第1章君が隣にいることは幸せと呼べることpart3
「ショウジュマル、キクスイ、、、イケ」
「クエエエエエエエエッ!」
「ギャルルルルルッ!」
片言君が声をかけるや否や狼は大地を蹴り、大鷹は空を駆ける。
「場所を変えましょう」
「よかろう」
その一方でアリアとモモタオウは二人とも周りを気にする性質らしい。
周りがいない場所へと歩いていった。
男と二人でどっか行くんじゃねえよ・・・
まあ、、、、こっちもこっちで戦場だ。
いつまでもよそ見してる場合じゃない。
狼の牙を避け、目を狙う嘴を跳ね除ける。
そしてポーチから種を取り出し、指で弾く。
宙に浮いた種から黒雲を溢れさせ、、、そして動かす。
「『劣化・曇脈展開≪マイナス・アクセス≫』」
「「「!???」」」
獣達は本能で慄いて、片言君は俺の姿が一変したことに驚いている。
動きが停まった。
それで時間は十分だった。
「『流れ重なる』『幾重もの曇の流れ』『俺の主人公たる』『証を刻め』」
「・・・!?・・・ナニカスルキダ、トメロ!」
「そこは逃げろだ、、、『積乱曇≪ミキサー≫』」
見た目は少し大きめの『曇の一撃≪ショット≫』
必要最低限の大きさで、、、必要最低限の速さ。
しかし魔力を操るものがそれを目にしたら・・・・・・
「う゛っ・・・・・・」
片言君がそれを見て、怖気づく。
そうか、、、お前も魔術師か。
なら分かるだろう?
魔力の濃さが意味が分からないだろう?
集められた自然魔力の大きさが信じられないだろう?
その核の暴走魔力が得たいがしれず・・・・怖いだろう?
空気を揺らし、木々を振るわせる。
高音をたてて地を舐め、空へと上がる一筋の濁流。
通った後は何ものこらない
地を駆ける獣でも、空を走る大鷹であっても。
喰われてしまえば一瞬。
「・・・・・・・次は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
片言君の『主人公』は、、、どうやら俺ほどではないらしい。
ただ、、、空へと上がっていく俺の魔術の残滓を見上げていた。
「次は?」
「・・・・・・・ナンダイマノハ」
「ぼくのかんがえたさいきょうまじゅつ」
「・・・フザケテイルノカ?」
「逆にお前は少しは考えないのか?」
「・・・・・・」
「自分がこれからどうなるのかって」
漆黒の意思。
それが俺を満たしていた。
本当は戦闘中は抑えるべき、沈めるべき。
しかしその勢いのまま、、、、、力を放った。
声を上げさせる間もなく、俺の攻撃は終わった。
技というまでもなく、、、ただ拳を振るっただけだが。
剣があれば良かったがそれがないから仕方がない。
罪なき子供にいくつも傷を与えたのに本気で殴っただけで攻撃する場所がなくなった。
・・・・・・・・痛みをもっと与えるべきだったのに
拳は加減が効かず、つい力んでしまった。
沢山の血がこびりついた、、、手の平にこびりつく乾き始めの糊のような粘液の感触を確かめる。
それでようやく実感した・・・人を『初めて』殺したと。
雷の勇者をアリアの為に殺すと決めた以上、いつかは慣れねばならないこと。
「・・・・・・・・うぷっ」
強い悪臭。
脳に直接来る、、、、キツ イ人の死の臭い。
でも、、、、この吐き気は多分そのせいで 人を殺したことを自覚したからじゃない。
既に 帝国で国境 を引いて来た 時から、、、大規模な魔 術を使ったとき からどこかで人を 死なせて いること は分かっていた。
今日初めて、、、、『直接』手を下しただ け、、、死な せ方が変 わっただけ。
視界に意識にいくつもの空白が生まれる。
「・・・・・・吐くなよ・・・俺」
この 殺しを、、、、嫌 な記憶に するな。
いずれ、、、、また、、、、こ れをする んだ。
自分の志を通 すには、、、、覚悟 がい る。
それ が分か ってるならこ の選択肢を 捨てるな。
『優 しい魔 術』が正しくて 『戦う魔術』が間違っ てる世界にするんだ。
アリアが心の底から 笑える幸せ な世界にす るんだ、、、、それが俺の 目指す先のこと。
だから、 、 、 、 ここで 止まるな。
「あ」
口に苦いものが奔った。
「ここで」
「・・・・・ああ」
場所を変え辿り着いたのは密林の中に偶々あった開けた土地。
「今更だが、、、大義の為に私はここに来た。女子であろうと容赦はせぬぞ?」
「弱者であろうと容赦はしません」
「・・・・・・・・・・」
返事はなく、刀を構えるだけだった。
挑発に無言とは、つまらない男。
サクラなら二三言口答えしてくる所なのに。
「『曇の魔術ー陽炎』」
「!?」
歩きながら白雲を気づかれないように辺りに散布していた。
歩き場所を変えたのは時間を稼ぐため。
白雲を少しずつ濃くしていたのに気付かなかったのだろうか?
雲に溶け込み姿を隠す私をモモタオウは驚愕の表情で棒立ちになっている。
「ひ、卑怯だぞ!!」
「・・・卑怯?笑顔で近づく鬼人の首を撥ね、しかもそれを船体から突きだして油断を誘い、、、更に子供達を傷つけたことと何が違うんです?」
「私のは正義に則った行為だ!我々より力の大きい悪を滅するためなら、口に出せない手段も正義となる。だが、正義に歯向かえばその時点で貴様は悪で卑怯だ!」
「『曇の魔術-喰』」
「フッ!」
背後から喰い荒らす白雲を近づけるが、斬り裂かれた。
なるほど・・・・殺気を感じ取ったか。
白雲の中にいる私を探る術がない以上、本格的な剣士タイプ。
「どこだ!」
「『曇の魔術-一撃』
雲の槍を数か所取り出し、ほぼ同時に撃ち出すが刀が目にも止まらない速さで動く。
攻撃に関する限り、どんな攻撃も刀で打ち崩せる・・・と。
サクラが一時期使えていた刀術に勝るとも劣らない。
とはいえどちらの攻撃も通らないとは・・・
態度に満ち溢れる自信からある程度の力量があるとは分かっていたが、少し上方修正しなくてはいけないようだ。
そして上方修正したのは私だけじゃないらしい。
刀を一度鞘に納めたモモタオウは
「『仙桃流―斬結界』」
「『曇の魔術-転移』」
『曇の魔術-網』で感知した技の範囲の外へ、雲の中を転移する。
正確に言うとサクラの『動く曇道≪オート・ステップ≫』同様、雲に自分を運んでもらう術式だが。
転移した雲から周囲を探る・・・・・視界が晴れていた。
私がいる雲以外全ての雲が切り裂かれ霧消していた。
「・・・・・・・・」
「ようやく姿が把握できたぞ・・・」
こうなると仕方がないので隠れていた雲を霧消させる。
モモタオウは血管を浮きだたせながら犬歯を剥き出しにし笑った。
再び鞘に刀を納めた状態で。
「動くなよ、、、、既に技は放った。この距離なら指一つ動かす前に首を刎ねられる。」
「・・・・・・・・・なるほど」
試しにと背後で白雲を動かそうとした瞬間、その雲が霧消する。
細分単位で斬り分けられたのだろう。
基本的に魔力が許す限り柔剛大小千転万変だが、核に自然魔力を纏わせて形成される以上は核と雲を斬り分けられると、核から操作が出来なくなり霧消してしまう。
サクラは獄炎魔術対策で作ったと言っていたが、雲を粉々にし核から切り離していく『積乱曇≪ミキサー≫』と同じく種の魔術全体に非常に効果的な技。
「『仙桃流―鋭敏』、、、この技が完成した以上周囲で動くものは全て斬り裂く。出来れば女子は殺したくない・・・・降伏しろ。この技の範囲内で動けるのは私だけだ。」
「・・・・・・・・・・・・」
サクラのような雲の強度も、自由な発想力も、恵まれた魔力量も
ティアラのような器用さも、才能も、召喚術という彼女だけの本質能力も
私にはない。
・・・・・・だからといって
私が諦めたかのように見えたのだろうか?
勝ちが決まったとでもいうかのように優しく、、、そして生理的に怖気が立つ笑顔で少しずつにじり寄ってくる。
「鬼であれば必ず斬るが、お主は美しい。情が湧いたから気迷いしただけであろう?我が都までともに来い・・・それがお前にとっても幸せになる唯一の道だ」
「・・・・・・・・気づきませんか?」
「・・・・・・何をだ?」
私の視線の先はモモタオウを見ていなかった。
それに気づいたモモタオウは私の視線の先を追う。
私の視線の先は、木々の一つの葉だった。
「あれが何だと言う?ちなみに忠告しておくが視覚外でも動けば斬るぞ?」
「分からない、、、、それがあなたの敗因です。」
「・・・・・・・・・・私についてくる気がないのなら・・・・・正義の名の元に斬るのみ」
残念な人。
ヒントは幾らでもあるというのに。
気圧が急激に下がることによる妙な息苦しさやだるさに気づかない?
空気に混ざるスンとしたような臭いに気づかない?
僅かな変化だからと見逃した?
それとも視えなかった?見逃してしまった?
雲の動きは見えても、、、、葉の表面を奔った静電気は見逃した?
そもそもなぜ考えなかったのだろうか?
技を完成させているのはあなただけではないと。
「―――――ッ!?」
何か大きなエネルギーが動いたのを感知したのだろう。
身体がその方向を向き、刀を抜く。
・・・・その姿勢のまま硬まってしまった。
目から力は抜け
口も動かず
表情は走った痛みを顕す苦悶の表情。
目視もつかぬ速さで走ったエネルギーは死を身体が理解する前に突き抜ける。
そして後に残るのは綺麗な死体一つ。
「・・・・・・・・・・・・」
曇の魔術の終着点。
私の『戦う魔術』の終着点。
つい最近ようやく辿り着いた。
サクラにもティアラにも負けない唯一の点。
『曇の魔術への理解』を極めた先にあるもの。
雷の勇者を殺し切るにはまだまだ威力も足りないし、形成するのにも時間が掛かり過ぎている。
けれども、、、、この術なら届くと確信が持てていた。
後は、、、、、、、
「一発撃つたびにこうなるのを・・・・・・・・なんとかできればなあ」
憎き敵を討つために、、、敵の技を自ら使う。
例え真正面からでなくとも、例えどれだけ卑怯と蔑まれようとも必ずこの報復を果たす。
同じ痛みを必ずいつか味あわせると、、、あの時誓った通りに。
その覚悟を持つが故、、、彼女は雷を放てる。
その真意故に雲の魔術ではなく、雷を含んだ『曇の魔術』と言い表す。
しかし同時に
彼女はその術を放つたびに脳裏に鮮明によみがえるトラウマに身体をガクガクと震わせる。
最初のころよりマシになったとはいえ、未だに一撃撃つたびに動けなくなる。
心が揺れ精神が安定せず全ての魔術が使えなくなり、神経一本一本まで恐怖が伝わり指先一本満足に動かせない。
「ああああああああああ・・・・・・」
頭を抱え震える彼女の姿を見て、誰が勝者と見るだろう。
硬直し仁王立ちした死体の眼には涙を流し震える彼女の姿が映っていた。
暫くしてその眼も死により濁っていき、、、何も映さなくなった。
翌日、見晴らしの良い場所に五つの墓が建てられていた。
潮の匂いを感じ、日差しを感じ取れる場所に。
そこで俺はナチュラルさんと手を合わせ黙祷していた
「・・・・・・・・アンタらは優しいな」
「弔いぐらいはしてやろうがっで、、、あんた゛らが全部やってぐれたし」
「・・・・・・・・ただ怒りに任せて殺しただけだ」
冷静になればすべての報復を鬼人に委ねなければならなかった。
なのに俺とアリアは自分の怒りを優先し、、、殺した。
それを込めての自嘲だった。
けどもナチュラルさんは大きな手を俺の背中にそっと添えるだけだった。
「トランスのことはしがたねえ・・・だ」
「・・・・・・・・」
理性が俺に事実を告げる。
既に間に合わなかったことだった。
他の子供たちが殺されるのは防げた。
報復は出来た。
感情が告げる。
もっと上手くできただろう。
主人公ならうまく出来たはずだろうと。
そして両方が告げる。
我儘を通すなら、覚悟が必要だ。
それは分かってた。
けども分かってなかった。
バシン!
「・・・・・・・・・・うしっ、切り替えよう!」
頬をバシンと強く叩いた。
主人公らしくねえ・・・・・俺がここでくよくよ悔やんだところで何になる。
一番悲しい人達よりも俺が悔やむ方が失礼だ。
「うっしゃああああ!取りあえず賠償金探しにあいつらの船漁るか!行こうぜナチュラルさん!」
「・・・・・・さぐらさん」
「・・・ん?」
「いっでながったことがある」
ナチュラルさんは顔を伏せ、悔いるように立ち尽くしていた。
「どうした?」
「わがいぢぞく、、、昔から鬼と迫害されてきた、、、そしてこごまでやっできた」
「・・・・迫害か」
「けれども、、、それをいまのこどもたちしらない」
だからあんなに不用心だったと・・・・・
遠く離れて住んでいる無害な鬼人達をここまで追ってくるあいつらもあいつらだが、少しは警戒心を与えても良かったと思う。
そのことを訪ねてみるとナチュラルさんはこう答えた。
「警戒させるには、、、理由を教えなきゃいけないだ。自分たちが醜くいから、、、迫害されると」
「・・・・・・」
「自分たちが他とは違う、、、迫害される生き物として生まれてき゛たなんて知って欲しくなか゛った」
「この世界は、、、、、本当に惨酷だな」
あんなに無邪気な子供たちが外見一つで迫害される・・・元の世界でもそりゃああるけど、、、、それでも、、、、殺されるなんて。
惨酷すぎるだろ・・・・・・彼らの優しさが否定されるなんて。
「でも、さぐらさんは心の底から子供達にあわせでえと思っただ」
「・・・・・へ?」
「さぐらさん、俺のがお見ても普通に接してくれただ。」
「・・・・・・・・そんなの当たり前だろ」
「当たり前じゃないだ」
ナチュラルさんはそう言って一筋だけ涙を流した。
感極まってという状態になっていた。
「嬉しかっただ・・・この島まで逃がしてくれた優しい人達を思い出しただ。そして教えたくなっただ子供たちに・・・こんなに優しい人たちがいるんだと」
「・・・・・・・・・逃がしてくれた?」
「んだ、、、名前も告げずにただこの島へ飛ばしてくれたエルフィリアの人がいただ。」
その人のことは忘れないとナチュラルさんはうんうんと頷いた。
「・・・・・・・・・どうやってこの島まで?」
「魔道具だ」
「それって・・・・・まだある?」
「いんやもう壊れちまってるだ。」
「そっか・・・・・・」
そう簡単には上手くいかねえよな。
溜め息をつくしかなかった。
墓に行く勇気がないとアリアは船の探索に行っていた。
そっちも血が船上にこびりついていたはずだが、彼女の魔術によって綺麗になっていた。
ナチュラルさんは用事があるからと先に洞窟村へと帰っていた。
「よっと」
「・・・・サクラ」
『動く曇道≪オート・ステップ≫』から船上へと飛び降りる。
じっと船の中を見ていたアリアが振り返った。
洞窟村で再び落ち合った時はお互いの顔色の悪さに、もしかして負けたのかと聞き合ったほどだったがアリアの顔色は既にいつも通りだった。
俺と同じで彼女自身で切り替えが済んだのだろう。
「何かあった?」
「見覚えのない魔道具がエンジンとして積んでありました。」
「見覚えのない魔道具?」
「ええ、、、どこの国の物かも分からない代物が」
「・・・・・・・・これが?」
これのお蔭でまるで転移したかのように移動したのか。
たしかに王国の物とも英雄連邦の木製魔道具とも違う。
しかし俺はこの魔道具の雰囲気を見たことがあった。
「こりゃ魔国のだな・・・・・うん」
「魔国?」
「前に雪山登山の時に魔国から魔道具を援助してもらったって話しただろ?」
「ええ、、、、」
「流石にこれは見たことないけど、もらった奴と全体的な雰囲気が似てる」
硬質的で機能重視・・・・けども
「ただ、、、、『常識外』にも雰囲気が似てる気がする」
「『常識外』って行方不明の六代目ミルの?」
「うん。けどもこっちは完璧にただの直感、、、、なんとなくそう感じるだけだけど」
ミルやトツカならもっと詳しいことを把握できるだろうが今の俺ではどうもわからない。
そして、、、、、もう一つ分かったことが。
「ちくしょう、、、、折角大陸に戻る方法が見つかったのに」
「使い方が分からなきゃどうしようもないですからね・・・・」
「勢いに任せて殺すんじゃなかった・・・・・」
殺しは確かに一つの方法だが、それが正しい選択とは限らない。
日本の名将黒田官兵衛が命には使い道があると説いたように、殺さないからこそ取れる選択肢があるのだ。
今回だって全員殺さずとも逃がすように誘導すれば、この船で逃げただろう。
後はそれの後を追いかけるだけの話だった。
「「はあ、、、、、、」」
「にーやん!ねーやん!」
「「?」」
外から声がかかったので船から顔を出す。
ナチュラルさんの子供の一人だった。
怖いことがあったというのに、こうしてその船までやって来るとはあっぱれとしか言いようがないが・・・
「どうした!」
「お父さんたちが呼んで来いって!」
「はあ?さっきまで一緒に行動してたんだぞ?」
「取り敢えず来てくれって!」
意味が分からん・・・・
「どうする?」
「ここにいても仕方ありませんし行きましょう」
「まあ、、、そうか」
金、銀、珊瑚。
洞窟村に戻って、鬼の子に手を引かれ広場まで出るとそれらが広場を埋め尽くさん勢いで並べられていた。
そして満足そうに笑う鬼人達。
「これ、、、、何?」
「子供達を護ってくれ゛た礼だ。好きなのもってけい」
「「「「「「「「「「「もってけい」」」」」」」」」
「もってけいって・・・・・これ一つ一つが相当ヤバい価格だぞ」
「・・・・・ですね」
アリアと俺はそれぞれ宝を持ってしげしげと眺める。
王宮にずっといたせいで高いか安いかの大まかな見分けが出来るようになったがどう考えても高いに分類される宝石ばかりだった。
どうやら迫害の歴史の中では国と争いを起こしたこともあり、その中でこれらの宝物を得たそうだ。
今となっては自分たちには何の価値もないのだが、先祖から受け継いだものだから処分に困っていたと。
「この島では価値がないでな・・・もらってぐれ」
「もらってぐれっていわれても俺達は島から出れないし、もらってもどうこう・・・」
「サクラ、、、、これ」
「ん?」
アリアが差し出してきたのは、鞘に収まった一振りの長剣だった。
・・・・・・・・・・んん?
「これって・・・・・六代目ミルの七鞘・七剣シリーズだよな?」
「銘が彫られてます、、、三番鞘『鬼清祝』三番剣『鬼濁呪』」
「・・・・おどろおどろしいな、おい」
アリアが放って来た剣を抜き放つ。
元々剣と鞘は二つ揃って一セット。
ゼノンがきちんと六番鞘と六番剣を持っていたように本来は両方揃って初めて効果を喫する。
まるで血が濁ったような色をした刀身には何か呪いでも掛けられているようだ、、、そして鞘が普段は抑えているかのような・・・・・剣を鞘に納めてため息をついた。
「この剣は鬼以外が使うと駄目って言ってなかった?」
「・・・・・・あ」
そういえばという顔でナチュラルさんはハッとした顔をした。
・・・・・・・道理で。
気持ち悪くなってきた。
剣を納めたのに頭の中がぐるぐるするし。
「どうかしました?」
「これ、、、呪いが掛けられた魔剣だ」
「魔剣!?」
他の魔力を通しにくい暴走魔力のお蔭か他に理由があるかは分からんが、俺は何とか耐えられた。
しかしアリアとかが抜いたら一瞬で剣にのっとられていただろう。
血を見たい、血を啜りたい・・・・鬼以外全てを殺せと訴えかける声がずっと鳴り響く。
体の中のもの全てがその欲求となって満たされそうだった。
鞘にはかなり強めの呪いに対しての浄化作用があるのだろう。
鞘を握りつつ、身体から呪いを抜いていく。
「ミルはやっぱ頭オカシイな・・・・鬼人以外はまともに使えない剣を作るだなんて」
「欲しかったら、持ってっていいだよ。剣なんざ使うあて゛ねえし」
「・・・・・鬼人にすら価値を見いだされてねえし」
「鬼人だけに使って欲しかったんじゃないですか?・・・サクラに頭オカシイなんて言われたらいくらなんでも六代目ミルが可哀想です」
「おい、コラ・・・・・・・ん?」
鬼人しか使えない、、、剣?
「ナチュラルさん、、、もしかしてこの剣六代目ミル本人からもらったのか!?」
「んだ、、、この島へと跳ぶ道具と一緒にもらっだ。」
「「・・・・・・・・・」」
ついでにと見せてもらったその時の道具は細部の形状こそ違えど、確かに船の魔道具と同じ物だった。
鬼人達の住むところ。
そこは人が住めないところ。
鬼が住み、人はそこに住まない。
誰もが分かっていること、誰もが知っていること。
そんな地に訪れた人間二人。
黒の少年と白銀の少女。
鬼人達を狩ろうと迫る賊を退け、鬼人達の未来を救った。
お礼に鬼人達は彼らに宝を渡し、彼らを友と呼んだ。
鬼人達の住むところ。
そこは人間の友を持つ優しい鬼人達が住むところ。
笑顔が溢れ、宴の声が響く明るい地。
今も彼らは遠くに旅立った黒の少年と白銀の少女に感謝を捧げる。
「長いクエストになりましたね」
「ああ、、、、お蔭でクエスト初失敗だ。」
「うっ・・・・・・」
船には羅針盤も何もなく、注がれた魔力によって動く仕組みになっていた。
しかも自動で望む方向へ舵を取ってくれているらしい。
魔力を籠めた瞬間にいきなり進み始めるものだから、凄く驚いた。
しかも魔力をバケモノかと思うほど吸い上げるや否や、『動く曇道≪オート・ステップ≫』顔負けの速度で走り出すものだからどうなるのかと二人して神に祈ったものだった。
まあそんな船のお蔭でどっちにあるかも分からなかった大陸も目視できる場所にまで戻って来れた。
文句は言うまい・・・・・・
そんなこんなで早一週間。
エンジンの不調かは知らないが速度は落ち着いたものになり、ようやく見慣れた街が見えてきたことからも心にゆとりが出来ていた。
雲のロッキングチェアを形成し、二人でのんびりと空を見上げながら話してた。
「ティアラに怒られるでしょうね」
「んまあ、、、、これを渡せば一発で機嫌が直るだろうよ」
「・・・・・・そうだといいですけど」
「どうした?」
「あの子は罰を与えてからじゃないと話を聞いてくれません・・・」
「げえっ・・・・」
普段から隙あらば殺されそうなのに何をされるのか・・・・帰りたくなくなってきた。
俺は自信満々に掲げた宝石をあしらったティアラ用のネックレスを元の位置に戻した。
「それにしても、、、今となっては少し惜しくもありますね」
「まあ、、、主人公的に宝を多くをもらうよりも思い出をもらうべきってな」
「わけわかんないです」
アリアがそう言って笑った。
結局鬼人達から貰ったのは三番剣と三番鞘とティアラのご機嫌取り用の宝。
そして
「アリア、、、、アリアは自分用の持ってこうとしなかったから俺が持って来といたぜ?」
「え?」
甘いもの以外にはとことん無頓着な彼女は、最初から宝を持っていかないことを選択していた。
それも彼女の良さだと思ったが、せっかくの機会だし彼女にプレゼントを贈ろうと考えていた。
アリアが何事と言わんばかりに跳ね起きる。
「ようやく心にゆとり出来たし・・・・プレゼントだ、アリア。」
「・・・・・・・イヤリング」
銀髪の彼女に似合うように選んだ、白色貴重のイヤリング。
アリアに良く似合うだろかとしっかり考え抜いて選んだ品物だ。
彼女は俺が手渡したそれを嬉しさと困惑を混ぜ込んで結局それをしかめつら顔で眺めた。
まあ、、、、既に片耳だけイヤリング着けてるしな。
「・・・・・・・・・・何でこれを」
「別に今はもらってくれるだけでいい」
「え?」
かつてサマンサさんから彼女の片耳だけつけたイヤリングは雷の勇者に殺された妹と半分に分けたイヤリングだって聞いた。
だから今のアリアには少し浮いてしまっている子供っぽいイヤリングは彼女自身の誓いであるとも。
「前に話したよな?雷の勇者を倒した先の話、、、、俺とアリアの先の話。」
「ええ、、、、それとこれが何の関係があるんです?」
たく、、、、魔術以外には勘が効かない師匠だ。
全部言わせる気?
まあ、、、、いいけど。
「雷の勇者を倒しても、、、鬼ヶ島であったことみたいなのがこの世界には溢れてる。」
「そうですね・・・・」
「でも、、、、、俺は全部終わったらそんな世界を変えたい。」
「・・・・え?」
「今はまだ無理だと思うけど、、、俺がいつかアリアが『優しい魔術』を使える世界にしてみせる」
戦う為に生み出された魔術で優しい魔術とか
そんな夢物語の世界をどうやって作るのかとか
現実味はあまりにも薄い。
でも優しい魔術に満ちた優しい世界を作りたいと思ってしまった。
そんな世界でアリアの『優しい魔術』を見れたらなと思ってしまった。
だから
「その時はアリアに、、、、それをつけて欲しい」
アリアはまさに呆然といった表情で、手渡されたイヤリングを改めて眺めた。
そしてだんだんその表情は・・・・・しかめっ面になった。
「何でシノンには指輪で私はイヤリングなんですか!」
「へぶっ!?」
鼻っ柱ぶん殴られた・・・・・・
てか、微妙な顔してたのそのせいでしたか!?
アリアはふくれっ面でぶちぶちと文句を言いだす。
「たく、、、しかもそこまで言われたら今すぐつけられないし・・・・こんなに面倒くさいプレゼントを貰ったのは初めてです。もう!」
「・・・・・・要らないなら返してもらってもいいんだぞ?」
「いいえ、一応貰ってあげます!」
「へいへい・・・・・・・」
じゃあ照れ隠しに殴られたってことにしておくよ・・・・
まさかプレゼントして殴られる日が来るとは。
納得いかないが基本的にアリアの怒りは大人しくしていた方が落ち着くので口答えは止めておこう。
てか、意外と気にしてたんだな『心合わせて』のこと。
「サクラ」
「ん?」
そろそろ魔道具エンジンに魔力込め直しに行こうかと考えていたら、アリアが満面の笑みでイヤリングを掲げていた。
「早くこのイヤリングをつけれる世界にしてくださいね?」
「・・・・・・・おう!」
アリアが怒ってるときはアリアの機嫌を直すことばかり考えてる気がする。
理由は簡単。
怒ってるアリアより笑ってるアリアの方が可愛い。
次話は・・・・早めに投稿出来るように頑張ります。




