第5章NPCの本質part3
最終章です。残り一話で、第一部終了です!
「アリアっ!」
目覚めた部屋は見覚えのある部屋だった。
・・・ここは、アリアが引きこもってた部屋?
!
部屋の窓を慌てて見る。
いつも通りの、のどかな村でつい最近魔物に襲われる恐れがあったなんて思えないぐらいのどかなココノハ村だった。
「ぐええええええ・・・体だるい・・・ほっとしたらなおさらだ・・・」
思わずほっとして、ぐでええええっとベットに倒れ伏す。
アリアの説得的に、村には避難体制すらひかせずに出てきてしまったからな。
かなり、心配してたんだ。
「目覚めたようだな。」
「ギャア!?」
天井に飛龍様が張り付いていた。
何を言ってるか分からないだろう、俺にも分からない。
飛竜様は体の大きさが普通の人間サイズになってる状態で、天井に張り付き二ヤアと口を開いていた。
怖いよ?・・・でも、絶対的な安心感が飛竜様にはあった。
飛竜様は、俺の寝ているベッドの横にすたっと降り立ち、器用に近くの椅子に座った。
エメラルドのようなキラキラと光る鱗に包まれた洋風タイプの龍は正直興奮する。
妙に人間っぽい動作で、キセルタバコをふかし始めているが。
・・・てか、龍が人語話してる?
「人語話せるんすか?しかも、体の大きさ変更できるとか、凄すぎだろ。」
てか、龍は人語を解せないから龍人の通訳がいるとか聞いたんだけど。
飛竜様は、流暢に人語を話している。
「まあ、、、いつもあのサイズで過ごしてたら、邪魔になるしな。それに恩義がある者以外とは龍はプライドが高いから話そうとせんのだよ。」
・・・まあ、しゃべれないことにした方が都合いいよな。
王様とかに『龍はプライドが高いからお前とは話さんよ?』とかいったら余計な波風たつし。
「あ~、この度は命を救っていただきありがとうございます、、、飛龍様?」
なんかサイズが俺と同じくらいで殺気を一切出していない状態では、飛龍様が普通の人間みたいで、様付けするのもなんか変な感じがする。
妙に人間じみた様子で欠伸を一度した飛龍様は、ウムと偉そうに頷いた。
「改めてこちらも礼をしておこうか。我を育ててくれた龍人たちと我が同胞に何の見返りもなく、救ってくれてくれた事に礼を言う。感謝するぞ。」
「いや、、、したくてしたことですし・・・そういえば、龍人や、、、トーリやトツカは無事なんですか?」
「龍人の里に戻る途中のようだが、何かあれば龍応石でしらせてくるだろう。それに龍人たちにはむしろ、自分達よりお前の手助けをしてくれと頼まれてしまった。」
「まあ、、、結果的に助かりましたけど、、、そんな無茶な。龍人たちは戦闘能力がほとんどないから、龍が守ってるんでしょ?飛龍様も、しょっちゅう狩りに出まくるのも、あんまりいいことじゃないと思います。」
龍人たちのことを想って、この際注意しておくことにした。
半年狩りに出るとかいくらなんでも無責任すぎる
「何を言っておる。龍ならいるではないか。」
「龍って、、、クリムゾンですか?でも、あれ幼龍なんじゃ?」
「あやつは既に齢100を超えるぞ?流石にそんじょそこらの魔物なんかには負けん。」
「・・・ファンタジーっすね。」
どうやら龍は人間と比べて極端に成長が遅いらしく、500年をかけて成龍へと成長していくらしい。
ちなみに幼龍ですらオークを丸呑みにするぐらい強いとか、、、流石テンプレ最強種族。
「ちなみに飛龍様は何歳ですか?」
「忘れた。」
「サイですか・・・」
道理で強そうだと思ったぜ。
そんな会話をしている中、何故か家の中から生活音が聞こえないのが気にかかり、飛竜様に聞いてみることにした。
「あの、、、この家に住んでた人はどこにいるか知りませんか?眼鏡かけた女のことか銀色の髪の女の子とか。」
相変わらず寝たら完璧に回復してる謎魔力を使って、軽く家の中を調べてみたが家にいるはずの三人はそこにはいなかった。
「・・・?たしか、眼鏡と筋肉は仕事に行くと言ってたが?」
眼鏡、、、はサマンサさん。筋肉、、、は旦那さんか。
無事にいつもどおり働いてることに安心する。
・・・てか、アリアは!?
眼前に、血の気を失ったアリアが倒れてる様子がフラッシュバックする。
「銀髪の女の子は!?盆地で俺の近くに倒れてた女の子は生きてるんですか!?無事なんですか!?」
「落ち着け。お主と一緒に村へと運び込んだ。治療も間に合った。」
「そう、、、ですか。」
いつの間にか乗り出していた体をベッドに戻す。
「それにしても大変だったぞ。すぐに治療を受けさせたかったのに、龍様が降臨なされたとか言い始めて村は大騒ぎになるし。めんどくさいから、通訳のトツカに現状を説明させてやったわ。」
カカカと笑う飛竜に苦笑いを返す。
トツカから、新聞くんと同じにおいがする・・・
って、それよりアリアだ!あんな大怪我を負ってたのに大丈夫なのかよ・・・
「じゃ、、、じゃあ、、、アリアに会いに行きたいんですけど、どこにいるんですか?家の中にいないってこと治療施設ですか?それとも、クエストでも受けに外に出てるんですか?」
「銀髪にはもう会えんと思うぞ?だってあの少女はもう」
村を旅立っているのだから。
全速力で村の中を駆け、ギルドの扉を押し開く。
周りがざわつき始める中、俺は受付の所に急ぐ。
サマンサさんが座る机に辿り着くと、挨拶も忘れて本題に入る
「サクラ君!?まだ動いちゃ駄目よ!5日間も寝ていたのよ!?」
「アリアが俺をおいて旅に出たってなんなんすか!どこに行ったんですか!」
サマンサさんは驚いた様子で俺を見上げる。
「そんなことはいいから!アリアは!アリアは何で俺をおいてったんですか!」
サマンサさんに思わず掴みかかる。
「落ち着いて!」
サマンサさんに頬を張られた。
「・・・すんません、頭に血が上りすぎてました。」
頭に上った血が冷え、周りが見渡せるようになってきた。
包帯だらけの俺を、周りが怪訝な様子で見ている。
遠くから、支部長が近づいて来ている様子も見える。
「これ・・・」
サマンサさんが机にポツンと置かれていた一枚の手紙を俺に手渡す。
「アリアからの…ですか?」
サマンサさんはこくりと頷いた。
――――――――――――――
サクラへ
破門にしたからとかそういうわけではなく、元々、この村にあなたを置いていくつもりでした。
あなたには伝えないようにお願いしていたのですが、元々ギルド規定によって入会後一か月は入会した拠点に滞在しなければならないという規定があります。
それを利用して、あなたを置いてくつもりだったんです。
謝らなければならないことは分かっています
でも、私にはやらなければならないことがあります。
私の旅の目的は雷の勇者への復讐と『英雄』を生み出すシステムの破壊です。
それにあなたを付き合わせることが出来なかった。
あなたは甘ちゃんだからという理由もありますが、サマンサ同様あなたのこともいつの間にか大切な存在になっていたからです。
思い返すと、出会いの時から腹立たしい事ばかりです。
初対面は覗きで、普段はセクハラ発言ばかり。
でもあなたは私の最初で最高の弟子です。
優秀な弟子が可愛くないわけないじゃないですか。
あ、でも破門ですから。
譲りませんから。絶対に。
でも、『お師匠さん』って呼ぶのだけは許可しましょう。
別に、アリアって呼ばれるのがむず痒いとかそういうわけではないですよ?
う~ん、もう書くこと無いかな。
じゃ、また会えたらどこかで。
『曇の魔術師』アリア=レイディウスより
―――――――――――――――――――――
何だよ、こんな他人行儀な手紙・・・
お別れぐらいちゃんとさせてくれよ・・・
もっと君の声が聞きたい・・・
もっとずっと一緒にいたい・・・
「・・・桜、バイパスを強めてくれ。」
手紙をギリギリと握りしめ、ギルドの外に走り出る。
五日もあれば、魔術師の身体強化された足でどこまで遠くに行けるか。
すくなくとも、今のぼろっぼろの体では追いつける距離にはいないだろう。
俺の魔力量の雲ではおそらく捉えきれない距離まで行ってしまっているだろう。
・・・でも
「『自分であり自分でない者 ≪アナザー・ミー≫』」
アリア、、、俺を甘く見過ぎてる。
今の俺なら、魔力枯渇を起こす覚悟で雲を張れば絶対に彼女を見つけられる。
青白い自分も、イイネ!という顔でにやりと笑う。
捨て身とか主人公っぽいからとか言いそうな顔だ。
まあ、、、協力してくれてるんだから何を思っていたとしても気にしないが。
「『嵐曇魔術≪スーパーセル≫』」
余りに強力すぎて、五日は目覚めない程の反動が後から襲ってしまうが構わない。
誰が甘いだっ、誰が大切だからだッ!
ここは現実なんかじゃないんだから、どう生きようと俺の勝手じゃねえか!
ぜってえに、、、見つけてやる、、、文句を、、、言って、、、やる、、、
「アリアああああああああああっ!!!」
「落ち着け」
飛竜がいつの間にか隣にいて、俺の頭をはたいた。
慌てて俺を追いかけてきたサマンサさんが、俺の起こした雲を見て悲しそうな顔をする。
「やっぱり、、、君はそうしたんだ。自分の命をないがしろにするようなことを、、、するんだ。」
「・・・だからどうした!?アンタらに俺の気持ちが分かるかよっ!!ぜってえにアリアを見つけ出す!」
「わかった、、、アリアが、、、君を置いてった理由が何となくわかったよ。ほら。」
「ああ!?・・・手紙?」
サマンサさんが懐からくっちゃくちゃの手紙を取り出した。
「君が、、、アリアが君を置いてったことを知った時、、、命をないがしろにするようなことしたとき、、、これを、、、渡せって、、、ぐずっ、、、ぐず。」
感極まったのか、鼻をすすりながら彼女は俺に手紙を押し付けてギルドの中に戻った。
飛竜様がピシピシと俺の頬をしっぽで叩いてくる。
「おぬし、、、さっさとこのふざけた魔術を解かんか。周りがおびえとる。」
「くっ・・・『解除』。」
桜がすっと意識体に戻るのと同時に、雲がうっすらと消えていく。
完全な連結魔術だから失敗時の魔力枯渇反動は無い。
やろうと思えば、何度だって使える。
手紙を読むには黒雲は暗すぎて邪魔になるからな。・・・そのために解いただけだ。
手紙を開く
いきなり頬をぶっ叩かれて、大声で怒鳴りつけられた気分だった。
―――――――――――――
このバカ野郎!
あなたが無茶するから、おいてったにきまってるじゃないですかっ!
絶対にあなたがこの手紙を読むってわかってましたよ!このバカ弟子!
私においてかれるぐらいあなたには問題があることをいい加減理解しなさい!
あなたは自分の命をまるで物語の主人公のように無駄に危機にさらすことに快感を得てるんです!
もし、私の復讐に付き合ってくれるっていったとしても、私の為ではなく、あなたが主人公のように命の危機を得られる方を選んだからとしか思えないんです!
もし、今のあなたを連れて行ったとしても、命の危機に進んで飛び込み死んでしまう描写しか私には見えない。
分かりますよね?自分のことなんだから。
あなたは主人公になりたいって言いまくってますが、、、自分の命を懸ける事を楽しんでるだけなんです。倒錯してるんです。
上手く言えませんが、、、まるで、なりたかったものになろうとして結果的に別の方向に流れてしまった、、、そんな感じです。
次に会える時までに、そういう意識を捨ててください。じゃないと、、、私が辛いです。
二か月間、一緒にいたのにずっといたのは、あなたではない別の薄っぺらい人間だったんです。
そんな薄っぺらい人間と話すことはもうありません。
今度会うときはそんなくだらない根性叩き直しておいてください。修行も続けるように。
追伸
初めての弟子が破門っていうのは体裁が悪いから、免許皆伝にしておきます。
そして免許皆伝になったあなたの、そのふざけた感じを評してあなたの職業名を考えておきました。
『曇の奇術師』
嘘つきであり、人をからかうのが大好きで、、、しかも薄っぺらいあなたにはぴったりです。
もし、本当のあなたを見せてくれたなら、、、新しい職業名を考えてあげます。
――本当のあなたに今回のことの礼を言いたい元師匠より。
―――――――――――――――
文法はめっちゃくちゃ。手紙の文字も汚い。
言いたいことは、抽象的で分かりにくい。
最後の名前の文も、嫌味なのか、礼を言いたいのか分かりにくい。
・・・って、最後の嘘つきとかからかうのが好きとか薄っぺらいとか、主人公としてあってはならんだろう。しかも、薄っぺらいとか小説の主人公では一番あってはならないもんだからねっ!?
最近の人気小説の主人公は基本的に癖がある、面の皮の厚い奴ばっかなのに。
俺が薄っぺらいとか、駄目小説フラグだからね!?
でも、、、不器用なアリアらしい。
やっと、お別れが言えた気がした。
・・・すっと、心の荒れが消えた。
「そうか、、、お別れすら出来ずに、、、何も知らされずに置いてかれたのに、、、、ムカついただけだったのか。」
間違いなく主人公らしくなく、、、サクラ、、、俺らしくない感情だった。
本当の俺って何なんだろうな?
まさか、如峰月桜の理想が薄っぺらいって言われるとは思ってなかった。
ずっとごまかしごまかししながら、俺はアリアと話してたんだろうか。
「『曇よ』」
雲を上に上にと昇らせていく。
そして、雲に文字を描かせる大きな大きな文字を
これだけ大きく描けば遠くにいるはずのアリアにも見えるだろう。
~ アリア=レイディウス、本当の俺でもう一度会おう -曇の奇術師- ~
よし、これで俺とアリアのお別れはようやくできた。
こういう人がしない、そして、人を驚かせるようなことするのって、、、主人公らしく、、、奇術師らしいよな。
今度会う時までに、本当の俺を探してみよう。
・・・桜もな。
俺が薄っぺらいのは、お前の主人公になりたいって思いの元々の理由が俺に適用されないからだ。
何で適用されないかは・・・桜。分かってるよな。
お前の元々の理想の『主人公になりたい』は俺の理想でもあるからこれからも努力するけど。
俺は、アリアにもう一度会うために、本当の自分を探す。
俺が変われたんだから、、、お前も変われるよな。
桜がバイパスを通して、、、不服の表情をしているのが感じ取れた。
しょうがねえなあ、、、
そんなことを考えてると、飛龍が頬をぴくぴくさせながらないわあ・・・という表情でこっちを見てきた。
「キチガイじゃな、、、お主。大陸中の人間に実名を晒すとは・・・人間の世にはあまり詳しくないが、晒された本人は今頃恥ずかしさでもだえ苦しんでると思うぞ?まさか、置いてかれたことへの腹いせか?最悪だな。」
「違うよ!?」
「しかも、自分の名前はなんか変な偽名使ってるし・・・若いからか?」
「俺は、中二病じゃないよ!?」
辺りを見渡してみると、周りの人間までうわああ・・・という目で俺を見ていた
待て!待ってくれ!
そんな俺の悲鳴にもかかわらず、キチガイコールは周りに伝播していく。
「振られた腹いせに実名公開とか・・・キチガイだ」
「キチガイだ」
「キチガイだ」
「キチガイだ」
「キチガイだ」
「「「「「「「「「「「「「キチガイだ」」」」」」」」」」」」」」
あれ?新しい自分みつかったかもしれないよ?
・・・俺の自分探しは桜の理想のルーツ探しより難しいみたいだ。
俺の視界が暗闇に包まれた。
ぷちんっと、何かが弾ける音がして、俺と『サクラ』をつなぐ糸が切れてしまった。
体から急に力が抜け、感覚的にぐんぐん引き離されていくのを感じ取っていた。
そして膜のようなものを突き抜けたかと思うと、ドンっと何か大きなものに突き飛ばされた。
でももう、俺は『主人公』になれないと泣き喚くことはない。
もう一人の俺が別の現実で主人公として頑張ってくれてるんだから。
だから、俺も変わんなきゃいけないよな。
ケリをつけなきゃ・・・
気付いた時には俺はアスファルトの上に立っていた。
世界に拒絶された時の感覚はもう感じない。
俺はこの現実でやらなきゃいけないことがあるからだ。
気づかずに手にずっと持っていた、文化祭の書類を開いて読み始める。
・・・読むのはいいが、考える時間が結構かかりそうだ。
まだ、踏ん切りがつかないんだよな・・・
「あ」
門くぐれば、数秒の時間で一日分の考える時間が得られるんじゃね?
考えれば、即行動だ。俺はもう一度違う入口から入り門の前に立つ。
これからも何度も門をくぐるだろうが。
今までみたいにただ盲目的に『主人公』になりたいっていう思いでくぐるんじゃない。
俺の腐った根性にケリをつけるための道具の為にこの門を『使う』んだ。
大丈夫。
もう主人公になりたいなんて思いに振り回されない。
俺は俺の為に自分を変える。
俺には帰って来れる、、、帰らなきゃならない現実があるんだから。
如峰月桜は桜として門をくぐった。
翌朝、俺は自分の教室に朝早くからいた。
空はまだ薄暗く、ちょっと寒い。
ぶっちゃけ、朝練の人間よりも早く来ている。
朝顔よりも早く起きているので、朝飯も抜きだ。
てか、昨日からほとんど寝てない・・・
認めたくないことを認めて、さらに、新しい自分について悶えたので時間が掛かってしまったのだ。
気づいたら朝4時。
やだなー、ちょうやだなー。
今日すべきことを並べ立てるだけでも、憂鬱だ。
ハッキリ最初に言っておく、俺は今日変わるんだ。
「やあ、こんな朝早くに呼び出すなんて、、、どうしたんだい?」
「どうも、朝早くからすいません。古畑先輩。」
彼女は朝早いというのに、俺と違って早朝でも全然眠そうに見えない。
古畑さんは俺の前の席に座ると、俺と向かい合うように体の向きを変える。
そして、不満そうな顔で俺の切りそろえられた髪を撫でた。
「いつまでダッサイ髪形と眼鏡を続けるかって楽しみにしてたのに・・・バッサリ切っちゃって。なんかあったの?」
「まあ、、、いろいろあって。」
さすがに美少女二人にダサいと言われた服装や眼鏡をし続ける程、俺の心は強くないし。
俺の苦い表情を見て古畑さんはニヤニヤする。
「何かあったんだ・・・何?今回呼び出したのもそれ関係?」
まあ、、、近いけど、、、遠いような、、、
ええい、腹くくってしまえ!
ぐっと汗ばむ手を握りしめ、考えていたことを言ってしまう。
「あ~、古畑さん、俺を新聞部に入れてほしいんですけど」
「・・・マジ?うちの新聞部って、『普通の』新聞部じゃないよ?」
鷺ノ宮高校新聞部は一番情報が集まる裏の顔を持った新聞部だ。
そして、取り扱う新聞は二種類。
普通の学校新聞と裏の個人情報まで扱う新聞。
黄金比生徒会長が警戒するのも、裏のネタになるようなことを知られるのが嫌だったからだ。
そして、、、その新聞部のエースで学園の情報を牛耳ってるのが彼女である。
逆に言えば、彼女に近づけば情報を搾り取られる代わりに情報を得られるという事だ。
「・・・覚悟は・・・できてます・・・」
正直、全然できてない。
古畑さんに暴言を吐いた人間が翌日、アバンギャルドな方々に連れてかれたって話があるぐらい新聞部ってのは闇の部分なのだ・・・
正直、関わりたくない。でも、、、新聞部の力は必要だ。
「じゃ、、、新聞部に入る理由は?正直、やる気がないなら情報だけ搾り取られて放り出されるよ?」
「怖いよ!?どこの闇組織だよ!?」
古畑さんが、そんな俺の様子にため息をつく。
それぐらいの覚悟がないなんて・・・と言ってため息をついている。
いやいや、それって部活と言えますかね!
「情報が欲しいのは分かるけど、、、なんで?納得できる理由が無いと、協力できないよ?」
・・・来たか。
仕方ないな。でも、、、しかたない。腹くくろう。
「まず、、、部活入らないといい加減、周りの目が厳しくて。」
「なるほど、、、で?まだあるよね?」
うう、、、顔が熱い。心臓がバクバクする・・・
「・・・」
「顔が赤くなるような理由か・・・もしかして好きな女の子の情報欲しいとか?」
「はい」
「え?まじ?」
「はい」
「・・・誰についての情報を集めたいの?」
「はい」
「しっかりしてえええええぇぇぇ!?」
顔が熱くなるのは仕方がない。
何しろ、この人嘘ついてもばれちゃうんで正直な動機を話さなくてはならない。
つまり、知りたい情報についても、、、しょうじ、、、き、、、に、、、
「あ、あさひな、、、か、、、かえで、、、について、、、、まわりの、、、じょっ、、、情報まで、、、ぜ、、、ぜんぶ、、、ほし、、、い、、、」
「落ち着いて!なに、堂々と告白してるの!?顔真っ赤っかにしながら何言っちゃってるの!?しかも、彼女の周りのことまで知りたいって、どんだけすきなの!?ねえ!?ねえ!?ストーカーに近いよ、大丈夫!?」
「はい」
「しっかりしてえええええええぇぇぇぇぇぇ!?」
全身が熱くなる。脳がぼうっとする。
結局、主人公になりたいって思いは今でも彼女が好きだっていう憧れの気持ちの裏返しだったんだ。
だから、朝日奈楓がいない異世界のサクラは目的もなく主人公になりたいと言う気持ちだけが先行する薄っぺらい奴になってしまったんだろう。
サクラだって、、、変わり始めたんだ、、、本人格の俺が、、、やんねえで、どうする!
「俺は!朝日奈楓が!好きなんで!彼女の情報を!集めたいから!新聞部に!入りたいんです!」
「・・・わ、、、、わかった、、、よ、、、、新聞部には私から通しとくから、、、、」
古畑さんは意外とガチな恋バナは苦手なのか顔を真っ赤にしながらあたふたしている。
・・・そういや昔から恋愛映画見た時とか、キスシーン見ただけで盛大に叫んでたな。
このまま、押し切ってしまおう。
「だから、文化祭関係でちょっと新聞部のお力借りたいんですけど!朝日奈楓がスキダカラ!」
「はい、、、表の仕事メインで、、、情報は手に入れられるように、、、します、、、だからこれ以上私に詰め寄って来ないでえええぇぇぇぇ!」
新聞部に入りました。
精神エネルギー残り3割・・・
真っ赤になった意外と純情な古畑先輩を教室に送り届けて、また自分の教室に戻る。
「「あ」」
朝日奈楓がちょうど来ていた。
ヤバい、、、心臓が、、、破裂しそうだ。
彼女は、机に教科書を入れてから部活に行こうとしていたのか、恰好はバスケ部の練習着だった。
・・・目があった瞬間、逸らしてしまう。
古畑先輩に言った通り、、、俺は彼女のことが大好きだ。
超好きだ。
やっとその気持ちに向き合えた。
彼女に釣り合ってないと気付いてから、、、その気持ちを封じ込めてたけどやっぱり好きなんだ。
子犬のような見た目の可愛い所も。
その外見に似合わず、正義感が強い所も。
俺は、、、ずっと彼女の側にいたかったんだ。
「髪切ったんだ。眼鏡取った顔も久しぶりに見たよ・・・」
そういって笑う彼女の笑顔を見て、心臓が止まりそうになる。
・・・彼女から離れすぎて、耐性がなくなりすぎてるっ!?
ヤバい、、、心臓止まって死ぬ!
「あ、ああ、、、ちょっとイメチェンしたくてな・・・」
「へえ、そうなんだ・・・」
「「・・・・・・」」
ああ、、、久しぶりに真面目に話したから何話していいか分かんない。
しかも、気まずいままだったから余計に沈黙が重い。
い、いたたまれない、、、喧嘩したわけじゃないのに・・・
「あ、じゃあ!私行くから!」
「何故、窓から出ようとする!?落ち着け!!」
「だ、大丈夫だよ・・・ここ4階だもん!」
「そうか・・・・いや、ムリだから!」
何をとち狂ったのか、彼女は窓から飛び出ようとし始めた。
気まずいのは分かるが、死ぬぞ!
でも、朝日奈楓なら大丈夫そう!主人公補正で!
朝日奈楓が本気で窓枠に手をかけ始めたので手を取る。
「「あ・・・」」
サクラがアリアと肩をくっつけあっても、そんなに抵抗なかったのに。
俺と朝日奈楓は手を握り合うくらいでお互いフリーズしてしまう・・・
「ちょ、、、、ちょっと話あるんだけど!」
「な、なにかなぁ!あまり時間ないんだけど!手離してくれれば、時間できるけど!」
「おっけー!今、手を放すぜ!」
「どうも!さあ、座ろう!」
ヘイ!みたいな感じで叫びあいながらお互い席に座る。
お互い初心すぎる・・・
なんか隣同士に座ろうとしたのにお互いが遠慮して一つずつ席を開けたから二つ分席が空いてしまっている
「「・・・・・・」」
ほらまた、お互いにだまっちゃった~~~~。
朝日奈も手を膝の上でもじもじしながら、顔を真っ赤にして伏せってしまっている。
・・・この人間凶器め。
こういうしぐさを何の計算もなく自然に出来ちまうから主人公なんだよお、コイツは!
落ち着け・・・トーリが言ってたことを思い出せ・・・
-女の子は相手がよっぽどのブサイクですらなければ、笑いかけられるだけで良い気がするもんですよ?-
「うがああああああああっ!!!」
「さく、、、如峰月君!?」
いきなり悶えはじめた俺に朝日奈楓が心配したのか驚いたのか近づいてくる。
「そ、、、、それ以上近づくなああああっ!そこの席に座ってくれ!後、俺よっぽどなブサイクだと思いますか!?」
「ええ!?本当、どうしたの!?取り敢えず、座るけど!うん、ブサイクとか一回も思ったこと無いよ!むしろ、爽やかそうに見えるから今の感じ良いと思うよ!って、何でこんなにハイテンで会話してんの、私たち!?」
お、、、落ち着け、、、笑顔で、、、自分の非を認め、、、相手を褒めまくる、、、だったっけ?
一つ分だけ席を詰めて座っている朝日奈楓と向き直る。
笑顔で
「きゃっ、どうしていきなり笑顔なの!?なにがあったの!?」
カオス!
トーリさんは俺の笑顔の力を測定していなかったようだ!
再び、彼女は席一つ分開けてった。椅子に座りながらの後ずさりで。
落ち着け、、、久しぶりの会話にもだいぶ慣れてきた・・・
いける・・・アリア並みの美人とも俺は2か月旅をしてきたんだ。
サクラがだけど。
だから、アリア以上の美少女とも会話できる!・・・はず。
「あ、朝日奈!」
「はいっ!」
やばい、、、警戒されてる。
どうしたらよかですか!
いや!男は根性だ!
「ごめん!俺が悪かった!」
「え?何が?」
せ、説明しろと・・・心が折れるぅ!?
「・・・あはは。そうだね。えと、、、前に、『昔とは違うから』とか、変なこと言っちゃって、感じ悪かったから。」
「ああ、、、」
彼女は思い出したかのように苦い顔した。
俺のせいか・・・?
俺が見たいのは彼女の笑顔なんだ!
腹くくれ!
頬を自分で一発ぶったたき、彼女の方を見て叫ぶ。
「実は、、、朝日奈さんがあんまりにも可愛いから昔みたいに仲良くできなくていらついちゃって、つい言っちゃったんだ!」
これを言うかどうかで、昨日はずっと異世界にこもってました☆
「か、、、、、かわいいぃぃぃぃ?」
あんまり、美少女に可愛いっていえる人間ていないからな。
あまり言われ慣れてないのだろう彼女は顔を真っ赤にして、後ずさる。
「ああ、朝日奈楓は超越美少女と呼ばれるぐらい美少女なんだ!大体2000字くらいで誰もが描写するぐらいの美少女なんだ!だから俺は朝日奈楓ともっと仲良くしたい!」
「え?ええぇっぇえぇぇぇぇぇえ!?」
俺は、朝日奈楓に近づき始める。
朝日奈楓は、慌てすぎて椅子から転がり落ちてしまう。
くっ、、、ドジっ子属性も可愛いぜ!
「俺は朝日奈楓のことが超好きだ!」
「・・・ひぅ・・・」
朝日奈楓が感極まった状態で、腰を抜かしてるところに近づき、しゃがみ込んで手を差し伸べる。
朝日奈楓は恐る恐るその手をじいっと見つめる。
あ、笑わないと。
にこっ
「・・・ひぅいい・・・」
彼女は涙を浮かべはじめる。
顔は真っ赤っかだ。体も、ぶるぶる震えている。
やばい、、、下手なこと言ったら、怖がらせて泣かせてしまう・・・
・・・でも、、、決めてやるぜ!
「朝日奈さん!」
「はいっ!」
「俺と、もう一度友達になって下さい!」
「はいっ!・・・はぃ?」
俺は、彼女が求める昔みたいな仲・・・つまり、もう一度朝日奈楓と友達になることが出来たのだった。
よしっ!
サクラが『え?』って言ってる気がした。
連続投稿です。もう一話もよろしく!




