」
「え?・・・うわっ!?これは『七番鞘・常識外』!?」
「スッキリして来い。」
「え?私がやるのか?」
「俺の隣にシノンがいれば、、、俺は安心して全力を出せる。俺達は二人でいるからこそ・・・大事な人を守れるし・・・お互いを救いあえる。」
「お互いを・・・救いあう?」
「ああ、、、いつも感謝してるぜ?真面目に皆を取り仕切ってくれてるところも、皆がおろそかな守りのフォローを入れてくれているとこも」
「そっか、、、私はサクラに、、、少しは返せてたのか。」
胸に熱い思いがこみ上げてくる。
サクラ風に言うならば、、、テンション上がって来た!というやつなのだろうか?
体の魔力が沸騰するかのように高まってきている。
普段なら魔力が暴走したんじゃないかと思うほど、激しい高まり。
精神力が高ぶって、、、嬉しさで更に爆発していく。
ちょっと気を許したら本当に爆発しそうなほどに。
・・・でも、今なら何でもできそうだ。
「『弾け飛べ』!」
別にこの鞘はただの防具ではなかったようだ。
攻撃をさらに強化して返すただの鞘ではなく、その本質はあくまで魔道具。
魔力を纏った状態で触れた物体をはるか彼方へ『弾き飛ばす』
鞘の本来の用途は刃先を鋭利に保つために保護するとともに、刃が周りを傷つけないように隔離し、保管や携行中の安全を確保することだ。
普通は防具として利用することも、ましてや、物体を何でも弾く武器とするなんて誰が思い付き、、、そして実際に作ろうと思うだろう?
よって、常識外
込めた魔力の分だけしっかりと持ち主に応えてくれるこの凶暴な性能を持つ鞘。
この鞘にに触れた瞬間、人面スライムの目鼻が消し飛んでいく。
ようやく動きを止めたアイスド・スライムにダメ押しの一撃を加える。
悲鳴はないが、、、はるか遠くへと飛んでいくさなか、ひび割れはじめた核が眉間の近くにあるのが見えた。
放物線を描いてアイスド・スライムが落ちていき、、、土煙を上げるのを確認する。
その瞬間、、、身体から力が抜け、、、膝をつく。
ヤバいな・・・気づかないうちに自分の魔力を全て込めてしまったらしい。
調子に乗りすぎてしまった・・・サクラをバカに出来ないな。
「やったじゃんか、流石シノンだ。」
「サクラ、、、お前こそ大丈夫なのか?」
お互いフラフラになりながらもお互いを支え合う。
「そうだ、、、私は、、、サクラに頼って欲しかったんだ。君が強いから、、、とても強いのに、、、危ういから・・・」
「んだそれ?・・・そもそも、シノンはいつでも頼りになると思ってるぞ?」
「じゃあ、もっと頼ってくれ」
「今以上に・・・か。ちょっと話し合いが必要かもな。」
アイスド・スライムの魔力が途切れはじめたのか、周囲を覆っていたアイスド・スライムの迷宮結界が崩壊する。
外の暖かい空気を体に浴びて、ほっとする。
でも私は今不機嫌だ。
「サクラ、、、せっかくだし、これからは無茶しませんって約束しろ。」
「・・・シノンもな。どんだけ心配したと思ってんだ?」
「サ・ク・ラ?約束できるのか?」
「俺達には話し合う時間がまだたくさんあるんだし、、、ちょっと話し合おうか。」
・・・取り敢えず、腹の肉をつまみ上げよう。
ギリギリと痛くて涙目が出るようなやつをサクラに喰らわせようとしたら、ドゴンと大きな音をたててこちらに向かってくる大きな青い半円状の物体。
・・・まだ生きてたか。
サクラがうへえ・・・とため息を漏らす。
「ま、、、まだ生きてたのか!?体の半分以上を消し飛ばしてんだぞ!?」
「スライムは核を壊さないと死なないからな・・・核にひびが入ってたから油断していた。」
アイスド・スライムの残骸ともいえるものはもはや執念で動いているのか、氷の巨大な杭を身体中に生やしながらこちらに向かってくる。
そして、眉間の位置には青く輝く核を露出したままだ。
「VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
口が再生し始めてる・・・
眉間の核を守る部分を再生されないうちに仕留めないと。
喧嘩している場合じゃない・・・
「サクラ!次の手は!?」
彼の顔をのぞき込んで次の手を聞く。
「無い。」
「・・・は?」
「俺もシノンもコウも魔力はスッカラカン。他の面つも魔力枯渇か大怪我ばかりだから連れてきてないし。」
脂汗をかきながら、サクラは目を逸らし・・・
って、あんだけ自信を持ってさっきまでやっていたくせに三発で倒し切れると本当に思っていたのかコイツは!?
「っておい!?本当にもう何もできないのか!?何かあるだろう!?何か!」
「そっちこそ実力今まで隠してたんだろ!何かねえのおっ!?」
「ないな・・・魔力切れでは全部無理だ。」
「・・・ははは、終わった。」
アイスド・スライムが奇声を上げてつっこんで来る。
サクラは本当に強くて、、、私は返しきれない恩を彼に対して感じている。
彼は私たちを全力で守ってくれるし、、、私も全力で彼を救いたいと思っている。
・・・すれ違いはあったけど、これからは話し合って少しずつ埋めていけると思う。
でも、、、今回のことは許せない!
私がサクラを思わず殴ってしまったことは本当に仕方がない事なのだ・・・うん。
次回、第五章完結・・・出来そうにないんですが、もうワンパート増やしていいっすかね(笑)




