第3章如峰月桜と朝日奈楓part3
朝日奈無双
美術部の清廉君のナイスな判断によって朝日奈さんとのデートが決まった。
やっほい。
取り敢えず荷物を置いてから、二人で駅に向かう的な流れになった。
家が隣同士なので一緒の道を通るわけだが、二人の間の空気は妙にぎこちなかった。
「あ、じゃまた後で・・・」
「あ、そだね」
何か話さないと・・・でも何を話すんだよ!って感じで焦っていると家についてしまった。
朝日奈さんが声をかけてきたので取り敢えず返事をする。
彼女が家に入るのを見届けて・・・取り敢えず走って我が家に走りこむ。
「・・・ぷはあっ!」
長い長い間息が止まってたかのように、大きな吐息が漏れぜえぜえと息継ぎをする。
そのまま、緊張が切れたのかドアを背にずり落ちる。
・・・こんなんで今日のデート大丈夫だろうか?
なんか、家までの帰り道何話してたか少しも覚えてないです。
てか、別れ際の言葉ももっと気の利いたこと言えなかったの!?
「なんだよ『あ、そだね』って!?四文字っ!四文字とか!も少しあっただろ例えば『今日は頑張ろうね!』とか・・・何を頑張るんだよ!?」
いけない・・・落ち着こう。
服とかシャワーとかいろいろしたいからと一時間後迎えに来てとのことだ。
それまでに、心を落ち着けよう。
とりま、シャワー浴びるか。
「なあ、どうしたんだ?いきなり座り込んだりして?」
「うわあ!・・・伊月かよ。いきなり声をかけてくるんじゃない。第一いつからそこにいたんだ。」
俺の眼の前にはいつの間にか居候が立っていた。
あまりにもデートの事ばかり考えていた為、目の前のことに全然意識が向かなかったようだ。
伊月は練習でもしようとしてたのか、ジャージを羽織った姿で玄関に立っていた。
・・・こいつ、本気で住み込んでんな。
伊月をみて、何となく萎えたので落ち着いた。
「はあ、、、あんまり外で目立つようなことすんなよ。」
「な!?なんで、お前みたいなことを私がすることになってるんだ!?」
「ちょおっと待て!あっち(異世界)でならまだしも、こっち(現実)でまでキチガイ扱いされてたまるかっ!」
「中学生のころ如峰月が全日本大会で準決勝では普通の髪形だったのに、決勝ではいきなり坊主になったことがあったような・・・」
「それは師匠のせいであって断じて、俺自ら行ったことじゃない!」
「他にも、、、」
「うるさい!もう、、、うるさい!」
「痛っ、でこピンは見た目は地味だが、、、痛いんだぞっ!女の子に何てことするんだっ!」
これ以上触れるのは俺の精神衛生上まずいので取り敢えず物理的に黙らせた。
伊月には簡単にこういう感じでじゃれあえるんだがな。
・・・なんで、朝日奈さんは幼馴染なのに同じようにできないんだろう?
って、時間を無駄にしてる暇はなかったな。
「そ、そうだ如峰月。今からランニングにいくんだがどうだ?」
「今日は用事があるからムリだな。」
「用事?」
・・・デートって言うのは黙っといた方がいいな。
下手に言うとろくなことになりそうもない。
「てか、フェッシングはもうしないって言ったろ!ほらいけ!しっしっ!」
「むむ、、、何か隠してそうだな・・・女絡みだったりしてな?」
「・・・そんなわけないだろう」
「ちなみに、、、夕飯はどうするんだ?」
「・・・(朝日奈さんが今日は帰りたくないなとか言った場合はどうなるんだろうと考えている為返事が出来ない)」
「ほ・お・づ・き?」
「さっさと外に出ろ!あと、俺の黒歴史をさっさと忘れろい!」
「ち、ちょっと!」
「あ、出前代は預けとくから!これで朝顔となんか食っとけ!」
「お、追い出すことはないだろ・・・ってホントに追い出された!」
取り敢えずこれ以上の詮索をされるとまずいので、伊月を家から追い出す。
ふう・・・
伊月と少し話したおかげで、気分は少しだけ落ち着いたようだ。
うん、シャワー浴びて、服選んで、コーヒーで一服してから出よう。
シャワーを浴びて、雑誌見て買ってから一度も着たことのない服一式を着てリビングに降りる。
ちょうどその時には、現在我が家で一番偉い妹様がソファでぐだあっと座り込んで麦茶を飲んでいた。
・・・ちょっとイラッとしながら、冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出しコップにつぐ。
近くに座る程仲良くないので、立ちっぱでアイスコーヒーをちびちび飲む。
時計を見るともうそろそろ時間か・・・
気合を入れ直すかとか思っていると朝顔さんが声をかけてきた。
いきなり話しかけられたせいでちょっとむせた。
「なんでそんな気合入った服装してんの?」
「ぶっ!?げほっ、げほっ、、、朝顔さん?いきなり話しかけてこないでもらえます?てか、そんなに服装いつもと違いますかね?」
「前までやってた伊達眼鏡とか髪形と同じくらいダサい。」
「・・・アウトレットモールは服とか売ってたな。よし、全部買い直そう!超買い直そう!」
「なんか香水までつけてる・・・てか、私の雑誌に載ってるモテファッション特集のまんまじゃん」
あ~、髪形とかいろいろ直すようになってから、何がダサくて何がいいか分からなくなってきた。
そのため、妹の雑誌を参考にしたんだった。
それで勢いで買ったんだがいざ着てみると、ハイカラすぎてちょっと外でれないかもと悩む羽目になったりとか・・・
しょうがないよねえ・・・妹様の『なに勝手に人の雑誌読んでんだ、コラ』な殺意と軽蔑の籠った視線から逃げる為にちょっと早いが家から出ようと足を前に・・・
「もしかして、、、デートとか?」
出そうとして、足を踏み外して頭を打った。
朝顔さんが、探るような目でじろじろ見てくる。
麦茶をまるでロックグラスを揺らすかのようにた揺らせながら、彼女は質問を続ける。
「ちなみに夕飯はどうするの?」
「じゃ、時間ないから!」
「ちょっと、話はまだ・・・」
・・・伊月同様、話続けたらボロが出るっ!
既にガタが出始めている足を必死で動かしながら、家を飛び出すことにした。
桜が家を飛び出した後、朝顔はソファの隙間にしまい込んでいたスマホを取り出した。
スマホの画面には伊月葵通話中と表示されていた。
朝顔は憮然とした表情でスマホを顔に近づける。
「で?葵さんはどう思います?アイツ臭いますよね?女の匂いがぷんぷんします」
「そ、そうか、、、一体どこの女なんだ・・・」
「ま、大体想像つきますけど・・・どうせ、朝日奈楓ですよ」
「朝日奈・・・楓?」
朝顔の不機嫌そうな声に通話越しから不思議そうな声がする。
朝顔はため息をしながら説明を始めた。
鷺ノ宮駅から電車で約一時間、そうして辿り着くのは北陸でも有数の大都市だ。
そして黄海駅から少し離れた所にあるアウトレットモール『黄海』は、ここら辺でも有数の娯楽街でもあるので人がたくさん集まる。
シャレオツな人達が集まる場所もあれば、アニメイトなどのオタ勢の方たちまで満足させてくれる素晴らしい場所である。
「ふえええ、いつ来ても人がいっぱいだねえ。」
「楓姉さん、僕から離れないでね・・・ここは男が多すぎる。」
「田舎だと思っていたが、こんなでかい街もあるんだな。」
「・・・はあ。」
俺達はそんな街に4人で来ていた。
・・・すでにデートは成り立ってないのはお分かりいただけるだろうか?
朝日奈楓に既にべったりとくっつき始めている義弟君。
キョロキョロとジャージ姿で辺りを見渡す伊月。
疲れた顔の朝日奈さんと俺。
朝日奈さんの家の前で待ち合わせをして、歩きはじめたところまでは良かったんだ。
朝日奈さんは彼女らしいふわっとした服装をしていたし、いつもと違って長めの髪をゆるく結い上げている。
そんな普段と違う感じにドキドキできたし、デートするんだっ的な空気は正直嬉しかった。
・・・数歩歩いたところで、朝日奈さんの格好から男の存在をかぎつけたのか義弟君が逝っちゃった目で追いかけてきた。
なんか殺されそうだったので、文化祭準備の買い物だと説明した。
そしたら納得はしたものの、遅くなる関係の話をしたら夕飯はどうするんだ的な話をし始めた。
黄海で済ませるって言ったら
「僕のご飯はどうするんだっ、これは僕もついていくしかないね!」
とか言われた。
朝日奈さん好きすぎるだろ義弟ェ・・・・
朝日奈さんと会話しようとするたびに殺意を向けられながら、鷺ノ宮駅までたどり着くと今度は伊月葵に出会った。
「おう、偶然だな!」
なんだろう、凄く殴りたくなった。
伊月は俺と一緒にいる女子が朝日奈楓であるかを何故か知っていてせっかくだからいろいろしゃべりたいとか言いだした。
仕方ないので文化祭準備の買い物するんだから邪魔だといったら夕飯はどうするんだとか言い始めた。
てか、出前代預けただろうが・・・
黄海で済ませるといったら
「私たちのご飯はどうするんだっ、これは私もついていくしかないね!」
と壊れたラジオのようにほざき始めた。
朝日奈さんがいなかったらグーパンチを喰らわせていただろう。
仕方ないので、朝顔さんの弁当を一緒に買って持って帰ることにした。
・・・伊月が何を考えてるか分からない。
そんなこんなで四人で街を歩くことになった
「うーん、どうしたらいいんかねえ。」
「どうしたらって、何が?」
「あはは、なんでもないよ。朝日奈さん。あ、ほら画材店あれじゃね?」
「あ、あれだね。冬夜、荷物は全部持ってもらうからね。じゃ、いこ?」
「ちょ、姉さん!?こんなに持たされたら、僕歩けないよね!?」
朝日奈さんが笑顔のまま、エグイ量のペンキ缶を義弟の冬夜君に積んでいる。
が~んばれ、が~んばれとほっそい体をした少年に笑顔を浮かべている朝日奈さんを呆れ気味に見ていると伊月がくいくいと裾を引っ張って来た。
「なあ、朝日奈さんとやらは『すごい』性格のようだな・・・」
「どしたん?伊月?あれくらいで『すごい』とか」
ぶっちゃけ、あれぐらいのしごきなら兄弟間ではよくあることだろ?
伊月は俺の反応をちらっと確かめるかのような反応をして、目を逸らした。
・・・なんか、いつもと違うな。
清廉君はガチで今回の買い物で文化祭期間中の絵具の買い出しを済ませるつもりだったのか、一応と持ってきていたリュックだけでは足りず、冬夜君の両手から溢れんばかりの量の缶。
グラグラしているので支えようとするが
「お前の助けは受けん!楓姉さんから頼まれたのは僕なんだから!」
・・・の一点張りである。
朝日奈さんは困った様子で仕方ないなあと良い笑顔で呟く。
「じゃあ、鷺ノ宮高校まで持ってってくれる?それじゃあ、買い物ついていけないだろうし」
「え?」
「だって、今のままじゃ足手まといだし。」
「あ、、、、あ、、、、」
「ご飯は適当に出前とって良いし、適当に一人で食べてて」
「う、、、、うわあああああああっ!」
冬夜君の泣きそうな顔が超印象に残った。
好きな女の子に頼まれたこととかって、好きであればあるほど否定できないしね。
まあ、俺は男に対して同情するような人間ではなかったので普通に助けを求める視線はスルーしたが。
伊月は非難する目でほらと俺に言う。
「『すごい』じゃないか・・・」
「・・・(確かにちょっとサクラに似てるな。エグイことを笑顔でするところが)」
「どしたの、二人とも?」
「「なんでもないです」」
美少女とはいえ、ちょっとブルってくる笑顔だった。
今度は三人で、電気屋に向かう。
冷蔵庫とか、テレビ用の段ボールって他の段ボールより丈夫でデカいので背景とか小道具使うのにはもってこいである。
でっかい電気屋だと聞いていたので探してみればすぐに見つかった。
たしか、おにいさんに頼めば分けてもらえるとか・・・
「あれ?朝日奈じゃないか?偶然だね。」
「せ、先輩?文化祭準備あるんじゃないですか?」
誰かと思えば、学校一の秀才先輩じゃないか。
彼は今まで誰かを探し回って走り回っていたという感じでぜえぜえと息を切らせながら汗をぬぐっていた。
「!?・・・ああ、電子辞書用の電池買いに来たんだ!」
「あれ?須藤先輩は紙辞書派じゃありませんでした?私にも勧めてたじゃないですか、書き込みが出来るから紙辞書が良いって。」
「た、、、たまに使うんだよ。早く検索できるからね、、、時代はハイブリッドさ。」
「電池って・・・普通汎用ですよね?ここに買いに来る意味は?」
「い、家がここの近所なんだよっ!」
「そうなると、なんで学校の行事サボって家にいるのかって疑問点が・・・」
「か、、、体の調子が悪かったんだ。」
「ふーん、そうですか。じゃあ、お大事に。」
「・・・っ!?」
何ていうことでしょう。
進学校である我が校一の秀才である先輩がたった5手で帰宅へと追い込まれてしまったではありませんか。
あれほどクールで自信に満ち溢れていた顔は、ひどく狼狽し汗だくに。
普段は整っているはずの髪形は走ってきたせいかひどく乱れる。
偶然を装うためにかけた手間、プライスレス。
「え?え?何故あんな態度を取るのだ?態度を見れば明らかだろうに・・・なぜ?なぜ?何故もっと優しくできない?」
伊月が狼狽し始めたのでちょっと蔭へと引っ張っていく。
朝日奈さんはもうしばらく逆ハー要員と喋っているであろうから説明する時間ぐらいはあるだろうし。
伊月を蔭へとひっぱっていく中、ちょうどチャラ系の逆ハー要員さんがやってきて、段ボール(大量、それはそれは超大量)を学校まで持って行ってというお願いをされているのを横目で見た。
伊月は目の前で起こった朝日奈さんの鈍感主人公的行動をマジで理解できないという顔で当惑していた。
「な、なんなんだ彼女は!?」
「まあ、落ち着けって・・・朝日奈さんは『超合理的』なだけだよ」
「超・・・合理的・・・?」
俺が言った言葉の意味が分からずに、顔をしかめる言う気に説明をする。
「彼女は恋とか友情とかそういった意味がないものでは動かないんだよ。」
「え?」
「合理性とか、理性とかそういったもんでしか動かない。だから誰よりも正しいし、誰でも救おうとする。」
「恋に興味がないってことか?」
「じゃなきゃ、あんな態度取らないって・・・」
俺が呆れ気味に朝日奈さんを指さす。
朝日奈さんに会いたくなってきちゃいましたとか言う感じで近づいてきたショタ系王子さんが普通に邪魔になるからと断られて涙目になっていた所だった。
少年も普通だったら駄々でもこねるのだろうが、好きな少女に嫌われたくないとそれを受け入れざるを得ない。
「彼女の幼馴染である俺だけが分かるんだよ何となく。彼女と関わろうとするなら、偶然と合理以外を用いて関わっちゃいけないんだ。」
それが、俺が好きな少女である朝日奈楓と家が近所であるにもかかわらず夏休みに会おうとしなかった理由だ。
彼女は恋なんて、複雑で不合理で馬鹿馬鹿しくて非効率的で人をダメダメにし過剰な独占欲を抱かせ自分から自由を捨てさせる行為でありゴールが結婚か破局でしかない単純な代物でしかない、お互いの人付き合いの幅を狭めることに他ならない行為に意味を見出してない。
だからこそ、彼女は恋愛なんて感情で動く人間とはああいう風に反りが合わなくなるのだ。
「な、なんだそれは?いったいなにがあれば、彼女はあんなふうになるんだ?」
「ま、人は本来だれでも恋愛とまではいかなくても、嫉妬とか独占欲とかしょうもない感情持ってるもんだからな」
「アンバランスだ・・・」
「ハハハ、面白いこというな。その通りだよ。」
伊月が評した通り、彼女はアンバランスなんだろう。
誰よりも正義漢で、誰よりもイベントではやる気を出しまくっている超越美少女が、実は全て『合理性に基づいて』行動しているだけだなんて誰が考えるだろうか。
そのことを心から理解しているのはまさしく俺だけだ。
「何故、、、私にそれを教えるのだ?」
伊月が何かを期待したかのような表情でこちらを見てきている。
何でかなんて言われてもな・・・
口が堅そうだと思ったのも一つだし
ある程度は信頼しているのもそうだし
アンバランスなんてそもそも誰も信じないだろうし
なにより
「このまま放っといたら、朝日奈さんに優しくしてやれとか言うつもりだったろ?」
「!?」
「あれに関しては彼女本人の事情もあるし、恋に関しては結局は当人間の問題。結局は自分で解決するしかねえんだよ。」
「でも、、、でも、、、」
「いったろ?普通は持ってる感情を彼女は理解できない・・・つまりそれだけのことが彼女の身に降りかかったことがあるんだ」
「な、、、なんだって?」
じゃなきゃ、彼女は『ああ』はならない。
彼女が主人公であるという事は、主人公になるほどの事情が裏に潜んでいるのだ。
ある小説では主人公は生き別れの姉がいた。
ある小説では主人公は両親を何者かによって殺された。
ある小説では主人公は特殊な機関で育てられた。
ある小説では主人公は苛めを受けた過去があった。
ある小説では主人公は人生が嫌になって一度人生を終えた。
ある小説では主人公は・・・・・・
といった過去があったように、朝日奈楓も主人公たる過去があるのだ。
「もし、、、彼女に過去を掘り返させるようなことがあったら、、、俺は伊月を許さないよ?」
「・・・ううっ」
伊月は俺の目線に耐え切れず、少し、また少しと後ずさっていく。
まずいな、、、怖がらせちゃったか?
でも、伊月が怖がる・・・?
そんなことあるか?
「伊月?大丈夫か?」
「如峰月は、、、彼女のことが、、、好きなのか?」
「え?好きだけど?」
「・・・な、なんで?あんな恋をしても意味がない少女に恋を、、、なぜするんだ?」
「そりゃ、、、憧れてるからだろ?」
アンバランスだから魅力的っつうか・・・美少女顔が超好みっつうか
・・・あれ?
なんか、恋って何なんだろうね?
体目的って訳でもないし、、、じゃないと彼女の重要NPCになるのが目的とか言いださないし。
分かってるのは主人公である朝日奈楓に俺、如峰月桜が恋をしているという事。
それしか分からない。
「叶いもしない恋にしがみつく・・・?もしかして、フェッシングも?」
「間接的には・・・な」
「そ、そんなバカなことがあってたまるか~~~~!!!」
「い、伊月!?」
伊月が大声で叫ぶや否や、走り出していった。
そして、転んだ。
運動神経良いはずなのに、こんななんもない所で転ぶとか・・・
「伊月って、、、意外と、どんくさい?」
「・・・っ!?」
超走っていった。
う~ん、朝日奈さんおいてくわけにもいかんしな~
即決で放っておくことにした。
「ごめん、お待たせ!」
「いや、待ってないよ。」
朝日奈さんがとっとこ走ってくるので、手を振り返す。
そして朝日奈さんは手を振り返すのに夢中になって足元がお留守で転んだ。
・・・朝日奈さん、あんたもか。
朝日奈さんはびたんと床から動かない。
・・・流石に恥ずかしかったか。
取り敢えず、伊月で女の子の反応は学習しているのでフォローは万全だ。
これから出す言葉を何度も反芻して間違いないことを確認する。
手を差し伸べると朝日奈さんは顔を真っ赤にしてプルプルしていた。
やばい、、、めっちゃ可愛い。
朝日奈さんって基本行動原理が合理性だから、予想外のことが起こった時の反応がめっちゃ可愛いんだよな・・・
今みたいに
「あ、ありがと・・・」
「朝日奈さんって天然っぽいところあるよね!」
「・・・っ!?」
朝日奈さんまで超走っていった。
流石に追いかけて捕まえました。
・・・何故だ。
夜の大体六時ごろ。
ちょうど夕飯時。
ハンバーガーショップでは一際目立つ美少女が不機嫌顔で座っていて凄く目立っていた。
「いや、ごめんって。ああいう時どう反応すればいいか分かんなくって」
「・・・」
逃げようとする彼女を追いかけまわしている間に時間が経ってしまったので、夕飯を二人で食べることにした。
朝顔さんはまあ、伊月がいれば飯ぐらい何とかなるだろう。
出前代は預けたし。
問題は、、、
目の前で頬を膨らませてそっぽを向いてる彼女である。
「朝日奈さん、、、デリカシーが無いのは昔からじゃない?もうそろそろ許してくんない?」
「・・・はあ、そうだね。」
彼女はそんな俺の言葉に納得したかのようにため息をついた。
よかった・・・
このまま怒らせたままだと俺の心臓が止まる。
彼女は気を取り直すかのように、目の前の食事に取り掛かる。
女の子って安上がりだよな。
俺だったら、ハンバーガー2,3は食わなきゃ足りないぐらいなのに、一つぐらいで足りるらしいんだから。
まあ、運動してなきゃこんなもんか。
おいしそうにポテトをつまむ彼女をぼうっと見つめていると、彼女が話しかけてきた。
「で?あの子、、、伊月さんだっけ?あの子が同居してるとか、、、ほんと?」
「はい、、、ほんまです、、、」
あれ?まだ終わってなかった?
朝日奈さんはポテトをプラプラさせながらこっちをじいっと見る。
・・・幼馴染の距離感って簡単には逃げられない距離感ですよね。
「あのさ、お隣で不純な行為が行われるかもしれない温床が育っているってことが問題なんだよ?朝顔ちゃんだっているのにさ。と、、、友達としても心配だよ・・・」
「はい、、、早めに追い出したいんすが、、、朝顔さんが、、、気にいっちゃったから」
「もう高校生なんだしさ、、、普通分かるよね?やって良いことと駄目なこと?」
「はい、、、すぐ追い出します、、、」
朝日奈さんが悪乗りし始めたのか、俺をネチネチとせめはじめた。
こいつ、、、友達に対してSになるタイプだったか。
・・・知らなかった。
今まで気づかなかったよ。
「朝日奈さん、一応人間関係とかあるんでもう少しだけもう少しだけ・・・・待ってください。」
「私が借金取りみたいな言い方やめて!そんなに言い方きつかった!?」
「・・・」
「何か返事して!」
なんだかんだで友達同士ならこんなもんなんかな。
お互い冗談言いあって、遊ぶような感じ。
もし、今日が本当にデートみたいになったら俺は緊張でろくにしゃべれなかっただろう。
朝日奈さんは合理的だからろくなロマンチックイベントは起きなかっただろう。
誰かの邪魔が入って
とにかく叫んで
とにかく楽しい
これぐらいでいいんだろう
なんたって俺達は友達同士なんだから
「そういえばさ、如峰月君。」
「ん?」
「と、と、友達同士ならぶ、ぶ、文化祭一緒に回るのもふ、、、ふ、、、、不思議じゃないよねっ!?」
「!?」
・・・友達ってなんでしょうね。本当に。
夜八時ころ
結局追加注文とかが清廉君からあったため、遅い時間になった。
朝日奈さんとダラダラしゃべりながら帰宅することになった。
なんとなく二人の間にあった時間という壁を今日のデートっぽい何かが取り去ってくれたようで随分しゃべれるようになっていた。
そう考えれば今日のこのデートっぽい何かも成功だったのかもな。
朝日奈さんの笑顔もちらほら見ることが出来てる。
・・・幸せだ。
まあ、そんな気分も長くは続かないんだけどな。
朝日奈さんを家に送り届け(義弟君に玄関前で追い払われた)、自分の家の玄関を開ける。
朝顔が倒れていた。
・・・え?
「朝顔!?」
「あ、、、兄貴?」
朝顔は弱った顔で俺の頬に手で触れ、、、ぎりぎりと締め付けはじめた。
「痛い痛い痛い!朝顔さん!顔が歪む!」
「可愛い妹が腹を空かせてご飯を待っているというのに、自分はしっかりハンバーガー食べてきたのかあああああっ!」
「出前代渡したよね!伊月にィィィィイタタタタ!」
ギリギリと締め付ける力がさらに強まり、爪が顔に食い込み始める。
朝顔の顔はさらに怒りで俺異常に歪んでいるようだ。
どしたの、朝顔さん!?
お腹空いてるせいか、女の子がしてはいけないぐらい腹立たしい顔してるよ!?
「この、クソ兄貴!葵さんに何したんだコラぁ!」
「へ?何のことだ!?って、イテエェェェェッ!」
ガチで痛いので涙目のまま泣き叫んでしまう。
朝顔さんがそんな俺の顔に一枚のメモを叩きつける。
「ギャスッ!」
「このバカ兄貴!今すぐ飯作れっ!」
朝顔はそう吐き捨てると、ガン、ガンと足音を立てながら階段を登って行った。
・・・あの、暴君め!
いずれ復讐してやるっ!
ダメージでぴくぴくしながら、ふるふると震える手でメモを手に取る。
なになに・・・・・・・!?
『今までお世話になりました。 伊月葵』
あいつ、出前代パクって行きやがったああああぁぁぁぁッツ!?
次回から再び異世界




