第2章サクラと白髪の姉妹part3
「何で三人ともつやつやしてんの?まさか、、、三人で〇〇〇(余りにも卑猥な言い方)か?何も知らない初心なシノンを二人掛かりでせめまくったんだろ!?それなら俺もまぜてくれれば良かったのによおっ!!!」
「シネ、『氷剣・氷撫』」
「ギャア!袖が凍った!悪かった!悪かったから!」
翌日、俺達はギルドの酒場で時間をつぶしていた。
というのも、中級冒険者試験の受付を済ませたので詳しい説明をしてくれる担当の方を待っている為だ。
昨日の例外的な大手柄があったことも踏まえて、試験官自ら説明をしてくれるとのことで、それならと4人で改めてちょっとした壮行会を開いていた。
適当に並べられた干し肉や揚げ物などの無骨な塩辛い食事に、うるさい喧噪。
高級料理や珍味や上品なレストランの雰囲気も嫌いじゃないけど、まあこれはこれでありだろう。
凍りついた袖をカタカタ振るわせながら、茶が入れられたコップに口をつける。
・・・うーん、やっぱり異世界の茶はまずい。
「あれ?美味しくないの?」
俺の前の席に座っていたサニアが、桃っぽい紅い果実の皮を丁寧にめくりながら聞いて来た。
「ああ、緑茶以外の茶は舌に合わなくてな。シノン、別にサニアにセクハラする気はないから俺の肩にまで伸びつつあるこの氷の浸食やめてくれない!?」
シノンは俺のセクハラを警戒してか、肩をいからせながらこちらを睨みつける。
幾ら魔法で造られたコートとはいえ、ここまでバッキバッキに凍らされるのは流石に不安を煽られる。
「嫁入り前の淑女に対して、寝所の話をしてきたことに対しての謝罪がまだないんだが?」
「悪かった、悪かった!ごめんって!」
「・・・反省して折るようには見えんのだがな。」
可愛い顔をぶすっとさせつつもシノンはようやく剣をおさめ(今まで喉元につきつけられていた)、氷の浸食を解除した。
・・・よく考えたら、俺がこんな物騒な状況だってのによくもまあサニアも果物を平気な顔で食えるもんだ。
腹が据わってるな、ホント。
思わずサニアをじいっと見ていると、彼女は俺の視線に気づいたのかニコッと笑いかけてきて、俺にその果実を一欠けらつまんで持ち上げてみせた。
「なに?ほしいの?しょうがないなあ。ほら、あーん。」
「!?」
「な!?サニア、なにして!」
あーんを逃してなるものか!
シノンが再び剣に手をかけ始めたので、白くて細い指によって運ばれてきた果実を顔を自ら近づけて食べてしまう。
・・・桃っぽい見た目だけど、味はオレンジに近いな。
うん、美少女のあーんで食えるとはまさに天国。
悪いな、おねえちゃん!
「おのれええぇぇ・・・」
恨みがましい目でこちらを睨むお姉ちゃんは放っておいて、スカイの様子を窓から見てみる。
スカイはギルド前の広場で、大食い大会に参加していた。
どうやら今日が大食い大会をやる日らしく、彼女は先ほどサニアが剥いて食べさせてくれた果実をポンポン皮ごと食っていた。
・・・流石ドラゴン。
大食感な見た目(今は緑髪の格闘美少女だけどな)に恥じぬ、ドラゴンの食い気は大いに会場を沸かしているらしく大盛況だ。
「ピルチをあんなにたくさん食べて・・・お腹壊さないといいけど。」
俺と同じように外を見てしまって、食欲が失せたのかサニアはピルチというらしい果実を俺に押し付けてきた。
・・・まあ、あんなにバコバコ食ってんの見たら、食欲も失せるわな。
「ま、アイツは好き嫌いなく、量だけ欲するやつだからな。腹は壊さんだろ。」
「凄いな・・・あ、そういえばなんだが。」
スカイのガチ食いを見て口をあんぐりしていたシノンは、何かを思い出したのか皮鎧の内側のポケットから一枚の書類を見せてきた。
どうやら、パーティーの正式名称を申請する紙のようだが、そこには何も書かれていなかった。
「実は、パーティー名をあらかじめ決めておく必要があるらしくてな。試験官が査定しやすいように決めておいてくれった言われてたんだ。何かいい案ないか?」
サニアがじゃあと口を開く。
「問題児共と聖女」
「「誰が問題児だっ!」」
思わず口が揃う。
シノンはため息をついて、首を振る。
いろいろヤバいから駄目だと彼女は言いながら俺にも解答を促してくる。
・・・別によっぽどでなきゃ、何でもいいんだが。
まあとりあえず何かセンスのいい案でも出して、サクラ君すごい!って言われたいしな。
これは大事だ。
これからの俺の評価にも関わるしな
よし、、、ならば
「俺のハー・・・」
「『氷よ氷よ』『この邪な屑を』」
「待て!さいごまで!さーいーごーまーでー!」
剣を抜いてよりにもよって、詠唱級の術を使おうとする彼女を取り押さえる。
サニアも呆れたような視線でこっちを見てくる。
・・・やめて!そんな目で僕を見ないでっ!
「で?理由を聞こうか。この下種が。」
「いや、俺のプ○ンとか俺の○玉とか俺の杏仁豆腐とか、俺の○○シリーズってはやってるんですよ。それにあやかろうと思いまして・・・」
「おにいさん?ハーレムってのは本来、王侯貴族が後継ぎを必ず作るために仕方なく採用した制度であって褒められたものじゃないんだよ?ハーレムって維持費用もとんでもないし、女通しの争いなんてぐちゃぐちゃなんだからね?分かってる?このクズ野郎?」
「仕方ないだろ!男なら一度は描く夢なんだから!一度くらいは冗談口調で言わせてくれよ!」
「「はっ」」
・・・鼻で笑われた。
アイツら今心の中で、童貞のくせに夢持ってんじゃねえよwwwww
ハーレムの主ってのはある程度の器量が必要なんだよ!この器量0のゴミが!
あらら?童貞臭いですわ!どっから臭うのかしら・・・あ、あなたからでした?ごめんなさいね!
私たちだって経験ないだろですって?そういう発言がDOUTEIなんですわよ!
「・・・URRRRRYYYYYYYYYYYY!」
「「ああっ!」」
腹いせにパーティー名を『道帝と下僕たち』と書いてやった。
シノンは慌てて俺から紙を取り上げる。
ざまあみやがれ!童貞をバカにするからだ、この○○○共!
試験中、呼ばれるたびに恥ずかしい思いをしてしまえ!
ざまあみやがれ、はーっはっはっはっはっはあ!
「ど、どうするんだ!これ書き直しがきかないんだぞ!」
・・・え?
「ハハハ、では『道帝と下僕たち』様方、中級試験の解説をさせていただくね。」
「「「・・・」」」
「ガチガチガチガチガチガチガチ」
「ハハハ、ところでそこの少年は大丈夫なのか?一応主人?みたいなものなんだろう?」
「「「断じて違う!」」」
落ち着いた物腰の青年は、戸惑いの視線で俺の方を見てきた。
試験官であるらしいその人はギルドのお偉いさんらしいが意外と・・・なんつうか金持ち特有の余裕っていうらしい感じの物腰の柔らかさがあった。
てか、そんなこと気にしてる場合じゃない。
俺は折檻として全身凍結の罰にあったため、今でも歯が噛み合わない。
・・・俺だってある程度反省しているんだがね。
あの時は一体どうかしていた。反省しなくては。
俺が大丈夫だからと目で制すると、彼は冷や汗を流しながら口を開いた。
「ハハハ、では中級試験の内容を説明するね。」
「いよいよ受験だ!楽しみだね、シノン!」
「そうだな、サニア!さあ、説明をお願いする!」
スカイから彼女たちが不当な嫌がらせによって中級試験への妨害を受けてたって話だけは聞いた。
問題自体は俺が寝ている間に片付いたとかとか、ほぼお前のせいだとかわけのわからん言い方で誤魔化されたが、まあいい。
大事なのは、彼女たちが再び進むことが出来るってことだ。
こんなに明るい笑顔で笑っているんだから。
「ハハハ、中級試験の内容だが原則二種類となっている。一つ目は面接審査と実技審査を兼ね備える試験。二つ目はあなた方が経験した通りの飛び級制度。今回あなた方に挑んでもらうのは一つ目の方。」
「一応、昨日の上級クエスト成功を踏まえてのことか?」
「サクラ・・・」
シノンが、俺の裾をグっと引っ張る。
飛び級の内容は確か、自分達より上の階級を倒す力を持つことだったはず。
イシルディア姉妹の例もあるし、不当な嫌がらせの可能性もあるんじゃないか?
そんな考えもあったので、一応聞いておく。
試験官はそれに対してニコリと笑うだけだった。
「ハハハ、落ち着いてよ。本来なら面接試験自体はかなり厄介な仕様だが、実技試験は中級クエストを一つこなすだけのものなんだ。それを今回は、面接免除という破格の対応を取っているんだ。中級クエストもあなた方が選んだのをを利用していただいて結構。上級クエストをクリアできるなら中級クエストなんて簡単すぎるだろう?」
「でも飛び級になってもいいんじゃないのか?」
「上級冒険者を倒したわけじゃないからねえ・・・それに中級冒険者ってのは地方ギルドの顔。私闘で上のランクの冒険者に挑みかかる人間にはよっぽどじゃなければ・・・なんだよね。」
「なるほど・・・」
飛び級なんて制度はあってないようなものってことか。
面接ないみたいだし、クエストも自分で選んでいい。
十分優遇されているみたいだ。
シノンとサニアがこっちを見てきたので、首を縦に振る。
リーダーのシノンは試験官さんに対して首を振った。
「分かりました。その条件でお願いします。」
「ハハハ、がんばってね。」
話がまとまったので立ち上がる。
試験官さんが細い指を絡ませて微笑む。
もしかしたら、意外と高い身分なのかもな。
冒険者たちの中にも貴族がいるぐらいだし。
「ハハハ、あと道帝君は残ってくれるかな。」
「え?」
「・・・(よけいなことはするなよ)」
「・・・(お願いだから・・・ね?)」
俺以外の仲間達が心外な言葉をかけてきやがるが取り敢えず無視しておこう。
皆が部屋を出ていく中、俺と試験官殿は向かい合って一つの机に着く。
試験官さんはおもむろに手を叩くと、扉を開いて女性が入って来た。
女性はティーセットの用意をすると、直ぐに立ち去って行った。
「さあ、ここの名産品ピルチの葉を用いた茶とピルチの砂糖漬けだ。食べながら話をしよう。」
「・・・はあ。」
高い器に盛り付けられた砂糖をまぶしたピルチ。
そして、俺にでも分かるぐらい質素ながらも多くの細工を施された茶器。
茶か・・・
恐る恐る口をつける。
香り自体は問題ないんだが、、、苦手だ。
「へえ、結構この土地では名産品なんだがね。他の土地から来たのかい?」
「すいません、用意していただいたのに。緑茶は飲めるんですが・・・」
「緑茶?聞いたこと無いな」
「そうですか。公国にはないってことか・・・」
「ハハハ、茶を飲むのはこの国では一種の社交になっているからねえ。少しは慣れた方がいいよ?」
「そうですねえ。で?主人公的には長い話はまずいんですよ。本題に入りません?」
「ああ、そうだね。」
試験官殿は茶器を置くと話を切り出した。
「道帝・・・いや、『曇の奇術師』にお願いがあるんだ。」
「・・・試験に関わることですか?」
「いや、関わることはないはずだよ。」
「なんですか?特に隠しているわけじゃないですが、『その名前』出されるようなお願いでしょ?」
「ハハハ、話自体は簡単だ。中級冒険者になったとしてもドン・クラークを暗殺する依頼は受けないでほしい」
「ドン・クラーク?どちらにしても暗殺依頼なんてもんは主人公的に受けるつもりはないです。」
「ハハハ、、、、はっはっはっは!素晴らしい!やはり素晴らしい!」
俺の答えを聞くと試験官さんはハハハと大笑いしだした。
俺が唖然として見つめていると、試験官さんは悪いねと言って立ち上がった。
「ありがとう、その言葉信じてもいいかい?君が参加するかしないかでドン・クラークの名誉が守れるかどうかが分かれるんだ。」
「恩人・・・なんすか?」
「ああ、大恩人だ。命その物を救われた。」
「へえ、どんな人なんです?」
「それは・・・」
「旦那様」
部屋にまた人が入って来た。
その人は先程と同じ女性だった。
女性は長い棒が入った包みを持ってきて、それを試験官さんに手渡した。
試験官さんはそれの包みを解くと・・・レイピアの鞘だけだった。
「メリッサ・・・頼んでないんだが?」
「人にものを頼み込むには、見返りが必要。これぐらいは当然かと。」
「いや、しかしこれは・・・7番鞘じゃないか。」
「旦那様。」
「分かったよ。・・・まったく、大きな契約となったものだ。」
試験官さんは俺に鞘を手渡してきた。
白色の鞘だった。
アリアにもらった魔装のレイピアが豪華絢爛なのに対して、こっちの鞘は何も細工がされてなかった。
それよりも大事なのは・・・
「鞘だけなのに・・・長剣三本分の重さはありますね。」
軽々と持って来たこの女性もなかなかだな・・・
俺の感想を聞いた試験官さんは再びその鞘を手に取った。
「これはとても貴重な代物なんだ。剣工士として名高いミルの作品『七番鞘・常識外』だ。」
「いりません」
「「え?」」
まったく、、、人を何だと思っているのか。
無理やり押し付けられた鞘を腰のベルトに挟み込んだ俺はクエストボードへと向かっていた。
残念ながら、現在使っている剣には合わないので別個で剣を作らねばならないそうだ。
今の剣についてる『宝石だけ』はこの忌々しい鞘に釣り合っているそうなので、売って良い職人にオーダーメイドを打ってもらえと言われたが・・・
「おお、サクラ!この中から選ぼうと思うのだが、どう思う?」
「シノン、悪いな任せちゃって。」
シノンとサニアがいた机に座る。
そこにあったクエスト表は5枚。
「へえ・・・なるほどねえ。」
1、オウマ 討伐
2、ドン・クラーク暗殺依頼
3、ケブル・ビーの駆除依頼
4、高魔草の収穫依頼
5、ドン・クラーク護衛依頼
おそらく試験官さんが余計な説明を加え、余計なものを押し付けなければ集団戦に強い、曇が有効な3でも選ぶところである。
・・・ふーん、面白そうじゃないか。
「シノン、一つ我儘いいか?」
「何だ?」
「5にしたい。」
「いろいろと面白いことになりそうじゃのう」
「スカイ?今までどこにいた!?」
シノンの意見が出る前にスカイが声をかけてきた。
・・・暫く姿を見ないと思ったら、いつの間に。
「いや、実はの、ずっと寝ておったんじゃ。」
「・・・は?」
「試験官殿とお主らがしゃべっている間、お腹がいっぱいになってしまっていたからねとったんじゃ。」
「スカイ・・・大事な話の最中に寝てたのか?」
「す、すまん。さっきまでずっと寝ていたんじゃが・・・逆に何故起こしてくれなかったんじゃ?」
「「「・・・(忘れてた)」」」
「・・・・・・・・ううっ!」
スカイが泣き出したので、いつの間にかうやむやに決まっていた。
『最も人から嫌われ、最も人から好かれた人間』 ドン・クラーク
彼は公王から最も信頼を得ていた、成り上がりの元伯爵だった。
幼年期に街一つの住人を虐殺した事から根っからの史上最悪の凶悪人。
少年期は公国史上最大の山賊団で暗殺、盗みなどなんでも行い史上最速の幹部入り。
青年期は多くの支持者を集めて、乗っ取りに成功した。
それからというもの彼は多くの山賊をその悪でもって魅了し仲間につけた。
そんな彼に10年前に転機。
公国内で、兄と弟間の継承者争いが起きる。
それに対して、ドン・クラークは誰もが負けると予想した弟につく。
彼の獅子戦陣ぶりは英雄と崇められた程であった。
その功によって彼は伯爵公として任ぜられる。
元々悪であったことを活かして、完璧な治安維持。
彼の英雄ぶりに惹かれた人間は能力有れば身分関係なく採用。
彼が得た人材は至宝の宝。
領地経営はみるみるというまに、公国でも一二を争う豊かな領地へ。
最も嫌われた極悪人としてのドン・クラーク。
そして改心したのか、どんな貴族よりもどんな王よりも優れた領地経営をした至上最高の名君ドン・クラーク。
何が正しく何が間違った評価なのか。
それは誰にもわからない。
しかし今ではまた嫌われている。
2年前、王国と公国間の交流大使に選ばれた。
しかしそこで大失敗を起こし王国の武将と一騎打ちを起こす。
公王それに激怒し、彼を幽閉した。
それから二年遂にお沙汰が下る。
モルロンド伯爵領にて打ち首の刑に処す。
聖域とまで呼ばれたドンクラーク領は崩壊。
名君とまで呼ばれた彼は彼の領民から何故短気を起こしたのかと恨み言を投げかけているとかいないとか。
今では彼は、もっとも嫌われもっとも好かれ『た』ドン・クラークと呼ばれるようになった
-クエスト-処刑場までのドン・クラーク護衛依頼
【補足:ドン・クラークがモルロンド邸にて、打ち首と相成った。しかし、公王の命令によりモルロンド邸で打ち首とせねばならないのに暗殺を狙う不定の輩がいる。煉獄山内とモルロンド邸までの道中の護衛を頼みたい。そして今回の依頼受諾は、ドン・クラーク本人の面接による】
適正レベル:中級 報酬:公国金貨15枚 依頼者:モルロンド伯爵
成功条件:今回に関しては、公王の命令が『ドン・クラークの死』であることを考慮し、死んだ時点でも成功とみなす。
尚、面接は公国唯一の監獄である煉獄山にて行う。
モルロンド伯爵直轄領より西に徒歩で二日ほどの距離。
公国における犯罪者はすべてここで拘留される。
本来なら刑の執行までをここで行うが、今回は首が元貴族であることもあり首の検分をモルロンド伯爵に任されることと相成ったようだ。
火山でもないのになぜか赤土で覆われた岩肌を俺達は登っていた。
「王国ねえ・・・」
シノンがぼんやりとしていた。
珍しい。
いつもはキリッとしているというのに、本当に珍しい。
サニアが後ろからそろりそろりと近づいて、いきなり後ろから抱き着く。
「う、、、うひゃあっ!」
「もうシノン!ぼんやりしてる暇ないでしょ!」
「く、首筋を舐めないで!」
にゃんにゃんし始めた二人をじいっと眺めつつ、スカイに声をかける。
スカイは上から大体の位置を探ってくれていた。
「スカイ!面接会場は見えたか!」
「ああ、人だかりがある!」
「人だかり?」
スカイがすうっと空から降りてくる。
流石飛龍ってところか、視線は今は外すことができないが柔かく降り立った音は聞こえた。
「お主、、、人間の嗜好はよう分からんが、そんなにじろじろ見るのはどうかと思うぞ?」
「すまん、今の光景を脳内に焼き付けないといけないんだっ!だから、見逃してくれっ!」
「・・・道帝?」
「あい分かった!俺が超悪かった!」
俺がぎゅんと体を彼女の方に向けると、彼女はぷくっと頬を膨らませていた。
ちょっと怒っているのか、魔力がちょっと波打って風で彼女の髪が少しだけふわふわしていた。
「私が働いているというのに、お前は何、情事をのぞき込んでいるのじゃ!この道帝!キチガイ!」
「落ち着け!イシルディア姉妹が俺をゴミを見るような目線でこっちを見ている!」
「誠意を見せろ!」
「分かった、分かった!試験が落ち着いたら、なんか旨いもんおごってやるから!」
「うぬう・・・まあいいじゃろ。」
それでもまだ髪はふわふわしてるのでまだ怒っているのだろうか・・・
てか、意外と柔かそうな髪をしてるな。
鱗はあんなに堅いのに、何で人化したらこんなに柔らかそうなんだろうな。
「まあ、落ち着けって・・・な?」
「むう・・・なぜ頭をなでる。人のみで我の頭をなでるなど、不遜であるぞ。」
どさくさに紛れて頭を撫でてみる。
高いふわふわの毛布を触ってる気分だ。
凄い癖になる・・・妙に艶があるし。
取り敢えず機嫌が少しは直ったようなので、取り敢えず良かった。
「スカイの頭に自分の匂いを擦りつけてる・・・キチガイだね、おにいさん。」
「セクハラはご法度だぞ!このキチガイ!こんなに女の子がいる場で、そんなセクハラをするとか・・・このクズ!」
「もとはといえば、お前らのせいだからな!」
結局、試験が落ち着いたら、メンバー全員に奉仕する羽目になった。
こんな感じでバカっぽい会話をしていると、人だかりが見えた。
手錠をつけられた傲岸不遜な男の周りを、多くの筋肉たちが取り囲んでいる状況だった。
「ドン・クラーク!俺はあんたに惚れこんでるんだ!頼む!俺を!俺を!」
「頼むよ、ドン・クラーク!俺は今!どうしようもなく心を掻きむしられているんだ!」
・・・
俺達4人はそんな情景を見て固まっていた。
「シノン・・・」
「なんだ?」
「何であんなにガチムチっぽい感じになってんの?マジ嫌なんだけど!」
「・・・おそらく成功条件的に今回は破格の条件だからじゃないか?」
「確か、成功条件は・・・」
「『今回に関しては、公王の命令が『ドン・クラークの死』であることを考慮し、死んだ時点でも成功とみなす。』だよ。」
サニアがボソッと呟く。
・・・ちっ
「ん?どういう事じゃ?」
「今回の護衛、中級冒険者には重い任務なんだ。暗殺者の規模も実力も一切わからないこんなのは最低でも上級冒険者パーティーじゃないと出来るはずもない。この条件、、、クエストの成功をそもそも期待してねえんだよ。」
「不逞の輩に暗殺されたというのと、公の場で処刑では名誉が違うからな・・・名目上の警備だけつけて暗殺されるのを期待してるんだろう。もしくは弱い人間に守られて、びくびく震えるドン・クラークの様子を楽しみたいとかか?」
「人という生き物は・・・むごいことを。殺されるのが決まった人間の最後や名誉まで汚すのか?」
最悪だ・・・何か気分が悪くなってきた。
貴族共も、、、この冒険者共にも腹が立つ。
中級冒険者は人を殺す汚い仕事でも、ドンドンこなしていかなければ生きていけない。
ギルドココノハ村支部のコンボス支部長が言ってた通りの光景がそこにはあった。
こんなに胸糞わるい依頼だってのに、こんなにも群がっている。
しかもクエストが失敗のない依頼だから受けているのであって、護衛する気は一切ないだろう・・・
「帰ろう」
「えっ!?ここまで来たのにか!?」
シノンがびっくりした顔でこっちを振り向く。
サニアとスカイもえ!という顔をしている。
「クエストはまだ受領してないから、別の依頼で試験受けりゃいいしな。それに・・・」
未だに、熱心に自分たちのアピールをしている中級冒険者達を眺める。
生きるのに必死とはいえその姿は見苦しかった
「あいつらとおんなじ人間だとは思われたくない」
「・・・分かった。あんなに競争率が高いなら依頼も受けれないだろうし。スカイ、サニアそれでいいか?」
「うぬ。あの連中と同じと思われたくないというのには同意じゃ。」
「私も、あまりこの依頼は受けたくないなあ。王国関わってるみたいだし(ぼそっ)」
流石に同じような人間が集まるようで、皆が同じ意見だという事に少しだけ安心した。
喧噪がつつむ見たくもないものに背を向けた。
「よし、帰ろ・・・・」
「そこの黒いの!ちょっと待て!こっちに来い!」
山中に大声が響き渡った。
「黒いの?」
「どいつだ?」
「あいつじゃね?」
どうやら、ドン・クラークが大声を出したようだ。
流石に巨漢の大男が声を出すと、良く響き渡る。
思わず足を止めてしまった。
「サクラ・・・お前のことだろう?」
シノンがぐいぐいと袖を引っ張ってくる。
・・・なるほど。
俺が全身真っ黒だと?とても真っ黒だと?
「俺だって好き好んでこんなに真っ黒になっとらんわ!黒しか出来ないんだからしょうがねえだろうが!」
一気に、ドン・クラークまでの道が開けたので彼に詰め寄る。
近くで見るとやっぱりデカいな。
2メートル級の体格に左目には大きな刀傷が走っている。
目自体は無事なようなので、人に威圧感を与える為に自分で傷を入れたんじゃないだろうか。
そんな彼は牢獄暮らしにもかかわらず、筋肉は全く衰えたようには見えなかった。
圧迫感すら覚える彼は俺をじいっと詰め寄ると俺の顔をじいっと見つめてきた。
そしてにやりと笑うと大声で宣言した。
「うむ!見た目はみすぼらしいが、目が気に入った!ここらの有象無象共よりはよほど面白いわ!よかろう!お前が俺の護衛任務につけい!」
「・・・まじすか?」
「「「「「「「「「「「「「「「「えええええええええええええええええええええっ!?」」」」」」」」」」
絶叫が響き渡る。
「正気か、旦那!こんな鎧もきてないヒョロガキにアンタの護衛を任せるとか!」
「そうだぜ、ドン・クラーク俺の筋肉を触ってくれよ!あんたを満足させられるはずだ!」
多くの冒険者が彼に詰め寄るが、彼はそんな様子を一切気にせずに息を吸い込む
「うるせえ!」
黙り込み退いていく・・・
それだけ気圧す勢いがあった。
冒険者たちは、諦めたのかすっと立ち去って行った。
無駄足だったとか、やっぱりドン・クラークはドン・クラークだよなとかいう人もいれば
本当に心配そうな顔で立ち去っていく。
「・・・眼が気に入ったとか?そんな理由で決めるんすか?」
「俺は人を見る目だけはあるんだよ、黒いの。」
「だから、黒いのって言い方は止めてくれ。」
「あ?悪かったな、黒いの!ガッハッハッは!」
「「「「話聞けよ!」」」」
大声で笑いだす彼は、じゃあ行くかと俺達を置いて歩き出した。
全員でついていこうとしたら、いつの間にか現れた煉獄山の職員らしき人が女子勢を押しとめていた。
「なんだ?」
シノンが腰の剣に手をかけようとすると、彼は慌てて手を振り理由を話した。
「いえ、これから煉獄山の監獄で彼と共に生活していただくので女性の方々はしばらく別行動を・・・」
・・・・・・・
「「「「はあああああああああああっ!?」」」」
サクラ=レイディウス15歳。牢獄生活始めます。
次回、第三章
文化祭準備が始まる夏休み。
そんな中、如峰月桜はストーキングされていた。
・・・そんな暇があるなら、手伝って欲しいんだが。




