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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第六部:この種の名は咲いて花になるまで分からない<雷の勇者編>
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第1章君が隣にいることは幸せと呼べることpart2

「さて、、、どれにしようか」


雷の勇者捜索に模擬戦ばかりの毎日だが、滞在費稼ぎの為に上級冒険者クエストを受けることがある。

昨日みたく模擬戦なのに魔力を使い過ぎてティアラが体調不良だったりするとこういう日になる。

別に俺とアリアだけでも作業できなくもないのだが、いつもと違うことをたまに入れた方が効率は逆に良くなったりするので一石二鳥だ。

今日はまさにそんな日だったりする。


口うるさい師匠の監視の目も、どさくさに紛れて殺そうとして来る妹弟子もいないソロ!

しかも今の俺のレベルなら鼻歌交じりでこなせる。

流石に人が集まる場所にあるギルド、規模は各国の中心都市にも引けを取らない。

さてさて、、、今日は30件程受けてこのギルドの金庫を寂しくしてやろうか♪


「これだけでいいでしょう」

「あっ!」


・・・と思ったらいつの間にか後ろにいたアリアが俺の手をぺちっとはたく。

せっかくだから今日一日丸々クエストでつぶしてしまおうとしてたのに隣のアリアに先に選ばれてしまった。

有無を言わさぬ勢いで彼女はさっさと受付へと持って行き、受領してしまう。

今更思い出したが彼女も上級冒険者だったな、そういや・・・・てか。


「クエスト一つだけって正気か、アリア!?」

「正気じゃないのはあなたです」

「一回でまとめて持ってかないと受付してもらえないんだぞ、勿体ない!」

「金を稼ぐのが目的なんだから、さっさと終わらせましょう?必要以上の数を受ける必要ありません」

「せっかくの気晴らしなのにぃ・・・イだだっ!」

「賢い普通の冒険者は依頼を複数受けることなんてないのに何であなたは・・・行きますよ」


アリアは俺の耳を引っ張り始める。

そうだった、、、一人にすると帰って来ないからと今日はアリアの監視付きだったッ・・・

受付のお嬢さんもアリアを尊敬した目で敬礼している。


「本当にありがとうございます!これで我がギルドの金庫は守られました!」

「・・・・・・・明日も来るからオボエテロヨ」

「ひいっ!?」

「ほらほら、、、さっさと行きますよ。ちなみに明日は一日中捜索です」

「ほっ」

「でもティアラの体調次第だろ?」

「ひいっ!?」


受付嬢の反応はどこの国でも変わらない。

でも上級冒険者になってからは少し受付嬢の態度も変わってきた気がする。

今だって俺が怖がるの期待してやってくれてるしな。


「あ、そういえばサクラさん!」

「ん?」

「良かったらでいいんですけど前にお土産で持ってきてくれた揚げ菓子、また持ってきてもらえませんか?凄い美味しかったって受付の皆も喜んでたので!」

「おう、クエスト帰りに持ってくるわ」

「やった、仕事の速いサクラさんなら今日中に持ってきてくれますよね!皆に伝えておきます!」

「おう、じゃあ多めに買っておく」


寧ろ慕われているのかもしれない。

上級冒険者という肩書のお蔭かは分からないが、意外と信頼されるようになってきてる。

しかも仕事を介さずとも街の中で声をかけてもらえることだってすらある。

受付嬢は基本可愛い女の子が多いので普通に接してもらえるだけでかなり嬉しい。


「・・・・・行きますよ」

「何で不機嫌になってるのアリアさん?・・・イだダダっ!?」


耳が大きくなるくらいぐいぐい引っ張られてたのをようやく解放される。

アリアの指は柔らかく心地よいくらいなのに、折檻になると途端に恐怖を与える道具になる。

恐ろしい・・・・・・それはともかくギルドのエントランスのベンチに二人で座り、必要そうなものがあるかどうか確認する。


「で、どんな依頼を受けたんだ?」

「これですよ」

「んん?」


-クエスト-紅海の海水採集

【補足:最近危険な魔力嵐が頻繁に起きているので原因かもしれない海水の採集を行って欲しい。紅海での海水採集中に魔力嵐に巻きこまれないよう注意すること。】

適正レベル:上級 報酬:連合金貨150枚 期限:一週間以内


「魔力嵐ねえ・・・」

「どうかしましたか?」

「いや、、、なんも」


魔国の中でも指導者的な立場のアンナとの会話を思い出す。

暴走魔力適合者の出現、魔力嵐、雪崩の狩人といった特殊な魔物の出現と今まででは考えられなかった現象が起こってるらしい。

そして私はその原因(・・)を知っていると言っていたことを。

今回のこれも同じ原因なのかもな・・・・だとしたら調べて何か出てくるか気になりもする。


「この紅海って聞いたことないけど、どの辺?」

「この大陸から少し離れた所に紅く染まった海域があるんです。赤潮とかみたいな濁った赤じゃなく本当に澄んだ宝石のような紅い海だそうです。」

「へえ、、、観光になりそうだな」

「とはいっても魔力の吹き溜まってそう見えるだけで、手ごわい水棲魔物の巣窟ですよ?」

「だから楽そうな依頼なのに上級クエストなのか・・・・」


まあ、空を移動できる俺らならそんなには困らないか。

アリアも同じ結論だったようで当たり前のことを言うように口を開く。


「まあ、私とサクラなら余裕でしょ」

「だな、空き瓶買っとくぐらいでさっさと済ませるか」


実はそんなアリアの様子は凄く頼もしいと思ったりする。





「そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。」

「ひぐっ、、、ひぐっ、、、、」


アリアと俺はどこか(・・・)()わから(・・・)ない(・・)海岸(・・)で三角座りをしていた。

もっと簡単に言うと途方に暮れていた。

アリアが超泣きじゃくっている。

俺は落ち着けと頭をぽふぽふしながら、何が起こったかを思い返す。

そうすると不思議なことに少しだけ冷静になれるのだ。

・・・・密度の濃い今日一日を思い返すだけで。


『動く曇道≪オート・ステップ≫』で空を駆けて現地まで。

そして紅海での海水採集自体までは上手くいったのだが、帰り道に紅海蛇の群れに襲われた。

別にそれだけなら問題はなかったのだが、戦闘の最中に件の魔力嵐に巻き込まれた。

自然魔力がかき混ぜられ竜巻のように急にとぐろを巻き始め、俺の雲もアリアの雲もろくに維持できない状態に。

それだけならまだしも、海まで大荒れになってしまった。

アリアと俺が二重に防御膜を張り、大シケの海を流されること丸一日。


「はあ・・・・・」


かなりの広さを探れるはずの『曇感知≪サーチ≫』だが、『劣化・曇脈展開≪マイナス・アクセス≫』有でも見知った(・・・・)土地(・・)を見つけられない。

・・・・・・・・というか大陸を見つけられない。


丸一日遠くへ流されたぐらいと甘く見てはいられない。

曇の術師二人が流されるしか出来なかった規模の大嵐だった。

もう元の大陸より別の大陸探した方が早く見つかるんじゃないかってぐらい激しく揺さぶられたし。


「・・・アリアと二人だけで行動すると今まで碌なことがなかったの忘れてたよ」

「言わないでください、私だって忘れてたんですから!」


ティアラが二人きりにならないように妨害してきたこともイチャイチャが無くなる代わりにこんなメリットがあったのなと思うと少しは感謝の気持ちが湧いてくる。

まあ、、、、少しは。


「おそらくここは南の、、、無人島ではないみたいだけど」

「無人、、、ではないですね」


唯一の救いと言っては何だがここは無人島ではない。

さっき現地人にも出会ったばかりだ。

だがその現地人はいろいろと問題があった。

この島から出たことなど一度もなく、当然俺達が元いた大陸についても知らない。

そしてアリアが先程まで泣きじゃくっていた一番の原因でもあった。

それは、、、、


「そろそろおち゛つ゛いたが?」

「「うわああああああっ!????」」


アリアが更に涙目に・・・・俺も涙目に。

それもそうだ、、、暗闇にいきなり鬼の顔が浮かび上がるんだから。

現代日本でB級映画やリングで鍛えられてきた俺でもビビるエグい怖さだ・・・


「だから急に顔を近づけるなって、こわいんだからさぁ!アリアいつまでたっても泣き止まないじゃん!」

「そげんごどいうでも、もうかれこれ半時じゃぜ・・・」


俺にそういって強面(異世界でも屈指)の彼は頬をぽりぽりと掻いた。

そしてアリア(豆腐メンタル)はhぎゃーんと俺に泣きついてくる・・・がっしりしがみついてくるものだから彼女のむにゅむにゅしたものが俺の身体に押し当てられている。

むむむ、、、、ちょっとグッジョブ!


「てか、、、半時もたったか・・・アリア失礼だし、そろそろな?」

「ひっぐ、、、ひっぐ、、、」

「いいでえ、、、小動物にはなつかれねえがんな・・・」


そういって目の前の鬼人は頬を掻いた。

この世界的に言うならオーガ・・・か?

服を身に纏ってるし、人語を話し、瞳には知性が垣間見える。


そう考えると顔が物騒なだけのとっつあんな気がしてくる。

それに少々人間と姿かたちが違うからとか言いだしてたらエルフィリアや龍人達とかどうなんだよて感じになるしな。

まあ、、、、ある程度この世界に慣れ、、、しかも元が異世界人である俺だからこその感性かもしれんが。

小動物(アリア)がまた動揺しているので彼女の眼線を自分の胸板で隠すようにし、俺の隣に座った二メートル半もの大男と会話をすることにした。


「そげんでもお前さんは俺のか゛おが怖くねえがさ?」

「いや怖いよ、普通に?」

「そげんでもそこのお嬢ちゃんみたいに泣きじゃくらねし。外からぎた奴は大抵俺の顔見て゛悲鳴さ上げて逃げっぞ?」

「いや、、、殺気もない相手に一々ビクついてたらこんなの師匠とか呼べねえって」

「・・・・・・おめえさも苦労して゛んだな」

「ひぐっ、、、聞こえてますよ!」


俺の頬を文句代わりにぐいぐい引っ張る。

それでも顔は俺の胸に伏せたまま・・・・それだけの気概があってどうしてお前は豆腐メンタルなんだ。

鬼人はしょうがないとアリアを見てため息つく。


「これじゃあ村さ案内できん゛な・・・」

「ええ、、、潮でカピカピだし風呂入りたい・・・」

「私だって風呂には入りたいけど、、、でもぉ!」


遂には敬語まで飛んでいった、、、おいお前のアイデンティティが無くなってるぞ残念敬語娘。

まあ、、、一人だけでもかなり怖いのにさらに増えたら、、、なあ。

・・・・・・そういや


「あんたの名前は?」

「・・・名前?」


いつまでも鬼じゃあ話にならない。

きょとんとした顔をするので、もう一度聞く。


「俺はサクラ=レイディウス。あんたの名前は?」

「いや、、、村の外のひと゛に名乗るのは初めてでさ・・・とまどっちまっで」

「そっか、小動物に名乗るのは初めてか!」

「苛めんといて゛くれな゛・・・さっきのは言葉の綾だ・・・」

「冗談だ、名前は?」

「ナチュラル・T・ボーンだ」

「「無駄に名前が立派だあああああああ!」」

「そ、そなに驚かれるとでれるでよぉ・・・・」


ただでさえ怖くて赤い顔をさらに赤くしてナチュラル・T・ボーンは照れるのだった。





鬼人達の住むところ。

そこは人が住めないところ。

鬼が住み、人はそこに住まない。

誰もが分かっていること、誰もが知っていること。





鬼人達が巨を構えるのは大きな洞窟村だった。

そこに各人好きな形の家を作っていた。

まあ、、、好きに作っているとはいえ会合の為に一際大きな広場を設置しておくのはどこも一緒だ。

ナチュラル・T・ボーンさんに案内されて訪れたのは鬼人達の村。

食われるかと思ったが普通に飯食わせてもらうことになった。


「何もないとこだが、食いい?」

「「「「「「「「「「食いい?」」」」」」」」」」

「いただきます」


どうやら料理文化はそれほど進んでいないらしい。

魚は丸焼き、虫の丸焼き、、、、パン文化はあるらしいがぱさぱさで硬い。

でも、、、あったけえ味がする。

贅沢ばかりをしている最近だが、熱が想いが籠った料理は箸が進む。


「おかわり」

「「「「「「「「おお!良いぐいっぷり!!」」」」」」」」

「何であなたは既に溶け込んでるんですかあああっ!?」


やっとこさ鬼人の顔を見慣れたとはいえ、未だに涙目気味のアリアが俺に癇癪をぶつけて来る。

いや、出された物食わないのは主人公の態度じゃあないし・・・実際食えるとなれば・・・腹減ってるし。

・・・・普通食べるよね?


「食ってみ、この魚。虫の方が美味いけどこっちもなかなか」

「ひいっ!?」

「お、虫の味が分かるか゛!」

「ああ、ナチュラルさん!特にこれが気に入った!」

「これはうちのが昨日〆たばっがでな!」

「おお、だからか!」


ナチュラルさんがバカッと大きなギザギザの歯を光らせて笑う。

アリアがひいっと悲鳴を上げる。

なんか未だにそんな様子の彼女が可笑しくて皆でまた笑ってしまう。


「な、何で皆笑ってるんですか!」


アリアが笑ってる鬼人の一人を叩こうとして、、、思いとどまって俺を叩く。

お返しにと彼女の頭をばっさばさしていると鬼人の子供が背中にのしかかって来た。

そいつの相手をしていたら、また違う鬼人の子がしがみついてくる。

流石に子供といえど俺と同じくらいの背丈があるので黒雲で相手をしてやったら皆が寄ってくる。

大サービスとジェットコースター・ハイテンションサクラに乗せてやったら気づけば皆がアリアの方に懐いていた・・・・・・・・






がやがやと騒ぐ声にハッとする。

気付けば鬼人の子供たちと地面に寝転がされていた。

・・・どうやらいつの間にか寝ていたようだ。


俺の周りを固めるかのように鬼人の子供たちが転がっている。

最後のほうは大泣きで俺を怖がってたくせに、俺の懐でよく眠れるものだ。

俺が状態を起こしたのに気付いたのか、皆とどぶろくっぽい濁った酒を飲み交わしていたナチュラルさんがのっそりのっそりと近づいてきた。


「目ぇ覚めたが?」

「ああ、、、寝かせてくれてありがとう・・・アリアは?」

「酒盛りが始まったこ゛ろから外に出てった」

「ふあああっ、、、じゃあ様子見てくる」

「外は夜目が効かないとあぶないど?」

「だいじょぶ、だいじょぶ。俺には感知魔術があるから」

「なら気゛を付けるだ」

「ん」


外に出ると外は薄明色に近かった。

暗いが星明りと日の光と月の光がいい具合に交じり始めていた。

人々の騒ぐ熱気が籠った洞窟から出たせいかぶるるっと体が一瞬震える。


まだ日が昇るほどではないが早朝だからこその寒さだろう。

どうやら鬼人たちは俺が寝落ちしてから一晩中飲み明かしていたらしい。

よっぽど俺たちが遊びに来てうれしかったのだろう。


「・・・・・・・・・・・」


ティアラとか受付の娘とか心配してなきゃいいけど。

どっちにも今日中に帰るって伝えてしまったしな・・・・まあ俺とアリアは一応上級冒険者だし救助依頼を出されるほど危惧されてはいないだろうが。

てか、もし心配していたとしたら俺たちが帰るのも忘れて宴を楽しんでたと知ったらぶちギレそうだ。


「よし、考えるのやーめた!」


俗に言う現実逃避である。

この際バカンスを楽しむことにしよう。

とりあえずは、、、日の出でも見て黄昏るけど。


「『動く曇道≪オート・ステップ≫』」


歩くのも面倒なので空を駆け、この島で一番高い丘陵へ。

島全体を見渡せるくらいの高さはあったが、そこから見える景色は海、海、海。

当然のごとく他の島は見えなかった。


「サクラ」

「お、ここにいたのか」


雲で周囲を探っていなかったから、アリアがいたのに気付かなかった。

アリアはどうやらここで時間をつぶしていたらしい、、、当然その目的は


「アリアも日の出見に来たのか」

「ええ、、、眠れなかったしこのまま日の出でも見ようかなって」

「眠れなかったのか?」


ほわっと月の光が差し込みアリアの髪をきらめかせる。

片耳だけつけた子供っぽいイヤリングが夜通し起きてて気だるそうな彼女の頬に垂れた。

アリアが指をぴんと弾くと座布団代わりの雲が広がった。

・・・・ああ、話すから座れってか?

アリアと肩が少し触れるくらいの距離で座る。


「「・・・・・・・・・・・」」


何となく間を置く時間があった。

月の残光を浴び、星を眺め、陽を待った。

どれくらいそうしていただろうか。

それほど時間はたたなかったと思う。


「ずっと考えてることがあります。今まで考えもしなかったことを」

「何を?」

「雷の勇者を倒した後のことを・・・考えてます」


雷の勇者を、、、殺した後のこと?

俺はアリアとティアラと一緒に王国に戻ること考えてたけど、、、そういうことか?

アリアがどうしたいかによるかと思うが・・・


「そりゃあ、、、サマンサさんに報告だろ、まずは」

「ふふっ、もっと先の話です」

「先?」


先・・・・先か。

とりあえず嫁三人とエロエロチョメチョメしたいってのはあるけど、、、その先?

アリアに言われて気づいたけど俺も全くその先のことなんて考えてなかった。


「俺、そんなこと考えたことなかったわ・・・」

「あなたはいつだって行き当たりばっかりですから」

「ああ、、、そうかも・・・・ちなみにどうするつもりなんだ?」

「とりあえずサクラと一緒にいたいので王国でしばらくのんびりしようと思ってます。」

「っ!?」


何!?

急にアリアちゃんが素直になっちゃった!?

思わずごもってしまうとアリアがつんつんと笑いながら俺の脇腹をつついて来た。


「ねえどんな気持ち?いつもからかってる師匠にからかわれてどんな気持ち?」

「・・・・・・・少しドキドキした」

「そ、そうですか・・・」


お互いにダメージしかないから程々に、、、ね?

『心合わせて』からかなり怒りの鼓動が伝わってきてるし、、、ね?

・・・・てか、あいつこんな時間まで起きて何やってんだ?


「で、、、アリアは何がしたいんだ?」

「そう、それを考えてました。」

「・・・へ?」


アリアは手慣れた手つきで核を手の上に生み出し、一瞬で白雲に変える。

何を作るのやらと思っていたら飲み会中に鬼の子供達が遊べるようにと作った雲のトランポリンだった。

あの時形成したのと違う点は俺達の座る前に形成され、その大きさも小さな小人用の大きさであること。

ぽいんぽいんとトランポリンを押したり戻したりし始める。


「今まで『戦う魔術』ばかり考えていました、、、でも今日初めて、子供たちを喜ばせる為に戦うためじゃない魔術を作りました。」

「ああ、、、そういえばすげえ楽しそうだったな」


鬼の子供たちに負けず劣らずの満面の笑みで、、、イキイキと笑ってた。


「こんなに『優しい魔術』なんて考えたことなかった。でも今日思っちゃったんです・・・雷の勇者を倒した後は、、、雷の勇者への復讐の為に生み出したこの曇の魔術を戦いだけじゃなく何か別の方向で役立てていけたらなって」

「『優しい魔術』・・・・・・か。」


戦うためじゃなく、誰かを喜ばせる為の魔術・・・か。

この世界は少し残酷だから、『戦う魔術』だけを考えてた今までのアリアの方が正しい。

俺だって『優しい魔術』なんて考えたことなかった。

俺の魔術は自分の志を通す為に、圧倒的な力で以て目の前の障害をねじ伏せる魔術ばかりだったし。

だからか、、、、言葉に直ぐに出せない程にただただ感心してしまった。


「俺だってそんなこと考えたことなかった、、、けどもアリアには『優しい魔術』は良く似合うと思うぞ。」

「どうしてです?」

「俺がこんなに魔術が楽しいって思えたのはアリアが魔術を教えてくれたからだし。素質は十分あるはずだぜ」

「ありがとうございます。でも、私が雷の勇者を倒した後について考えるようになったのはサクラのお蔭なんですよ?」

「・・・・・え?」


アリアの笑みは、、、いつでも綺麗だ。


「今まで雷の勇者への憎しみで突き動かされ、、、戦うことだけを考えてました。勝てるかも分からないあの魑魅魍魎に一矢報いることばかり・・・考えてました。」

「うん・・・・」

「でもサクラとティアラが側にいてくれるおかげで、少しだけ雷の勇者を倒す未来が見え始めました。」

「おお、、、そりゃあどうも」

「そしてサクラが隣にいてくれるだけで、、、こんなにも落ち着く、、、心がぽかぽかする。」

「!?」


アリアがぽふっと俺の肩に頭をもたれかけてくる。

甘えた声で、柔らかい距離間で

彼女の芳香が香水も何もないそのままの芳香が鼻に残る。


「今まで雷の勇者への怨嗟だけで動く自分でいたのに、、、そうでありたかったのに、あなたがいるだけでこんな自分を許せてしまう」

「・・・・・・・・・・」

「こんな無人島に流されて、へたしたら雷の勇者を討てなくなるかもしれないのに、、、あなたが傍にいるだけで心がこんなにも暖かい。」

「俺も、、、アリアがいてくれるから少しも不安を感じてないよ」

「嬉しい、、、でも謝って下さい」

「え?」

「どうしてくれるんですか?あなたがいないと私は冷静でいられなくなるってことなんですよ?」


少し冗談を混ぜているんだろう。

でも、、、日頃の評価とは裏腹に、彼女は俺を高く評価してくれてることが伝わった。


そしてあの時みたいに俺をおいてく選択肢はもう彼女の中にはないと確信した。

そのことが嬉しくて心の中にぶわっと暖かいものが流れた。

ココノハ村に置いてかれたあの日から、雪山の奥行きでアリアが立ち去る後ろ姿を見たあの時から、止まってしまっていた何かがようやく溶けていく気がした。


「やべ、、、ちょっと泣く・・・」

「ええ!?大丈夫ですか!?」

「うん、、、ダイジョーブ」


ようやく、、、アリアと元通りに戻れた気がした。

一年かけて、、、ようやくあの時の二人に。



「ほ、ほらサクラ!日の出ですよ!」

「ぐずっ、、、ん」


雫が溜まった瞳からもちゃんと見えてるよ。

暖かいものが外からも中からも湧いてくる。

暗く染まってた世界が白に照らされていく。

二人でその光の御行を満遍なく受けた。


暫くして

ふと、アリアが目を凝らしたまま指をさした。


「あれ、、、あんなところに船なんてありましたか?」

「・・・・・・本当だ」


さっきまで島も流木すら見えなかったはずの海に船が一つ浮かんでいた。

それはじわじわとこの島に向け迫ってきていた。


「救助船か?」

「いえ、、、私たちと同じく遭難かも」

「「・・・・・・・・もしかしたら」」


この辺の海図を持ってるかも





船が下りるであろう地点に移動すると、鬼人の子供たちがキャイキャイ騒いでいた。


「あ、にーやんとねーやん!」


俺とほぼ同じ背丈の子供たちというのも変な気分だ。

しかも兄、姉扱い・・・・

どうやら大人共はつい先ほど寝落ちしてしまい、子供だけで魚でも釣って朝飯にしようとしていたらしい。

そのついでに船を見つけたと


「あれなんと!?」

「「船」」

「「「「「「「「ふね?」」」」」」」」」


この島から出たことがないからか・・・船を知らないか。

そもそも鬼人なら泳げば済むってのもあるだろうが。


「あの船に近づくなよ、どんな奴が乗ってるか分かんねえし」

「でも、リーダーが乗りこんじまっただ」

「はあ!?」

「面白そうだって」

「・・・・・私たちの友達だとでも思ったんですか?」

「「「「「「「「「うん!」」」」」」」」


ガキ大将みたいなやつがいたな、そういや・・・・

鬼人達が基本的に穏やかで歓迎的だから子供たちもそう育てられたか。

子供の幼稚さと無邪気さを加えた状態で

俺達もそのお蔭で楽しい思いをさせてもらえたし、、、、悪くはないけど。


「あ、顔出した」

「「「「「「「「「「「「「おーーーい!」」」」」」」」」」」」

「・・・・・・・・・・」


笑顔の鬼人の子供が船から顔を見せた。

ガキ大将はどうやら無事なようだ。

鬼の子供たちが陸に着こうとする船に駆け寄っていった。


「どうやら大丈夫なようですよ?」

「たく、、、、不用心な」


俺達も行くかと脚を進めた。


「てか、あの船どっから来たんだろうな」

「海に急に現れたようにも見えましたけど・・・」

「日が出るまでは見えなかったんじゃないか?」

「そうですかね・・・」


船が急に飛んだり消えたりなんぞ、魔国のあの小屋みたいなもんじゃないか。

ミルでさえ出来なかったそれをたかが一船で。


「きゃあああああああああああっ!」

「何が・・・!??」


切り裂くような悲鳴が上がった。


身体中のアンテナが張り詰められる。

そんな俺の視界の中でガキ大将の顔が船から落ちた・・・・・胴体がついていなかった。

は?・・・・・と事態を把握する前に血飛沫が上がる・・・四つ。


「逃げろおおおおおおおっ!」


条件反射で『内在型身体強化』を発動し、鬼の子供達に次刃が迫る前に割り込んだ。

刀、牙、嘴、爪。

殺意を持ったそれらを身で受ける。

・・・・・・・どれもこれも良く砥がれ、、、よく肉を切り裂く。


「い、いだいよおおおお・・・・」

「トランス・・・トランス」

「泣くな、喚くな、逃げろ!『曇の壁≪ウォール≫』!!」

「ちっ!」


鬼の子供達と俺達の間に黒雲の壁を張る。

突然の事に固まっていた子供たちがようやくバタバタと脚音をたてていった。

不気味な黒雲に触れるのを躊躇ったのか、賊は第三刃を浴びせようとした脚を止める。

・・・・・・・・・・ようやく進み過ぎた時の針が俺が認知できる速さに戻った。


「てめえら、何のつもりだ!」

「貴様こそ何のつもりだ!」

「はあ?」


怒鳴りつけたら逆に怒鳴り返された。

背丈は俺よりも少し低いが、服装は非常に華やかだった。

日本式の甲冑を所々に纏いながらもこだわりがあるのか、袖無しの陣羽織は海をあしらったかのように青い。

前髪は真ん中で分け、後頭部に髷・・・兜でなく鉢金を巻いた容姿はかなりの美青年。

俺が知っている物語の主人公のような姿だった。


「このモモタオウの前に立ち塞がるとは何事だ!」

「モモ、、、タロウじゃなく?」

「間違えるな、モモタオウだ!」

「・・・・・・・・ま、どっちでもいいけど」


桃太郎だが何だろうが・・・・許さん。

罪もない子供の首を刎ね、、、癒えない傷を与えたお前らは・・・許さん。


「モモタオサン、、、コノフタリ、、、カナリデキル」

「案ずるな!我が太刀の錆としてくれる!」

「ガルルルルルッ!」

「おお、松寿丸!お前も鬼の血を啜り血がたぎったか!」


片言で話す猿顔の人間。

そして狼と大鷹。

相手側の戦力は二人の人間と二匹の獣。

そしてこっちは・・・・・・ん?


「サクラは雑魚三匹を」

「おうう、、、いつの間に」


それなりの全速力で来たつもりだったが、アリアがいつの間にか後ろにいた。

冷たい響きの言葉を奏で、彼女は殺意をたぎらせる。

それなりに血が上っていた俺の頭が氷で冷えつく程に。


「覚悟は、、、、出来てますか?」

「人間でありながら鬼を庇うとは不届き千万!女子であろうと容赦せぬぞ!」


杖を構え、刀を構える。

・・・・アリアがここまで怒るのは久しぶりに見た。



「気をつけろ、、、普段とは勝手が違うぞ」

「大丈夫です」


・・・・・・・まあ、彼女なら大丈夫か。

俺の仕事に集中しよう。

確かお供は犬雉猿だったはずだが、、、俺の相手は狼、大鷹、片言の人間。


「モモタオサンコレカラ、オニゴロシノエイユウ、ナル。ジャマ、、、ユルサナイ」

「そうかい、片言君・・・・だけど残念なお知らせだ」

「クケエエエエエエエエエッ!」

「ガルルルルルッ!」

「・・・・・・・」

「俺を敵に回した時点で、、、桃太郎だろうが何だろうが悪役だ。必ず負ける。」

「ッ!!」


片言君の顔色が変わり、、、そして殺気が空気中に混じる。

俺も見たいものがあるし、、、、悪いけど速攻で終わらせてもらう。

次話も十九時。

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