第2章海の民の生き方part1
悪あがきで連続更新三日目。
次話は・・・・・さすがに無理です。
ライキンポートの表通りに店を構える小さな菓子屋。
店の規模は小さいが、安くて美味い菓子が豊富に取り揃えてあったりする。
「おっちゃーん、いつもの」
「お、黒さんじゃないか!今日も菓子の買い出しかい?」
「まあね・・・・」
黒い服ばかり着た甘党の上級冒険者。
前代未聞の規模の魔力嵐に巻きこまれたにも関わらず、ほぼ無傷で帰って来た冒険者。
クエストを期限超過し初失敗を迎えたというのに俺の評判は何故か上がってしまっていた。
「今日はこれだけ」
「はっはっは!毎日毎日よくこれだけの量を食えるもんだな!」
「ははは・・・・」
口から乾いた笑いがこぼれ出る。
ライキンポートに戻ったはいいが、案の定ティアラは俺達の姿を見るなりギャン泣きした。
何とか泣き止ませたものの今度はずっと仏頂面でふてくされている。
機嫌は未だに治らずアリアがつきっきりで甘やかしている。
俺もティアラの機嫌取りの為に毎日菓子屋で大量の菓子を買い出しに行かされている。
そのせいで甘党なんて噂が立ってしまった・・・・緑茶好きって噂が流れたらどっかの誰かが持ってきてくれないかしら?
「すぐに袋に詰めるから店の中でも見て待っててくれ!」
「ほーい」
今日中に全部ティアラの胃袋に消えるんだから丁寧に袋詰めしなくてもいいんだが・・・
そんなことを思いつつ甘い香り漂う店棚を眺めていく。
流石にショーケースに並べられた菓子類は目玉なだけあって目を見張るものがある。
色彩に影の置き方までおっちゃんのこだわりが垣間見え、これもついでに買おうかなと思わされてしまう。
「・・・・お?」
星のような形の色とりどりの小さな粒。
見るだけでそれの甘さが口の中で広がるようにすら感じる。
そして俺はこれを知ってる。
「これ、、、金平糖か?」
「お、最近作り方を教わって作った菓子なんだが知ってるのか?流石甘党の黒さんだ。」
「作り方を教わった?」
「王国方面の国境が自然災害で無くなっちまったから、帝国からの流浪民が海民連合に流れ込んでるのさ。うちの店もその中の菓子職人をニ、三人雇ったのさ」
「へえ、、、帝国から」
この異世界を旅しているとたまに現実世界を彷彿とさせるものに出会う。
それは世界が変わっても文化の発展は似たようなモノになるということなのか。
それとも俺みたいに異世界に流れた現代人がいるのか。
ま、とりあえず
「これも」
「あいよ!」
背負い袋を誰かさん用の菓子ではち切れそうなほど膨らませ、手には金平糖の小袋。
一つ摘まんで口の中に放り込む。
舌で転がし、ぽりぽりと咀嚼する。
小さな小粒のくせに口いっぱいに優しい甘さが広がる。
本当は傍らに緑茶が欲しかったが、まあいいか・・・・幼い頃よく食べた味そのままだった。
「うめえ・・・・」
美味い物を食うとやっぱり気分が明るくなる。
観光都市であるため都市の中は明るい色にあふれている。
黄色、青、白。
見るだけで心が明るくなる家屋に店に屋台。
少し蒸すような気候だけが残念ではあるが、それもまた観光の楽しみだ。
「どうせティアラが機嫌直すまで作業は中断だし、プールで泳ごうかな?」
ライキンポートは観光都市、大体の娯楽施設は揃ってる。
近くに海があるのにわざわざ淡水を引いてプールを作ってまでいるくらい。
冒険者ギルドはしばらく行く気ないし・・・ティアラに今顔を見せるとまた不機嫌になるから宿屋でゆっくりもできないしな。
お、今日も戦が無いと感づいたのか、俺の腰の『鬼濁呪』がぶるぶるっと不満そうに震える。
・・・・・・まさに呪いの魔剣である。
六代目ミルの作品だし、鬼人たちにも良いと言われたので大陸に持って帰ってきた。
とはいえ刀や細剣ならまだしも長剣なんて使ったことがないので、最初は業者に頼んで王国のミルの元に送ってもらおうと思ってた。
しかしいつの間にか腰に帯びられ、どうやっても離れないのだ。
今のところ乗っ取られるとかはないけど、正直怖くて鬼ヶ島以降一回も抜いていない。
「・・・はあ」
呪いの魔剣持ちだなんて絶対に人に知られたくない。
狂った剣士として更にキチガイの名を広められてしまう・・・墓場までこの秘密は持っていこう。
「おや、その剣・・・」
「ぶわああっ!?」
「いだっ!?」
ちょうど今結んだ心の誓いが早速崩壊しそうになり、思わず金平糖をぶちまけてしまった。
俺の剣を覗きこもうとしていた人にばっちんばっちん降り注ぐ。
「大丈夫か!?」
「はい、、、大丈夫です」
眼とかには入っていないようだ、顔を抑えながら顔を上げた。
線の細い・・・・少年か少女か分からない中性的な顔立ちの白エルフだった。
そしてビックリするくらい体は細く、南国のこの国では珍しい色白で病弱そうだった。
「すいません、つい剣に見惚れちゃって・・・それミルの七鞘七剣ですよね?」
「ああ、、、こっちこそ悪かった。てか、よく分かったな」
「僕も持ってるんですよ」
「ほお・・・・・」
ほらと腰に備え付けられた短剣を掲げて見せられる。
確かに同じ魔道具師に作られた魔道具特有の雰囲気がある。
仲間に会えてうれしいのか『鬼濁呪』も震えた。
「お暇でしたら、同じシリーズの剣を持つ者同士少しお話しませんか?」
「ああ、いいよ」
どうせ暇だったし、七鞘七剣を持つ人間に興味もあった。
早速近くの喫茶に入る。
それぞれ給仕に注文を済ませると自己紹介に入った。
「俺はサクラ=レイディウス。あんたは?」
「僕の名前はアンディ=ディラータです・・・早速ですがお互いの剣と鞘を見せあいませんか?」
「良いけど抜くなよ?かなりヤバい奴だから」
「ははは、、、実物を見るのは初めてですが能力なら把握してますよ」
『鬼濁呪』も彼になら触られてもいいらしい。
普段は絶対に引き離されまいと腰にしがみつくのに、あっさりと離れた。
『鬼清祝』ごと『鬼濁呪』を渡す代わりに、鞘ごと彼の短剣を引き渡される。
改めて手で実際に持って見るとその短剣の長さは以上に短かった。
短剣使いといえば以前『最凶』と戦ったことがあったが、あいつの用いていた短剣の刀身の二分の一の長さもない。
「『四番鞘・望遠鞘』に『四番剣・如意剣』です。」
「・・・・・・・・・なるほどねえ」
発動鍵語に合せて刀身が伸びるタイプか。
そしてこの二つのセットの本当の真価は超遠距離からの刺突狙撃。
道理で非実戦的な見た目のわけだ。
鞘を覗きこんでみれば、給仕の女の子の服の繊維までくっきりと見ることが出来た。
てか、普通は鞘と剣揃ってんのな・・・『七番鞘・常識外』が便利過ぎたから疑問にも思わなかったが、七番剣はどこにいったんだ?
まあ、鞘は破損しちまったしあっても意味ないか。
「良い剣と鞘だな・・・いわくも無さそうだし」
「ははは!三番剣のことですね!」
刀身を見ずとも剣の様子が分かるのか、楽しそうに細部まで観察していたアンディはさも面白そうに大笑いする。
こいつ最初からそうだとは思ってたが、かなりの剣蒐集家だな。
剣士特有の手ではない綺麗な指先を見てそう思った。
アンディは剣を返してきたので、俺も剣を返した。
俺の手に渡った途端ぶるぶるぶるっと震えだす・・・・相変わらず気持ちわりいな。
俺のそんな様子をアンディは見ていたらしく、口を開く。
「でも、三番剣を誤解しないであげてください。」
「へ?」
「呪いを物質化して作られた問題児ではありますが、他の七鞘七剣と同様に主を裏切ることはありません。」
「お、おう・・・・・」
「剣の本当の声を聞いてあげてください。そしてあなたの声を聞かせてあげてください。それが出来れば鬼人でなくとも長剣を使い慣れてなくてもこの剣を使えるはずです」
「アンディ、、、詳しいな」
「実は六代目ミルのファンで・・・・」
少し言いよどむ様にも見えた。
しかしあまり詮索するのは、主人公らしくないと思ったので気付かない振りをした。
ところでアンディは旅の途中らしく、友人達とたまたまライキンポートに立ち寄ったそうだ。
「七代目ミルの所にご挨拶をと」
「へえ、知り合いがいるのか?」
「少し武骨な妹が」
妹、、、そういえばエマさんっていう使用人がいたっけ?
会ったことないからどうもこうも言えないが
「そっか、ミルによろしく」
「ええ、、、個人的にはサクラさんをもう少し知りたかったんですけどね?」
「はは・・・」
女性に言われたのなら嬉しいが、アンディに男である可能性がある以上俺の肛門はしっかりとガードしておくつもりだ。
なんかさっきから好意の視線を向けてくる綺麗な顔立ちのアンディから目線を逸らす。
すると外が妙に騒がしいのに気づいた。
「なんか騒がしいな?」
「ああ、そろそろ大食い大会が始まるとか」
「え、そんなのあったっけ?」
「一週間前に急に決まったとか」
「へえ」
折角だし行ってみようということになった。
土魔術で即席で作られたのか、テーブルもステージも無骨な物。
看板も殴り書きだった。
「なになに、、、レッドホッドタンドリー大食い対決!??」
「あ、あれを大食いですか・・・」
俺とアンディは顔を引きつらせた。
海民連合では亜熱帯のような気候であるためか、汗をたっぷりかいて体温を下げようと辛いものを好む。
観光客用に甘味も発展してはいるが本場は辛味である。
実際ライキンポート名物でこの地域の現地民にとって最も親しみある味はタンドリーチキンという、鶏肉に香辛料をこれでもかとまぶしたものだし。
ちなみにそのタンドリーチキンですら、辛さは半端ない。
デスソースをそのまま食ってるんじゃないかと思うくらいガチで辛い。
これを食えるのがこの地域では大人の証と言われるくらい馬鹿な辛さだ。
そんな地域ですら怪物と呼ばれる品がある。
『レッドホッドタンドリー』
とあるタンドリーチキンの店が新商品開発の中で偶然生み出したバケモノ並みの辛さの品らしい。
とてもじゃないが見た目、匂いから既に赤く辛い。
しかも魔術でもかけてあるのかいつでもなんか煮立ってるぐらいの熱さ。
完食者は今までゼロという悪ノリのすぎる食べ物である。
という俺もアリアと共にティアラに折檻の一環として食わされたが、、、、三日間何も胃が受け付けなかった。
「需要あるのかよ・・・」
「あるみたいですよ・・・・・一応」
アンディも食ったことがあるらしく、胸焼けしているみたいだ。
主催者側の粋な計らいか、ステージ上には既に大皿に盛られたレッドホッドタンドリー。
観客たちは基本地元住民、、、漂ってくる刺激臭だけで顔をしかめている。
「怖いもの見たさだろ・・・・」
あれを食って発狂するかそれとも食い切るか・・・・ちょっと見てみたいと人がまだまだ集まってくる。
その中には彼女達も。
見知った桃色の髪と銀色の髪。
「アリアにティアラじゃん」
「サクラ、ここにいましたか。」
「探してたンだよッ!」
「はぁ?」
アリアの腕をがっしりとホールドしたティアラがいきなりキレ出すものだからアリアを見る。
疲れた顔で説明してくれた。
「あなたがいつまでたっても帰って来ないから、探しに行こうってティアラが・・・私はどうせ大丈夫だと言ったのに」
「ほおん?」
「お、お菓子が遅いカら探しに来タの!!」
「それはそれは、、、申し訳ないことを・・・」
「サクラ、この人は?」
「俺と同じ七鞘七剣持ちのアンディ君さんだ。」
「「君、、、さん、、、?」」
「あははははは・・・・・」
アリアとティアラが同じように首を傾げる。
女性の眼から見ても彼の性別は分からないようだ。
アンディは事情があるのか笑ってごまかすだけだった。
「そt、そろそろ始まりますよ」
「へえ、、、どんな選手が出てることやら」
「せっかくだし見ていきましょう」
「ええ・・・・」
立ち見で見ることになるが、ステージが意外と高めに作られていたせいか選手たちの顔が良く見えそうだ。
「皆さまお立合いありがとうございます!急遽イベントを開かせていただきましたが、ここまで集まっていただけるとは思ってはいませんでした!」
主催者らしき人が前口上を始めている。
どうやらこのイベントを機にレッドホットタンドリーをライキンポートの新名物にしたいらしい。
大丈夫、既に迷物として名を馳せていると地元住民達皆が思ったことだろう。
「では、各地から集まった大食い自慢に入ってきていただきましょう!」
地元からは集まらなかったらしい。
鋭い気迫を放って入ってくるのは種族もバラバラな屈強な奴らばかり。
しかし食う物を見た瞬間、顔が蒼白に変わる。
「うわあ、、、皆話が違うって主催者を睨みつけてるな、、、話が違うって」
「一応、、、『食べ物』ですしね、、、主催者の何食わぬ顔は腹が立ちますが。」
「見てるだけで胸焼けが、、、、うぷっ」
「師匠、大ジョウ夫?」
これから被害にあう者達の顔を見て思い出してしまったのだろう、アリアが蒼白な顔で胸を抑える。
そしてティアラが何食わぬ顔でアリアの介抱をしている。
いや、罰として食わせたのお前だろう・・・・
「なに、兄弟子?」
「いんや・・・・」
その時いきなり大衆がどよめく。
何事かとステージ上を見れば選手の一人は俺と同い年くらいの緑髪の少女だった。
仮面をかぶってはいるものの、体格からすぐに少女だと分かった。
「実はこの少女!あの水龍様の推薦でございます!」
「「「「「「「「おおおおおおおおおおお!!」」」」」」」」
地元民たちがさらにどよめく。
・・・・・・だが、、、、、水龍?
「なんで水龍が?」
「知らないんですか?この海民連合は水龍様の保護を元に設立されたんですよ?」
「そうなの?じゃああの娘は・・・・龍人か?」
「かもしれませんね」
隠すためか左肩を覆っているせいで、確認はできない。
けども、、、、あの緑色の髪、、、見覚えがあるな。
シノンやサニアがいたら分かるかもしれないが・・・・・・龍人の郷では女の敵扱いされていたからトーリ以外の龍人の女の子とは仲良くなかったし。
「では、皆さん『完食』よろしくお願いしますね?」
主催者の顔に影がかかる。
逃げたら賠償金の契約でも結んでいたのだろうか・・・・選手たちが半泣きでそれぞれフォークとナイフを握る。
緑髪の仮面の少女はそんな中、なんと素手でレッドホットタンドリーを掴んでいる。
まじかよ、、、あれ表面が沸騰してただろ・・・熱くないのかよ。
主催者は選手の様子などお構いなしに無慈悲にも口火を切る。
「はじめ!」
「「「「「「「はむっ、、、がれ゛え゛え゛っ!!!!!!?????」」」」」」」」
「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」」
やっぱりなあ・・・
意を決してあの劇物を口に運んだ選手たち全員の眼から鼻から耳から口から尻の穴から炎が噴き出す。
魔法の焔だから周囲に被害が出ないとはいえ、これは・・・・選手全員がもがき苦しんでいる。
声も出さずに炎を吐きもがき苦しむ。
地元民ドン引きである。
「はぐっ、がふがふ!むちゃむちゃ!」
「「「「「「「「「えええ・・・・・・・・」」」」」」」」
そんな中、一心不乱に緑髪の少女はレッドホットタンドリーを貪っていた。
まるで普通のフライドチキンを食うかのように。
むっちゃむっちゃと平らげていく。
地元民は最初こそ唖然としていたが、ノリの良い気風の者達ばかりのこと。
ドン引きの沈黙はすぐに声援へと塗り替えられた。
「お代わりなのじゃ!」
「すぐにもってきなさい!」
主催者もようやく大食い大会らしくなったと、イキイキと厨房に指示を入れる。
普通のフライドチキンだとしても多すぎるくらいの大皿をほんの数分で食い終り、それでも足りないのか他の選手の皿にまで手を伸ばし始める始末。
これでは一人大食い大会どころか、ただの餌付け鑑賞だ。
「まさかあれを食える人がいるとは・・・」
「いやあ、、、もう人外でしょ」
「目が痛イ・・・・」
ティアラその気持ちわかるぞ・・・・
ってあれ?
「アンディは?」
「あ、いつの間に・・・・」
「気持ち悪くなって帰ったのかな?」
まあ一緒に行動する約束もしてなかったしな・・・・
それに帰りたくなる気持ちは分かる。
地元住民は辛いものに耐性があるからいいかもしれんが、辛いものにそれ程耐性がない俺達はレッドホットタンドリーを見るだけで目が痛くなる。
「足りんのじゃアアアアアアア!主催者、ペースを上げるのじゃっ!」
「ひいいいいっ、まさかここまでペースが速いなんて・・・もう用意がありませんよおっ!」
すこし腹黒さがあった主催者が悲鳴を上げるほどの食いっぷり。
胸ぐらを掴んで揺さぶられ、ほぼ恐喝じゃないか。
・・・・・・あれ?
なんか思い当たる節があるような・・・・・大食いに緑の髪に偉そうな口調といい。
「ならば観客共食い物を寄越すのじゃアアアアっ!」
「うっわ、観客席に降りてきましたよあの娘!??」
「・・・・・・・・・・・・」
余程腹が空いているのか遂に観客席まで降りてきた。
俺はもしやと思いつつナップザックの口を開く。
その瞬間鼻をぴくぴくと動かしこっちにやって来た。
「すんすん、、、甘い良い匂いなのじゃあ~」
「サクラ、それってティアラ用の
「しっ!」
相手は野生生物だ・・・・悟られてはならない。
袋を揺らすように匂いをたゆらせる。
すると彼女はふらふらとこっちに寄ってくる。
「・・・・・・・・・」
おちつけ、、、、まずはと金平糖を口元に放り投げる。
がぶっ!
おおっと、思わず噛みつかれるかと思った・・・・仮面の少女の口はこりこりと金平糖を噛みしめると・・・・・俺の所に猛ダッシュしてきた。
「サクラ!?こっちに来ますよ!?」
「何やっテんの、馬鹿アニ!」
「いいからいいから、、、、、『曇の沼≪プール≫』+『曇靭紐≪クラウド・ワイヤー≫』」
「ふぬっ!?ぬおおおおおおおっ!?」
進行方向に罠を仕掛けたらあっさりとひっかかりやがった。
ガチンガチンと歯を鳴らし、それでも必死で甘い香りに近づこうとする彼女の近くへ近づく。
「だ、大丈夫なんですか?」
「多分平気。」
「「多分!?」」
アリアとティアラ、、、ついでに観客まで遠巻きに見守る中、俺は仮面少女に近づいていった。
「お主じゃな、この変な拘束をしたのはっ!何者じゃあっ!」
「野生に帰りやがって・・・・一体こんな所で何をしてやがる」
「ふぬおおおおおっ!」
仮面がずって視界が塞がれてるようだ。
そのせいか俺が誰だか分からないらしい。
・・・・彼女の首から見覚えのある鉱石がネックレスとして掛けられている。
「嗅覚も感覚もレッドホットタンドリーで鈍ったか?」
「だから誰じゃ、お主は!不遜じゃぞ!?」
仮面を取っ払ってやりたかったが、手を伸ばせば強靭な顎で食いちぎられそうだ。
仕方ない・・・・・
「ほら、御所望の甘いものだ・・・・」
「すんすん、、、、!?」
まるで犬のように袋の中に顔を突っ込みぐちゃぐちゃと食いはじめた。
もう一心不乱という奴である。
自分が拘束されていることすら忘れてるに違いない。
そろおっそろおっと後ろから近づき、、、、仮面を剥ぎ取った。
「・・・・・・・あ」
今更ながら気付いたのか、くちゃくちゃ口を動かしながら顔を上げた。
予想通りの顔だった。
「・・・・・・・よお、スカイ」
「くちゃくちゃ、、、、ごくん、、、、ひ、久しぶりじゃな、サクラよ」
緑髪の謎の仮面少女の正体は予想通りスカイだった。
スカイはようやく正気を取り戻したのか、俺の名を呼んでくれた。
そこでようやく自分の失態を余すことなく見られたことに気付いたのか顔を真っ赤にさせて。
「流石にあの方の前ではバレてしまいますからね・・・・危ない危ない」
アンディは路地裏でようやく一息ついた。
少し息を整えて、、、ようやく体を動かす。
と、、、思いきや目を鋭くさせ周囲を睨みつけた。
「アンディ殿・・・・・」
「またあなたたちですか?」
目の死んだ男たちがアンディを囲い込んでいた。
アンディはため息をつくとはっきりと告げた。
「魔国には行きませんよ?」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」」
多くは語らず。
彼らは剣を既に抜いていた。
そして手足を切り裂き、身動きを取れないようにしようと動いていた。
か弱い『少女』のような体つきのアンディに容赦なく・・・・が、アンディは静かに一言告げるだけだった。
「止めておきなさい。」
「「「「「「「「????」」」」」」」」
何もしていなかった。
なのに全ての剣が砕けた。
アンディの柔肌に触れた瞬間にだ。
服を切り裂けども、一刃たりとも肌に痣すらつけられなかった。
「酷い腕だ・・・・・」
吐き捨てるかのようにそういうと、刺客たちが用済みとばかりに投げ捨てた一本の剣を悲しげに拾った。
まるで刺客がいないかのようにもう剣としての形を持たないモノに語り掛ける。
「可哀想に、、、良い主に巡り合えなかったんですね・・・」
「これがうわさに聞く、、、剣と会話できるという・・・」
刺客の一人が結果をそして実際の様子を見て呟く。
刺客たちもざわざわと揺れる。
そして同時に止まった。
「剣を愛さず振るう者達に剣を振るう資格なし」
「「「「「「「・・・・・・????」」」」」」」
皆が自らの腕を見て、、、、そして無くなっていることを認識できずに気絶していく。
殺さず、、、腕のみを切り離す。
しかも気絶させる程度の出血に抑えて。
何が起こったかもわからぬまま、、、、倒れ伏した。
カシャンと剣の形も既に保ってなかったモノが砕ける・・・そこでようやくそんなモノでこの神業が為されたことが分かる。
「・・・・おや?」
「・・・・・・ぐっ」
ただリーダー格だけは腕の傷を瞬時に焼き出血による気絶を防いでいた。
焼くことで出血を防ぎ、痛みで覚醒させた。
両腕が無くともまだ戦うと、口に仕込み短剣を挟みこみ。
「ほう、、、、その剣はあなたを主と認めているようですね」
アンディはそう言うと初めて、相手を敵と見なし構えをとった。
・・・・・・徒手空拳で。
血の匂いが次第に路地裏を侵食し、、、そして充満する。
それを合図とするかのように刺客は血だまりの床石を蹴る。
「でも、僕にはそぐわない」
手刀一閃。
短剣を砕きその勢いのまま、顔を二つに分ける。
刺客は床を蹴る姿勢のまま空を数歩動き、、、そして倒れ伏した。
「・・・・ふう、妹に会いに行くだけでこうも魔国の刺客に襲われるとは」
斬ったはずなのに、返り血一つついていない手で額の汗をぬぐった。
そして振り返ることなく歩いていく。
その姿は異常であったが、優美にさえ見えた。
「やはり人でなきものは表に出てはいけませんね・・・・でも収穫は二つもありましたし、、、捨てたものじゃないか」
まるで散歩中かのように鼻歌を唄いアンディは歩む。
「行方不明だった弟たちにも会えたし、僕の主になれそうな人も見つかった」
四番鞘に四番剣が返事をするかのように震える。
「んん?寝取りだって?・・・・固いこと言わないでおくれ妹たち・・・・僕が思わず女体化するほど・・・・あのサクラという少年は素晴らしい剣士だった。」
蒸気する頬を隠すことなく、少しずつ膨らみつつある『胸』を抑えた。
「ああ、、、、でもまだ青い・・・・まだ青い。今はまだ主と決める時ではない。成長を待たねば・・・・」
とても楽しそうに、、、恋する乙女のように彼女は少女のような高い声を奏でる。
「ああ、、、遂に見つけた我が主・・・本当に弟や妹達が羨ましいよ。主運があって・・・」
ステップを踏むかのように彼女は軽やかに足を進める。
まるで好きな人が出来て浮かれるエルフィリアの少女のように。
「僕みたいに主を探すために、人にならずに済むんだから」
『一番鞘兼一番剣・アンディ=ディラータ』
主を探す剣。
主を求めるがあまり、人になった剣。
主の剣どころか主の性別に合わせて恋人を務めることもできる、正真正銘剣の主のパートナーになれる剣。




