表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第五部:かつて交わした約束は曖昧なままで心に残る<王国編>
116/183

閑話:トツカ・ドラガン外出する!後編

「そうけぇ、トツカさんいうんかぁ!ほら、男の子なんやしぃたんと食いや!」

「あ、、、ども」

「老巫女様ったら、、、トツカさん困ってますの!」

「ブリジットちゃん何言ってるだかあ!トツカさんこんなに細いんだから食わんきゃ駄目だで!」

「ぶっ!?げほっげほ・・・」

「うふふふ!変わらないわね老巫女様は!」


細いんだからということをよっぽど強調したかったのか、老巫女さんは俺の背中を大きな手で何度も叩く。

食事中だというのに咳き込んでしまった。

てか、、、どこが老巫女なんだ?


老巫女つったら、普通はしわがれて腰が九十度以上曲がったおばあちゃんだろう!?

寧ろ脂ぎってるじゃないか!寧ろ恥も外聞もなくて女性としては一番動ける時期じゃないか!

何かいろいろ台無しだ・・・・聞けば老巫女様と呼ばれるのはエルフの中で一番年寄りだからだとか。

一番のお年寄りがおばちゃんってエルフはどれだけ長生きなんだよ・・・・・・


「たんと食いやあ!ほら、マイペルちゃんも!」

「えぇ?私は仕事が・・・」

「仕事するならごはんしっかり喰うべさ!女は飯食って何ぼだけえ!」

「は、はい・・・・」


半ば強引に始められた晩餐。

白くもちもちほかほかとしてるのに、パラパラとした細かい物体。

塩っ気が強いのに何故か飲める茶色の汁物。

そして野菜を壺の中で醗酵させて作ったらしい保存食。

食器として提供されるのは長い二本の細長い棒

・・・・・・・火山支部に所属していたから基本的に旅ばかりの生活だったけど、見たこともない食事に食事方法だった。


「トツカさん、ハシが慣れないならスプーンとフォーク持ってこさせますの」

「いや、、、折角なので」

「そうやでえ、ハシ使えた方が男の価値は上がるんだぁ!」


・・・・てか俺にはハシよりも気になるものがあった。

緑色の謎の液体が器注がれていた。

飲み物だよな、、、、飲み物だよな?

とてもスープとは思えないが、何でカ○とおなじ緑色なんだよ・・・・

流石に正体がまるっきりわからないものを飲む気にはなれないのでブリジットさんに尋ねてみた。


「あの、、、これは?」

「そおれはギョクロだあ!口の中さっぱりするんやでぇ!」

「この村の特産のお茶ですの、慣れれば美味しいですの」

「・・・・・・いただきます。」


ブリジットさんが目の前で普通に飲んで見せてくれる。

ここまでして貰っては断れないと口に含むように飲む・・・・すっきりするな、確かに。

砂糖は入れてないだろうに、少し甘味もある。


「ギョクロっていう葉を刻んで湯で濾すんだ。」

「へえ、、、気に入りました。」

「茶葉を刻み干ししとくけえ、帰るときは持って帰んなぁ!」

「あ、ありがとうございます・・・・」


なんだこの良いお袋臭は。

うちの母さんですらこんなにいろいろ手を焼いてくれないぞ・・・?

あの人俺が旅に出るって言ったら、ああそうって言いやがっただけだったしな。

しかも旅に出るなら新しい家にはあなたの部屋要らないわよねとか言いだすし・・・

ああ、、、もういっそのこと王国に永住しようかな。

そんなことを涙ながらに考えつつも晩餐は進む。

老巫女が話を切り出したのは晩餐も終わりに近づき、干し果実をデザートとしてふるまわれる最中だった。


「そいえばなしてこんなとこまで来たさあ?あと十年は来ないかと思ってただに」

「『嵐』属性の素材を英雄連邦で採集しようと思って」

「『嵐』かえ、、、、確かに王国にはなかなか無いけんねえ・・・」

 

少し気になったので話を邪魔しない程度でマイペルさんに耳打ちぎみに聞いてみる。


「マイペルさん、マイペルさん」

「なんだ・・・・」

「十年ってエルフの中では短い方なんすか、やっぱ?」

「そうだな、、、、人間や龍人でいうところの数か月くらいの感覚かな」


長生きだとやっぱおおらかなのか・・・

マイペルさんは少し感心したような俺に一応言っておくが・・・と耳打ちしてくる。


「いくら時間におおらかとはいっても、限度は一応あるぞ?」

「限度?」

「時間が有限なものについては人間と同じように焦る」

「有限・・・・・・」

「はあ・・・・」

「なんでため息を?」

「気にするな」

「?」


どうやら地雷を踏んだらしい。

まあ、、、、放っておこう。

さすが老巫女様といったところか、一度倉庫に行った彼女は『嵐』属性の素材を持ってきてくれた。

どさりと並べられた素材、素材、素材・・・・・


「取り合えず倉庫にあるものはこんなもんやけど、、、どうけえ?」

「こんなにたくさん・・・・トツカさんどうですか?」

「ううん、、、、一応『鑑定』」


嵐属性がこんなにたくさんあるとは思ってはいなかったが、、、殆どが植物か木材か。

英雄連邦は木製魔道具を作るから基本的に集める素材もそういう系ばかりなのだろう・・・

マイペルさんが悩む俺達を見て、不思議そうに首を傾げる。


「いっそのこと木製武器にされては?エルフと木は相性がいいですし、なにより軽くて丈夫ですよ?」

「・・・それも考えてたんです。でもブリジットさんの今の武器を直してみて気付いたんですけど、硬鞭は重さを叩きつける武器だし、柔鞭も木で作るよりは鋼で作った方が色々と都合がいいんすよ」

「そうなのか・・・」


せめて『嵐』属性の魔物の爪か牙が欲しかったんだが・・・魔物の牙や爪は鋼と溶け合わせると非常にいい素材になる。

少し領域違いになるが『鑑定』がある俺ならそれほど難しくないし。

一応『嵐』属性の魔物の爪牙はありはするものの・・・・・・・鋼との相性があまりよくない。

こうなったら錬金術の領域になるが鋼と植物の相性を試していくか・・・・・ん?


「すいません、この小さなカケラ・・・・『大嵐蛇』の牙ですよね?」

「ああ、、、、それかえ。混じってしまったんか。」

「?」


まるでいれるつもりがなかったような言い草だった。

皆の視線が老巫女様に集まる。

彼女はうーんと悩むように頬を掻いた。


「どうしたんですの、老巫女様?」

「いやねえ、、、アレは・・・・色々とヤバいから」


マイペルさんがそう言えば・・・気づいたのか語り出す。


「『大嵐蛇』といえば昔、老巫女様と一か月近く戦ったといわれる上級魔物でしたっけ?」

「それだね・・・・」

「昔って、、、ちなみにいつごろですか?」

「聞いた話だと、、、百年以上前と・・・」

「・・・げ」

「まだ生きとるんだがねぇ・・・」

「「「生きてるんですか!??」」」


老巫女様は余程思い出したくないのか、頭を数度振る。


「あの日は一番調子が良いときに村に攻めてきてね・・・旦那と一緒に戦ったんだべ。旦那が死にかけるわいろいろ大変な戦いだったさぁ。しかも結局村から去らせることしか出来なくてねえ・・・その牙のカケラは唯一得られた戦利品さね。」

「ちなみに今なら老化してて倒せるとかは?」

「無理無理・・・たまに様子見に行ってるけど、今の奴は当時より成長してるし知恵もついてるさね。」


老巫女様は当時はよっぽど疲れたのか今でも疲れが取れないとため息をつく。

それを見て、じゃあ別の手段かな・・・・と素材の物色に戻ることにする。

ところが、、、ブリジットさんはその話を聞くとにこっと楽しそうに笑うのだった。

嫌な予感がした。




「シュルルルルル・・・・・」


舌を鳴らすその音がまるで滝壺の音のような轟音になっている。

成長したって限度があるだろう。

少し動くだけで周囲の木々をなぎ倒しながら、蒼色に輝く蛇肌を輝かせていた。

あの頑丈な木々たちが焼き菓子のようにパきぽき折れることから相当な質量であることが読み取れる。

そう、、、、『大嵐蛇』だ。


深夜に拉致されたと思ったらブリジットさんが犯人でした。

この人、本当に一度言いだしたら聞かないな!

後で老巫女様に怒られても知らないからね!?


今は早朝、、、一番蛇の動きが鈍くなる時間である(その時間まで待ってもらえるよう土下座してでも頼み込んだ)。

同じように案内係として拉致されたマイペルさんと『大嵐蛇』の予想以上の大きさに息を呑む。

その横で聖十剣四位様(戦闘狂)は満足げにほほ笑むのだった。


「老巫女様が倒せなかった相手、、、腕が鳴りますの」

「「・・・・・ええ」」


『嵐』と言う属性は水と風の混合型派生属性である。

水の激流と風の豪風がお互いの威力を上げていく。

風で勢いを増した雨が立つのもままならない猛雨となり、雨を伴った竜巻が視界を奪うように。

そういうものなので『嵐』属性の『大嵐蛇』も風が強く悪天候を好むらしい。

ちなみにここまで『鑑定』で分かった情報である。


「さて、、、いい加減に始めますの」

「「・・・・・・・はい(説得を諦めた)」」

「さあ、、、仕掛けますの。」


シャンと澄んだ音をたてて、彼女の腰から手へと硬鞭と柔鞭が映る。

そして彼女の本属性の『嵐』の魔力が周囲の空気を荒れさせる。

髪をふわふわと動かして、頬を上気させるその姿は戦女神(俺にとっては邪神)にも見えなくない。

流石聖十剣、、、無理矢理巻き込まれたことは腹立たしいが安心感が違う。


「『嵐巡れ』」

「・・・『鑑定』『義力行使』」

「じゃあ、足を止めますね。『氷の吐息が』『一か所に』『触れた場所が凍りつく』『氷結砲』」


マイペルさんが武器である弓を取り出しつつ詠唱と共に氷の魔力を圧縮し、、、直線状に放出する。

流石に上級魔物。

濃密な攻撃魔力にすぐさま気づき、、、その姿が掻き消える。

目で追えなくても音でどの位置か分かる。


めきめきメキメキと木々が折れていく音が流れていく。

その音のする方を目で追えば、視界の端に蒼色の姿が垣間見える。

・・・・・何キロも先に。

蛇は身体をばねのように縮め凄まじい速さで瞬時に移動できるっていうけど・・・・あんな速さで動くものなのか!?


「アハッ!」

「シュルッ!?」


そしてその速さに追いつける聖十剣は一体何なんだ!?

流石の嵐魔術と言えどあの瞬発力には届かない。

その代わりに音を超える速さで飛ばせる柔鞭を『大嵐蛇』に巻き付けたのだろう。

そして一緒に飛ばされたと・・・・・・先に足を止めるって言ったよね!?

何で勝手に行動してるんだよ!


「少し無理しないとあの戦いには入り込めないな・・・・マイペルさんも氷魔術よりも『内在型身体強化』に魔力を回した方がいいです!」

「分かってる!」

「『詠唱短縮二嵐鞭式:一の型』!」


柔鞭で『大嵐蛇』の足を崩し、嵐の魔力が猛け荒れる硬鞭が無防備な『大嵐蛇』に叩きつけられる。

グワンと・・・大きな音が鳴り響き・・・・


「シュラアッ!?」

「「浮いたあっ!?」」

「あら遅かったですの、二人とも」


ようやくたどり着いたのに、かけられる言葉がソレ・・・

大嵐蛇が上空に打ち上げられ、、、そして、、、地面に轟音を立てて叩きつけられる。

あの巨体だ・・・・ただ上空から叩きつけられるだけで相当なダメージになるだろう。

だが、、、、『あの巨体』を浮かせる威力か。


「ブリジットさん、、、あまり無茶はしないでください。」

「あら?そんなに無茶してるつもりはないですの」

「・・・硬鞭に違和感はなかったですか?柔鞭を振るときいつもより重く感じませんでしたか?」

「・・・・・・・・・・・何のことですの?」


表情を見ればわかる、やっぱりガタが来てたな。

たかが組手とはいえ、えらく武器が痛んでいたと思ったがやっぱりだ。

この人の戦い方、、、、武器を選ぶな。


「・・・・話はあとで、もう起きます。」

「「!?」」


むくりと『大嵐蛇』が鎌首を上げる。

嵐の魔力を下に引いてクッションにしたな・・・・・・・予想以上に知恵がある。

ブリジットさんは武器が不調だし、俺とマイペルさんでうまくフォローしないと・・・


「ブリジットさんはあまり武器を使わないで!マイペルさん、行きます!」

「あ、ああ・・・・」

「・・・・・・・・・・・」


彼女と共に前へ飛び出す。

『大嵐蛇』の俊足には追いつけやしないのでばねを溜め着る前に仕掛ける。

全速力で移動し、拳を構え、撃ち付ける。


「『義龍の一撃≪ドラゴン・アタック≫』!」


義龍の力を染み込ませた拳を叩きつける。

完全に通れば岩すら粉々に砕く拳に感じるのは、、、いなされた時の独特のぬるっとした感触。


「あ、『嵐』の鎧!??」


さっきまでは展開されていなかった魔物が持つ膨大な魔力で展開される竜巻の鎧が、拳を風で水流で蛇肌に打ち付けることさえ許さない。


「おい!冷気さえ通らないぞ!」


隙を見て冷気の矢を撃ってくれていたのだろうか、、、全て弾かれている。

・・・・・どうやらブリジットさんの強烈な一撃で完璧に目が覚めたみたいだ。

しかもブちぎれている、こうなると普通の攻撃じゃあ通らないぞ。

どうする、、、、もう少しギアを上げるか?


「・・・・・偉そうに言って、結局それなんですの」

「ブリジットさん!?」


大人しくなったかと思っていたブリジットさんはいつの間にか『大嵐蛇』の後頭部に飛び上っていた。

既に彼女は魔力を籠めきったのか、嵐の魔力を纏わせた二つの鞭を構えている。


「ブリジットさん、今すぐそこから離れて!」

「本質能力『嵐の弾丸≪ストーム・バレット≫』」


彼女の周囲にここまでカミソリのような風や水飛沫を感じる程の嵐を凝縮された球体が幾つも浮かぶ。

彼女の柔鞭はするるとそれを抱え込み、、、そして鞭の先端の速度で撃ちだす。

ダダダダダダン!

嵐と嵐がぶつかり合い、、、、そしてお互いを相殺する。

『大嵐蛇』とブリジットさんがお互い視線を交わす。

先に仕掛けたのは二撃目を既に用意していた硬便を鎧にぽかりと空いた穴に叩きつけようとする。


「『詠唱短縮二嵐鞭式:四の型』!」」


柔鞭で造り出した嵐の道、硬鞭に纏う強力な嵐、、、、駄目だそれ以上武器に負担をかけたら・・・

止める間もなく彼女の姿は風となり、硬鞭は嵐の魔力ごと叩きつけられる。

烈しく舞う彼女らしい嵐の魔力に一瞬目が眩む。


「・・・・・・・嘘。」


そして聴覚に彼女のつぶやくような声が届いた。

硬鞭に微かにヒビが入っていた。

それが威力を逃がしていた。

後少し時間をかければブリジットさんが無事な柔鞭で次の一手をうつことを思いついたかもしれないがその前に『大嵐蛇』の溜めが完成していた。


ごうッ


音で表せばそんな音。

視界からブリジットさんと大嵐蛇が消えた。

進行方向のものは何もかも跳ね飛ばされ、嵐に巻き込まれたかのように空へと打ち上げられる。


「くそっ、だから言ったのに!」


あの場所は危険だった。

一撃で仕留められればいいが、もし殺しきれずに『大嵐蛇』の突進が来たら避けられない場所だった。

彼女が気づいてるないはずがないのに・・・・焦ったのか?

歴戦の彼女が?


「・・・・・・・・俺のせいか?」


格下に下がってろと言われればいくら温厚な彼女と言えども腹が立つ。

少しでも見返してやろうと無茶もするってか・・・

『鑑定』で得られた情報じゃあ人間の精神状態までは分からない。

くそっ、、、いつの間に自分が万能だと勘違いしていた?

いや、、、それよりもまずは・・・・


「マイペルさん!」

「もうやっている!」


既にマイペルさんが詠唱級のごり押しで『大嵐蛇』の注意を引きつけていた。

それを目で一度だけ確認すると、木々をなぎ倒された道を全速力で走る。

そして目星をつけていた大木の一つを全速力で駆け昇り、そしててっぺんから飛ぶ。


「届けえええええっ!」


壊れないように、、、、これ以上。

とすっと軽い感触が腕の中に納まった。

宙で受け止めたブリジットさんは戦意だけはまだ失っていないのか、、、粉々に砕けた硬鞭と柔鞭を握りしめていた。

それでも大きなダメージで体が動かないか・・・・・軽いわけだ。


着地するまでの間に職業病で彼女の武器を『鑑定』してしまう。

硬鞭に柔鞭をぐるぐる巻きつけて強度を上げて、、、盾にしたのか。

それだけの処置を良くあの一瞬で・・・流石聖十剣。

そして武器たちもあの巨体の体当たりを受けて持ち主を守って砕けた・・・最後までよく頑張ったと褒めるべきだろう。


「不覚ですの・・・・」

「そうですね・・・・武器さえ保てばあの一撃で終わったましたけどね」

「怒ってますの?」

「ちょっと・・・まさかあんな無茶な使い方をしてたなんて・・・・そしてそのことを鍛冶師に言ってくれなかったなんて」


『大嵐蛇』から距離を出来る限り取るために駆ける。

全速力で走り、余裕なんて無いはずなのに弱弱しくなっている彼女との会話。

冷静にならなきゃいけない状況で凄く俺は怒っていた。


『大嵐蛇』の巨体を持ち上げる程の嵐を纏わせて、、、普通の武器がまともに保つはずがないのだ。

何度も壊れていたはずだ・・・・

そしてそれを知っていたら鍛冶師の誰もが彼女にあんな武器を与えなかったはずだ。

俺も彼女の武器の修繕ではなくもっと頑丈さを優先した武器を渡したはずだった。

頑丈さよりも威力重視の鞭だなんて・・・絶対に渡さなかった。


「鍛冶師の皆さんに申し訳なくて・・・自分の戦い方のせいで・・・武器が壊れやすくなってるって」

「ちいっ・・・・・」


修理し、武器を与えていた鍛冶師達は知っていたのだろう。

だが彼女に完全な武器を用意できない申し訳なさから、、、気付かないふりをしてまた新しい鞭を手渡していたのだろう。

・・・・・・・・・・・どっちも馬鹿だ。


「言いましたよね、、、武器は持ち主を守る最後の剣で盾だって」

「ええ、、、、、」

「別に武器を壊されても構いません・・・無茶をすることも仕方ないと思います・・・けども貴女を守るはずの武器を不完全なまま送り出す鍛冶師()の気持ち、、、そしてその武器のせいで怪我を負ったって知った時の鍛冶師()の気持ち、、、少しは考えてください。」

「・・・・・・・・・」

「貴女に武器を渡すのは死んで欲しくないから、、、貴女に出来る限り傷ついてほしくないから、、、出来る限り完全な武器を作るんです。貴方は俺を格下だって思ってるだろうけど、、、、それだけは分かって下さい。」

「・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい」


そういって彼女はぼろぼろと涙をこぼした。

なんだ、ブリジットさんも他の女性と一緒じゃないか。

そんなことを思い少しだけ、、、ほんの少しだけ残念に思った。

そして安心した。


「ここまで来たら、、、、安全ですね。ここで待っていてください。」

「貴方は・・・どうするんですの?」

「武器の不始末は鍛冶師が付けます・・・・今から貴女を守る最後の剣で盾は俺です。」

「そんなっ、、、危険ですの!」

「ご心配なく、、、、俺には『最強の龍』がついているので」

「え?」


木々のテッペンを跳ねるように跳びながら、力の源に語り掛ける。

聞いてましたよね、義龍様!

聞こえてないはずがないですよね、義龍様!

誰よりも義に厚いあなたが、ここまで格好つけた俺を見捨てはしませんよね!


返事替わりか、身体がぶっ壊れる程の量の義力が注ぎ込まれ・・・・ちょ、義龍様!?

こんなに注ぎ込まれたら破裂しますから!?

不満げな感情が伝わってくる・・・・お前が漢を見せる晴れ舞台だから力を注いだというのにと言うかのように。

いやいや、、、冗談抜きで駄目ですってこの量は。


「おい、いつまでかかってる!こっちの魔力はもう限界だ!」

「・・・・・・コッチハダイジョウブデス!テッタイシテクダサイ!」

「声がまったく大丈夫そうに聞こえないぞ!?」


今まで使ったことのないエネルギー量だ。

正直まともに使いこなせるとは思えないし、後遺症も・・・・・・いや、出来る!

アイツにあの時言ったんだ俺は、、、逃げるなって!

『これくらい』のピンチで俺が逃げてりゃ世話無いだろ!


「大丈夫です!」

「ま、任せるぞ!」


言葉でいい表す以上に限界だったのか、『内在型身体強化』が得意なはずの黒エルフの彼女がまるで龍人の郷に来たばかりのサクラ並のふらふらな速度で撤退していく。

五月蠅い小蠅が余程うっとおしかったのか、『大嵐蛇』は逃げる彼女の背へ嵐の魔術を叩きつけようと放つ。


「しまっ!?」

「『義龍の一撃≪ドラゴン・アタック≫』!」

「あ、ありがとう・・・・」

「撤退を!ブリジットさんを保護してください!」

「あ、ああ・・・・・」


・・・・『鑑定』が予備動作を確認出来たお蔭で間に合った。

後ろを振り返ること無く、前を見る。


「シャアアアアアアアアアアッ!!!」


嵐と気迫と共に『大嵐蛇』の威嚇が俺に向けられる。

どうやらご自慢の嵐の魔術を拳一つで弾き飛ばされてお怒りらしい。

・・・・・・義力の過剰使用のお蔭で今のところは『大嵐蛇』の魔術に打ち勝ってるが、嵐の鎧を打ち破るにはまだ少し足りそうにない。


「さて、、、、無茶しますか」


全身を嵐の鎧で覆っているのに、、、俺にまで『大嵐蛇』の鳴き声が響いた。

つまり、、、、音は通るということか。

息を可能な限り吸い込みながら、その空気に義力を染み込ませる。

そして同時に義力を染み込ませた喉が口が龍の口蓋へと変貌していく。


「コオッ!」


短く最後に一息吸い込む。

そして周囲にいるのは俺と『大嵐蛇』だけだともう一度確認する。

『大嵐蛇』が本能的に危険を感じ取ったのか、後ずさりする。

だがその距離でいいのか?耳を塞がなくていいのか?

ああ、、、蛇は手がないか


「カア――――――――――――――――――――――ッッッツ!!!!!!」


『義龍の雄叫び≪ドラゴン・ハウリング≫』

吐き出された吐息と音が強引に空気を揺らす。

そしてメロディも何もないただただ高音で不快で強大な音へと変化させる。


草木の葉はひとりでに揺れ、飛んでいく。

生物は鼓膜をヤラれ、脳を揺さぶられ倒れ伏していく。

半径200メートルの全てのものが確実に身体に悪影響を受けていた。


「シャアああああああアアアアアアア!????」


真正面から受けた『大嵐蛇』は周囲の生物と比べても更に深刻な被害を受けていた。

音だけでなく内部まで浸透する義力が体の奥で暴れ回り、目から口から鼓膜から大量の出血をこぼしていた。

聴覚が完全にダメにされた影響で、嵐の鎧もまともに機能していない。


「・・・・・はは」


そして俺も倒れ伏した。

同じ被害を受けて。

いや、、、、距離的に言えば自分の被害の方が深刻かもしれない。


手で耳を守れば『大嵐蛇』に何をされるか気づかれてしまっていた。

鼓膜が破れないギリギリの義力は耳に当てたけど、、、三半規管がブレにブレまくってる。

仕方がないとはいえ、、、想像以上に身体が動かない!?


何これ、頭ガンガンするんですけど!?

気を抜いた瞬間に気絶しちまうんですけど!?

鎧が解けたら口の中にでも滑り込んで『義龍の一撃≪ドラゴン・アタック≫』を叩きこみまくってやろうとか思ってたけど身体動きマセーン!!!

重症の体でも根性でそんなことが出来るのは暴走魔力なんてろくでもない力が使えるキチガイだけだ。


「やっべ、、、、」

「フシャアアア・・・・・」


目の前に『大嵐蛇』の口が見える。

死にかけの体で俺の首をかみ砕きに来たらしい。

ははは、、、、やっぱり俺は鍛冶場に引きこもるのが性に合ってる。

後はキチガイの後ろをついて回ることとか、、、、いや、そっちはごめんだ。

命が幾つあっても足りない。


「おまん、何しとっかねえええええええっ!」

「ふしゃあああああああああ!??????」

「・・・・・へ?」


肉の塊をブルンブルン揺らしたおばちゃんの拳が、『大嵐蛇』をいとも簡単にブッ飛ばした。

ブリジットさんの何倍も高く、高く・・・・・・

その一発が留めとなったのか、『鑑定』はオーバーキルと表示していた。

・・・・・・・ドンだけ強いんだよ、あのおばちゃん!?





老巫女さまは女王陛下の血縁らしい。

道理で強いと思ったら、、、、納得だ。

あの後九死に一生を得たかと思ったら老巫女様の小言を丸一日聞かされる羽目になった。

治癒魔術をかけてもらいながらの小言であるため逃げることも出来ず俺もブリジットさんも『義龍の雄叫び≪ドラゴン・ハウリング≫』を喰らった以上の深刻なノイローゼになった。

完璧に巻き込まれた形のマイペルさんに至ってはもう死に体だった。

それはそうと・・・・・小言の終わり際に『無事でよかった』とそれぞれ抱きしめられた。


「おまんらはまだ若いんじゃけえ、無茶したらいかん。ゆっくりゆっくり成長すればいいけえ・・・年寄りを悲しませんで欲しいんじゃあ」

「ごめんなさい、おばあ様・・・・・」

「「・・・・・・・・・」」


ブリジットさんが老巫女様をおばあ様と呼ぶのを初めて見た。



老巫女様の治癒魔術は思いの外効き目がよく、数日静養したら完全復活した。

既に王国に連絡を出してはいたが申請よりも長めの休暇になっていた為、すぐに英雄連邦を発つことになった。

大量のお土産を抱えさせられて・・・・・・





それから数日俺は鍛冶場とベッドを往復していた。

老巫女様から頂いた『大嵐蛇』の牙を超高熱で溶かして最も相性の良い魔法鉄と溶け合わせる。

そして空気を混ぜ込みながら『嵐』を呼び起こし鋼の中に納める。


名をつけるなら、、、『蛇嵐鋼』かな?

『大嵐蛇』を思い出させる、忌々しいまでの綺麗な緑が混じった蒼だ。

それを特殊な槌で叩き、、、硬度を上げながら成型していく。

強度を増すほど成型は難しく、より大きな熱と力が必要になるのだが・・・それで持ち主の生命を守れるなら惜しくない労力だ。


この鋼なら、、、常に嵐を身に纏い戦う『大嵐蛇』の素材なら彼女の技についていけるはずだ。

寧ろ共鳴鋼がなくても、『嵐』に融けあうくらい同調するはずだ。


硬鞭はより『蛇嵐鋼』を圧縮させることで重さは増すが、二度と振るう彼女を裏切らないように強く剛く鍛え上げていく。

彼女の要望通り強靭さを優先していった。


柔鞭は『大嵐蛇』の蛇皮を何重にも織り込んで、、、『嵐樹』という特殊な木材を握りに使う、細く綺麗なエルフの手にはよく馴染むだろう。

・・・そして補強に『蛇嵐鋼』。

硬鞭程の強靭さはないが、この鞭の速さは先代を遥かに上回る。

彼女の身軽さをさらに引き上げるだろう。


緑がかった蒼色の硬鞭と柔鞭。

何度も『鑑定』で確認し、、、、首肯した。

これなら胸を張って彼女に渡せると。




「とうとう出来ましたの?」

「ブリジットさん、早かったですね」

「いつもと同じ時間ですの」

「そうでしたっけ?」

「ええ・・・」


鍛冶場の焔を意にも介さずに入って来た彼女に机の上の二振りを見せた。

彼女は息を飲むようにその二振りを眺めていた。

でも、、、戦士の性か我慢できなくなるのだろう。

目を二振りから離すことなく彼女は止まっていた時間を解いた。


「持って・・・見ても?」

「貴女のものなので」

「・・・・・・・・」


最初はなぞるように、、、そして手に馴染ませるようにゆっくりと握った。

まるで聖剣を持つように彼女はそれを光に照らす。

そして微笑んだ。


「綺麗・・・・」

「硬鞭は強度を優先したので、、、重量がかなり変化してますけど大丈夫ですか?」

「文句なしですの!」

「そうですか・・・・」

「早速訓練があるんですの、持って行ってもいいですの!?」

「え、魔装加工してからの方が・・・・」

「いりませんの、こんなに素晴らしいんですから!」


彼女はキラキラと本当に嬉しいのか宝物のようにその二振りを抱きしめる。

・・・・鍛冶師冥利に尽きる。

何の文句もない完成品を渡すことが出来るだけじゃなく、、、それを喜んでもらえる。

もっともっと鍛冶技術がうまくなりたいと思った。

ただそう思えた。

ブリジットさんは浮かれ気味に外へと駆けだそうとしていたが、ふと思い返したのか真面目な顔で振り返った。


「まだ名前を聞いてませんの!」

「ああ、、、、造るのに夢中で決めてなかった」

「じゃあ、決めて欲しいですの!」

「ええ、、、俺のセンスはオオラさん(爺さん)よりですよ?」

「貴方につけてもらった名前になんの文句もありませんの!」

「・・・・・・・・なら『硬鞭:翠華』『柔鞭:蒼華』でどうですか?ブリジットさんには華が良く似合うし・・・」

「えっ・・・・・・・」


いや、、、頬を硬直させるほど嫌だった!?

しょうがないな爺のセンスは・・・・

こうなったら俺のセンスだが『BOKUSATU☆スティック』『KOUSATU☆ウィップ』しかないぞ・・・・


「いや、駄目なら候補が他に

「それが良いですの!」

「なら、、、、、それで?」

「ええ!」


何でさっきは表情を硬直させたのかって疑問に思うばかりの満面の笑みを浮かべて彼女は外へと駆けだしていった。

『硬鞭:翠華』『柔鞭:蒼華』・・・・あの人を頼むな。

持ち主への尽くし具合で先代に負けんなよ?


「うし、、、そろそろ親友の為に剣を打ちますか!」


伸びをして仕事に向かうことにする。

肩は痛いし、身体はカラカラだし、腰は痛いし・・・

けども今なら一本剣を打てそうな気がした。

誰かの為に武器を打つ楽しさを思い出した今なら、、、良い剣が打てる気がした。







ま、、、、結局気がしただけだったのだが。

それどころか武器が傷一つついてもいないのに、ブリジットさんが毎日鍛冶場に来るものだから余計に製作ペースが落ちることになった。

彼がサクラの剣を打ち終わるまで後『』『』『』『』

ガルブレイク「最近、ブリジット強くないか?武器を変えてから妙に思い切りも良くなったし・・・」

ゼノン「てか武器に傷をつけようものなら、凄まじい勢いで殺しにかかって来ますしね・・・」

ジョージ「そういえば最近頻繁に鍛冶場の龍人小僧に会いに行っとるらしい・・・」

三人「ハハン・・・・」

ボボルノ「なあ最近の訓練の時のブリジットからの攻撃から殺気を感じるんだけど何か知らない?」

三人「それは元からだ。」

ボボルノ「何の話!?」


第六部プロット作成の為、しばらく休載いたします。

その間完結扱いとしますが、現状は活動報告を通して報告いたします。

今まで通り長くても一か月程度で書きたい衝動が天眼突破するのでそんなに待たせません。

これからもよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ